ロキは最強に飽きている

月極典

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十四話

あの化け物に復讐を

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 大陸北部ツィルハフ、魔王城は未だに半壊状態であった。

 側近達は復興を進言したが、魔王レイスはあの化け物を倒すまで無駄になると拒んだ。あの屈辱を忘れない意味もあったかもしれない。

 魔王は玉座に座り、虚空を睨んでいた。
「感じる……あの男の、あの化け物の魔力。大陸の南から北へ縦断して尚減衰しない、うねるが如き魔力が……」
 
 あの日!
 
 俺は城を包囲され、城内で迎え討とうと待ち構えていた。

 勝てると思っていた。それまでの戦いの中で苦戦した事など無かった。別にこの世界全ての者と戦った訳でもないのに勝手に己を無敵だと位置付けていた。

 さぁ来い、人間共。魔王の恐ろしさをとくと味わうと良い。……等とこの玉座で慢心しきっていた。
 
 その時、天空から隕石が次々と城に直撃した。

 俺は咄嗟に防御したが城は半壊し、生き残ったものも巨大で凶暴な黒い龍の圧倒的な攻撃に焼かれ、潰され、そして喰われた。

 傍若無人なその龍はこの俺に一瞥もくれずに暴れ回った。魔王がすぐそこに居るのにだ。

 俺を守ろうと決死の戦いを挑んだ我が腹心達も、従者と思われるエルフの女に一刀の元に倒されていった。従者のエルフ如きにだぞ!くそ!

 その後、手ぶらで飄々と現れたロキという赤髪の男、ふざけた会話を俺と二、三かわした後、戦った。が、まるで歯が立たなかった。

 何度形態変化し強化しようが、魔力の全てを込めた魔法を繰り出そうが、あの化け物は笑っていなした。

 訳がわからぬ間に幾つもの致命的な攻撃を受け、俺は息絶えようとしていた。

 その時だ、化け物が攻撃をやめた。相手を見ると呆れた様な、哀れんだ様な表情で上から見下ろしていた。

「ねぇ、そこの人達?俺はもう飽きたから帰るよ、こいつ殺して首を取る名誉はあげるから後はよろしく」
 
 確かそんな事を言っていた。まるで一日の仕事が終わった、なんて事のない日々の会話の様な口振りだった。

 何故あの様な桁違いの強さを持つ者が居る同じこの世界で、魔王などと恥ずかしげもなく名乗り、君臨出来ていたのか……。

 意識が消えかける中見た、あのフラフラと散歩でもする様に帰って行く後姿、死にゆく我が身に激しく燃える屈辱。

 例え今、命尽きるとも、生まれ変わってお前を殺す……。

 
 真っ白いその空間で目を覚ました時、目の前に見知らぬ男がいた。
青い髪、細身の裸体に白い布を腰に巻きつけた姿だ。

「お前が地獄の門番か?にしては優男だな?」

「いやいや、そんなんじゃないさ」

「では何者だ」

「僕は多元宇宙を監視する者」

「なんだ、それは」

「まぁ簡単に言えばめちゃくちゃ偉い人だ」

「では神か?」

「君らが言うところの神?みたいに豊穣を司ったり有難い事は何一つしないけど、理解が早いならそれで良いよ」

「話があるなら早くしてくれ、今腑が煮え繰り返ってるんだ」

「魔王レイス、悔しいだろ?何せ相手に飽きられて帰られちゃったんだから」

「無様な俺を馬鹿にしに現れたのか?めちゃくちゃ偉い割に趣味が悪いな」

「まぁ聞きなよ。僕が力を貸すからさ、生き返ってあのロキを殺して欲しいんだ」

「何故俺なんだ、自分でやれば良かろう」

「ああ、無理無理、あんな化け物、僕が戦っても勝てないの。だから謀略で記憶消して適当な次元に蹴り落としたんだけど、なーーんにもないとこで朽ちるまで永遠に彷徨うはずが何故か……うーん、因果律が作用したのかなぁ、君らの次元に落ちちゃって」
 男は頭を掻きながら言った。
 
 あのロキといい、こいつといい、相手を舐めた態度が本当にイライラする。レイスは煮詰まった腑をさらにコトコト煮込まれている気分になった。
 
「そんな怖い顔しないでよ、普通にしてても怖いんだから。でね、話戻すと、次元の書ってのがあるんだけど、困った事にあいつ、記憶無い筈が思い出しちゃったらしくてね。流石にこれはほっとけないよねって話になって……」

「困ってる割にノリが軽いな」

「いや、ホントまずいの。もし記憶戻った時にアレ持っててるとこっち来ちゃうから、暴れたら手つけられないんだよ?ロキって怖いんだから」

「いくら、あんたが手を貸してもそんな化け物に勝てるのか?さっき一方的に手も足も出ずに死んだんだぞ?」

 男は、レイスの力を測る様に見て言った。
「今のままじゃ無理だね、百倍強くなっても勝てるかどうか……」

 レイスは自嘲しながら問うた。
「百倍か、俺が百人いても勝てないわけか。で?あんたが手を貸せば、それ以上強くなると言う事か?」

「なるね、ただすぐと言うわけにいかない、君の身体が保たないからね。生き返ったら暫く死んだふりでもしてやり過ごすんだ。でないと化け物ロキが戻ってきちゃうからね」

「ふむ」

「ロキの魔力が十分去ったのを確認したら、そこらの残党を殺して反撃準備だ。君が強くなるまでの時間稼ぎは僕がなんとかしてあげるよ」

「断ったら?」

 窄めた五指をパッと開いて相手は言った。
 「別に、そのまま消滅して終わり。今話せてるのは僕が拾い上げただけだから」

「わかった。だが、条件がある。我が腹心を何人かついでに生き返らせてもらいたい」

「いいよ、そう来なくちゃ」

 明らかに信用ならない男だが、そんな事はどうでも良い。悪魔に魂を売る事になろうが、俺はあの化け物を殺さねばならない……!
 
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