いつも巻き込まれて困ってます!

閑人

文字の大きさ
23 / 29

23 村 ④

しおりを挟む
 「遅くなっちゃいましたね社長」

 私は運転しながら後ろに声をかけた。

 「…仕事外ではコウさんでいいと言ったろ、マツ」

 そう言うところ頑固だなこの人は。いくら兄弟同然に暮らしてた時期があるにせよ今は私が勤めている会社の社長には違いないのだが…。その辺祖父のソウエモン様によく似ていると以前言ったらとても怒られたので言うのはやめておく。

 コウさんの静止も聞かず先に行ってしまった2人を追いかけて私たちも村へ急いではいるがもう夕方だ。

 「夜の山道って登れますかね?」

 私の記憶が間違いなければあの道は細く、そこそこ急だ。もし日が暮れそうなら森に入るのは諦めてどこかで泊まって明るくなってからにした方が無難だろう。

 「そこは心配いらない。それよりもショウが何かをやってしまってないか…」

 心配いらない?不審に思ったがコウさんが嘘をついた事はないので信じようか。

 「村に着きましたよ。どこに停めますか?コウさん」

 「あの森の入り口あたりに空き地があるだろうそこへ停めてくれ。まずは村長に挨拶してくる」



 10分後には私たちはもう森の中にいた。

 「…いつもなら『宴会に参加しろ』だの『ショウタロウ様にきちんと伝えろ』だのしつこく言ってくるのに今日はなんかやけにあっさりしてましたね、あの村長」

 そうなのだ。村長にいつものようなしつこさが全くなく、なんなら土下座でもしそうなくらい低姿勢でこちらの言葉にうなづいているだけだったのだ。村人も家の中から恐々と言った感じでこちらを見ているだけ。

 「なにかあったんだろうな…知りたくないが。ともあれ早めに森に入れてラッキーだ。急ごう」

 早足に登るが途中でとうとう日が暮れてしまい、森の中は真っ暗になった。

 「コウさんどうする?」

 と呼びかけたその時、道が光りはじめた。屋敷までの道すじが一本の光の筋になっている。

 「…光ってる」

 横を見るとコウさんが

 「この道沿いには光るキノコやら苔やらが生えていて夜でも足元はバッチリなんだ。何故この道沿いだけにしか生えてないのかは全くわからないがな」

 ふふんという鼻息まで聞こえそうな(ドヤ顔というのかな)感じのその喋り方は弟ショウさんに良く似ている。が、多分それも言ったら怒るだろうなと思うのでやめておく。

 日頃の運動不足を呪いながら、やっと屋敷が見えるところまで登ってこれた…あれ?

 「ケイタロウさんが外で私たちを待ってますよ」

 屋敷の外にケイタロウさんがいて、私たちに気がついて懐中電灯を振って出迎えている。細身のシルエットが喜びで跳ねている。遅くなった私たちを心配してくれたんだろう…でも唯一気になるのは背後の屋敷が真っ暗な事だ。何年か前に電気、ガス、水道、ネットが使える環境にしておいたはずなのに…後で確認しておこう。

 「そのようだな…出迎えは嬉しいが…何故だかすごく嫌な予感がする…」

 全くどこまで心配性なんだか。仕事とかは猪突猛進の勢いでこなすのに、家族の事になると途端にこれだ。
 
 「コウ兄さーん、マツナガさーん!遅かったね。お疲れ様でした。掃除と墓参りは終わってるんだけどね、えっと………」

 ケイタロウさんが言い淀んでいる。なんだろう?

 「ちょっと質問なんだけど今驚くのと後で驚くのどっちがいい?」

 「「質問の意味がわからない」」

 しまった、コウさんとハモってしまった。私より一瞬早く気を取り直したコウさんが

 「何をしたか知らないが、早く知るに越した事はない。対処も早くできるからな」

 というと、ケイタロウさんは、素直にうなづいて

 「じゃ、2人ともそのまま屋敷に入って。ショウ!2人到着したよ!そのままでいいよー!今見ておくってー!」

 『今見ておく?』ますますわからない。

 重々しい玄関を開け、広い土間で靴を脱いで上がる。やはり電気は付いておらず廊下も暗い…いや奥の方で何かが薄ぼんやりと光を発しているようだ。その光がこちらにすぅっと近づいてきて、私の目の前まできた。

 人魂だった。

 硬直して悲鳴すら出ない。

 人魂の正体は燃えているリンだと聞いたことがあるがこれは違うと確信した。何故なら朧げだが目鼻口があるからだ。ただリンが燃えているだけならこうはなるまい。

 「ショウ!出てこい!これはなんだ!説明しろ!悪ふざけなら承知しないぞ!」

 私の横でコウさんは激怒していた。現実主義のコウさんはこれをショウさんの仕業と判断したのだろう。ところが一緒に屋敷に入ったケイタロウさんが爆弾発言をした。

 「あ、これショウの仕業じゃないよ。多分本物の心霊現象だと思う。夕方になったら急に屋敷内のあちこちに出てきてさー、ちょっと目にうるさいんだよね…コウ兄さんが先に見たいって言うんでそのままにしたけど、電気つけると消えるから安心して」

 コウさんの怒鳴り声が止まった。ゆっくりとケイタロウさんの方に振り向く。

 「…本物?」

 「うん、本物。何故か知らないけどいっぱいいるよこの屋敷。ショウはこれをもう少し調べたいって、真っ暗な屋敷内をうろうろしてるよ。ショウ!聞こえる?いい加減ご飯食べようよ!電気もつけるからね!」
 
 すると屋敷の奥の方から

 「わかった~今行く~」

 といつもののんびりした声が聞こえてきた。

 この状況で『ご飯食べよう』?
 度胸が座ってるのかそれとも…私にはわからない。

 ケイタロウさんが電気をつけると人魂は消え去った。

 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...