Re : play / リプレイ

貯古齢糖 壬琉苦

文字の大きさ
10 / 52

ACT-9

しおりを挟む
初クエストを無事にクリアした二人は、受付で報酬を受け取った後、街の飲食店を探していた。


「そういえば、シエラはこの街に来たことがあるの?」

「いいえ。奴隷商人に連れられて、色々な国や街を転々としてきましたが、イベエラは初めて訪れます」

「そうなのか…。やっぱり、土地勘がない二人で、美味しい料理を出す店を探すのは、ちょいと難しかったかな」

「そんなことはありませんよ。ご主人様が報酬を受け取りに行っている間に、街の人たちに聞き込みをしていたので」

「マジか!?全然気づかなかったよ」

「ふふん」


 シエラのおかげで、評判のいい飲食店にたどり着くことができた。


「御子柴堂…?」

「ご主人様、この文字が読めるのですか?」

「まぁな」(漢字が使われているってことは、ここの店の関係者の誰かは、俺と同じ境遇の人なのか)


 街の数ある飲食店が並ぶ中、一際異彩を放っている建物は、ずいぶんと古く、歴史を感じさせていた。


「人気のお店と聞いていたので、新しいレストランのようなものかと思ってましたが、予想以上ですね…」

「人や建物は見た目じゃない、中身だ。きっと、中に入ってみると、それが実感できるはずだ」

「そうですよね。見た目だけで決めつけるのは、相手に失礼ですし、ちゃんと内面も知りましょう」

「そういうことだ。早速行ってみよう」

「はい」


 勇気を振り絞って、店内に足を踏み入れる。


「いらっしゃいませ」


 店内に入ると、外の不気味な雰囲気を感じさせない綺麗な内装をしていた。


「何名様ですか?」

「二人です」

  (ここの店員の格好は、和服なのか。でも、異世界の人は日本のことを知らないから、この店の転生者が考案した物と考えられる)


 健太郎は、初めて自分以外の転生者に出会う気がして、わくわくしている。


「ご注文はお決まりでしょうか?」

「本日のオススメを二つ。あと、おひやも」

「かしこまりました」


 店員が注文を受け、厨房へと伝えに行く。


「それにしても、内装がずいぶんレトロな感じだな。なんだか懐かしい気持ちになるよ」

「ご主人様の故郷では、このような建物があったのですか」

「いや、あるにはあったけど、実際に見るのは初めてかな」

「お待たせしました」


 雑談をしていると、店員がやって来た。


「ラテでございます」

「あの、注文してないのですが」

「こちら、店長のサービスになります」

  (サービス?他のテーブルには配られていないのに?)


 不信感を抱きながらも、ラテを飲もうとした。すると、そこにはラテアートで何か書かれていた。


  (これはいったいなんなんだ?シエラの方には絵が描かれていて、こっちは、なんだかよく分からない字のようなものが書かれているぞ。こういう時は、鑑定スキルを使ってみるか)

『御子柴堂へようこそ。日本人のお客様は初めてで、とても嬉しいです。どうぞごゆっくりして下さい』

  (おお、ラテから字が浮き出てきた。こんな仕掛けがされて出てくるとは、まったく予想してなかった)


 ラテアートは、日本人によって書かれた物なのが、判明した。


  (やっぱりだ、ここには居るんだ。俺と同じ国から来た人が…)


 謎が解けて、ほっと一息をつき、ラテを飲む。


「うっ、これは…」

「美味しいです!ふわふわとしたミルクが、ほんのり甘くて、そこに香ばしい別の味がして、とっても美味しいです!」

  (大絶賛だな、シエラ。確かにミルクは大人でも飲みやすいし、香ばしい香りを出しているコーヒーが、苦味でミルクの甘さを引き立てている。人気な店というのは、あながち間違っていない)


 ラテを飲んだ二人から、幸せの笑みがこぼれる。


「こちらが本日のオススメとなります」

「よし、腹一杯食べるぞ~、ってなんじゃこりゃ!」

「本日のオススメ、濃厚ハチミツ鍋でございます」

  (異世界で鍋物とか大丈夫かよ。別に鍋自体が悪いわけじゃない。ただ、原住民たちがどう思うか…)

『一度、鍋物を出したら評判が良くて、本日のオススメで作ってみました』

「料理で会話をするな!」

「どうされたのですか、ご主人様?」

「いや、なんでもない」


 健太郎は、鍋の具材が大丈夫なのか、鑑定スキルで調べてみた。


『名前:濃厚ハチミツ鍋 ドラムの実を水に晒して、アクを抜き、ハニービーストの蜜ロウを割って、一緒に鍋に入れた物ーー』

「嘘だろ、鑑定スキルで調べただけなのに、使用された具材だけじゃなく、調理方法まで事細かに記載されている」


 まさかの鑑定結果に驚く健太郎。異世界ならではの具材を使っていることが確認できたら、鑑定スキルを途中で閉じて、料理を楽しむことにした。


「この、濃厚ハチミツ鍋というものは、初めて食べましたが、甘酸っぱくて美味しいです」

「おそらく、醤油をベースにした出汁に、ハチミツを入れたものかと思われる」

「ご主人様、解説者みたいでカッコいいです」

  (一人暮らしだったから、いろんな料理を作った経験があっただけなんだけどね)


 二人は料理を残さずたいらげ、とてもご満悦そうだった。


「凄く美味しくて、大満足だ。また一緒に来ような」

「はい!喜んでお伴します」

「お客様、会話の途中で失礼します。店長が是非会いたいとお呼びになっています」

「俺を?いったいなんだろう?」


 会計を済ませて、シエラを宿に送り届けた後、店長に会いに、御子柴堂まで向かうこととなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー
ファンタジー
気がつけば昔読んだ少女マンガの世界だった。マンガの通りなら決して幸せにはなれない。そんなわけにはいかない。自分が幸せになるためにやれることをやっていこう。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...