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第参章
KEY DAY -ある男達の決闘-
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「どうだった?」
「ああ。間違いなく明日はルドルフはいる。」
「よし。時間は昼食後。チャンスは一度きりだ。」
「分かってる。抜かるなよ?」
「お前こそな。」
「ふっ。それともう1つ。」
「なんだ?」
「‥ユキのこと頼んだぞ。幸せにしてやってくれ。」
「何言ってんだ。お前がしくじったら俺がやるんだ。そん時はユキのこと頼むぞ?」
2人の男は拳を突き合わせ、明日の決戦に向けて互いに鼓舞した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユキが余命を告げられてから既に1年と半年が過ぎていた。彼女の病は予想よりも早く進行しており、今は病院のベッドに横たわっている状態だった。シュタルク達はこの状況に焦りを感じていた。本来なら後半年はルドルフ暗殺の準備に当てる予定だった。しかしもう待っていられない。時間は無情にも過ぎていくのだ。そのため2人は予定より早く作戦を決行することを余儀なくされた。
2人は何日もかけ作戦を精査した。相手は恐らくこの世で一番強い魔導師。生徒からの奇襲を受けるとは流石に思っていないだろうが、それでも圧倒的に不利な状況に変わりはなかった。しかし最愛のユキのために。彼らは無謀だと心のどこかで理解しつつも、可能性を1%でも作るために努力した。
そして遂に作戦の決行日が訪れた。ルドルフは学外の活動も多く行なっており、学院を留守にしていることが多かった。だが今日は学院の定例会議の日でまず間違いなくルドルフは学院にいる。前日に念のためヴォルフが担任の教師にルドルフの動向をそれとなく探り、確認も取っておいた。
その日はいつもと変わらない朝日が昇り、人々は日々のルーティーンをこなしていた。そんな中ヴォルフとシュタルクはこれから起こす事件に向けて着々と準備を進めている。彼らはこの事件を正しいこととは思っていない。正義なんて言葉と程遠いところに位置するものだと理解しているのだ。だが、それでも愛するもののために、、その一心だけで彼らは行動していた。
ヴォルフは作戦前日からシュタルクの家に泊まっており、2人で一緒に学校へ登校した。彼らは平常心でいるためにも作戦まではいつも通りの生活を送ることとした。その為、歩いて数分後いつも通りスズカが待ち構えていた。
「おはよう。あれ?今日はヴォルフも一緒なんだ。」
「ああ。ユキの病院に寄ったあと、そのままシュタルクの家に泊まらせてもらった。」
「そっか。ユキちゃんの容態はどう??」
「…。タクトの崩壊が、予想より早く進んでいるらしい。このまま続けば、持って2週間だと。」
「…!」
「だが、タクトの崩壊は停止と進行を繰り返している。停止の間はいつも通りの元気なユキだ。今日の放課後、運が良ければ会いに行けるよ。」
「…そうだね。じゃー今日はユキちゃんの大好きなアップルパイでも買って行こうかな!」
いつも通り。その言葉だけがシュタルクの頭の中には響いていた。作戦が失敗すればユキは死ぬ。そして成功しても2人は罪に問われ、今の生活は二度と送れない。今日が最後のいつも通りなのだ。
学校に着くと、いつも通り1限の授業に赴いた。今日の1限は魔法陣の解読に関するもので、基本的に聞くだけの授業だった。そのため周りの生徒は舟を漕ぐようにカクカク揺れていた。シュタルクもいつもは眠気と戦うが、今日はそれどころではなかった。何度も作戦のシミュレーションを頭の中で行い、時には周りの寝ている生徒を見渡して気分を落ち着けていた。ヴォルフも周りを見渡している様子で、彼が同じ心境なのかと思うとシュタルクは少し楽な気持ちになれた。
そして1限が終わり、2限の授業へとみんなが移動する中、シュタルクとヴォルフは作戦の準備のため別方向へと足を向けた。すると、同級生のレイナがすかさず話しかけてきた。
「お二人さんどこ行くの??」
「…2限はアーレイ先生の植物学だろ?前回の授業で出された課題の続きだろうから欠席するよ。」
「え?!もしかしてあの課題もう終わらせたの??すっご!!じゃーさ、よかったら教えてよ!」
「すまんな。俺たちはこの間にユキのところに行きたいんだ。」
「あ、そういうことか。ごめんね引き止めて。」
「いや、気にするな。それじゃ。」
2人は踵を返し、歩みを進めた。その後ろ姿を見ながらレイナは物思いに耽っていた。
「どーしたのレイナ??まーたあの2人にちょっかい出してさ。」
「ううん。ねえサキ。あっちって西門側よね?」
「なになにどーしたの。当たり前じゃん。方向音痴にでもなったかー?」
「ううん。私は大丈夫よ。あの2人は方向音痴になったのかもだけど。」
「??」
ユキのいる病院は学院の東側。なんか引っかかる。もしかしたら病院に行く前に野暮用があるだけかもだけど、それでもなんか引っかかる。
「サキ。私少し頭痛いから2限サボるわ。」
「え?課題大丈夫なの??」
「課題よりも大切なことがあってね。」
そういうとレイナは2人の後を追って行った。
シュタルクとヴォルフは校長室に比較的近い、掃除道具の詰まった倉庫で最後の確認を行っていた。ここは下校前に行われる掃除以外では滅多に人は来ない。そのため1年以上前から作戦決行時の控え室として目をつけていたのだ。そして同じく1年以上前、シュタルクが生徒会の用事で偶然校長室に訪れる機会があった。その時、部屋の隅にある高い本棚の上に監視カメラを設置した。魔力のない機械的なカメラを使うことでルドルフに気づかれないよう配慮したのだ。また直接撮影すればいつか気づかれることを懸念したシュタルクはカメラを窓に向け、反射で若干だけ見えるように工夫した。一年以上の観察の末、ルドルフは昼ご飯の後、高確率で約5分の昼寝をする事を知った。寝込みを襲うことができればベスト。だが相手はルドルフ。そう簡単には行くと思っていない2人はそれ以外の場合も想定していた。
2人が掃除用倉庫に待機してからの時間は重くゆっくりと流れた。作戦は何度も確認した。後は覚悟を決めるだけ。そう言い聞かせながらルドルフの動向をカメラで探っていた。
映像の中のルドルフは昼ご飯の鰻丼を食べた後、暖かい陽光の中、睡魔に襲われていた。彼はそれに抗うことなくゆっくりと目を閉じた。
その瞬間2人は顔を見合わせた。そして同時に頷き、2人は拳を交わした。心臓は激しく脈を打っていた。だが頭は予想よりも遥かにクリアだった。
打ち合わせ通りシュタルクが先に倉庫を出た。
左手には一枚の書類を、右腰に短刀を備えて。
扉の前まで来たシュタルクは一呼吸置き、音を立てぬようゆっくりと扉を開けた。
ルドルフはまだ寝息を立てている。
シュタルクはそっと体を部屋の中に入れもう一度ルドルフが寝ている事を確認した。
その後一度扉に向き直り、外から見えぬよう扉を閉めた。
扉を閉めた後、シュタルクは一度部屋の中を確認した。
そして目を閉じた。
机を1つ隔ててルドルフは居眠り。
右手には本棚。
左上部には歴代校長の写真が入った額縁。
それ以外に物はなく、比較的簡素な造り。
部屋は広すぎず、長方形の形。
その長手方向にルドルフ。
距離はここから約10メートル。
大丈夫。
俺は冷静だ。
ユキのために。
ユキの未来のために。
覚悟を決めろシュタルク。
あらゆる物と決別し、覚悟を決めたシュタルクは目を開いた。
そして右足を前に踏み出した瞬間。
ルドルフの目が見開いた。
「部屋に入るならノックくらいしてもらいたいものだな。シュタルク君。」
シュタルクの体は一度動きを失った。
しかしシュタルクは冷静に作戦の第2段階に入る。
「…すみません。考え事をしていたらノックする事を失念してしまいました。」
「考え事?」
「はい。実は少々厄介なことが起きまして。この書類を見ていただけますか?」
そういうと、シュタルクは左手にある書類を上に掲げながら止めていた右足をもう一度動かした。
一歩、二歩、三歩と着実にルドルフとの距離を詰め机を隔てて書類を渡した。
「ふむ。これは生徒会に関するものか。どれどれ。」
ルドルフが書類に目を通している間、シュタルクは一歩半ほど右側に体をずらした。
そしてそのまま動かなかった。
作戦通り。
次のアクションでヴォルフがフォルテを纏い奇襲する。
もちろんそれで決まるとは思っていない。
その次のシュタルクによる2手目が鍵だ。
そこで致命傷を与えなければ厳しいだろう。
だがやってみせる。
ユキのために。
目的はただ一つ。
ルドルフを殺す。
書類を読むルドルフを見守りながら、シュタルクはヴォルフの奇襲を待った。
静寂が辺りを包みゆっくりと時間が流れる。
その時間の流れに合わせるようにルドルフの右手がゆっくりと動いた。
シュタルクはその動作を見守っていた。
依然静寂のまま、ルドルフは右手を挙げたまま扉をじっと見つめていた。
…。
遅い。
ヴォルフが来ない。
シュタルクは焦りを感じながら、ルドルフの奇妙な行動に一抹の不安を抱いた。
「シュタルク。」
「はい。」
