学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと

文字の大きさ
15 / 80
第3章 日和

15 長女の領域

しおりを挟む

「ていうか、日和姉ひよりねえはどうして急に明莉あかりのことあだ名で呼び始めたの」

 食事が進みつつも、華凛かりんさんの興味は日和さんへと移る。

「そう言われましても……義妹いもうとちゃんですし。仲が深まったら自然とそうなりませんか?」

「へえ、やっぱり仲深まったんだ。でも、それにしたって急すぎじゃないっ?」

「あんな熱烈にあかちゃんに腕を絡めとられて、どうしても仲良くなりたいと懇願されては断れませんよ」

 いやいや、日和さん!?

 知らない人から助けようと思って、わたしはその手を掴んだだけですよっ。

 仲良くなりたいとは言いましたけど、表現がおかしくありませんかっ。

「明莉ぃ、どこで何をやってきたのよぉ……」

 華凛さんにジト目を向けられる。

 あなたはあなたで経緯を知ってるはずなのに……。

「華凛ちゃんもあだ名で呼びたいのなら、そうしたらいいんじゃないですか?」

「はっ、はあっ!?そんなこと思ってないんですけどっ」

「あら……てっきり、わたしがあだ名を先取りしてしまったのを華凛ちゃんは気にされているのかと」

「べ、べべっ、べっつに呼び方とか気にしてしないし!明莉は明莉なんだから明莉でいいし。他の呼び方なんて考えてもなかったし!」

「さっき明ちゃんに“華凛ちゃん”と呼ばれて喜んでましたよね?」

「見てたの!?あっ、じゃなくて、喜んでなんかないからっ!」

 うんうん……。

 食卓には、こうして日和さんと華凛さんとの会話が繰り広げられている。

 初めての食事の時の、あの殺伐さとは雲泥の差だ。

 姉妹の距離感が少しずつ縮まっているのを感じる。

 推しが仲良くしている様を眺めていられるのは、とっても嬉しい。



「……騒がしいわね」



 ――シーン

 しかし、その一言で場が静まり返ってしまう。

 さっきまでの喧噪はどこ吹く風。

 この場を圧倒してしまうのは、長女の千夜ちやさんだった。

「い、いいでしょ。ちょっとくらい話しても……」

 唇を尖らせながら意見を主張するのは華凛さんだ。

 ちょっとビクつきながらも勇気を振り絞っている姿、可愛い。

「会話をするなとは言わないけれど、食事の手を止めてまでする内容?」

「そ、それは……」

「雑談がしたいのなら、他にいくらでも時間はあると思うけど」

「……はぁい」

 取り付く島もなく言いくるめられてしまう華凛さん。

 しゅんとしていて、可愛い。

「日和も、呼び方は自由だけど学校では控えるのよ」

「あら、どうしてですか?」

「家族以外はさん付けの貴女が、その子だけ違う呼び方をしたら色々と勘ぐられるでしょう?」

「それはいけないことですか?家族なんですよ?」

 おおう、さすが日和さん。

 千夜さんの主張を躱しつつ、自分の思いを話すのも忘れない。

「それが不都合だから、その子は“花野はなの”を名乗っているのでしょう?」

「あ……」

 バツの悪そうに日和さんはわたしを盗み見る。

「いくら義妹ぎまいだ、家族だと言ったところで、学校での彼女は“花野明莉はなのあかり”。他人として振る舞おうとしているのは彼女自身じゃない」

「……それは、そうかもしれませんが」

「なら、その立ち位置を日和の勝手な一存で揺るがすべきではないわ」

「……そうですね」

 日和さんも言葉を失ってしまう。

 でも、今回はわたしのせいであるのも確かで……。

「貴女も、親の都合で家族になったのだから貴女自身に責任がないのは分かるけど。学校で他人の態度を装うのなら、ここでもそれなりの態度を示すべきね」

 千夜さんの最後の矢は、わたしに向かって放たれた。

「えと、わたしはそれなりの距離感を保つつもりではあるのですが……」

 日和さんや華凛さんと仲良くしようと行動したのは、何よりも三姉妹との仲を繋げるため。

 だから、月森三姉妹が仲睦まじくしていてくれたら、わたしは遠くからそれを眺めるだけで十分なのだ。

 “花野明莉”は、ある意味そのスタンスの証明でもある。

「それなら華凛の部活に顔を出したり、日和の料理に口出ししたりしないことね」

 ひえっ。

 こ、この剣幕……。

 わたしが仲良くするために行動した内容を全て把握されている口振りです……。

 きっと千夜さんには、わたしのしたことが“他人”としては必要以上の行為に映るのでしょう。

 まあ、つい先日まで赤の他人だったわたしが姉妹関係を修復しようだなんて、余計なお節介であるのは確かですしね……。

「分かったかしら、花野明莉」

「……はい、千夜さん」

 結果、ここにいる全員が千夜さんには口を噤むしかないのでした。


        ◇◇◇


「いやー……久々にあんな冷たい千夜ねえ見たんだけど」

「そうですねぇ。あそこまで全員に牙を剥くのは珍しいかもしれません」

 結局、沈黙の食事会を再現してしまった。

 その鬱憤を晴らすかのように同調する二女と三女。

 それは、いいのですが……。

「あの、なんでわたしの部屋なんですか?」

「え、なんでって」

「決まってるじゃありませんか」

 どういうわけか、このお二人はわたしの部屋にいるのですっ。

 どういう状況なのか把握しきれず、困惑しかありません。

「明ちゃんのことが心配だからですよ」「明莉のことが心配だからよ」

 なんですか、そのハモリッ。

「……うへへっ」

 勿体なさ過ぎて頭おかしくなっちゃいそうです。

「なんでそんな奇妙な笑い方するのよ……」

「きっと理由があるに違いありません」

 お二人がわたしの部屋にいるだけでも、とんでもないのに。

 しかも、心配までして頂けるなんて。

 わたしはなんて幸せ者なんだぁ……。

「どうなのよ明莉、さすがに今はちょっと凹んだんじゃない?」

「いえ、幸せの絶頂です」

「ドМなの!?」

「こんなに優しくされたの初めてです」

「優しさの定義!」

 あ、いや……お二人に心配されてることが優しさなのに。

 華凛さんは何かあらぬ勘違いをされてますね。

「いけませんよ華凛ちゃん、明ちゃんを無闇に言葉で責め立てては」

「いや、日和ねえ……そんなつもりじゃ」

 一旦、場を落ち着かせるあたりはさすがお姉ちゃんです。

「それで明ちゃん、何か気になることがあったのではありませんか?」

 改めて日和さんが訊ねてくれる。

「そうですね……あの、千夜さんっていつもあんな感じなのでしょうか?」

 日和さんと華凛さんの距離が縮まってきているのは感じるけれど。

 でも、やはり長女である千夜さんを差し置いて三姉妹の関係性の改善が図れないのは今日の夕食でよく分かった。

 だから、わたしが今すべきは千夜さんを知ることなんだと思う。

「あ……いや、元々千夜ねえはクールな人だったけど、特にその傾向が強くなったのは五年前かな」

「五年前……?」

 華凛さんはその線引きがあることを伝えてくれる。

「お父様とお母様が離婚した日、ですね」

 そして、その境目を日和さんが答えてくれた。

「その日から、千夜ちゃんはより一層その姿勢を強固なものにしたのです」

「どうしてかは、あたしたちにも教えてくれてないけどね。思う所があったんだろうけど」

 妹であるお二人がそう語るのですから、きっかけとしては間違いないのでしょう。

「でも、あんまりそこには触れないようにしてるんだ」

「ええ、姉妹でも触れ難い領域はありますから」

 姉妹だからこそ分かる繊細な部分。

 姉である千夜さんを相手に、そこを踏み越えていく理由もなかったのでしょう。

「分かりました、明日にでもそれが本当なのか確かめたいと思います」

「話し聞いてた!?」

「怖いもの知らず、ですねぇ……」

 ふふっ。

 皆さんお忘れですよ。

 わたしは花野明莉、義妹であり月森三姉妹を推す者。

 三人の幸せがわたしの幸せなのだから、ちょっとくらい怒られても頑張れちゃうのです。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

処理中です...