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ACT-1
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「お目覚めください。鈴木健太郎さん、貴方は現在、死後の世界への入り口へと来ています」
「ん?」
死んで目を覚ますはずのない俺に、誰かが優しく語りかけた。きっと、可愛い天使が迎えに来てくれたんだろうな。
半信半疑だが、目を開ける動作を試みた。すると、少しずつ視界が見えやすくなってきた。辺りを見回すと、白く味気ない空間の中に、ポツンと設置してある黄金に煌めく玉座に、少女が座っていた。
少女は、光をも透き通す綺麗な白髪に、触れただけでとろけてしまいそうな白い肌をしていた。
「鈴木さん、お話を聞いていましたか?」
「す、すみません。見惚れていて、じゃ、じゃなく、え~と、聞いてませんでした」
どう見ても年下にしか見えない女の子に、挙動不審になってしまう32歳の今日この頃。
「では、改めまして。私は死後の世界の門番を仰せつかっております、仁愛の女神ヘスティアと申します」
「ご丁寧にどうも…って、女神!?」
フィクションの世界が現実で起こった時のような、驚き方をしてしまった。
「はい、女神です。貴方たちが知る私たち神は、よく神話などに出てきますよね」
「冷静な雰囲気で、ご説明ありがとうございます」
「説明はこれからですよ」
「説明もなにも、俺は死んでますし、まさか、ここは死後の世界…、ということは…」
「ということは?」
「地獄裁判でも始める気ですか?」
俺の発言は、女神が思っていたものとは違っていたようで、口を開けたままポカンとしている。
「すみません。少々、取り乱してしまいました。貴方のような人は初めてなもので」
「初めて…」
「変な勘違いはしないでください」
「はい」
可愛い子(女神)に怒られるのも、悪い気はしない。
これが、世に聞く女神パワーか。
「コホン、それでは状況説明から致します」
「よろしくお願いします」
「現実世界の鈴木は、トラックに轢かれそうになった少年をかばい、代わりに轢かれてしまいます」
「そうだ、あの子はあの後、無事に親御さんの元へ帰れましたか?」
「ご心配なさらないでください、少年は五体満足で、ご自宅へ帰られてますよ」
「よかった~」
「ふふ、本当に珍しい人です」
「どうされたんですか?」
「この状況で気づかないのは、貴方が初めてだな、と思いまして」
女神様がなにを言っているのか理解できない俺は、無言で首を斜めに傾けた。
「ここは死後の世界であると同時に、転生者の適性を見極める面接会場でもあるんです」
「転生?面接?」
「はい。貴方をここに呼んだのも、トラックに跳ねられて死ぬといった、転生者第一次試験を通過したからなんですよ」
「素直に喜べない試験なんですが、それは?」
「そして、第一次試験を無事に通った貴方は、第二次試験の転生者適性面接を受けているところなんです」
「えっ!?試験なのに、内容を全て喋っていいんですか!?」
「関係ありません。なぜなら、鈴木さん、貴方はこの試験をクリアしたからです」
「意図が読めない」
転生者なるワードが飛び出し、俺の思考は停止寸前にまで追い込まれた。
「第二次試験の合格水準は、自分が今から異世界転生することを悟るでした」
「でも、俺はそんなことを全然考えていませんでしたよ、なのに合格なんですか?」
「私が貴方様のことを気に入ってしまったので、合格にしちゃいます」
「さすが女神、発想が規格外すぎる」
なぜか、この訳のわからない状況を楽しんでいる、自分の側面が怖いと思う。
「これで、貴方様は最後の試験を受ける挑戦権を得ました。さぁ、どうなさいますか?」
「はっきり言って、この先になにがあるのかは分からないですけど、前に進まないと見えない景色があるので、その先の景色を見に行こうと思います」
「それでは、承知したと解釈してよろしいですか?」
首を縦に振り、OKだと意思表示した。
「では、最終試験も合格ということで」
「なんで!?」
緊張感張り詰める空気の中で、おちゃらけた合格発表は、あまりにも理解ができなかった。
「最終試験は、転生するかどうかの有無を本人に確認する試験だったんです」
「少しレベルの高い幼稚園の試験かな?」
「それでは、先程の説明の続きも踏まえて、これからについてお話ししていきますね」
「了解です」
あまりにもあっけらかんとする女神に、実家のような安心感を覚えてきてしまう。
「鈴木さん、まずは転生者試験、ご苦労様でした」
「どうも」
「これからなんですが、貴方には、異世界へと行ってもらいます」
「異世界って、どこの国ですから」
「やはり、先程からの発言からして、鈴木さんは異世界というものを認知しておりませんね」
「お恥ずかしながら」
「事故で死んでしまい、若い命の芽を摘んでしまわれた、鈴木さんは、これから、転生者として、異世界へと行ってもらいます。そこでの目的は、魔王と呼ばれる悪の親玉を退治することです。無事に退治することができましたら、私と結婚……ではなく、異世界で、二度目の人生を過ごしてもらいます」
「随分、幼稚に説明された気がする」
「転生後の特典のこともあるので、私とテレパシーを利用しての通話ができるようにしておきます」
「はい」
「心の準備ができましたら、早速、異世界へと行ってみましょう。言葉で図るよりも、現物を見たほうが、理解できるかもしれませんので」
現実世界では辛いことが沢山あった。
けど、二度目の人生は自重さず、自由奔放に過ごして行くぞ。
「準備完了しました」
「それでは、転生スタート!」
