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✽第一幕 妖狐転生✽

2話 家族とは仲良くしたいのぅ

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 む……。もう昼か。どうやら丸一日寝ていたようじゃの。

 日差しが気持ちいいのぅ。こういう日には昼寝が1番じゃな。寝よう。

 ガラッ

 むっ、一体誰じゃ、妾の昼寝を邪魔するのは。

 視線だけ向けると、二人の男女がいた。女子おなごの方は妾の母だと言っておった女子おなごだな。男子おのこの方は知らんやつじゃな。妾を囲んでた奴の中にはおらんかった男子おのこじゃ。

 男子おのこ花紺青はなこんじょう色の髪に茜色の瞳。黒くつややかな耳と尻尾を持っておった。ふむ、これが“イケメン”なるものか。キリッとしてて、かっこいいのぅ。20代前半といったところか。

「あら、起きたようですね。旦那様、抱いてやって下さいな。」

 妾をそっと抱き上げた母上様は、その男子おのこに差し出した。どうやらこの男子おのこは妾の父らしいの。ふむ、父上様なら妾を抱くことを許してやろう。妾を抱いていいのは家族と妾の認めた奴だけじゃ。

「お、俺が抱くのか!?」

 妾を差し出された父上様はギョッとしたように言う。

 む、なんじゃ。そんなに妾を抱きたくないというのか。妾自慢のこの銀色に輝くサラサラな毛並みを!!ほら、触ってみぃ、触ってみぃ。この毛並みの誘惑には勝てまい。どうじゃ、どうじゃ?

 父上様の方に体をぐいぐいと差し出す。

「ふふっ、ほら、この子も抱いてほしいみたいですよ?」
「ぐっ……ハァ。分かった、抱けばいいんだろ?」

 父上様が妾をひったくるように、でも優しくそぅっと抱き上げた。うむ、よい抱き心地だな。

 気持ちよくなり、目を細める。

「旦那様、この子の名前は決まったのですか?」

 母上様が、ふと思い出したかのように父上様に尋ねた。

「あぁ、この子の名前は水葱なぎだ。」
水葱なぎ……。確か花言葉は前途洋々。とても良い名前ですね。」
「だろう?」
「はい。前途洋々とは、今後の人生が大きく開けていて、希望に満ちあふれていること。この子――水葱なぎの未来もそんなふうになるといいですね。」

 水葱なぎか。良い名前じゃのぅ。気に入ったぞ。よし、今日から妾は水葱なぎじゃ。

「そういえば、俺の息子達はどこに行った?」
「今は勉強しています。多分、もうそろそろ終わるのでやってくるかと……。」

 ガラララッ

「母上、父上!!」
「母様、父様!!」

 いきなり扉が開かれ、二人の幼子が入ってきた。音に驚いて体がビクッと震えた。

「お前達、もう少し静かに入って来られんのか。赤ん坊がいるんだぞ。」
「あ……ごめんなさい。」
「申し訳ありません……。」

 父上様に怒られて、シュンとする。

 一人は父上様そっくりの髪と瞳を持つ6歳程の幼子の男子おのこ。少し髪の色が青っぽいがな。そしてもう一人が母上様そっくりの髪と瞳の4歳程の幼子の女子おなご。この娘は瞳の色が少し薄く、浅葱鼠あさぎねず色になっておる。尻尾と耳は男子おのこの方が白く、女子おなごの方が黒くなっておるようじゃ。見事に逆になっておるな。二人共、幼いながらも見事に整った容姿をしておる。

「この子が僕達の妹ですか?」
「ええ、そうですよ。二人も抱いてみますか?」

 母上様が、父上様から妾を受け取り、幼子の前にしゃがみ込んだ。

「「わぁ……!!」」

 二人は妾の顔を覗き込むと、目をキラキラさせた。それを見た母上様は男子おのこの腕に妾をのせた。

 妾を慣れぬ手付きで、危なっかしくもなんとか支えて抱き抱えておる。

「母様、この子は何と言うんですか?」

 女子おなごの方が妾の顔をジッと見ながら母上様にきく。せめて、質問してるときくらい相手の顔を見た方がいいと思うのだが……。

「この子の名前は水葱なぎと言います。貴方達の妹ですよ。」
水葱なぎ~。僕の名前は枸杞くこ。君の兄だよ。これからよろしくね!!」
「私は胡蝶こちょうです。貴方のお姉ちゃんですよ~。」

 兄上様と姉上様じゃったか。キュンキュンと鼻を鳴らして挨拶をする。

 ふむ、これから仲良くなれるといいのぅ。
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