百合ゲーの悪女に転生したので破滅エンドを回避していたら、なぜかヒロインとのラブコメになっている。

白藍まこと

文字の大きさ
9 / 77
本編

09 おしくらまんじゅう、押されて泣くな

しおりを挟む

 何がどうしてこうなった。
 どうしてあたしが主人公とヒロインの二択を強いられているのだ。
 おかしな展開にも程がある。

「二人とも自分の部屋に戻ったらどうかな?」

 なので、あたしが提示する案は一つ。
 何もなかった事にして、元通りの展開に戻ってもらう。

「それは有り得ない、出ていくべきはコヒナタ」

「それを言うならルナさんだと思います。わたしはゆずりはさんにお礼をしている最中でしたのでっ」

 うん、譲る気ないねー。

「いつまでも一緒にいるのはユズキにとって負担、そろそろ離れるべき」

 そうは言ってもルナが残ったら、あたしの負担的には同じ状況だと思うよー?
 ルナにとっての都合の良い論理展開に思わずツッコミたくなってしまう。

「いえ、楪さんはとても喜んでくれていましたっ。負担になんてなっていません」

「……そうなの?」

「ええ、それはもう感動して震えるほどに」

 さらっと嘘つくのはやめようね明璃あかりちゃん?
 あたし全然普通の態度だったよね、むしろもうそろそろ帰ってほしいなーって催促してたくらいだよね?

「ならそこで終わるべき。感動という感情のピークは、落ちるのもまた早い」

「はうっ!?」

 うん、嘘ついた挙句に論破されて言葉を失っちゃってるね。
 そもそも問答で主席のルナに勝てるわけないんだから、諦めた方がいいと言うか……。
 ああ、でもこの感性で話す明莉ちゃんのスタイルがヒロイン達には刺さったのだから、これでいいのか……?
 とは言えあたしも呑気に聞いてばかりもいられない。

「二人とも、そんなに話す事があるのならやっぱり別の場所で語ったらどうかな? ほら、小日向こひなたにはリアンがいないみたいだから、そっちの部屋で……」

 よし、原作に戻す導線を引いたよ?
 これで二人で語らうシーンにしてちょうだいなっ。

「必要ない、特に話す事もない」

「はい、マリーローズさんに譲って頂ければ大丈夫ですから。わたしの部屋にお連れする必要はありません」

 うん、興味持とうかっ。
 主人公とヒロイン同士なんだから、もうちょっとお互いに興味持とうかっ!

「ルナは譲らない、譲るべきはコヒナタ」

「ど、どうしてわたしなんですか。先に来てたのはわたしなんですよっ」

「だから、そろそろ解放すべき。ずっと一緒にいたのなら、今度はルナに時間を分けるのが自然」

「う、ううっ……」

 うん、問答に弱すぎるからね明璃ちゃん。
 その勇猛果敢な姿勢は良いと思うけどさ。

 それにしても、二人とも良く喋る。
 話の中心にいるはずのあたしが結局、全然発言出来ていない。
 なんだかんだ言いつつ、主人公とヒロインの阿吽あうんの呼吸を感じている。 

「そうは言いつつ、二人ともこんなにたくさん話し合ってるんだから息合ってるんじゃない?」

「ユズキとの息は確かに合う」

「楪さんと自然と話せている感じは心地よいですね」

 うん、全然あたしの話聞いてないじゃん。
 ていうか、なんだ。
 二人ともどうして最終的にはあたしの方に話を持ってくるのかな?

「二人とも譲る気全然ないよね?」

「ない」

「ありません」

 これはどうしたものか。
 明璃ちゃんとルナが一緒になる事はないし、かと言ってどちらか一方を優先してしまっては角が立つ。
 そうなれば主人公とヒロインの間に溝を生みかねない。
 何か妥協案は……。

「分かった、じゃあ二人ともここにいる事にしよう」

「コヒナタも?」

「ルナさんも一緒にですか?」

 二人で不服そうな表情を浮かべる。
 勘弁して下さい、仲良くして。

「二人とも譲る気ないならそれしかないでしょ。用が終わったらさっさと帰ってもらうからね」

 とりあえず、この二人が一緒にいる事が最優先。
 要はあたしが潤滑油となって、二人の仲を取り持てばいいのだ。
 フルリスのファンとして、恋のキューピットになる事に躊躇ためらいはない。

「楪さんがそう言うなら、大人しく言う事を聞きます」

「ルナもユズキを困らせたいわけじゃない」

 どこか納得はいっていないようだが、渋々了承する二人。
 このまま、上手いこと二人を繋ぐトークに展開していければいいのだが……。

「それじゃ、テーブルに戻りましょうか?」

 気づけば、思わぬ来客に部屋で全員が立ったままになっていた。
 明璃ちゃんはさきほど自分が座っていたダイニングテーブルの椅子に座る。
 あたしもその対面に座ろうとして、ふと思い留まる。

 この部屋、ダイニングテーブルの椅子は二脚しかない。
 当然、部屋はリアンの二人一組しか想定していないため大人数を迎え入れるような仕様にはなっていないのである。
 ほんの少し距離は離れてしまうが、ルナはリビングにあるソファに腰かけてもらうしかないか……。

「あ、悪いんだけど椅子ないからソファの方に座ってもらっていい?」

 あたしがルナに催促しようとした所で、目の前に座る明璃ちゃんが口角を上げていた。

「ふふっ」

 悪い顔をしていた。
 自分は対面を取ったと言わんばかりに、若干勝ち誇るような表情を浮かべていたのだ。

「――っ!?」

 そしてルナもその状況に気付き、唇を噛み締めていた。
 いや、あの、二人とも数秒の刹那で出し抜き合うのやめてもらっていいですか?
 この作品そういうのじゃないから。
 もっと可憐な少女の恋物語を楽しむ作品だから。

「大丈夫、ユズキ。椅子ならある」

「え、ないけど……」

 突然何を言ったかと思えば、ルナの視線はあたしに注がれていた。
 それってつまり……。

「あたしの席を奪う気ねっ」

 なるほど、とうとうルナも悪女であるあたしを出し抜き明璃ちゃんと仲良くなる気持ちになったわけだ。
 正しい反応だっ、それならあたしも喜んで席を差し出すよっ。

「大丈夫、ユズキはそのままでいい」

「え、あれ?」

 立ち上がろうとすると、ルナに肩を押さえられた。
 それだと、どこにも椅子はないんですか?
 しかし、ルナはあたしの側から離れようとせず、むしろそのまま腰を下ろしてきたのだ。
 え、何事?

「ちょっと狭くてユズキには申し訳ないけど、ルナはこれでいい」

 ルナはあたしの椅子に腰を下ろしていた。
 二人分のお尻を、一つの座面にシェアしている形だ。
 隣……というか、ほぼ左半身のほとんどをルナと接触してしまっている。

「え、ええっ!?」

 思わずあたしが変な声を漏らしてしまう。
 何この至近距離、ていうかルナ体細いのに触ると柔らかっ。
 体温はしっかりあたたか……じゃなくてっ!

「な、ななっ、何をしてるんですか、マリーローズさん!?」

 あたしの動揺より先に明璃ちゃんが声を上げる。

「椅子がないから座ってる」

「楪さんとくっついちゃってるじゃないですか!?」

「椅子がないから仕方ない」

「理由になってませんよっ!」

 一切動じず平然と座り続けるルナ。
 あたしはどうしていいか分からず硬直してしまった。

「楪さん、これはどういう事でしょうか!?」

 知らない知らない知らない。
 こんな状況、原作にもなかったよっ。
 明璃ちゃんに説明を求められても、あたしも理解不能な状況なのである。

「どうぞ、コヒナタはその砂糖の塊を飲み終わったら部屋に戻るといい」

「む、むうううっ!」

 あの、主人公とヒロインで小競り合いするのやめてもらえませんか?
 あたしは二人に仲良くなって欲しいんですよ?

 ――ガタッ

 と、今度は明璃ちゃんが席を立つ。
 とことこと歩いて、今度はあたしの右隣に立つ。

「失礼しますっ」

 え、嘘でしょ……?
 事もあろうに、明璃ちゃんは今度はあたしの右隣に座って来たのである。
 一つの座面に三人分のお尻をシェア。

「ちょっ、コヒナタ……ルナ座れない」

「そ、それは、わたしもです……」

「じゃあ、どけるべき」

「どうぞ、ルナさんは前の席を使ってください」

 ぬおおおおおっ。
 なんか左右でぎゅうぎゅう押し付け合う、おしくらまんじゅう状態になってしまった。
 こ、この状況って……ま、まさか……!?

「“百合の間に挟まってる”……!?」

 それはつまり明璃ちゃんとルナに咲くはずの百合の花を、あたしが邪魔してしまっているという事だっ。
 な、なんていう事だ……。
 これまでアレほどフルリスの物語を邪魔しないように生きてきたというのに、結果、あたしは楪柚希の悪女ムーブを遂行してしまったという事かっ。
 くそっ、甘く見ていたっ、ここまで悪女としての強制力が働くなんて……!!

「じゃ、じゃあ、あたしが前の席に座るねっ!!」

 とにかくこの状況を打破しなければっ。

「「それはダメ(です)」」

 な、なんでだああああああああ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...