俺の足元に青く光る魔法陣が出現し、全身を羽毛で包まれたような感覚が、身体中から伝わってくると、分子レベルで身体が分解され、異世界へと飛ばされて行った。
「ん?」
死んで目を覚ますはずのない俺に、誰かが優しく語りかけた。きっと、可愛い天使が迎えに来てくれたんだろうな。
半信半疑だが、目を開ける動作を試みた。すると、少しずつ視界が見えやすくなってきた。辺りを見回すと、白く味気ない空間の中に、ポツンと設置してある黄金に煌めく玉座に、少女が座っていた。
少女は、光をも透き通す綺麗な白髪に、触れただけでとろけてしまいそうな白い肌をしていた。
「鈴木さん、お話を聞いていましたか?」
「す、すみません。見惚れていて、じゃ、じゃなく、え~と、聞いてませんでした」
どう見ても年下にしか見えない女の子に、挙動不審になってしまう32歳の今日この頃。
「では、改めまして。私は死後の世界の門番を仰せつかっております、仁愛の女神ヘスティアと申します」
「ご丁寧にどうも…って、女神!?」
フィクションの世界が現実で起こった時のような、驚き方をしてしまった。
「はい、女神です。貴方たちが知る私たち神は、よく神話などに出てきますよね」
「冷静な雰囲気で、ご説明ありがとうございます」
「説明はこれからですよ」
「説明もなにも、俺は死んでますし、まさか、ここは死後の世界…、ということは…」
「ということは?」
「地獄裁判でも始める気ですか?」
俺の発言は、女神が思っていたものとは違っていたようで、口を開けたままポカンとしている。
「すみません。少々、取り乱してしまいました。貴方のような人は初めてなもので」
「初めて…」
「変な勘違いはしないでください」
「はい」
可愛い子(女神)に怒られるのも、悪い気はしない。
これが、世に聞く女神パワーか。
「コホン、それでは状況説明から致します」
「よろしくお願いします」
「現実世界の鈴木は、トラックに轢かれそうになった少年をかばい、代わりに轢かれてしまいます」
「そうだ、あの子はあの後、無事に親御さんの元へ帰れましたか?」
「ご心配なさらないでください、少年は五体満足で、ご自宅へ帰られてますよ」
「よかった~」
「ふふ、本当に珍しい人です」
「どうされたんですか?」
「この状況で気づかないのは、貴方が初めてだな、と思いまして」
女神様がなにを言っているのか理解できない俺は、無言で首を斜めに傾けた。
「ここは死後の世界であると同時に、転生者の適性を見極める面接会場でもあるんです」
「転生?面接?」
「はい。貴方をここに呼んだのも、トラックに跳ねられて死ぬといった、転生者第一次試験を通過したからなんですよ」
「素直に喜べない試験なんですが、それは?」
「そして、第一次試験を無事に通った貴方は、第二次試験の転生者適性面接を受けているところなんです」
「えっ!?試験なのに、内容を全て喋っていいんですか!?」
「関係ありません。なぜなら、鈴木さん、貴方はこの試験をクリアしたからです」
「意図が読めない」
転生者なるワードが飛び出し、俺の思考は停止寸前にまで追い込まれた。
「第二次試験の合格水準は、自分が今から異世界転生することを悟るでした」
「でも、俺はそんなことを全然考えていませんでしたよ、なのに合格なんですか?」
「私が貴方様のことを気に入ってしまったので、合格にしちゃいます」
「さすが女神、発想が規格外すぎる」
なぜか、この訳のわからない状況を楽しんでいる、自分の側面が怖いと思う。
「これで、貴方様は最後の試験を受ける挑戦権を得ました。さぁ、どうなさいますか?」
「はっきり言って、この先になにがあるのかは分からないですけど、前に進まないと見えない景色があるので、その先の景色を見に行こうと思います」
「それでは、承知したと解釈してよろしいですか?」
首を縦に振り、OKだと意思表示した。
「では、最終試験も合格ということで」
「なんで!?」
緊張感張り詰める空気の中で、おちゃらけた合格発表は、あまりにも理解ができなかった。
「最終試験は、転生するかどうかの有無を本人に確認する試験だったんです」
「少しレベルの高い幼稚園の試験かな?」
「それでは、先程の説明の続きも踏まえて、これからについてお話ししていきますね」
「了解です」
あまりにもあっけらかんとする女神に、実家のような安心感を覚えてきてしまう。
「鈴木さん、まずは転生者試験、ご苦労様でした」
「どうも」
「これからなんですが、貴方には、異世界へと行ってもらいます」
「異世界って、どこの国ですから」
「やはり、先程からの発言からして、鈴木さんは異世界というものを認知しておりませんね」
「お恥ずかしながら」
「事故で死んでしまい、若い命の芽を摘んでしまわれた、鈴木さんは、これから、転生者として、異世界へと行ってもらいます。そこでの目的は、魔王と呼ばれる悪の親玉を退治することです。無事に退治することができましたら、私と結婚……ではなく、異世界で、二度目の人生を過ごしてもらいます」
「随分、幼稚に説明された気がする」
「転生後の特典のこともあるので、私とテレパシーを利用しての通話ができるようにしておきます」
「はい」
「心の準備ができましたら、早速、異世界へと行ってみましょう。言葉で図るよりも、現物を見たほうが、理解できるかもしれませんので」
現実世界では辛いことが沢山あった。
けど、二度目の人生は自重さず、自由奔放に過ごして行くぞ。
「準備完了しました」
「それでは、転生スタート!」
俺の足元に青く光る魔法陣が出現し、全身を羽毛で包まれたような感覚が、身体中から伝わってくると、分子レベルで身体が分解され、異世界へと飛ばされて行った。
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