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22. これこそが(※sideウェイン)
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二人は優雅に堂々と広間の中を歩き、母上とステイシーの前に出た。美しいカーテシーを披露するフィオレンサ。四人は笑顔で何やら楽しげに話している。その姿を離れたところから見て、俺は苛立っていた。
(クソ……!何なんだあの男め……!フィオレンサに図々しくくっついてまわって……。婚約間近だと?ふざけるな。フィオレンサは少し前までこの俺の、王太子の婚約者だった女だぞ。いくら侯爵家とはいえ、一介の貴族の息子が、厚かましいにも程がある。フィオレンサだって、おそらく本当はまだ俺のことを想い続けているはずなんだ……!)
そうだ。フィオレンサは幼少の頃から、あんなにも俺のことを大切に想ってくれていた。イルゼとの結婚生活が上手くいかなくなった今だからこそ分かる。俺はただ、目の前に突然降って湧いた新しい恋に溺れていただけなのだ。交わした熱に溺れ、ただの情欲を真実の愛と見誤った。
本当の愛とは長い時を経ても変わらず、ただ穏やかにそこに在るものなのだ。
そう、フィオレンサが俺に与えてくれていたように……。
これこそが真実の愛なのだ。それが俺にもやっと分かった。
(早く来い、フィオレンサ……!この俺の前に)
一度たりともこちらを見ないフィオレンサに、俺は焦りを覚えた。俺が誤ったのと同じように、フィオレンサもまた、あの男にほだされてしまっているのかもしれない。だが、きっと大丈夫だ。俺たちならきっと、また心が通じ合うはずだ。
フィオレンサと男が、母上たちの前からようやく離れた。こちらを向いて、並んで歩いてくる。
俺はいつになく緊張した。喉がひりつく。いよいよだ。あの日の辛い別れ以来の、運命の再会。見つめ合えば分かる。フィオレンサ、やはり俺たちは離れてはいけなかったんだ。
これこそが、真実の愛──────
ゆっくりと近付いてきたフィオレンサが、俺の真正面に立つ。そしてふわりとあの優雅なカーテシーを披露した。
「……フィオレンサ……」
込み上げる激情に、彼女の名を呼ぶ声が思わず掠れてしまった。ああ、俺のフィオレンサ……!
「ご無沙汰しております、ウェイン殿下、イルゼ妃殿下。この度はステイシー王女殿下のご無事の帰国、誠におめでとうございます」
少しも変わらない、透き通るような美貌。心地の良い優しい声。包み込むような、この穏やかな雰囲気。
「……あ、ああ。ありがとう、フィオレンサ。……久しぶりだ。今夜はまた……」
いつにも増して美しい。
そう褒めようとした。だが、
「貴族学園でお目にかかって以来ですわねぇ!お久しぶりですわ~フィオレンサさん!お元気そうで何より」
(っ?!)
隣にいたイルゼが、俺とフィオレンサの間に突然グイッと割って入ってきた。無作法な態度と言葉に、フィオレンサも面喰らっている。
(クソ……ッ!!何なんだこいつは!どけ!!せっかくの感動の再会を、邪魔しやがって……!!)
もはやイルゼに対して憎しみしか湧かない。イルゼはそのままジェレミー・ヒースフィールドを巻き込んで、勝手にお喋りを始めた。恥ずかしいやら腹が立つやらで、許されるならこいつを引っ叩いて今すぐ広間から放り出したいほどだった。
(……フィオレンサ……)
仕方なく、俺はイルゼの後ろからフィオレンサを見つめ続けた。想いを込めて。俺のこの気持ちが、視線だけで彼女に伝わるように。
(フィオレンサ……。お前は今でも俺を愛しているか……?きっとそうだ。俺には分かる。長い時間を共に過ごしてきた。ひたむきで愛情深いお前にとって、俺は全てだった。そうだろう?……もう大丈夫だ、フィオレンサ。俺の心は戻った。お前の元に。どうか信じておくれ、俺のフィオレンサ……)
心でそう語りかけると、イルゼとヒースフィールド侯爵令息を微笑みながら見つめていたフィオレンサが、ふいにこちらを向いて、目が合った。
(そうだよ、フィオレンサ。俺はようやく自分を取り戻したんだ。……分かってくれるのか?)
きっと分かってくれるはずだ。あのフィオレンサなら。いつも俺の全てを受け入れてくれていた。
しかし。
その後パーティーの間中、フィオレンサは一度も俺の方を見なかった。隣にいるヒースフィールド侯爵令息にピタリと寄り添ったまま、他の列席者たちと楽しげに会話を繰り返していた。
「…………。」
時折見つめ合って、微笑みを交わす二人。気遣うように、たびたびフィオレンサの背中に手を当てるヒースフィールド。それを受け入れているような態度のフィオレンサ。まるで二人だけの世界が出来上がっているようで、俺は腸が煮えくりかえりそうだった。
(あの男め……!俺の不在の間に上手いこと取り入りやがって……!)
どうしようもなく気が焦る。どうにかしなくては。このままでは、フィオレンサを盗られてしまう。
(クソ……!何なんだあの男め……!フィオレンサに図々しくくっついてまわって……。婚約間近だと?ふざけるな。フィオレンサは少し前までこの俺の、王太子の婚約者だった女だぞ。いくら侯爵家とはいえ、一介の貴族の息子が、厚かましいにも程がある。フィオレンサだって、おそらく本当はまだ俺のことを想い続けているはずなんだ……!)
そうだ。フィオレンサは幼少の頃から、あんなにも俺のことを大切に想ってくれていた。イルゼとの結婚生活が上手くいかなくなった今だからこそ分かる。俺はただ、目の前に突然降って湧いた新しい恋に溺れていただけなのだ。交わした熱に溺れ、ただの情欲を真実の愛と見誤った。
本当の愛とは長い時を経ても変わらず、ただ穏やかにそこに在るものなのだ。
そう、フィオレンサが俺に与えてくれていたように……。
これこそが真実の愛なのだ。それが俺にもやっと分かった。
(早く来い、フィオレンサ……!この俺の前に)
一度たりともこちらを見ないフィオレンサに、俺は焦りを覚えた。俺が誤ったのと同じように、フィオレンサもまた、あの男にほだされてしまっているのかもしれない。だが、きっと大丈夫だ。俺たちならきっと、また心が通じ合うはずだ。
フィオレンサと男が、母上たちの前からようやく離れた。こちらを向いて、並んで歩いてくる。
俺はいつになく緊張した。喉がひりつく。いよいよだ。あの日の辛い別れ以来の、運命の再会。見つめ合えば分かる。フィオレンサ、やはり俺たちは離れてはいけなかったんだ。
これこそが、真実の愛──────
ゆっくりと近付いてきたフィオレンサが、俺の真正面に立つ。そしてふわりとあの優雅なカーテシーを披露した。
「……フィオレンサ……」
込み上げる激情に、彼女の名を呼ぶ声が思わず掠れてしまった。ああ、俺のフィオレンサ……!
「ご無沙汰しております、ウェイン殿下、イルゼ妃殿下。この度はステイシー王女殿下のご無事の帰国、誠におめでとうございます」
少しも変わらない、透き通るような美貌。心地の良い優しい声。包み込むような、この穏やかな雰囲気。
「……あ、ああ。ありがとう、フィオレンサ。……久しぶりだ。今夜はまた……」
いつにも増して美しい。
そう褒めようとした。だが、
「貴族学園でお目にかかって以来ですわねぇ!お久しぶりですわ~フィオレンサさん!お元気そうで何より」
(っ?!)
隣にいたイルゼが、俺とフィオレンサの間に突然グイッと割って入ってきた。無作法な態度と言葉に、フィオレンサも面喰らっている。
(クソ……ッ!!何なんだこいつは!どけ!!せっかくの感動の再会を、邪魔しやがって……!!)
もはやイルゼに対して憎しみしか湧かない。イルゼはそのままジェレミー・ヒースフィールドを巻き込んで、勝手にお喋りを始めた。恥ずかしいやら腹が立つやらで、許されるならこいつを引っ叩いて今すぐ広間から放り出したいほどだった。
(……フィオレンサ……)
仕方なく、俺はイルゼの後ろからフィオレンサを見つめ続けた。想いを込めて。俺のこの気持ちが、視線だけで彼女に伝わるように。
(フィオレンサ……。お前は今でも俺を愛しているか……?きっとそうだ。俺には分かる。長い時間を共に過ごしてきた。ひたむきで愛情深いお前にとって、俺は全てだった。そうだろう?……もう大丈夫だ、フィオレンサ。俺の心は戻った。お前の元に。どうか信じておくれ、俺のフィオレンサ……)
心でそう語りかけると、イルゼとヒースフィールド侯爵令息を微笑みながら見つめていたフィオレンサが、ふいにこちらを向いて、目が合った。
(そうだよ、フィオレンサ。俺はようやく自分を取り戻したんだ。……分かってくれるのか?)
きっと分かってくれるはずだ。あのフィオレンサなら。いつも俺の全てを受け入れてくれていた。
しかし。
その後パーティーの間中、フィオレンサは一度も俺の方を見なかった。隣にいるヒースフィールド侯爵令息にピタリと寄り添ったまま、他の列席者たちと楽しげに会話を繰り返していた。
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時折見つめ合って、微笑みを交わす二人。気遣うように、たびたびフィオレンサの背中に手を当てるヒースフィールド。それを受け入れているような態度のフィオレンサ。まるで二人だけの世界が出来上がっているようで、俺は腸が煮えくりかえりそうだった。
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