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二十三話
王都防衛戦 ⒂雲の上で
しおりを挟む曇り空、今にも雨が降りそうだ。
ここ大陸南部は基本乾燥した地域だが、時折猛烈なスコールが発生する。
そのおかげで地域の木々や農作物が潤っている。
ロキは空を見上げた。
「全てが良い塩梅だ。日が暗い雲に隠れてキングの視界を狭くする」
軍隊アリが、こちらにカサカサと群れをなして近づいて来る。黒龍とて、あの群れに集られたら無事では済まない。
「黒龍、一度全速で退却だ」
黒龍は小さく咆哮し飛翔し、その場から遠去かる。
黄金龍はそれを見て光線を発するが、間一髪で届かない。
「アリさん、少し小さいな……踏み潰されてしまう」
ロキは次元の書を取り出し唱える。
「ウン……ブレイ」
光が軍隊アリに降り注ぐ。
極小である事を武器にしていた無数のアリが徐々に巨大化し、牛程度の大きさになった。
小さ過ぎてはっきりとわからなかった姿が明らかになる。
黒光りする身体に体長に似つかわしくない茶褐色の長い四肢、そして大顎。一度食いついたら頭が胴体から取れても離さない咬合力と獰猛さがある。
アイーシャは空からその様子を眺めてどん引いた。
「うわぁ……キモ強そう……。あんなのが無数にいたら」
「すぐ消せるさ。俺が作り出したんだから」
「あぁ、そうでした、ロキ様って何者ですか?今更ですけど……」
「あれ、嫌われたかな?」
「いえそんな……す……す……すごい、です!」
アイーシャは恥ずかしそう言った。
雑音と共にオヤマダの声が聞こえる。
「ズコッ!通信機の向こうから本日二度目のズコッ!アイーシャ様ぁ!そこはすごいじゃないわぁ!そこはす……」
「もう!オヤマダ社長、通信終わります!!」
アイーシャは通信をオフにした。
軍隊アリの群れが黄金龍に到達。
一群がその脚に、尾に噛み付く。
それを乗り越え、またそれを乗り越え、次々に身体を覆い尽くそうとする。
黄金龍は堪らずに甲高い咆哮を発した。
辺り一面は既に黒い絨毯と化している。
「よし、黒龍そろそろいいだろう。上空高く雲に隠れろ!」
黒龍が、間髪入れず上昇していく。
ロキは振り返り、アイーシャに手を差し伸べる。
「え……何ですかこれ?」
アイーシャがロキの手を指差して少し赤面した。
「魔力無いでしょ、充填するから手繋いで、ほれ」
「あぁ、そうゆう……」
アイーシャは恥ずかしそうにロキの手を握った。
「……良いわぁ……推せるわぁ、このラブコメ……」
雑音と共にオヤマダの独り言が聞こえてきた。
「ロキ様、通信オンにしたんですか?」
「まぁ、一応共有しとかないとね。……さて魔力はこれで良し、そろそろ雲に隠れたかな」
ロキがキャノピーを開ける。地上と違い、太陽の光が眩しい。辺りは神々しい景色だが、アイーシャにそれを眺める余裕は無い。
「さっぶぅ~!ロキ様、防寒具!は、鼻水が……」
「確かに……さっぶぅ!一回閉めよう!」
「オヤマダ社長、今から高度から空飛ぶんだけど何か無いかな?」
「はいはい、それならスカイダイビングスーツがよろしいかとー」
ロキは次元の書を開いた。
「これか、男性用と女性用っと」
二人は色鮮やかなスカイダイビングスーツにゴーグルをつけ、コクピットを出た。
「黒龍は寒くない?大丈夫?」
アイーシャが黒龍の顔を優しくさすると、嬉しそうに小さく咆哮した。
「ロキ様がいつの間にか持ってる、その武器はなんですか?」
「これは勿論、何でも叩き潰すトールハンマー、ミョル……ミョルヌ……おーいオヤマダーなんだっけ?」
「ミョルニルですー、そこはカッコよくキメるところー!」
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