「本当の目的を言いなさい。」
「…」
「シュタルクが言わないのであれば、扉の外にいる共犯に話してもらおうか。」
そう言ってルドルフは腰を上げた。
その瞬間シュタルクは無数の氷の刃をルドルフの背後に具現し、叩き込んだ。そして自分自身も短刀をルドルフに突き立てた。
しかし氷の刃も短刀もルドルフの体を貫くことはなかった。
ルドルフとシュタルク以外のすべてのものは動きを失い止まったように見えた。
そしてシュタルクの突き立てた短刀は摘むような形でルドルフに止められていた。
明らかな力の差を肌で感じたシュタルクは体を震わせていた。
そしてその体勢のままシュタルクが口を開いた。
「今あなたに刃を向けているのは私だけです。外にいるものは何も行動を起こしておりません。だから咎められるのは私だけにして下さい。」
「そういうわけにはいかん。どういう理由があるかは知らんがこのような行為は罰せられるものだ。」
「……。」
シュタルクは少し考えた後、短刀を握る力を強め大きく息を吸った。
「お前は逃げろ!!ユキを頼む!!最後の瞬間まで側にいてやってくれ!!」
扉の外にいる者に聞こえるように大声を上げ、シュタルクはもう一度ルドルフに斬りかかった。
するとシュタルクの動きは完全に封じられた。
「無駄じゃ。外の者も今のお前と同じように動きを封じておる。」
「くっ…!」
「何があった。理由を話せ。」
「……ユキのために。…妹のために、あなたのモジュレーションを利用したかった。」
「その存在をどこで知った。」
「……。」
「スズカか。」
「違う!スズカはまったく関係ない!この事件は俺が引き起こしたんだ!」
「落ち着け。ではなぜそれを知った。」
「…以前スズカが忘れたノートをたまたま見た時があった。その時モジュレーションという単語とそれにまつわる話を読んだ。最初は意味が分からなかったし、そんな物は存在しないと思った。だがその後スズカと校長が何やら深刻な話をしているところを耳にした。そしてモジュレーションを使えばユキを救えると理解した。あとは想像の通りだ。」
「ふむ。…それではスズカだけでなくわしにも落ち度があるな。細心の注意を払ってはいたのだが、聞かれるとは。」
「……。」
「ユキといったな?その子はどういう状態なのだ。」
「…タクトが崩壊する稀な病気にかかった。医者の話ではあと数週間で…。」
シュタルクはその先の言葉を言えなかった。そして言葉の代わりに涙が溢れた。今でも体は震えているが、最初のそれと今のそれでは理由が変わっていた。
「それでわしを殺そうとしたわけか。」
「…。」
「何故相談せなんだ。」
「…相談して何になる。医者でもないお前に、、ユキの病気が治せるのか?」
「それでも力にはなれた。」
「お前を殺すことだけが!!……校長を殺すことだけが、、ユキを救える手段だったんです。そんな相手に相談できるわけないでしょう。」
「他に方法があったかも知れん。何故それを探さなんだ。」
「探しましたよ…!たくさん調べて調べて!たくさんの医者を巡って話を聞いて!でも……調べてもそんな稀な病気に関する資料は皆無だったし、どの医者も治らないの一点張りでした。」
「他には頼らなかったのか?」
「俺の要求を満たせる相手は思いつきませんでした。…いや、1人思いついていましたが…」
「その者が暗殺の対象になったということか。」
「…はい。」
「ふむ。確かにシュタルクが抱えた問題は難しかったのう。だが最後まで答えを出すことを諦めて欲しくはなかった。どんな事情があれ、人を殺すということを答えにして欲しくはない。綺麗事にしか聞こえんかもしれんが、人を救うためには人を殺すしかない世界など絶望でしかない。そんな世界にしないためにも、これからは1人で抱え込まず、周りに相談し新たな答えを出すことに尽力すると約束してくれ。」
「…。」
「そしてシュタルクよ。もしかしたらじゃが、わしは君の妹を救えるかもしれん。」
「…!!本当ですか?!」
「すまんが確信はない。だが最近、身体メカニズムに関しての新たな知見が得られてのう。それを応用すれば或いは上手くいくかもしれん。」
「お願いします…!ユキを…!妹を助けて下さい…!!」
「すぐに向かおう。だがこれが成功しても妹は今の妹ではなくなるぞ?」
「どういうことですか。」
「話はユキさんの前で行う。本人にも考える時間が必要じゃろう。それにこの件はスズカの力を借りる必要もある。時間がない。行くぞ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なーるほど。それで校長が突然目の前に現れたと。」
