8 / 31
第八話
王都防衛戦 ⑵ 黒龍と鼻息とおじさん
しおりを挟む「毎度どうもー!!ロキシュタイン伯爵ー!!」
「毎度毎度、オヤマダ社長、良い感じじゃない、格納庫」
「はいー今回オヤマダ建設の方でしっかりと設計から施工まで責任を持って完成させて頂きましたー」
オヤマダ電機から始まった彼の会社オヤマダカンパニーは現在、IT産業、建設業、リゾート業、食品外食産業etc……と手広くかなりの規模となっている。
オヤマダはロキの後ろに控えて辺りをキョロキョロ見回しているアイーシャにも挨拶した。
「これはこれはアイーシャ様、本日もお美しいですなぁ。最近は私どもの世界ではこんな事言うと、やれセクハラだポリコレだパリコレだ言われて大変なんですが、美しいものを美しいと言ってなーんで怒られにゃならんのかと……」
「まぁ確かになぁ、美しいものは美しい、それを黙って密かに思っている方がいやらしいと俺も思うよ。パリコレとは言われないけどな」
ロキはめんどくさかったが、オヤマダジョークを一応拾ってあげた。
「オヤマダさん、こんにちは。すいませんねぇ、ロキ様が無理言ってこんな魔族に囲まれた城内でお仕事させて……」
「あーいえいえ、アイーシャ様、我々納期第一主義、例え魔族に囲まれようとも……って、ちょっ、この城魔族に囲まれてるんですか?」
「うんうん、なんか凄いよー?外は。魔族魔獣が大挙して押し寄せて落城寸前だった」
「でも魔族の類いはロキ様が先の戦いですっかり片付けたとお聞きしてましたが?」
「そのはずなんだけどな。とは言え俺も魔王殺すの途中で止めてそこらに居た勇者パーティA、B、Cに任せて帰ってきちゃったから良くわからないんだよね。まあ残党がいたんだろうね、それにしちゃ凄い数だけど」
「ロキ様にしては画竜点睛を欠きましたな?」
「そう言ってくれるなよ。逆に今、久しぶりにちょっとワクワクしてるんだ、あの大群をどうしてくれようかってな」
「おぉ、どこぞの戦闘民族みたいですなー!」
「オラ、すっげぇ……」
「ロキ様、その辺で……」
ロキが調子に乗り始めて話が進まなそうな気がしたのでアイーシャが制した。
「えーと、何だっけ、あー黒龍にコクピットってつけられた?」
オヤマダは良くぞ聞いてくれましたとばかりに
「正直、今回それが一番大変でした……うちの社員に黒龍様を見せるわけにいかず……コクピットをあっちで製造してこちらに運んで取り付けを私がしたんですよ?もう、怖いの怖くないのって怖いんですけどね!」
「あはは、嫌がったろう黒龍」
ロキは黒龍の方を見るが、背を向けているのでどうなっているのかわからない。
オヤマダは案内する様に黒龍の正面に向かって歩きながら説明した。
「はい、まず取り付ける事を了承してもらうところからスタートして、何回鼻息で吹き飛ばされたか……でも、私の熱意が何とか通じて、こちらをご覧下さい」
黒龍の額、二本の角の間に透明なキャノピーが見える。
「おぉ……格好いいな、ピタリとフィットしてるじゃないか。黒龍、どうだ?少し違和感があるかもしれんが」
黒龍はバフー!と鼻を鳴らした。
目の前のオヤマダが咄嗟に頭を押さえる。
「ひぃ!黒龍様、取れちゃう……じゃなくて髪型が乱れますー!」
アイーシャがその様子を見て笑いを堪えきれずに吹き出した。
「黒龍、ちょっとキャノピー開けるぞ、さぁアイちゃんもおいで」
ロキはキャノピーを開けた。
白い革製のシートが縦に二つ並んでいる。
操縦するわけではないので操縦桿や計器類は付いていない。
「良いシートだ、オヤマダ社長」
オヤマダはニヤニヤしながら
「はいー、なんなら背もたれを倒せば二人位寝られない事もないですよー?」
「そんな機能必要ありません!」
アイーシャが即座に反応した。続いて黒龍がさっきより強めにバフーー!!とオヤマダに鼻息を当てた。
オヤマダは頭を押さえながら
「ジョークですよぉ、アメリカンジョーク。黒龍様も怒らないで下さい……虎やライオンより怖いんだから……」
「で、あの扉は自動か?」
「はい、黒龍様が扉に近づくだけで自動で開きますよ!」
この格納庫は南側の断崖絶壁に面しており、扉が開けばそこは広大な海が広がっているはずだ。
ちなみに……上階の浴場は室内風呂を抜けると海に面した、黒龍が浸かれるほどの大きな露天風呂となっていて、ロキもアイーシャもお気に入りの場所となっている。が、もちろん、まだ一緒に入った事は無い。
ロキとアイーシャは早速コクピットに乗り込んで、シートベルトを締めた。
「じゃあオヤマダ社長、ちょっと上空から様子を見てくるから。請求書はその辺に置いといてくれ。支払いはいつもの様に。ここは今戦争の真っ只中だから早めに自分の世界に帰れよ?」
「はい、毎度ありがとうございます!戦闘の様子はキャノピーに取り付けたG-proを通して拝見しても構いませんか?」
「あぁ、別に構わんよ」
「それでは、いってらっしゃいませ!」
オヤマダは深く頭を下げて見送った。
黒龍はゆっくりと巨体を揺らして格納庫の扉の前まで移動した。
扉はゆっくりと前に開くと天井にスライドしていく。
黒龍が飛び立つ前に前面に広がる海原が見えたが……
「アイちゃん?なんか海賊船みたいなのが沢山見えるんだけど……」
「あら、あの帆の印は南の大陸オーストベルクのものですね」
言った瞬間、大型帆船の一つから大砲が火を噴いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~
存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?!
はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?!
火・金・日、投稿予定
投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる