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9.嬉しい再会
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「ひっ」
「んげっ……!」
私にぐいぐいと距離を縮めていた男たちが私の後ろを見ると、一気にザッと離れた。皆一様に顔が強張っている。
(…………?)
私は涙目のまま振り返った。そこに立っていたのは王国騎士団の制服を着た数名の男性たちだった。
(……あらっ?……この人……)
その一番先頭にいた黒髪黒目の男性を見た瞬間、私の胸にふわりと懐かしさがよぎる。
「何をしているのかと聞いている!!事と次第によっては厳罰を与えるぞ!!」
その男性はそう叫ぶとこちらを見ずに男たちを睨みつけながら私の横を通り過ぎ、前に立ち塞がった。まるで私を守るように。
「ひっ?!いっ、いえっ?!お、俺たちはただ…………なぁ?」
「えっ?!……そっ、そうそう。ただ……なんだ……あれだ……」
「…み、道案内をしようとしてただけでさぁ!」
「そっ、そうそう!こちらの高貴なお方が困ってらっしゃってあそばして、た、ようなので、…なぁ?!」
柄の悪い男たちは目配せしあいながらしどろもどろでそう答える。
「……ならばもう道案内は不要だ。我々が目的地までお連れする。この方々に二度と近付くんじゃない。次見つけたらただでは済まさないぞ」
目の前の騎士はそう言いながら剣の柄に手をかける。
「はっ、はい!」
「ええ、そりゃ、もう……!」
「ん、じ、じゃあっ、はい……」
それを見た男たちはへこへこしながら一斉に立ち去ったのだった。
(た…………助かったんだわ……)
信じられない。なんて素晴らしいタイミングで駆けつけてくださったんだろうこの方たちは。
「おっ!奥様ぁぁっ!」
「大丈夫よジョアンナ……、こ、怖かったわね……」
振り返って震えるジョアンナとひしと抱き合っていると、黒髪の騎士が声をかけてきた。
「ご無事でよかったが、このような治安のよくない路地に女性だけで来るのは危険です。今後はお止めください」
(っ!!)
落ち着いたその声を聞いて確信した私は、その騎士の方を振り向き思わず声を上げた。
「アーネスト様!」
「……。……………………。」
あ、あれ……?
その騎士、アーネスト・グレアム侯爵令息はそこでようやく私の顔を真正面から見た。…のだが、……おかしいな、確かに目が合っているのに何も反応がない。
「あ、あの、アーネスト・グレアム様ですわよね……?お、覚えていらっしゃいませんか?私です……、クラウディア・マクラウドですわ。マ、マクラウド伯爵家の……」
「………………。」
「……?」
(え……ええ…………?)
アーネスト様はまだ私の顔を見つめたまま銅像のように固まっている。周りにいた数人の騎士の方々が私を気遣ってかそわそわし始めた。
「あ、あの、……王立学園で、一緒でした……。あ、あれ?」
一緒にお勉強したことも何度もあるんだけどな……。……え?わ、忘れられてる……?まだ卒業してたった数ヶ月なのだけれど……。
「おい、……おい!」
「アーネスト!」
「……。……っ!!」
騎士の方の一人がアーネスト様の背中を肘でガスッ!と突いた途端、ようやく彼はビクッと肩を上げ反応を見せた。
「…あ……ああ、……ゴホン。……失礼。もちろん覚えているよ、クラウディア嬢。……すまない、まさかこんなところで再会するとは思わず……驚いてしまった」
「あ、よかったですわ!お久しぶりですアーネスト様!」
「ああ……。久しぶりだ。…元気そうでよかった」
忘れられていたわけではないようだ。私はホッとして改めてご挨拶をしたのだった。
アーネスト様はグレアム侯爵家のご令息で、私とは王立学園で共に学んだ仲だった。
黒髪黒目の長身な美丈夫で、とても成績優秀な上に武術にも長けていた。いつもたくさんの人からの羨望の眼差しを浴びていたものだ。
懐かしい方との突然の再会に、あんな目にあったばかりだというのに少し心が浮き立つ。
「王国騎士団の騎士様になられたのは聞いていましたが、まさかこんなところで再会するなんて…。助けてくださって本当にありがとうございました。感謝しますわ」
「いや、当然のことをしたまでさ。しかし何故君がこんなところに一人で…?」
「あ、それが…夫からこの近くに住んでいる方に渡す書簡を預かっておりまして……。それを届けに行っていたのです。まさかこんな入り込んだ場所にあるとも思わなくて…」
私がそう答えると、アーネスト様は少し表情を曇らせた。
「……そうか。では私が責任持って君を連れて行こう。帰りは馬車まで送っていくから安心してくれたまえ」
「あっ、ありがとうございますアーネスト様…」
背後からジョアンナのホッと息をつく音が聞こえた。
「んげっ……!」
私にぐいぐいと距離を縮めていた男たちが私の後ろを見ると、一気にザッと離れた。皆一様に顔が強張っている。
(…………?)
