呪いなんて怖くない!〜木こりの息子と仮面の少年

閑人

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43.誘拐 ②

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 誘拐犯はメヒティルトさんなんだろうなあ…まさか紋章つきの馬車からルドルフを誘拐するなんて思ってもいなかった。でもアルバートさんから聞いた彼女の執着具合から考えれば想定の範囲内だったかも。自分の考えの甘さが腹立たしい。


 そう思いつつ、全速力で飛んでいるフォーちゃんの後を勢いよく馬で進む俺とオットー先生。それに負けないスピードで走り続けるノラ先生…まだまだ俺も訓練積まないといけないなとその姿を見て舌をまいた。

 「前から学園の馬車の馬だけが来るぜ。どうする?」

 と前を飛んでいたフォーちゃんが教えてくれた。

 「よし、捕まえよう。詳しい話が聞けるかも。ストーーップ!止まれ!学園の馬だろおまえ!話が聞きたいんだ!」

 俺の声が届いたらしく、ちょっとパニック気味だった馬車の馬は止まってくれた。

 「私の言葉がわかるんですか?助かった。馬車が壊されて仮面の子が連れて行かれて!私独りになってしまいました。どうしたらいいのか」荒い息とともに馬は早口で言った。

 「御者さんは?」

 「襲われた時怪我をしてしまい動けません。この先の道端にいます。馬車も横倒しにされ壊されてます」

 まずい状況だな…

 「仮面の子、ルドルフは?どこへ連れて行かれた?」

 「…えっと、この道沿いの少し先の森の中に連れて行かれた所までは見ました。そのあとは…」

 見てないか…でも情報としては充分。

 「オットー先生。この先で御者さんが怪我してるって。この馬に学園まで伝言持たせるから、その紙に先生が署名してくれないですか?」

 「私が?」

 「そう、俺の名前じゃ信用されないでしょ?」

 俺はポケットからくしゃくしゃの紙を取り出して…よく見るとそれはルドルフが『メモとりなよ』とくれた紙だった。目の辺りがなんだか熱くなったがそれどころじゃない。頭を振った。ルドルフを早く助けなきゃ。

 「南東の道、学園の御者負傷中。救助願う」

と書き先生に署名してもらう。それを制服のスカーフの中にくるみ、馬車の馬の首に巻いた。

 「このまま学園まで急いで帰ってくれ。君なら道はわかるよね?頼んだよ」
 
 馬車の馬は足早やに学園に向かって去って行った。俺が馬と話す姿を訝しげに見ていたオットー先生は何かいいたげだったが。

 少し行くと、馬の言った通り御者さんが道端でうずくまっている。それを発見して
 
 「本当に御者がいる…」オットー先生が呟いた。

『馬から聞きました』ってそりゃ信じられないよね。でもさっき署名をしてくれたのは俺個人に対する信頼なんだろうな。

 「大丈夫ですか?怪我は?」

 「…多分大丈夫です。足の骨を折ってしまったみたいで動けませんが…。それより仮面の子が、あの森の中に…早く助けて」

御者さんの顔色は青いが受け答えはしっかりしている。

 「今救助を呼んでます。来るまで待ってて下さい」

 御者さんの側に壊れた馬車が転がっていた。王家の紋章も土に塗れている。

 「こんな事する人間がいるとは…」オットー先生は絶句していた。

貴族にとっては特にそうだろうなぁ…とにかく何か行き先の手がかりがないかと壊れた馬車に近づくと、

 「何だ?この匂い…香水か?」

 「何だリュ知らないのか?これ町の娘っこたちに大人気の『恋が叶うおまじない香水』の匂いだよ。俺も欲しいんだよなー」とフォーちゃん。

 鳥に香水?要らないだろう?

 「馬鹿だなー。マリアへのプレゼントに決まってるだろう?スッゴイ人気なんだぜこれ」

 よく見ると馬車の内部にルドルフのカバンや粉々になった瓶がある。これが香水の瓶か…ん?

 「この匂い追えるフォーちゃん?」

 「いける。特徴的だからな」
 
 これは多分ルドルフからの「この匂いについてきて」というメッセージだ。
 
 「何故わかるの?」とノラ先生。

 「几帳面なあいつが香水の瓶をカバンに入れないはずがない。なんなら割れないよう厳重に何かでくるんでいてもおかしくない。それなのにこれ見て」

 転がっているルドルフのカバンは2つあるバックルのうち1つが開いたまま、そして香水は箱から外に出されていて粉々。

 「ルドルフは襲われた時、わざと香水を自分にたっぷりつけたんじゃないかな。本当はカバンもきちんと閉めたかったし、瓶も箱に入れたかったんだろうけど、相手が早すぎてできなかったんだと思う」

 「確かにルドルフ君ならそのくらいの頭は回りますから可能性は高いですね。しかし彼が香水とは珍しい…」

 シャルロッテさんに流行り物買ってこいって言われてたからね。あの命令がこんな所で役に立つなんて…
 
 俺たちは馬を降り、森の中へ向かった。

 「なあーリュ。ここいらの動物にお前が集合かけて調べてもらった方が早くない?」

 『ミンナアツマレ』か…それも一瞬考えたけど

 「大声であいつらに気づかれると困る。このまま静かに匂いを追って行こう。後から来る人がわかるようにハンカチをちぎって、木に目印つけながらね。静かにな、フォーちゃん」

 「わかってるって。賢いんだぜ俺は。あいつ助け出したらマリアに褒めてもらえるかな」

 浮き足だってるな、間違いなく褒めてもらえると思うよ。ついでにあの香水も俺がお前に買ってやろう。

 フォーちゃん、リュの2人?の後ろからオットー先生とノラ先生が辺りを警戒しながら移動している。

 「ノラ先生、彼はあの鳥と何か話しているようなんですが、内容わかりますか?」

 「わかりません~まあ彼の返答で大体こんな感じの話をしてるのかな?くらいですかね~」

 「それは彼が動物と話せる前提ですよね?」

 「ですね~。詳細はルドルフ君を無事救出してからじっくりと聞きましょ~」


 匂いを辿って行くと急に開けた場所に出た。

 「こんな山の中に?」フォーちゃんが驚いている。

  山中に立派な石造りの家が建っていた。

  木材に困らないこの山の中にわざわざ石造り。
 
 「…まさかルドルフを捕まえておく為にこれを?」

 〝あなたを絶対逃がさない〟

 そんな声が聞こえた気がした。俺の背中を一筋冷や汗が垂れる。その建物から彼女の執着の強さがひしひしと感じられ薄ら寒い気持ちになった。
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