11 / 52
ACT-10
しおりを挟む
御子柴堂に戻ってみると、眼鏡をかけた、白髪の若い男性が、暖簾を下ろしていた。
「鈴木さん、お待ちしておりました」
「ど、どうも」(この人とは初対面の筈なのに、なんで俺のことを知っているんだ)
男性に連れられて、御子柴堂の外のベンチに座る。
「お互いに自己紹介がまだでしたね。僕の名前は佐藤翔です。以後、お見知り置きを」
「ご丁寧にありがとうございます。俺、じゃなくて、私の名前は鈴木健太郎です。よろしくお願いします」
「はい。こちらこそ」
健太郎が名前を名乗ると、翔は少し嬉しいそうに笑った。
「今日はどういった御用でしょうか?」
「特に何かをするってわけじゃないから、安心して。今日、鈴木さんを呼んだのは、少しお話しがしたかったからなんだ」
「お話し?」
「そうだね、まず何から話そうかな…。そうだ、君と僕との繋がりについて話してみようか」
「佐藤さんとの繋がりですか」
「うん。君と僕との繋がりは、女神に導かれた転生者であることかな」
(やっぱりこの人は転生者だったのか、じゃあ、俺のことを知っていたのも、何かしらの特典のおかげ)
「鈴木さんはおかしいと思わないかい」
「何がですか?」
「僕たちは転生者という枠組みの中で召喚された筈なのに、元の身体のまま、こちらの世界に来ている」
(確かに、今は見た目が変わっているかもしれないが、元々ここに来た時は、死ぬ前と同じ状態だった)
生まれ変わった肉体で召喚されるはずが、元の身体での召喚となった。これは、たった一人だけ、このような状況なら、ただの間違いで済むのだが、二人ともなれば、レアケースではなく、仕組まれたものだと思い始めるだろう。そう、翔が投げかけてきた。
「僕はこう見えて40歳なんだ」
「嘘!?年下かと思ってました」
「本当だよ。妻もいるし、今年で20になる息子もいるんだ」
「そうだったんだ…」(じゃあ、御子柴堂に居た、女性店員は、奥さんだったのか。いや、二人共見た目年齢が若すぎて、全然気づかなかったよ。妖精か、妖精さんなのか、この人の家族は)
健太郎は、驚きを隠せずあたふたしてしまった。
「転生した時は15歳でね、冒険者をしていたんだよ。そんな中、冒険者仲間を通じて妻と出会い、子供ができ、冒険者稼業も5年で辞めて、今の御子柴堂を開店したんだ」
「25年間も異世界に居たんですか?」
「もちろんさ、妻や子を置いて、現代には帰れないからね。ここは僕のもう一つの故郷でもあるからね」
「ロマンチックですね」
「そう言われらと照れるな」
二人はいつのまにか、砕けた会話ができる雰囲気になっていた。
「鈴木さんがよければなんですが、僕のもとで修行をしませんか」
「随分と急な話ですね」
「僕の持つ転生特典と、鈴木さんが持つ転生特典は、とても相性が良いからね、つい教えたくなっちゃたんだ」
「そんな簡単に教えていいんですか」
「うん。僕は戦いの場から身を離したからね、鈴木さんのような、現役の冒険者に受け取って欲しいんだ。それに…」
「それに、なんですか?」
「いや、なんでもないよ」
先程まで楽しそうにしていた翔の顔は、霧がかかったかのようにこわばった。
「あの、返事はまた後日でもいいですか」
「ごめん、急な話で混乱させてしまったかな」
「そうじゃないんです、ただ、自分がこれ以上強くなっていいのか考えたくて」
健太郎は、大きな力を持つことを恐れていた。それは、今までの彼の人生で、何かを得ようとすると、必ず何かを失ってきたからだった。
翔は何かを悟ったのか、席を一度外し、飲み物を注ぎに行った。
健太郎は、どのように決断をするのだろうか。
「鈴木さん、お待ちしておりました」
「ど、どうも」(この人とは初対面の筈なのに、なんで俺のことを知っているんだ)
男性に連れられて、御子柴堂の外のベンチに座る。
