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貯古齢糖 壬琉苦

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ACT-2

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  (熱い、顔のあたりが異常に熱い。なんでなんだ!)

 違和感に気づいた俺は、ばっと起き上がった。

 すると、目の前には大きなヤギがいて、俺のことを猛烈に舐め回していた。

「おぉ~、やっと目を覚ましたか」

「メェ~」

「うわぁ!?なんで、ヤギ?」

「あんた、魔獣が出る森の中で寝てたから、危ないと思って、馬車に乗せたんだよ」

「魔獣?」

「あんた!?魔獣のことを知らないで、あんなところで寝てたのか!?こりゃ、拾って正解だったな」


 聞き慣れない単語が飛び出す中、重要なことを思い出す。

  (そういや、転生したんだったな。俺)

 どうやら異世界転生した際に、反動で小一時間ほど意識を失っていたようだ。


「あんた、名前はなんて言うんだ」

「鈴木、鈴木健太郎です」

「スズキケンタロウ?変わった名前だな」

  (あれ、異世界って、まさかのイングリッシュ系)

「こっちの自己紹介がまだだったな、オレの名前はピトー。村のみんなからは、ヤギ使いのピトーって、呼ばれている。そして、あんたの隣に居るヤギが、ジョンだ。よろしくな」

「メェー」

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします。それと、ご親切にしていただき、ありがとうございます」

「気にするなぁ、困った時はお互い様だ」

 (随分と感じの良いおじさんに拾われたな。馬車の行き先は分からないけど、この人に任せておけば、とりあえずは、大丈夫かな」


 ゆったりと馬車に揺られながら会話していると、なにやら森の方から声が聞こえてくる。


「誰かー!!助けてくれー!!」

「キャー!!」


 太い声の叫び声と弱々しい叫び声が交互に聞こえ、馬車は声の主たちの方へとだんだん近づいている。


「ありゃー、急いで助けないと、大勢の魔獣に囲まれて、身動きが取れなくなってる!」

 馬車が声の主たちの元へ到着すると、複数の魔獣と呼ばれるモンスターたちが、貴族のような格好をしている人たちを襲っていた。


「そこのお前たち、早くこちらへ来て、私たちを守らないかー!!」

「そうです、早く肉壁となって、あのモンスターたちから守りなさい!!」

「助けて欲しいヤツの態度じゃないな……」


 助けを求められるが、今の自分たちでは、魔獣に対抗できる武器も持っていないので、どうすることも出来ないでいた。


「えーい!!アイツらでは話にならん!!奴隷を連れて来い!!」

「はい!」

 貴族のような男が、数人の召使いに命令をすると、

 彼らが乗っていたであろう馬車から、ボロ雑巾のようになっているケモ耳少女が出てきた。


「さぁ!魔獣の群れの中に入り、私たちが逃げる間の時間稼ぎをして来い!」

「そんな、今の私の力では、魔獣に食い殺されてしまいます」

「えーい!獣人のクセに、私たち貴族に口答えをするか!とっとと行け!」


 貴族の男が、獣人の少女を魔獣の群れの中に放り投げ、自分たちはそそくさと逃げていった。


「ガルルルル!!」

「きゃあ……」


 少女は足がすくんでいて、まともに動ける状態ではなかった。


「あのままじゃ、魔獣の餌になっちまうぞ!」

「あの子を救うには、いったいどうすれば…」


 状況に戸惑っていると、脳内に聞き覚えのある声が流れ込んできた。


「鈴木さん、聞こえてますか?」

  (女神様!?)

「はい。やっと通信環境の方が整ったので、鈴木さんと通信ができます。そんなことより、早くあの子を助けてあげてください」

  (でも、俺にはあの魔獣たちと戦えるすべが…)

「安心してください、私の言うとうりに動けば、あの魔獣たちを倒すことができます」

  (本当ですか!?早速教えてください!)


 健太郎は、魔獣たちの群れの中に飛び込み、視線を自分の方に引きつけた。


「スズキさん!?なんでそんな無茶なことを!?」

「私のことなんか放っておいて、貴方様は逃げてください!」

「嫌だね!近くで泣いてる女の子を見捨てなんかしたら、死んじまった両親に怒られちまうからな!」


 先ほどまで意気揚々としていた、魔獣たちは、何かの異変に気付いた。


「鈴木さん、全神経の意識を集中させ、心の中でファイヤーボールと唱えてみてください」

  (俺は魔獣たちから、あの女の子を救う。いくぞ、ファイヤーボール!)


 健太郎が魔獣たちに手をかざすと、ものすごい熱量を持った巨大な球体が、手のひらから放出された。


「なんだ、あれは!?」

「すごい…」


 ファイヤーボールは、魔獣たちの群れを蹂躙し、森の側にあった山の半分を削って、空高く飛んでいってしまった。


「……」一同

「あれ?俺なんかやっちゃった?」


 健太郎が放った力が膨大すぎて、ピトーや獣人の少女は、腰を抜かしているようだった。


「君、大丈夫?」

「は、はい。助けていただき、あ、ありがとうございます」


 怯える少女の頭にポンと手を乗せ、ゆっくりと撫でながら、こう言った。

「無事で良かった…」


 少女は安心したのか、逆立てていた毛を元に戻し、少しだけ笑った。


「スズキさん、近くの街の役人が来る前に、その子を馬車に連れて、早くここから引き上げよう」

「了解です。さぁ、こっちへおいで」

「はい」


 健太郎は少女の手を引き、ピトーが待つ馬車まで向かった。
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