シンデレラと呼ばないで

閑人

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9.シンデレラ ver.4−4

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 伯父様に話がいってからは早かった。10日もしないうちに結果が出た…黒だった。それも真っ黒。結婚話が進んでいても彼はお構いなしに派手な美人を取っ替え引っ替え連れて豪遊しまくっていると報告がきたようだ。

 調査結果によっては彼の父親に〝息子さん女性関係で噂になってますよ〟と知らせておくくらいはしようかと思っていた伯父様の甘い考えを吹っ飛ばすくらいの豪遊っぷりだったらしく今頭を抱えている。放置すれば相手の商売だけでなく他の取引先(伯父様の商売も)にも迷惑がかかるレベルだったようだ。

 「下手すれば数年で潰れるぞ。何とか彼の父親にこの状況を知らせないと…」

 オロオロしている伯父様を眉を顰めて見ていた伯母様は

 「でもまずは結婚話を止めないと。クレアの友人が可哀想ですわ。クレアもそれを心配してあなたにお願いしたのだし…」

 「そうだな。そちらが急ぎだな…うん、まあ言葉で言うより直に見てもらった方がいいか…」

 何やら考えがまとまったようだ。


 数日後伯父様は何も知らない私の友人の父親と『今若者に人気のパブ』に『市場調査を兼ねて』飲みにいった。そこはあの彼の行きつけで良く女性を連れて行っている場所だった。もちろんいつも行っている曜日も時間も調査済み。
 伯父様が友人の父親と飲んでいると、露出度の高い格好の美人を連れた〇〇さん登場!浮かれているからか結婚話の相手の父親がいることなぞ気付かずに大騒ぎ。そんな様子を友人の父親はじっと見て

 「…ここに連れてきてくれてありがとう。危うくうちの娘を不幸にしてしまうところだったよ」
 
 と伯父様に感謝をした。そして2人は大騒ぎしている彼のところにいって肩を叩き

 「やあ!随分とお楽しみのようだね!ふーん…君の好みはコレかい?うちの娘はこんな格好できないなぁ。淑女だからね」

 と友人の父親は皮肉っぽくにっこりと笑っていい、

 「やあ!〇〇君!私たちはもう帰るけど君たちはごゆっくり!あ!お父様によろしく」

 と伯父様もにっこりと笑って伝え、2人の正体に気づき、青い顔で口をパクパクしている彼を残して2人店を出てきたそうだ。…その顔見たかったわ。


 当然結婚話は白紙になった。悲しんでしまうのでは?と思っていた友人は意外にもあっけらかんとしていて

 「女性関係にだらしない人は嫌だもの」

と宣った。そこはきちんと割り切れる人のようだ。

 商売の方はというと…

 「彼の父親に『友人と飲みに行った先で偶然息子さんに会った時の状況』を伝えたよ。『彼のお金の使い方に驚いた』ともね。これで分かるはず。〇〇君が心を入れ替えるよう働きかけるのか、それとも後継から外すのか…。普通なら後者だけど…」

 けど?

 よくよく聞いてみると、本当は彼のお兄さんが後継で、彼当人は他の商売をやる予定で外に修行に出ていたそうだ。しかし1年前お兄さんが流行り病で急死した為慌てて彼が呼び戻され後継に据えられたのだそう。
 お兄さんはとても優秀で人格的にも立派な方だったので、弟の彼は劣等感を持っており、その兄が亡くなって『これからは全部自分の物』と弾けてしまったのだろうと…(やはり馬鹿な人だ)
 後継から外したくとももう他に兄弟はいない。そして優秀な後継を亡くしてまだ日が浅い父親としては多少出来が悪くとも『もう手放したくない』との思いが強いだろうから、そのまま後継者になるのでは?と伯父様は予想して、教育の仕直しが大変だろうけどねと自分の事のように溜息をついた。

 「彼が後継になるなら付き合い方を考えないとなあ…そういえばクレアにも以前彼との話がきてたんだよ。クレアが忙しそうだから断ったんだけど…」

 あぁ招待を受ける受けないと仕分けしていたあの手紙の中に入っていたのね…知らなかったわ。そこで私が話を受けたりするとあの3回目の夢?のようになっていたのかしら?