「ああ。」
「ああってねえ、お兄ちゃん?!急いでるにしても扉から入ってきてよ!!乙女の部屋に突然ワープして現れるなんてデリカシーなさすぎっ!!」
「す、すまん。」
「はー。まあいいわ。話聞かせてくれますか?」
「うむ。最近得られた新たな知見じゃが、人間のタクトとその他の動物のタクトは構造が似てはいるが完全に同じ物ではないということが明らかになったのじゃ。君のタクトの疾患はカルテを見る限り、人間にしかないメカニズムの部分が崩壊する事が原因のようじゃ。人間のタクトのままではその部分が崩壊するとタクトが機能しなくなる。そのため死に繋がるが、人間以外のタクト構造にすれば機能停止には至らないはずじゃ。」
「ルドルフ校長。私はこの子の主治医です。確かに校長のお話は理論的にはあっていると思いますが、タクト構造を人間以外のものにすれば、やはりタクトは人間に適応せずユキさんは生きられないのではないですか?」
「おっしゃる通りです先生。人間以外のタクト構造にすればユキさんは適合せず死ぬでしょうな。だがそれはユキさんが人間の体をしているからこその話です。」
「…!どういうことです?」
「ユキさんが人間以外の動物の体に擬態した状態であれば一部欠落したタクトでも生命活動が維持されるでしょう。」
「人間以外の体…。」
「もちろんこれは本人の意志で決めるべき問題じゃ。本人がそれを望まなければやるべきではない。」
「待ってください校長。確かに擬態すれば人間以外のタクトでもいけるかもしれません。ですが、擬態し続けるといずれフォニムが枯渇してしまいます。そうなればユキさんはまた人間の体に逆戻りしてしまう。」
「そう。そこでわしの出番じゃ。ユキさんが擬態した後、わしの力で擬態のプロセスの一部を封印する。」
「…どういうことです?!」
「ここからは小難しい話になる。じゃからザックリいうとじゃな、擬態という魔法は元の体から変体した後、また元の体に戻るというプロセスがある。その一連の流れが擬態という魔法でその間延々とフォニムは消費される。じゃが最後の元の体に戻るというプロセスを封印すれば擬態した段階で魔法のプロセスは終了しフォニムは消費されなくなる。」
「た、たしかにそれなら。で、ですが本当にそんなことが?!」
「わしに任せておけ。」
「まーじか。そっか。人間以外になれば私まだ生きれるんだね?」
「ああ。」
「それって会話とかできんのかな??」
「そこも魔法を使えばなんとかなるぞ。まあそれなりに難しい術ではあるがのう。」
「そっか。…わかった!私それに乗るよ!」
「本当にいいのか?ユキ。」
「いいのいいの!だってまだまだ生きたいし!!」
「…そうか。」
「うむ。それでは早速取り掛かるかの。とその前にスズカよ。封印魔法は術者が死ぬと全ての封印が解かれる。わしはこの子より長く生きることはできまい。じゃからわしが死ぬまでに今から行う術を覚えるのじゃ。そしてわしの死後この子にもう一度術をかけてあげておくれ。これができるのはスズカよ、お前だけじゃ。」
「…分かりました。」
「そして2人は己の誤ちを反省せよ。そしてこれからは困難に対して考え抜くのじゃ。間違った道を選ばぬよう、何が最善なのか、最後まで諦めず考え抜いて欲しい。そして今回の反省を生かし、次世代の若者に自らと同じ過ちを犯さぬよう教育してあげて欲しい。」
「…誰に言ってるの?」
「ユキさん。老人の独り言じゃよ。」
シュタルクとヴォルフはルドルフの言葉を胸に刻み、また細やかな配慮に感謝した。
「では始める。ユキさんよ。何に擬態するかね?」
「うーん。じゃー猫!真っ白な猫になるね!」
「そうかそうか。では擬態しておくれ。」
「うん!っとその前に当分喋れなくなるかもだから先に言いたいこと言うね。みんな私のためにありがとう。このご恩は一生忘れません!ぜーーったいにいつかみんなに恩返しするから!!」
シュタルクは頬に涙をつたわせながら、ユキの姿を見守っていた。ヴォルフとスズカも傍で目に涙を溜めていた。
「みんなそんな泣かないでよ。。死ぬみたいじゃん。。」
「…すまん。」
「もー。でもほんとにありがと。お兄ちゃん。」
シュタルクは抱えていた全てに対して安堵した。ユキの命を救えたこと、ルドルフを殺さずに済んだこと、ヴォルフを巻き込んでしまったこと、自分が殺人者にならなかったこと。…出来過ぎなくらいで今も現実かわからなくなる瞬間があるが、その分心の底から嬉しく、涙が止まらなかった。
「あっ!どーせ猫になるなら新しい名前が欲しいな!そーーだなぁ…。、、、きーめた!!私の猫姿の名前はシャルルね!」
