25 / 77
本編
25 花は咲かずに炎が燃える
しおりを挟む「さぁ、明日はいよいよ生徒会選挙本番になるわ」
休み時間、啖呵を切るように千冬さんがその言葉に熱意を込める。
「……本当、来るね、明日が……」
「何よ歯切れが悪いわね」
反対にあたしはブルーな気持ちになっていた。
そんな憂鬱を千冬さんにすぐ見抜かれるわけだが。
「あんな大舞台立った事ないから……普通に緊張する」
そう、あたしは前世を含め大舞台に立った経験がない。
数分の間とは言え全校生徒の注目があたし一人に集まるのかと思うと、それだけで胃がキリキリとした。
「街頭演説であれだけ大見得きったのだから、今更じゃない」
「違うんだよ千冬さん、アレは何もした事なかったから出来たんだよ」
あの時は、まだ“責任者になっちゃった!”テンションで良く悪くも当事者意識が薄かった。
だが今はどうだ。
楪柚稀のイメージ改善のため、見た目から悩み、ボランティア活動に参加、ポスター張り、ビラ配りまでやった。
これらをやったから偉いとかそういう事を言いたい訳じゃない。
ただ、これだけ準備すると、それ相応の結果が出せるのか?
という自問自答が始まり、それが当事者意識に変わってプレッシャーになるのだ。
「ああ……なるほどね。結局当選するしないは私事でしかないのだから、頼んでおいて言う事ではないけれど、貴女はあまり気にする必要はないのよ」
「……いや、そういうわけにはいかないんだよ」
「貴女の頑張りはちゃんと伝わっていたわ」
「それでも結果が伴わないと駄目なんだっ」
ヒロインである千冬さんの当選は絶対だ。
これはフルリスにおいて絶対のイベント、例外はない。
これがあたしのせいで落選なんてしようものならどうなるだろう。
影に隠れているであろう涼風千冬ファンが、あたしに対するヘイトを溜め込んで学院追放に向かっていくかもしれない。
色んな意味を込めて、このイベントは絶対に逃すわけにはいかないんだ。
「……何よ、そこまで私の事を気に掛けてくれているのね」
「そりゃそうでしょ、ここ最近は千冬さんの事しか考えてないよっ」
「こ、困るわね……公私はしっかりわけてちょうだい」
「もはやあたしにとって千冬さんは公私共に重要なんだよっ」
公:責任者
私:フルリスファン
ほらねっ!
「ちょ、ちょっと……そこまで大っぴらに言うものではないわ……」
しかし、あたしの発言に躊躇いがちな千冬さん。
何を言ってるんですか、これが事実なんですから仕方ないんですよ。
「オフィシャルとプライベートどっちも……? スズカゼ、どういうこと……?」
しかし、それを聞きつけたルナが反応。
ここ教室であたしの席だからね、ちょっと軽率に話しすぎたかなっ。
「ルナ・マリーローズ……部外者は口を挟まないでもらえるかしら?」
案の定、千冬さんとバチってしまう。
「へえ、生徒会活動は生徒が口を出したらダメなんだ。それって矛盾してない?」
「いいえ、大衆だけでは意見がまとまらないから取り仕切るトップ層の人間が必要なの。貴女のようなクレーマーばかりを相手にしていたら、議論が前に進まないでしょ?」
「そんなスズカゼのような暴君が誕生しないために、生徒会選挙があるんでしょ?」
「貴女のような人にも投票権があるのだから、制度にも必ず落とし穴があるのね」
「スズカゼのような人でも立候補が出来るなんて、もっとハードルを高く設定すべき」
「「……はあ?」」
……ひ、火花がっ。
火花が散っているっ。
どうしてあなた達は仲良くできないのかなっ。
「腰が痛くて動けなくなるくらい責任者を酷使する立候補なんて聞いたことない」
「あ、あれは……楪が必要以上に張り切るからよ」
「ほら、他責。そんな人が大勢を束ねるリーダーになれると思えない」
「ふ……ふん、貴女に人望がないからって私を蔑むのは止めてもらえないかしら?」
「じ、人望……?」
「そうよ、貴女には自分のために動いてくれる人が身近にいないから私が眩しいのでしょ? 孤独なルナ・マリーローズ」
「こ、孤独って……。こ、この独裁者っ」
「ど、独裁って……ふ、ふんっ、貴女一人では独裁すらも出来ないものねっ」
止まらなーい。
舌戦が止まらないよぉ。
止めたいけど、どうしていいか分からないよぉ。
「お二人は楪さんの事で喧嘩しているんですかね……?」
隣の明璃ちゃんがヒソヒソと話し掛けてくる。
彼女も慣れてきたのか、困ってはいるが焦る様子はない。
「小日向が止めてよ」
「無理に決まってるじゃないですかぁ……」
「ほら、この前のビラ配りの時みたいに上手いことやってさ」
「アレはたまたまと言うか……楪さんのフォローがあったから出来ただけですよ」
いや、あたし何もしてなかったじゃん……。
「ユズキのフォロー? コヒナタ、何したの?」
「えっ、あ、あのですねっ……先日ビラ配りをお手伝いさせてもらったのですが……」
千冬さんとの舌戦に集中しているかと思いきや、しっかり明璃ちゃんの発言に反応するルナ。
じ、地獄耳なのか……。
「え、どういう事ユズキ。なんでコヒナタだけ?」
疑問を投げかけながらも、どこか追求の鋭さも感じさせる口調でルナに問い詰められる。
「いや、たまたま小日向が居合わせだけで……」
「“手伝える事あったら言ってね”って、ルナ言ったのに。ユズキは呼んでくれないんだ」
「いや、そういうつもりじゃなくて……一人でやらないと意味ないと思って」
「でも結果的にコヒナタは手伝って、それで助かったんだよね? つまりルナは役立たずで要らない子って事だよね?」
「……」
うわああああぁぁあぁぁ。
どうしたらいいんだぁあああっ。
今度は明璃ちゃんも巻き込んで話がカオスになっていくぅぅぅ。
(小日向、あんたも話に加わってるんだから上手い事言ってよっ)
(え、ええ……)
こうなったら主人公の手腕に願いを込める。
「わたしはただ通りかかった生徒の皆さんに、楪さんを愛しましょうとお伝えさせてもらっただけです。誰でも出来る事でしたから、お手伝いにもなってませんよっ!」
「ユズキを他の人から愛させる……?」
「私の選挙活動なのに、楪を推していたの……?」
あ、明璃ちゃん……。
言葉足らずで、ヒロイン二人の火に油を注いでどうする……。
「そう……スズカゼばかりと思っていたけど、コヒナタも危険人物だったんだ」
「こんな身近に妨害行為をされていたなんて、灯台下暗しとはこの事ね」
ああ……。
燃え盛る炎が見える。
(楪さん、ダメでしたっ)
(うん、悪化したね)
もうこうなったら力業だ。
「みんな、争ってばかりじゃ良くないよっ! ちょっと冷静になろう!」
「「誰のせいだと思ってるの・かしら?」」
「……はい」
わたしも皆のためを考えているはずなんだけど……。
どうしてこうも一丸になれないのだろうか。
11
あなたにおすすめの小説
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる