幼馴染と9日戦争

ぷるぷる

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第参章

DAY9 -最初で最後の- 開戦編 教師の刃

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互いの剣を一度離し、2人と1匹はそのまま地上に着地した。
周りも勿論戦場と化しており、狼の召喚獣に対して教師並びに生徒が応戦をしていた。外からは先ほど手合わせした連中が押し寄せてきており、学内にいた教師たちで侵入を阻止しようとしている状態だった。一部の者はその防衛線を超え進入に成功しており、手当たり次第戦いに興じている様子だった。しかしそんな彼らも白猫と白髪の男が放つ異様な空気に対して距離を置いた。

「ただの猫ではなさそうだな。お前が何者かは知らんが、手加減などはできん。命を失っても知らんぞ。」

 標的ではない白猫を消すことに対して、若干の歯切れの悪さを見せるヴォルフ。しかしそれは同時に、邪魔するなら殺すという事を警告していた。

「縁もゆかりもないやつが見るからに危なそーなところに飛んできて、やんややんやすると思います??あなたは知らなくても私はこの戦いの関係者なのでどうぞご遠慮なさらず。」

 ルークは緊張の糸を切らさず、常にヴォルフの動きを警戒していた。そうしなければヴォルフの動きについていけれない。同じフォルテを手に入れたからといって、剣聖と呼ばれるヴォルフに並んだとは到底思えない。そう思いながらヴォルフの出方を伺っていたが、シャルルの発言の後から沈黙が続いた。それは普通に考えればとても短い時間だった。深呼吸が一度できるか否か、その程度のものではあったが、戦場においては致命的なことに繋がりかねない時間の使い方に思えた。

「何ぼーっとしてるのヴォルフさん?聞こえてますかー?」

「ああ。つまらない事を考えた。俺はそこの坊主に用がある。邪魔するなら容赦はしない。」

「私もあんたに用があるから容赦なんてしないからね。」

「…。行くぞ。」

 ヴォルフは地面を強く蹴り、ルークに向かって大剣を振り下ろした。ルークはそれを受け止めるも、体を支える両足は悲鳴を上げながら地面に食い込んだ。ヴォルフが次のアクションを起こす前にシャルルからアスフィアと叫ぶ声が聞こえた。右翼から炎が蜷局とぐろを巻き先端は鋭く尖る形状をしていた。ヴォルフはフォルテでそれを受け止めず、ルークと距離を取る形で躱した。しかしその炎は蛇のように対象を追いかけ、ヴォルフの正面から襲いかかる。逃げる意味をなくしたヴォルフはそれを大剣で斬り裂きにかかった。炎と大剣が触れた瞬間、大きな金属音が鳴り響き、火花を散らすその様は異様であった。ルークはチャンスとばかりにヴォルフの左翼から一撃を狙いにいった。追い込まれたヴォルフは大きな怒号を響かせ、瞬間的にフォルテによる爆発を引き起こした。それによってアスフィアはかき消され、ルークは後方へと吹き飛ばされた。

「ルーク。この短期間でフォルテを習得したことは褒めてやる。だが、まだまだ俺には遠く及ばない。フォルテの資質もその使い方もだ。」

「でも気づいているんじゃない?ルークの潜在的な才能を。この子のフォニム量はバケモノ級だよ?」

「だが使いこなせなければ身を滅ぼす。その赤い瞳がいい例だ。」

「相変わらずお堅いねえ。かの有名なジーク様だって目は赤かったっていうじゃない。うちの兄様が好きそーな話題だよ?」

「…お前は何者なんだ。」

「それももう気づき始めてるでしょ?堅物さん?」

 尻尾を振るとヴォルフの周りは大きく揺れ始めた。フォルテにより上空へと避難したヴォルフに対して氷の矢が追撃する。数十本の矢をヴォルフはことごとく打ち落とした。そして弾幕がなくなった瞬間に空を強く蹴り、シャルルに向かって剣撃を飛ばすもルークが間に割って入る。

「くっ…!!狙いは俺なんですよね先生?!」

「当たり前だ。お前には申し訳なく思うが俺の望みのために…!」

「なーにを望んでるのかしら?」

「貴様らには関係ない…!」

「関係あるよ!!俺の命狙ってるって言うんなら理由くらい説明しろよ!!」

 ルークはヴォルフの大剣を弾き返した。ヴォルフは間合いを取り直し呼吸を整えつつルークの目を見た。その瞳は赤く燃え上がり、先程の言葉に嘘偽りがない事を伝えていた。

「…愛する者が生きていくために、お前の命が…モジュレーションというものが必要なんだ。この行為が歪んでいる事をは知っている。だが、後には退けん。」

ってどう言う事…?まさか兄さんまで…。」

「…お前!!本当に一体何者だ!!!」

(スズカさんまずいよ!!兄さんまで…までおかしくなってるかもしれない!!)

(ボブ!!!ジャックから目を離さないで!!)

 スズカからの通信に対しボブは言われるまでもなくとジャックのサポートに努める。ジャックは侵入した武装集団と相対しており、敵を圧倒していた。ボブもまたそれをサポートし、万が一何かあったときのためすぐに対応できる位置を常にキープしていた。そこへ突如、赤髪の女が空間を割って現れた。狙いをジャックに定め白色光で辺りを照らした。ボブは瞬間的に間に入り、フォルテによってそれをかき消した。

そのときだった。

後ろにいるジャックが血反吐を吐き倒れた。
左腹部から鮮血が溢れ出す。

倒れるジャックにとどめを刺そうと血に濡れた氷の剣を持つその者は、学院の教師であるシュタルクだった。
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