ダメよ。こんな記憶思い出してもらったら困るわ。
私のナイトでいてもらわないと。
「ああ。間違いなく明日はルドルフはいる。」
「よし。時間は昼食後。チャンスは一度きりだ。」
「分かってる。抜かるなよ?」
「お前こそな。」
「ふっ。それともう1つ。」
「なんだ?」
「‥ユキのこと頼んだぞ。幸せにしてやってくれ。」
「何言ってんだ。お前がしくじったら俺がやるんだ。そん時はユキのこと頼むぞ?」
2人の男は拳を突き合わせ、明日の決戦に向けて互いに鼓舞した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ユキが余命を告げられてから既に1年と半年が過ぎていた。彼女の病は予想よりも早く進行しており、今は病院のベッドに横たわっている状態だった。シュタルク達はこの状況に焦りを感じていた。本来なら後半年はルドルフ暗殺の準備に当てる予定だった。しかしもう待っていられない。時間は無情にも過ぎていくのだ。そのため2人は予定より早く作戦を決行することを余儀なくされた。
2人は何日もかけ作戦を精査した。相手は恐らくこの世で一番強い魔導師。生徒からの奇襲を受けるとは流石に思っていないだろうが、それでも圧倒的に不利な状況に変わりはなかった。しかし最愛のユキのために。彼らは無謀だと心のどこかで理解しつつも、可能性を1%でも作るために努力した。
そして遂に作戦の決行日が訪れた。ルドルフは学外の活動も多く行なっており、学院を留守にしていることが多かった。だが今日は学院の定例会議の日でまず間違いなくルドルフは学院にいる。前日に念のためヴォルフが担任の教師にルドルフの動向をそれとなく探り、確認も取っておいた。
その日はいつもと変わらない朝日が昇り、人々は日々のルーティーンをこなしていた。そんな中ヴォルフとシュタルクはこれから起こす事件に向けて着々と準備を進めている。彼らはこの事件を正しいこととは思っていない。正義なんて言葉と程遠いところに位置するものだと理解しているのだ。だが、それでも愛するもののために、、その一心だけで彼らは行動していた。
ヴォルフは作戦前日からシュタルクの家に泊まっており、2人で一緒に学校へ登校した。彼らは平常心でいるためにも作戦まではいつも通りの生活を送ることとした。その為、歩いて数分後いつも通りスズカが待ち構えていた。
「おはよう。あれ?今日はヴォルフも一緒なんだ。」
「ああ。ユキの病院に寄ったあと、そのままシュタルクの家に泊まらせてもらった。」
「そっか。ユキちゃんの容態はどう??」
「…。タクトの崩壊が、予想より早く進んでいるらしい。このまま続けば、持って2週間だと。」
「…!」
「だが、タクトの崩壊は停止と進行を繰り返している。停止の間はいつも通りの元気なユキだ。今日の放課後、運が良ければ会いに行けるよ。」
「…そうだね。じゃー今日はユキちゃんの大好きなアップルパイでも買って行こうかな!」
いつも通り。その言葉だけがシュタルクの頭の中には響いていた。作戦が失敗すればユキは死ぬ。そして成功しても2人は罪に問われ、今の生活は二度と送れない。今日が最後のいつも通りなのだ。
学校に着くと、いつも通り1限の授業に赴いた。今日の1限は魔法陣の解読に関するもので、基本的に聞くだけの授業だった。そのため周りの生徒は舟を漕ぐようにカクカク揺れていた。シュタルクもいつもは眠気と戦うが、今日はそれどころではなかった。何度も作戦のシミュレーションを頭の中で行い、時には周りの寝ている生徒を見渡して気分を落ち着けていた。ヴォルフも周りを見渡している様子で、彼が同じ心境なのかと思うとシュタルクは少し楽な気持ちになれた。
そして1限が終わり、2限の授業へとみんなが移動する中、シュタルクとヴォルフは作戦の準備のため別方向へと足を向けた。すると、同級生のレイナがすかさず話しかけてきた。
「お二人さんどこ行くの??」
「…2限はアーレイ先生の植物学だろ?前回の授業で出された課題の続きだろうから欠席するよ。」
「え?!もしかしてあの課題もう終わらせたの??すっご!!じゃーさ、よかったら教えてよ!」
「すまんな。俺たちはこの間にユキのところに行きたいんだ。」
「あ、そういうことか。ごめんね引き止めて。」
「いや、気にするな。それじゃ。」
2人は踵を返し、歩みを進めた。その後ろ姿を見ながらレイナは物思いに耽っていた。
「どーしたのレイナ??まーたあの2人にちょっかい出してさ。」
「ううん。ねえサキ。あっちって西門側よね?」
「なになにどーしたの。当たり前じゃん。方向音痴にでもなったかー?」