「お互いに自己紹介がまだでしたね。僕の名前は佐藤翔です。以後、お見知り置きを」
「ご丁寧にありがとうございます。俺、じゃなくて、私の名前は鈴木健太郎です。よろしくお願いします」
「はい。こちらこそ」
健太郎が名前を名乗ると、翔は少し嬉しいそうに笑った。
「今日はどういった御用でしょうか?」
「特に何かをするってわけじゃないから、安心して。今日、鈴木さんを呼んだのは、少しお話しがしたかったからなんだ」
「お話し?」
「そうだね、まず何から話そうかな…。そうだ、君と僕との繋がりについて話してみようか」
「佐藤さんとの繋がりですか」
「うん。君と僕との繋がりは、女神に導かれた転生者であることかな」
(やっぱりこの人は転生者だったのか、じゃあ、俺のことを知っていたのも、何かしらの特典のおかげ)
「鈴木さんはおかしいと思わないかい」
「何がですか?」
「僕たちは転生者という枠組みの中で召喚された筈なのに、元の身体のまま、こちらの世界に来ている」
(確かに、今は見た目が変わっているかもしれないが、元々ここに来た時は、死ぬ前と同じ状態だった)
生まれ変わった肉体で召喚されるはずが、元の身体での召喚となった。これは、たった一人だけ、このような状況なら、ただの間違いで済むのだが、二人ともなれば、レアケースではなく、仕組まれたものだと思い始めるだろう。そう、翔が投げかけてきた。
「僕はこう見えて40歳なんだ」
「嘘!?年下かと思ってました」
「本当だよ。妻もいるし、今年で20になる息子もいるんだ」
「そうだったんだ…」(じゃあ、御子柴堂に居た、女性店員は、奥さんだったのか。いや、二人共見た目年齢が若すぎて、全然気づかなかったよ。妖精か、妖精さんなのか、この人の家族は)
健太郎は、驚きを隠せずあたふたしてしまった。
「転生した時は15歳でね、冒険者をしていたんだよ。そんな中、冒険者仲間を通じて妻と出会い、子供ができ、冒険者稼業も5年で辞めて、今の御子柴堂を開店したんだ」
「25年間も異世界に居たんですか?」
「もちろんさ、妻や子を置いて、現代には帰れないからね。ここは僕のもう一つの故郷でもあるからね」
「ロマンチックですね」
「そう言われらと照れるな」
二人はいつのまにか、砕けた会話ができる雰囲気になっていた。
「鈴木さんがよければなんですが、僕のもとで修行をしませんか」
「随分と急な話ですね」
「僕の持つ転生特典と、鈴木さんが持つ転生特典は、とても相性が良いからね、つい教えたくなっちゃたんだ」
「そんな簡単に教えていいんですか」
「うん。僕は戦いの場から身を離したからね、鈴木さんのような、現役の冒険者に受け取って欲しいんだ。それに…」
「それに、なんですか?」
「いや、なんでもないよ」
先程まで楽しそうにしていた翔の顔は、霧がかかったかのようにこわばった。
「あの、返事はまた後日でもいいですか」
「ごめん、急な話で混乱させてしまったかな」
「そうじゃないんです、ただ、自分がこれ以上強くなっていいのか考えたくて」
健太郎は、大きな力を持つことを恐れていた。それは、今までの彼の人生で、何かを得ようとすると、必ず何かを失ってきたからだった。
翔は何かを悟ったのか、席を一度外し、飲み物を注ぎに行った。
健太郎は、どのように決断をするのだろうか。
0
あなたにおすすめの小説
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない
ゆーぞー
ファンタジー
気がつけば昔読んだ少女マンガの世界だった。マンガの通りなら決して幸せにはなれない。そんなわけにはいかない。自分が幸せになるためにやれることをやっていこう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる