世界⇔異世界 THERE AND BACK!!

西順

文字の大きさ
524 / 643

推察

しおりを挟む
「いやあ、凄い威力ですねえ」


 消えゆくシンヒラーの下半身を見ながら、バヨネッタさんが撃った熱光線の威力に寒気を覚える。威力的にはカッテナさんが撃った坩堝弾の方が凄かったが、あっちはな、もうカッテナさんが手に持っている単発銃は使い物にならなくなっているし。対してバヨネッタさんの方はスキルだからなあ。


 バヨネッタさんが上限解放で獲得したスキルの名は『加減乗除』。その名が示す通り、魔法、スキル、ギフトの使用において、MPまたは効果、またはその両方に対して加算、減算、乗算、除算のいずれかを加える事が出来るレアスキルだ。つまり『二倍化』のスキルに対して、MPが半減すると言う代償を、二で割って四分の一にしたうえで、威力二倍の効果に二を掛けて威力四倍に出来る訳だ。


 それなら乗算と除算だけで良いのだが、このスキルがピーキーなところは、同じ計算を連続して行えないところにある。つまり、MPで除算をしたなら、その後、加算、減算、乗算をしてからでなければ、除算を使えないのだ。乗算も同じく、加算、減算、除算をした後でなければ乗算を使う事が出来ない。しかもこれは『加減乗除』の半分しか表していない。


 現在の『加減乗除』はレベル一。レベル一で使える数字は一と二だけ。『加減乗除』の行使では、加算、減算、乗算、除算の縛りだけでなく、この一と二も使い切らなければいけない。つまり一周して最大効果を引き出すのに、八回の魔法行使が要求されるのだ。そしてこれはレベル一だからこの程度で済んでいるが、恐らく、いや、確実に『加減乗除』のレベルは上がっていく訳で、となると数字の数も増えていく訳で、何と言うか、自分では管理し切れないスキルだなあ。と言うのが俺の感想だ。


 なんであれ、ここに来るまでにきっちりキーライフルの弾数管理をしていたバヨネッタさんは、シンヒラーに対して『二倍化』にプラスして『限界突破』を加え、そこに『加減乗除』で乗算した、最大効果の熱光線をぶっ放した訳で、これには流石にシンヒラーもひとたまりもなかったようだ。


「全員掛かりで何とかでしたね」


 くたくたのダイザーロくんの言葉に、『不老』のミカリー卿以外が首肯で返す。怨霊王とスケルトンドラゴンがこれ以上だとなると、これは本気で全員のレベルを五十オーバーにしないといけないかも知れない。そして俺は『逆転(呪)』をどうにかしないといけない。レベル管理が本当に面倒臭い。シンヒラー戦ではそれなりに役に立ったかも知れないが、ここに来るまでにお荷物だったからなあ。悲しい現実。でも呪われたスキルを外すには、『奪取』じゃなくて、それに対応したスキルの持ち主じゃなきゃ出来ないっぽいんだよなあ。


「とにかく帰りましょう。もう今日は戦いたくない」


 とのバヨネッタさんの言葉には同意だ。帰って温泉に浸かろう。このバヨネッタさんの意見に反対する人間などここにいる訳もなく、くたびれた身体で無駄に広い地下六十階のフロアをのろのろと台座まで歩いて行くと、台座の前のコンソールが光っていた。三ヶ所。


「何ですかこれ?」


 俺は武田さんに胡乱な目を向けるが、武田さんは首を横に振るう。


「知らねえよ。俺が前に来た時は二つだったはずだ」


 ええ? ここに来てまだ変な要素追加してくるとか、このダンジョン、マジで精神にくるな。


「どうします?」


「今は放っておきましょう」


 バヨネッタさんの意見に賛成だ。幸い地下二十階、四十階とコンソールを見てきたので、どの光がワープゲートの光かは分かっている。なので俺たちはワープゲートだけ開放して、今日のところはアルティニン廟から引き上げたのだった。



「シンヒラーの口振りからして、裏で何かしら、いや、誰かしらが暗躍していると考えるのが妥当だと思うんですよ」


 温泉旅館、もう皆の集会所となっている俺とミカリー卿、ダイザーロくんの部屋のこたつで、俺は女将さんが差し入れてくれたイチゴを、そう口にしてから、その口に放り込んだ。


「そうだねえ。それが怨霊王ジオなのか、スケルトンドラゴンのガローインなのか、それとも別の第三者なのか。どう思う? セクシーマン」


 と武田さんに話を振りながら、ミカリー卿は行儀良くフォークでイチゴを刺して、それを口に入れた。


「分からんすね。俺たちがやっていた時とは攻略法も攻略速度も攻略難易度も違うから。ほとんど別のダンジョンと考えた方が良いかも知れないくらいだし」


 武田さんが溜息を吐きながら、その吐いた分を埋めるように、口にイチゴを次々と放り込んでいく。


「ジオとかガローインって、どれくらい頭を使ってくるボスなんですか?」


 俺の質問に腕組みしながら武田さんが答える。


「ガローインはそれこそスケルトンだからな、脳みそなんて使ってこねえよ。巨体でしかも速い。基本は牙の噛み付き、爪の引っ掻き、尻尾の薙ぎ払い、体当たりだけど、それにどう言う理屈か、黒いブレスを吐いてくる」


「黒いブレス?」


「ああ。ガローインには心臓に黒い靄に守られた核である魔石があるんだが、そこを燃焼させて、黒いブレスを吐いてくるんだ。これを受けると目が見えなくなるうえに、魔法、スキル、ギフトが使えなくなる」


「凶悪ねえ」


 とどこか呑気にイチゴを食べながら紅茶をすするバヨネッタさん。まだ出現するのが先だから、気にし過ぎてもいけないってところだろうか。しかしスキルとかが使えなくなるのは辛いな。


「ジオの方はどうなんですか?」


 イチゴを嚥下したダイザーロくんの質問に、一つ頷き武田さんが口を開く。


「ジオは戦う度に戦闘方法を変えてくるタイプだ」


 ? 言っている意味が理解出来ずに首を傾げる。


「ジオは魔法使い系なのだが、最初に会敵した時は、そのフロア全体を火炎地獄に変えて襲ってきた」


 フィールドを変化させてくるのか。


「これはまずいと一時撤退し、炎対策をしてから挑んだら、次はフロアを極寒地獄に変えてきた。その次は万雷降り注ぐフロアに、その次は大量の岩が落ちてくるフロアに、まあ、そんな感じの攻撃を仕掛けてくるのが怨霊王ジオなんだよ」


「それを攻撃と呼んで良いのか? 何かもう自然そのものが相手じゃないか」


 デムレイさんが愚痴りながら、イチゴがなくなり空になった皿を見詰めている。いや、俺のは上げませんけどね。


「怨霊王って言うくらいですし、火の玉とか霊体を操って攻撃してくるのかと思っていました」


 とカッテナさんがイチゴに手を伸ばすデムレイさんから、皿を守りながら尋ねる。


「それは第二段階だ。追い込むと大量の怨霊を放って、こちらがその相手に手一杯の間に逃げるんだあいつ」


 ジオは普通に第二段階があるのか。そして逃げるのか。


「もしかしてガローインにも第二段階が?」


「ガローインは戦いが長引くと、スケルトンからゾンビに変化する」


「うげえ。それもしかしたら第三段階もあるパターンなんじゃ?」


「どうかな。俺たちはゾンビに成り立てで何とか倒したからな。その後があるのかは知らん」


 はあ、どっちも面倒臭そうだ。


「でも何か仕掛けてくるって言うなら、ジオですかね?」


 俺の意見に皆が曖昧に頷く。やはり皆も第三者の可能性は捨て切れないか。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

処理中です...