私は涙目のまま振り返った。そこに立っていたのは王国騎士団の制服を着た数名の男性たちだった。
(……あらっ?……この人……)
その一番先頭にいた黒髪黒目の男性を見た瞬間、私の胸にふわりと懐かしさがよぎる。
「何をしているのかと聞いている!!事と次第によっては厳罰を与えるぞ!!」
その男性はそう叫ぶとこちらを見ずに男たちを睨みつけながら私の横を通り過ぎ、前に立ち塞がった。まるで私を守るように。
「ひっ?!いっ、いえっ?!お、俺たちはただ…………なぁ?」
「えっ?!……そっ、そうそう。ただ……なんだ……あれだ……」
「…み、道案内をしようとしてただけでさぁ!」
「そっ、そうそう!こちらの高貴なお方が困ってらっしゃってあそばして、た、ようなので、…なぁ?!」
柄の悪い男たちは目配せしあいながらしどろもどろでそう答える。
「……ならばもう道案内は不要だ。我々が目的地までお連れする。この方々に二度と近付くんじゃない。次見つけたらただでは済まさないぞ」
目の前の騎士はそう言いながら剣の柄に手をかける。
「はっ、はい!」
「ええ、そりゃ、もう……!」
「ん、じ、じゃあっ、はい……」
それを見た男たちはへこへこしながら一斉に立ち去ったのだった。
(た…………助かったんだわ……)
信じられない。なんて素晴らしいタイミングで駆けつけてくださったんだろうこの方たちは。
「おっ!奥様ぁぁっ!」
「大丈夫よジョアンナ……、こ、怖かったわね……」
振り返って震えるジョアンナとひしと抱き合っていると、黒髪の騎士が声をかけてきた。
「ご無事でよかったが、このような治安のよくない路地に女性だけで来るのは危険です。今後はお止めください」
(っ!!)
落ち着いたその声を聞いて確信した私は、その騎士の方を振り向き思わず声を上げた。
「アーネスト様!」
「……。……………………。」
あ、あれ……?
その騎士、アーネスト・グレアム侯爵令息はそこでようやく私の顔を真正面から見た。…のだが、……おかしいな、確かに目が合っているのに何も反応がない。
「あ、あの、アーネスト・グレアム様ですわよね……?お、覚えていらっしゃいませんか?私です……、クラウディア・マクラウドですわ。マ、マクラウド伯爵家の……」
「………………。」
「……?」
(え……ええ…………?)
アーネスト様はまだ私の顔を見つめたまま銅像のように固まっている。周りにいた数人の騎士の方々が私を気遣ってかそわそわし始めた。
「あ、あの、……王立学園で、一緒でした……。あ、あれ?」
一緒にお勉強したことも何度もあるんだけどな……。……え?わ、忘れられてる……?まだ卒業してたった数ヶ月なのだけれど……。
「おい、……おい!」
「アーネスト!」
「……。……っ!!」
騎士の方の一人がアーネスト様の背中を肘でガスッ!と突いた途端、ようやく彼はビクッと肩を上げ反応を見せた。
「…あ……ああ、……ゴホン。……失礼。もちろん覚えているよ、クラウディア嬢。……すまない、まさかこんなところで再会するとは思わず……驚いてしまった」
「あ、よかったですわ!お久しぶりですアーネスト様!」
「ああ……。久しぶりだ。…元気そうでよかった」
忘れられていたわけではないようだ。私はホッとして改めてご挨拶をしたのだった。
アーネスト様はグレアム侯爵家のご令息で、私とは王立学園で共に学んだ仲だった。
黒髪黒目の長身な美丈夫で、とても成績優秀な上に武術にも長けていた。いつもたくさんの人からの羨望の眼差しを浴びていたものだ。
懐かしい方との突然の再会に、あんな目にあったばかりだというのに少し心が浮き立つ。
「王国騎士団の騎士様になられたのは聞いていましたが、まさかこんなところで再会するなんて…。助けてくださって本当にありがとうございました。感謝しますわ」
「いや、当然のことをしたまでさ。しかし何故君がこんなところに一人で…?」
「あ、それが…夫からこの近くに住んでいる方に渡す書簡を預かっておりまして……。それを届けに行っていたのです。まさかこんな入り込んだ場所にあるとも思わなくて…」
私がそう答えると、アーネスト様は少し表情を曇らせた。
「……そうか。では私が責任持って君を連れて行こう。帰りは馬車まで送っていくから安心してくれたまえ」
「あっ、ありがとうございますアーネスト様…」
背後からジョアンナのホッと息をつく音が聞こえた。
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