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···❆冒険者編❆···
2日目の朝
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「うーん、よく寝た~……」
私はグ~ッ…と体を伸ばして起き上がった。左に顔を向けると、ベビーベッドですやすやと眠る紫と碧。
は~……もう何なの……うちの子可愛すぎるんですけど……
たった1日で私は紫と碧にメロメロだ。それはもう、だらしないくらいに顔がヤバイだろう。
外は日が昇る少し前くらいの時間帯だ。
つまりだいたい朝の5時くらい。
私はセルを起こさないようにそっとベッドから降りて、洗面室に入った。
うーん、どの服を着ようかな~?
私は服を出していく。
「うん、これにしよう」
そう言って取り出したのは、少し変わった白い着物のような上着に淡い水色から青へと変わるグラデーションのスカートだ。上着は、裾や袖に青い糸で刺繍され、袖は着物のように下に長い。グラデーションのスカートは、サラサラとした軽い生地でできている。
着てみると、意外に似合っていた。というか、似合う。似合いすぎる。まあ確かに、自慢じゃないけど私は他の人よりモテていた。芸能人程でもないが美少女だ。けれど私、こんなの似合わないと思ったんだけど……。体を鏡の前でくるりと回ってみると、袖とスカートが一緒にふわりと舞って綺麗だった。さすが私。というかこの服、すごく人を選ぶ気がする。私以外無理なんじゃない?
そう思いながらも私は服を別の、シャツとキュロットに着替えた。髪も黒い紐で結び、ポニーテールにする。今からやることにあの格好だと汗臭くなるし、汚れちゃう。
私はそのまま部屋を出て、宿の裏庭へと向かった。実は昨日のうちに、朝から裏庭を使ってもいいか聞いておいたのだ。
裏庭についた私は、インベントリから森で拾った枝を取り出した。枝を両手で構えてスッと息を整え、意識を集中する。素子で目を開け、枝を一気に振り下ろす。それを何度も繰り返す。
私は毎朝、朝練を日課としている。祖父母が生きている頃からの日課で、刀、薙刀、古武術、暗器術を朝食の時間になるまでひたすらやっていた。
それから何時間経ったか、気がついたら日が昇っていて空が明るくなっていた。
「ヤバイ!!」
急いで部屋へと帰ると案の定、セルが起きていた。
「おはよう、弥生」
「セル、おはよう」
「朝練お疲れ様。お風呂入って汗流してきたら?」
「朝練のこと知ってたの?うん、入ってくるから、紫たちお願いね」
そうなのだ。この部屋にはお風呂がついていた。ドアから入ってすぐ横の扉、トイレかと思ったら洗面所で、その向こうに意外と大きなお風呂とトイレがあったのだ。アリアナさんに聞いたところ、どうやらここは大部屋でも特にいい部屋らしく、お風呂がついてるのはこことあと3部屋だけらしい。
私はお風呂に入り、朝選んだ服に着替えた。鏡の前に立ち、髪に櫛を通す。青い紐を取り出し、ハーフアップにする。
「うん、これでよし」
私は鏡でもう一度確認して、洗面所を出た。
「お待たせ」
「ティルーチェの選んだ服か?」
「うん、綺麗な服だよね」
「ああ。まるでお前のために作られたような服だな。お前以外が着たら服に着られるだろう」
「あ、やっぱりセルもそう思う?」
「あわぁう」
「うやぁい」
「お前たちもそう思うか?」
喋る紫たちにセルが笑って言った。紫、碧、ナイスです!!
セルの笑顔に悶える私。ハッとしてセルを見ると、セルは気づいていない様子。良かった……。
「飯食べに行くぞ。そのまま出かけるから、紫と碧も連れて行く」
「分かった」
私は紫を、セルは碧を抱いて部屋を出る。鍵を閉めて食堂に続く階段を降りる。
どうやら、私が朝練をしている間にミルクをあげてくれたらしい。セルのところに哺乳瓶と粉ミルクが入っていたのだとか。ティルーチェさんが入れたようだ。ティルーチェさんの手紙を読んで何とかやったらしい。紫たちの服も変わっていたから、これもセルがやったのだろう。ほんと、いい旦那様だ。おかげで紫も碧もご機嫌だ。紫は白地に紫のリボンのついた少し刺繍の入った服、碧の服も紫とお揃いで唯一違うのはリボンではなく緑色の紐がついているところだ。
食堂につくと意外と賑わっていた。朝だからそんなにいないかと思ったら、どうやらここは朝食も美味しいと有名らしい。
壁際の席に座り、店員さんが持ってきてくれたメニューを見る。メニューは朝食用のものなのか、あっさりとした朝から食べれそうな物が多かった。
「セルはどれにする?」
「俺はこの朝食セットの〈卵〉を頼む」
朝食セットはいくつかあって、〈卵〉はベーコンエッグのセット、〈肉〉はミートボールやウィンナーなどのお肉がたくさん入ったセット、〈魚〉はその日の朝とれた魚を使ったセット、〈野菜〉は野菜のバターソテーなどの野菜がたっぷり入ったセットだ。どれもサラダとスープ、パンが付いてくるらしい。
「私はこのヘルシー朝食セットかな」
これはカロリーが低めのそれでいて必要な栄養がしっかりととれるという夢のようなセットだ。これを見つけたとき思わず、まだ自分は寝てるんじゃないかと疑ったほどだ。起きてもう何時間も経ってるのに……。
私はグ~ッ…と体を伸ばして起き上がった。左に顔を向けると、ベビーベッドですやすやと眠る紫と碧。
は~……もう何なの……うちの子可愛すぎるんですけど……
たった1日で私は紫と碧にメロメロだ。それはもう、だらしないくらいに顔がヤバイだろう。
外は日が昇る少し前くらいの時間帯だ。
つまりだいたい朝の5時くらい。
私はセルを起こさないようにそっとベッドから降りて、洗面室に入った。
うーん、どの服を着ようかな~?