 1日が終わり、ベットに潜り込むと色々考えが浮かんできた。
 
 そういえばあの夢?の中で、今回私が友人にしたように(彼女にバレないようにしたけれど)、困った時に私の為に手を差し伸べてくれた人はいたかしら?伯父様一家は血縁なので除くと…いなかった。それだけの人間関係をどの夢?でも築いていなかったのだと気づく。最低限の人付き合いしかせず(なんなら自分の夫にでさえ最低限だったかも)、人を見る目すら養わず、ただ自分さえ楽しく過ごせれば良いと思っていた。それなのに窮地に陥って『誰も助けてくれないなんて…』と嘆いていた。助けてくれるわけがなかったのだ。自業自得とはこの事だ。あの3回の夢?を教訓にこれからは心を入れ替えよう。


 それからあっという間に10年経った。

 王子は公爵家のお嬢様と結婚して王位を継いだ。しっかり者の妃に支えられて治世は平和だ。

 〇〇さんは父親の必死の教育も実らず女遊びも豪遊もおさまらなかった。昨年父親が亡くなってからは拍車がかかっており、商売相手たちは手を引き始めている。早晩破産・没落だろう。

 私は…伯父様の商売の一部を任されて、日々楽しく働いている。忙しいがこんな暮らしにやり甲斐を感じていた。結婚はしていない。何人かお付き合いはしたが、いい感じになった途端『お金の融通』や『伯父様とのコネで~して欲しい』と言われる事が多くて閉口した結果である。どうやら男性を見る目が絶望的にないらしい…

 男性を見る目がないで思い出したが、この間『ある男爵家』の家屋敷の差し押さえに行った。そこのお嬢様の結婚した相手がギャンブル好きで、あっという間に借金だらけになったのだ。あんなにお金の使い方にうるさかったのに娘婿には甘かったらしい。
 債権者の1人として伯父様の部下と一緒に家財道具を運び出している私を見て驚いている様子の男爵の奥様たち…何やら言いたげだったが、知らんぷりをした。

 『お前らなんぞに興味はない』


 今日は年末。久しぶりのお休みなので友人と(あの友人だ)2人羽を伸ばした。彼女はあの後堅実で真面目な男性とお見合いをして結婚、3人の子を産み、幸せに暮らしている。
 そして明日はフランツの家のパーティーに呼ばれている。彼も大人になり、つい先日結婚したのだ。そのお相手と私は今回初めて会う事になっているが、何を着て行ったらいいのか?お土産は何を?とこの後に及んで悩んでいると、急に部屋の中が明るくなり、その明かりは人に形を変えた。

 ローブに杖…魔法使いだ。でも昔会った人ではない。

 「あなたがシンデレラ?」

 その魔法使いは、大嫌いだが懐かしくもある名前で私を呼び、私が頷くと彼女はペラペラ一方的に話し出した。

 「色々振り回してごめんなさいね。あの魔法使いまだ経験が足りなくって…ちょっと時間が経っちゃったけど、私が来たからもう大丈夫!きちんと終わりにしますからね」

 話が読めない…終わりとは何かしら?
 
「私は物語を終わらせる魔法使い。あなたは本当はシンデレラとして物語の中で生き、王子と結婚してハッピーエンドで終わる予定だったの。あの魔法使いが失敗しちゃってこんな事に…かなり内容は変わっちゃったけど今幸せだから、ハッピーエンドって事で良いわよね?じゃあ終わらせるわね」

 待って!と言う私の声は届かず、魔法使いは杖を振りキラキラとした光を振りまいた。その光は私を包み…


 そして目の前が暗くなった。


        Fin
 




 

 

 
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