ネイビーフォースの男たち

特殊部隊の二人その2

そして、家のバルコニーのあたりに、
男が１人、現れた。


ティーカップを手にして、くつろぐ様子

からして、ティータイムと、
いったところだろう。


その光景がどうも、ネイビー隊員たちには、しゃくにさわる感じがした。


特にビギローには、子供の件と、この場面が、気に入らなかった。


(この男はテロリストだ。だが、
家庭を持ち、家族には良き父、夫として接しているのだろう。もしかしたら、
子供と遊んだ後、こうして、紅茶を楽しんでいるのか？、チキショウめ、、、)


ビギロー自身にも

小学生の娘が二人、いて尚更、頭を悩ませた。



(この男、が家族を愛し、
それをいつも、示していようと、
関係ない。こいつは死ぬべきなんだ。)  

そう、スコットは自分に言い聞かせた。


アブ・ビン・フセイニ 


それが、ベイカーとビギローが

暗殺ターゲットにしている、

男の本名である。

フセイニは若い頃、

大学で機械工学を学ぶ、かたわら、

政治活動に関心を持つようになった。


徐々に彼は、西側先進国、特にアメリカに対して、激しい怒りを抱き始めた。


90年代の末期にフセイニは当時ウラグスタンで台頭し始めた、


新興の国際テロ組織、ARC(アラブ革命評議会)に参加し、頭角を表すようになった。


フセイニは若いながら、機転が利き、

忍耐強い性格から、組織のトップからも目をかけられ、26歳で、工作員の訓練キャンプ教官へ昇格した。


参加したときは

一介の工作員見習いに過ぎなかった

にもかかわらず、これは異例のこと

であり、さらに、フセイニは

20年の間に組織の資金運用、宣伝活動、


テロ活動計画の立案担当まで、任されるようになり、2019年には、46歳で、組織のナンバーツー、にのぼりつめた。


ナンバーツーにランクアップしたきっかけとしてはある、テロ計画の成功が影響している。


それは2019年の7月、ロシア国内の
アメリカ国務省関連ビルを
爆破するというテロ事件を

成功させたというもので、当時、国務省ビルでは、中東の経済情勢を討議するため、米露双方の専門家が、集まっていた。



爆発の被害は大きく、実行のために、フセイニには腕利きの工作員、3人を使った。

ビルの各所に適切な量の爆薬を設置させ、タイミングよく、起爆が行われた結果、死者12名、重軽傷者28名の大惨事となった。

そのあと、米露間での外交上での緊張が高まり、テロ現場でのむごい遺体の状態、


死体袋の山、泣き叫ぶ市民の様子が世界中のメディアを通じて、人々に伝わった。

テロリストへの怒りが各国で噴き出すなか、
首尾よく、フセイニの子飼いの工作員たちは、
ロシアから脱出するため 準備にかかったが、


 米国とロシアの政府機関もテロリストを
 みすみす、逃がすほど、
 間抜けではなかった。