私は服を出していく。
「うん、これにしよう」
そう言って取り出したのは、少し変わった白い着物のような上着に淡い水色から青へと変わるグラデーションのスカートだ。上着は、裾や袖に青い糸で刺繍され、袖は着物のように下に長い。グラデーションのスカートは、サラサラとした軽い生地でできている。
着てみると、意外に似合っていた。というか、似合う。似合いすぎる。まあ確かに、自慢じゃないけど私は他の人よりモテていた。芸能人程でもないが美少女だ。けれど私、こんなの似合わないと思ったんだけど……。体を鏡の前でくるりと回ってみると、袖とスカートが一緒にふわりと舞って綺麗だった。さすが私。というかこの服、すごく人を選ぶ気がする。私以外無理なんじゃない?
そう思いながらも私は服を別の、シャツとキュロットに着替えた。髪も黒い紐で結び、ポニーテールにする。今からやることにあの格好だと汗臭くなるし、汚れちゃう。
私はそのまま部屋を出て、宿の裏庭へと向かった。実は昨日のうちに、朝から裏庭を使ってもいいか聞いておいたのだ。
裏庭についた私は、インベントリから森で拾った枝を取り出した。枝を両手で構えてスッと息を整え、意識を集中する。素子で目を開け、枝を一気に振り下ろす。それを何度も繰り返す。
私は毎朝、朝練を日課としている。祖父母が生きている頃からの日課で、刀、薙刀、古武術、暗器術を朝食の時間になるまでひたすらやっていた。
それから何時間経ったか、気がついたら日が昇っていて空が明るくなっていた。
「ヤバイ!!」
急いで部屋へと帰ると案の定、セルが起きていた。
「おはよう、弥生」
「セル、おはよう」
「朝練お疲れ様。お風呂入って汗流してきたら?」
「朝練のこと知ってたの?うん、入ってくるから、紫たちお願いね」
そうなのだ。この部屋にはお風呂がついていた。ドアから入ってすぐ横の扉、トイレかと思ったら洗面所で、その向こうに意外と大きなお風呂とトイレがあったのだ。アリアナさんに聞いたところ、どうやらここは大部屋でも特にいい部屋らしく、お風呂がついてるのはこことあと3部屋だけらしい。
私はお風呂に入り、朝選んだ服に着替えた。鏡の前に立ち、髪に櫛を通す。青い紐を取り出し、ハーフアップにする。
「うん、これでよし」
私は鏡でもう一度確認して、洗面所を出た。
「お待たせ」
「ティルーチェの選んだ服か?」
「うん、綺麗な服だよね」
「ああ。まるでお前のために作られたような服だな。お前以外が着たら服に着られるだろう」
「あ、やっぱりセルもそう思う?」
「あわぁう」
「うやぁい」
「お前たちもそう思うか?」
喋る紫たちにセルが笑って言った。紫、碧、ナイスです!!
セルの笑顔に悶える私。ハッとしてセルを見ると、セルは気づいていない様子。良かった……。
「飯食べに行くぞ。そのまま出かけるから、紫と碧も連れて行く」
「分かった」
私は紫を、セルは碧を抱いて部屋を出る。鍵を閉めて食堂に続く階段を降りる。
どうやら、私が朝練をしている間にミルクをあげてくれたらしい。セルのところに哺乳瓶と粉ミルクが入っていたのだとか。ティルーチェさんが入れたようだ。ティルーチェさんの手紙を読んで何とかやったらしい。紫たちの服も変わっていたから、これもセルがやったのだろう。ほんと、いい旦那様だ。おかげで紫も碧もご機嫌だ。紫は白地に紫のリボンのついた少し刺繍の入った服、碧の服も紫とお揃いで唯一違うのはリボンではなく緑色の紐がついているところだ。
食堂につくと意外と賑わっていた。朝だからそんなにいないかと思ったら、どうやらここは朝食も美味しいと有名らしい。
壁際の席に座り、店員さんが持ってきてくれたメニューを見る。メニューは朝食用のものなのか、あっさりとした朝から食べれそうな物が多かった。
「セルはどれにする?」
「俺はこの朝食セットの〈卵〉を頼む」
朝食セットはいくつかあって、〈卵〉はベーコンエッグのセット、〈肉〉はミートボールやウィンナーなどのお肉がたくさん入ったセット、〈魚〉はその日の朝とれた魚を使ったセット、〈野菜〉は野菜のバターソテーなどの野菜がたっぷり入ったセットだ。どれもサラダとスープ、パンが付いてくるらしい。
「私はこのヘルシー朝食セットかな」
これはカロリーが低めのそれでいて必要な栄養がしっかりととれるという夢のようなセットだ。これを見つけたとき思わず、まだ自分は寝てるんじゃないかと疑ったほどだ。起きてもう何時間も経ってるのに……。
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