「ううん。私は大丈夫よ。あの2人は方向音痴になったのかもだけど。」
「??」
ユキのいる病院は学院の東側。なんか引っかかる。もしかしたら病院に行く前に野暮用があるだけかもだけど、それでもなんか引っかかる。
「サキ。私少し頭痛いから2限サボるわ。」
「え?課題大丈夫なの??」
「課題よりも大切なことがあってね。」
そういうとレイナは2人の後を追って行った。
シュタルクとヴォルフは校長室に比較的近い、掃除道具の詰まった倉庫で最後の確認を行っていた。ここは下校前に行われる掃除以外では滅多に人は来ない。そのため1年以上前から作戦決行時の控え室として目をつけていたのだ。そして同じく1年以上前、シュタルクが生徒会の用事で偶然校長室に訪れる機会があった。その時、部屋の隅にある高い本棚の上に監視カメラを設置した。魔力のない機械的なカメラを使うことでルドルフに気づかれないよう配慮したのだ。また直接撮影すればいつか気づかれることを懸念したシュタルクはカメラを窓に向け、反射で若干だけ見えるように工夫した。一年以上の観察の末、ルドルフは昼ご飯の後、高確率で約5分の昼寝をする事を知った。寝込みを襲うことができればベスト。だが相手はルドルフ。そう簡単には行くと思っていない2人はそれ以外の場合も想定していた。
2人が掃除用倉庫に待機してからの時間は重くゆっくりと流れた。作戦は何度も確認した。後は覚悟を決めるだけ。そう言い聞かせながらルドルフの動向をカメラで探っていた。
映像の中のルドルフは昼ご飯の鰻丼を食べた後、暖かい陽光の中、睡魔に襲われていた。彼はそれに抗うことなくゆっくりと目を閉じた。
その瞬間2人は顔を見合わせた。そして同時に頷き、2人は拳を交わした。心臓は激しく脈を打っていた。だが頭は予想よりも遥かにクリアだった。
打ち合わせ通りシュタルクが先に倉庫を出た。
左手には一枚の書類を、右腰に短刀を備えて。
扉の前まで来たシュタルクは一呼吸置き、音を立てぬようゆっくりと扉を開けた。
ルドルフはまだ寝息を立てている。
シュタルクはそっと体を部屋の中に入れもう一度ルドルフが寝ている事を確認した。
その後一度扉に向き直り、外から見えぬよう扉を閉めた。
扉を閉めた後、シュタルクは一度部屋の中を確認した。
そして目を閉じた。
机を1つ隔ててルドルフは居眠り。
右手には本棚。
左上部には歴代校長の写真が入った額縁。
それ以外に物はなく、比較的簡素な造り。
部屋は広すぎず、長方形の形。
その長手方向にルドルフ。
距離はここから約10メートル。
大丈夫。
俺は冷静だ。
ユキのために。
ユキの未来のために。
覚悟を決めろシュタルク。
あらゆる物と決別し、覚悟を決めたシュタルクは目を開いた。
そして右足を前に踏み出した瞬間。
ルドルフの目が見開いた。
「部屋に入るならノックくらいしてもらいたいものだな。シュタルク君。」
シュタルクの体は一度動きを失った。
しかしシュタルクは冷静に作戦の第2段階に入る。
「…すみません。考え事をしていたらノックする事を失念してしまいました。」
「考え事?」
「はい。実は少々厄介なことが起きまして。この書類を見ていただけますか?」
そういうと、シュタルクは左手にある書類を上に掲げながら止めていた右足をもう一度動かした。
一歩、二歩、三歩と着実にルドルフとの距離を詰め机を隔てて書類を渡した。
「ふむ。これは生徒会に関するものか。どれどれ。」
ルドルフが書類に目を通している間、シュタルクは一歩半ほど右側に体をずらした。
そしてそのまま動かなかった。
作戦通り。
次のアクションでヴォルフがフォルテを纏い奇襲する。
もちろんそれで決まるとは思っていない。
その次のシュタルクによる2手目が鍵だ。
そこで致命傷を与えなければ厳しいだろう。
だがやってみせる。
ユキのために。
目的はただ一つ。
ルドルフを殺す。
書類を読むルドルフを見守りながら、シュタルクはヴォルフの奇襲を待った。
静寂が辺りを包みゆっくりと時間が流れる。
その時間の流れに合わせるようにルドルフの右手がゆっくりと動いた。
シュタルクはその動作を見守っていた。
依然静寂のまま、ルドルフは右手を挙げたまま扉をじっと見つめていた。
…。
遅い。
ヴォルフが来ない。
シュタルクは焦りを感じながら、ルドルフの奇妙な行動に一抹の不安を抱いた。
「シュタルク。」
「はい。」
「本当の目的を言いなさい。」
「…」
「シュタルクが言わないのであれば、扉の外にいる共犯に話してもらおうか。」
そう言ってルドルフは腰を上げた。
その瞬間シュタルクは無数の氷の刃をルドルフの背後に具現し、叩き込んだ。そして自分自身も短刀をルドルフに突き立てた。
しかし氷の刃も短刀もルドルフの体を貫くことはなかった。
ルドルフとシュタルク以外のすべてのものは動きを失い止まったように見えた。
そしてシュタルクの突き立てた短刀は摘むような形でルドルフに止められていた。
明らかな力の差を肌で感じたシュタルクは体を震わせていた。
そしてその体勢のままシュタルクが口を開いた。
「今あなたに刃を向けているのは私だけです。外にいるものは何も行動を起こしておりません。だから咎められるのは私だけにして下さい。」
「そういうわけにはいかん。どういう理由があるかは知らんがこのような行為は罰せられるものだ。」
「……。」
シュタルクは少し考えた後、短刀を握る力を強め大きく息を吸った。
「お前は逃げろ!!ユキを頼む!!最後の瞬間まで側にいてやってくれ!!」
扉の外にいる者に聞こえるように大声を上げ、シュタルクはもう一度ルドルフに斬りかかった。
するとシュタルクの動きは完全に封じられた。
「無駄じゃ。外の者も今のお前と同じように動きを封じておる。」
「くっ…!」
「何があった。理由を話せ。」
「……ユキのために。…妹のために、あなたのモジュレーションを利用したかった。」
「その存在をどこで知った。」
「……。」
「スズカか。」
「違う!スズカはまったく関係ない!この事件は俺が引き起こしたんだ!」
「落ち着け。ではなぜそれを知った。」
「…以前スズカが忘れたノートをたまたま見た時があった。その時モジュレーションという単語とそれにまつわる話を読んだ。最初は意味が分からなかったし、そんな物は存在しないと思った。だがその後スズカと校長が何やら深刻な話をしているところを耳にした。そしてモジュレーションを使えばユキを救えると理解した。あとは想像の通りだ。」
「ふむ。…それではスズカだけでなくわしにも落ち度があるな。細心の注意を払ってはいたのだが、聞かれるとは。」
「……。」
「ユキといったな?その子はどういう状態なのだ。」
「…タクトが崩壊する稀な病気にかかった。医者の話ではあと数週間で…。」
シュタルクはその先の言葉を言えなかった。そして言葉の代わりに涙が溢れた。今でも体は震えているが、最初のそれと今のそれでは理由が変わっていた。
「それでわしを殺そうとしたわけか。」
「…。」
「何故相談せなんだ。」
「…相談して何になる。医者でもないお前に、、ユキの病気が治せるのか?」
「それでも力にはなれた。」
「お前を殺すことだけが!!……校長を殺すことだけが、、ユキを救える手段だったんです。そんな相手に相談できるわけないでしょう。」
「他に方法があったかも知れん。何故それを探さなんだ。」
「探しましたよ…!たくさん調べて調べて!たくさんの医者を巡って話を聞いて!でも……調べてもそんな稀な病気に関する資料は皆無だったし、どの医者も治らないの一点張りでした。」
「他には頼らなかったのか?」
「俺の要求を満たせる相手は思いつきませんでした。…いや、1人思いついていましたが…」
「その者が暗殺の対象になったということか。」
「…はい。」
「ふむ。確かにシュタルクが抱えた問題は難しかったのう。だが最後まで答えを出すことを諦めて欲しくはなかった。どんな事情があれ、人を殺すということを答えにして欲しくはない。綺麗事にしか聞こえんかもしれんが、人を救うためには人を殺すしかない世界など絶望でしかない。そんな世界にしないためにも、これからは1人で抱え込まず、周りに相談し新たな答えを出すことに尽力すると約束してくれ。」
「…。」
「そしてシュタルクよ。もしかしたらじゃが、わしは君の妹を救えるかもしれん。」
「…!!本当ですか?!」
「すまんが確信はない。だが最近、身体メカニズムに関しての新たな知見が得られてのう。それを応用すれば或いは上手くいくかもしれん。」
「お願いします…!ユキを…!妹を助けて下さい…!!」
「すぐに向かおう。だがこれが成功しても妹は今の妹ではなくなるぞ?」
「どういうことですか。」
「話はユキさんの前で行う。本人にも考える時間が必要じゃろう。それにこの件はスズカの力を借りる必要もある。時間がない。行くぞ。」
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「なーるほど。それで校長が突然目の前に現れたと。」
「ああ。」
「ああってねえ、お兄ちゃん?!急いでるにしても扉から入ってきてよ!!乙女の部屋に突然ワープして現れるなんてデリカシーなさすぎっ!!」
「す、すまん。」
「はー。まあいいわ。話聞かせてくれますか?」
「うむ。最近得られた新たな知見じゃが、人間のタクトとその他の動物のタクトは構造が似てはいるが完全に同じ物ではないということが明らかになったのじゃ。君のタクトの疾患はカルテを見る限り、人間にしかないメカニズムの部分が崩壊する事が原因のようじゃ。人間のタクトのままではその部分が崩壊するとタクトが機能しなくなる。そのため死に繋がるが、人間以外のタクト構造にすれば機能停止には至らないはずじゃ。」
「ルドルフ校長。私はこの子の主治医です。確かに校長のお話は理論的にはあっていると思いますが、タクト構造を人間以外のものにすれば、やはりタクトは人間に適応せずユキさんは生きられないのではないですか?」
「おっしゃる通りです先生。人間以外のタクト構造にすればユキさんは適合せず死ぬでしょうな。だがそれはユキさんが人間の体をしているからこその話です。」
「…!どういうことです?」
「ユキさんが人間以外の動物の体に擬態した状態であれば一部欠落したタクトでも生命活動が維持されるでしょう。」
「人間以外の体…。」
「もちろんこれは本人の意志で決めるべき問題じゃ。本人がそれを望まなければやるべきではない。」
「待ってください校長。確かに擬態すれば人間以外のタクトでもいけるかもしれません。ですが、擬態し続けるといずれフォニムが枯渇してしまいます。そうなればユキさんはまた人間の体に逆戻りしてしまう。」
「そう。そこでわしの出番じゃ。ユキさんが擬態した後、わしの力で擬態のプロセスの一部を封印する。」
「…どういうことです?!」
「ここからは小難しい話になる。じゃからザックリいうとじゃな、擬態という魔法は元の体から変体した後、また元の体に戻るというプロセスがある。その一連の流れが擬態という魔法でその間延々とフォニムは消費される。じゃが最後の元の体に戻るというプロセスを封印すれば擬態した段階で魔法のプロセスは終了しフォニムは消費されなくなる。」
「た、たしかにそれなら。で、ですが本当にそんなことが?!」
「わしに任せておけ。」
「まーじか。そっか。人間以外になれば私まだ生きれるんだね?」
「ああ。」
「それって会話とかできんのかな??」
「そこも魔法を使えばなんとかなるぞ。まあそれなりに難しい術ではあるがのう。」
「そっか。…わかった!私それに乗るよ!」
「本当にいいのか?ユキ。」
「いいのいいの!だってまだまだ生きたいし!!」
「…そうか。」
「うむ。それでは早速取り掛かるかの。とその前にスズカよ。封印魔法は術者が死ぬと全ての封印が解かれる。わしはこの子より長く生きることはできまい。じゃからわしが死ぬまでに今から行う術を覚えるのじゃ。そしてわしの死後この子にもう一度術をかけてあげておくれ。これができるのはスズカよ、お前だけじゃ。」
「…分かりました。」
「そして2人は己の誤ちを反省せよ。そしてこれからは困難に対して考え抜くのじゃ。間違った道を選ばぬよう、何が最善なのか、最後まで諦めず考え抜いて欲しい。そして今回の反省を生かし、次世代の若者に自らと同じ過ちを犯さぬよう教育してあげて欲しい。」
「…誰に言ってるの?」
「ユキさん。老人の独り言じゃよ。」
シュタルクとヴォルフはルドルフの言葉を胸に刻み、また細やかな配慮に感謝した。
「では始める。ユキさんよ。何に擬態するかね?」
「うーん。じゃー猫!真っ白な猫になるね!」
「そうかそうか。では擬態しておくれ。」
「うん!っとその前に当分喋れなくなるかもだから先に言いたいこと言うね。みんな私のためにありがとう。このご恩は一生忘れません!ぜーーったいにいつかみんなに恩返しするから!!」
シュタルクは頬に涙をつたわせながら、ユキの姿を見守っていた。ヴォルフとスズカも傍で目に涙を溜めていた。
「みんなそんな泣かないでよ。。死ぬみたいじゃん。。」
「…すまん。」
「もー。でもほんとにありがと。お兄ちゃん。」
シュタルクは抱えていた全てに対して安堵した。ユキの命を救えたこと、ルドルフを殺さずに済んだこと、ヴォルフを巻き込んでしまったこと、自分が殺人者にならなかったこと。…出来過ぎなくらいで今も現実かわからなくなる瞬間があるが、その分心の底から嬉しく、涙が止まらなかった。
「あっ!どーせ猫になるなら新しい名前が欲しいな!そーーだなぁ…。、、、きーめた!!私の猫姿の名前はシャルルね!」
ダメよ。こんな記憶思い出してもらったら困るわ。
私のナイトでいてもらわないと。
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