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7.
そんなある日、私はミッチェルと連れ立ってとある伯爵家の主催するパーティーに出席することとなった。いくらまっさらさらな白い結婚とはいえ、それはこちらの事情。夫婦は夫婦だ。同伴しないわけにはいかない。
そちらの伯爵家の広間で主催者と見知った方々に二人で挨拶をしてまわる。ひと段落ついたところで、一人の男性に声をかけられた。
「やあ、ミッチェル!結婚おめでとう」
「おお、久しぶりだなエイダン!留学から戻ったって?」
「ああ。…こちらが奥さんのアミカ嬢だよね?俺のことを覚えてくれているかな」
私は咄嗟に記憶を辿った。確か、…エイダン・ギャラガー子爵令息。数年前からあちこちの国へ精力的に勉強に行っていた方だわ。うん、間違いない。私はあまり会ったことはないけれど、ミッチェルとは幼なじみの方だ。
私は笑みを作って返事をした。
「ええ、覚えていますわ、もちろん。ご無沙汰しております、エイダン様」
「はは、覚えてくれていてよかった。嬉しいなぁ」
私たちはしばらく三人で歓談した。でもしばらくするとミッチェルが急に額を押さえて深く息をついた。
「……はぁ……」
「……?どうしたの?ミッチェル」
「……いや……、ちょっと飲み過ぎたかな……。少し目が回る気がするんだ。ちょっと、僕は外の風に当たって休んでくるよ」
「えっ、それなら私が付き添…」
「いや、大丈夫大丈夫。君はエイダンのお喋りの相手でもしててくれよ」
「はは!では奥様はお預かりしようかな」
二人で何やら目配せすると、ミッチェルがエイダン様の肩をポンと軽く叩いた。
「ああ。じゃあ、少しの間頼むよ、エイダン」
そう言ってミッチェルは本当に広間から出て行ってしまった。
(…………。……おかしい)
私は二人の間に一瞬流れた妙な空気を敏感に察した。何だか、変だ。今の、何か……
「さて、ミッチェルもああ言っていたことだし、もう少し俺の話し相手になってください、美しいアミカ嬢」
「え、ええ……」
それにこの人、何だか嫌だわ。と私は思った。何となく気持ち悪い。目つきがいやらしい感じがするというか……、雰囲気が妙になれなれしい。整った容姿なのに、蛇のようなねちっこさを感じる。
私は形容し難い薄気味悪さを感じながら、渋々エイダン様と二人の時間を過ごすことになった。
(まぁ、周りに歓談している方々はたくさんいらっしゃるし、別にいいわね。密室に二人きりってわけでもないんだから。早く戻ってこないかしら、ミッチェル…)
そちらの伯爵家の広間で主催者と見知った方々に二人で挨拶をしてまわる。ひと段落ついたところで、一人の男性に声をかけられた。
「やあ、ミッチェル!結婚おめでとう」
「おお、久しぶりだなエイダン!留学から戻ったって?」
「ああ。…こちらが奥さんのアミカ嬢だよね?俺のことを覚えてくれているかな」
私は咄嗟に記憶を辿った。確か、…エイダン・ギャラガー子爵令息。数年前からあちこちの国へ精力的に勉強に行っていた方だわ。うん、間違いない。私はあまり会ったことはないけれど、ミッチェルとは幼なじみの方だ。
私は笑みを作って返事をした。
「ええ、覚えていますわ、もちろん。ご無沙汰しております、エイダン様」
「はは、覚えてくれていてよかった。嬉しいなぁ」
私たちはしばらく三人で歓談した。でもしばらくするとミッチェルが急に額を押さえて深く息をついた。
「……はぁ……」
「……?どうしたの?ミッチェル」
「……いや……、ちょっと飲み過ぎたかな……。少し目が回る気がするんだ。ちょっと、僕は外の風に当たって休んでくるよ」
「えっ、それなら私が付き添…」
「いや、大丈夫大丈夫。君はエイダンのお喋りの相手でもしててくれよ」
「はは!では奥様はお預かりしようかな」
二人で何やら目配せすると、ミッチェルがエイダン様の肩をポンと軽く叩いた。
「ああ。じゃあ、少しの間頼むよ、エイダン」
そう言ってミッチェルは本当に広間から出て行ってしまった。
(…………。……おかしい)
私は二人の間に一瞬流れた妙な空気を敏感に察した。何だか、変だ。今の、何か……
「さて、ミッチェルもああ言っていたことだし、もう少し俺の話し相手になってください、美しいアミカ嬢」
「え、ええ……」
それにこの人、何だか嫌だわ。と私は思った。何となく気持ち悪い。目つきがいやらしい感じがするというか……、雰囲気が妙になれなれしい。整った容姿なのに、蛇のようなねちっこさを感じる。
私は形容し難い薄気味悪さを感じながら、渋々エイダン様と二人の時間を過ごすことになった。
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