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貯古齢糖 壬琉苦

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ACT-10

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御子柴堂に戻ってみると、眼鏡をかけた、白髪の若い男性が、暖簾を下ろしていた。


「鈴木さん、お待ちしておりました」

「ど、どうも」(この人とは初対面の筈なのに、なんで俺のことを知っているんだ)


 男性に連れられて、御子柴堂の外のベンチに座る。


「お互いに自己紹介がまだでしたね。僕の名前は佐藤翔です。以後、お見知り置きを」

「ご丁寧にありがとうございます。俺、じゃなくて、私の名前は鈴木健太郎です。よろしくお願いします」

「はい。こちらこそ」


 健太郎が名前を名乗ると、翔は少し嬉しいそうに笑った。


「今日はどういった御用でしょうか?」

「特に何かをするってわけじゃないから、安心して。今日、鈴木さんを呼んだのは、少しお話しがしたかったからなんだ」

「お話し?」

「そうだね、まず何から話そうかな…。そうだ、君と僕との繋がりについて話してみようか」

「佐藤さんとの繋がりですか」

「うん。君と僕との繋がりは、女神に導かれた転生者であることかな」

  (やっぱりこの人は転生者だったのか、じゃあ、俺のことを知っていたのも、何かしらの特典のおかげ)

「鈴木さんはおかしいと思わないかい」

「何がですか?」

「僕たちは転生者という枠組みの中で召喚された筈なのに、元の身体のまま、こちらの世界に来ている」

  (確かに、今は見た目が変わっているかもしれないが、元々ここに来た時は、死ぬ前と同じ状態だった)


 生まれ変わった肉体で召喚されるはずが、元の身体での召喚となった。これは、たった一人だけ、このような状況なら、ただの間違いで済むのだが、二人ともなれば、レアケースではなく、仕組まれたものだと思い始めるだろう。そう、翔が投げかけてきた。


「僕はこう見えて40歳なんだ」

「嘘!?年下かと思ってました」

「本当だよ。妻もいるし、今年で20になる息子もいるんだ」

「そうだったんだ…」(じゃあ、御子柴堂に居た、女性店員は、奥さんだったのか。いや、二人共見た目年齢が若すぎて、全然気づかなかったよ。妖精か、妖精さんなのか、この人の家族は)


 健太郎は、驚きを隠せずあたふたしてしまった。


「転生した時は15歳でね、冒険者をしていたんだよ。そんな中、冒険者仲間を通じて妻と出会い、子供ができ、冒険者稼業も5年で辞めて、今の御子柴堂を開店したんだ」

「25年間も異世界に居たんですか?」

「もちろんさ、妻や子を置いて、現代には帰れないからね。ここは僕のもう一つの故郷でもあるからね」

「ロマンチックですね」

「そう言われらと照れるな」


 二人はいつのまにか、砕けた会話ができる雰囲気になっていた。


「鈴木さんがよければなんですが、僕のもとで修行をしませんか」

「随分と急な話ですね」

「僕の持つ転生特典と、鈴木さんが持つ転生特典は、とても相性が良いからね、つい教えたくなっちゃたんだ」

「そんな簡単に教えていいんですか」

「うん。僕は戦いの場から身を離したからね、鈴木さんのような、現役の冒険者に受け取って欲しいんだ。それに…」

「それに、なんですか?」

「いや、なんでもないよ」


 先程まで楽しそうにしていた翔の顔は、霧がかかったかのようにこわばった。


「あの、返事はまた後日でもいいですか」

「ごめん、急な話で混乱させてしまったかな」

「そうじゃないんです、ただ、自分がこれ以上強くなっていいのか考えたくて」


 健太郎は、大きな力を持つことを恐れていた。それは、今までの彼の人生で、何かを得ようとすると、必ず何かを失ってきたからだった。

 翔は何かを悟ったのか、席を一度外し、飲み物を注ぎに行った。

 健太郎は、どのように決断をするのだろうか。
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