俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指

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第4章

お引越し前夜

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アニムスのギルドでのステータス鑑定が終わってから、俺達はそのままギルド内の食堂でご飯を食べていた。
そして、そこにエレナとユキノが合流したのだが、案の定というかやっぱりというかギルド内では彼女達の怒号が飛び交っていた。

「い、陰謀ですこれは!!
そんなの絶対に認めません…!!!
認めませんよ!!!!!!」

ユキノが叫び、ギルド内では動揺にも似たどよめきが広がっている。
しかし、その動揺はユキノの吠えた影響ではない。

「ふーん…。
ステータス鑑定、そんなにも良かったのね?
ムカつくけど、まぁ褒めてあげるわロボっ子。」

そう。
アニムスのステータス鑑定が、俺達の想像よりも遥かに良かったからである。

素でゴリラ並に存在する身体能力は当然のようにマックスで、魔力の方も高レベル帯と大差ないという。
まぁ、魔力源が高度な魔道具とかいうインチキみたいな存在だから、当然といえば当然なのかもしれない。

本人曰く、眠っていたとはいえアニムスを500年も動かしているうえに、そこから別に魔力を抽出して利用もできるわけだから、俺達が想像しているよりも彼女に埋め込まれている”アーティファクト・ソフィア”なるものは、相当にぶっ飛んでいるのかもしれない。

ただ、彼女のステータスには他にも【腹グロ】や【不幸】、【人類不信】や【引きこもり】などが存在していて、その数値が軒並みマックスだった。
もちろん、悪い意味で。
引きこもりに関しては、500年間も家の中で寝ていたわけなのでまぁ納得というか。

そういうことなので、即日でランキングが決まるわけではないが、手ごたえ的にはおそらくユキノにも負けないほどのランクになる可能性が高いという。

「悔しいのですか?
悔しいのでありますか白髪?
どれくらい悔しいのか、アニムスに丁寧に説明してみると良いです。
…と、アニムスが言っています。」

「お前…!!
何も実績を残していないくせに調子に乗るな!!!!」

それは俺も同じなのでやめてほしい。
所詮、俺は金魚のフンである。

実際に、先ほど俺達の新しいランキングの更新も発表された。
ギルドカードにすぐに記載されるので、見たくなくてもすぐに目に入るのだ。

エレナは当然のごとく《第10位》のままで、ユキノは299位までランクアップしていた。
つまり、新しく入るアニムスのランキングもおそらくこのあたりである。

…俺?
聞かないでほしい。

「それにしても、マスター。
アニムスは、このランキングシステムに激しく抗議したいのであります。」

「なんだ突然?」

「マスターのランキングであります。
なぜ、50020位なのですか?
ありえないのであります。」

ありえない、と言われてもそれが実際に俺の身に起きている現実なのである。
なぜ?は俺の方が聞きたい。

ちなみに、50010位から50020位に下がったのは、いつも通りアニムスのようなギルド登録者が増えたからである。
今は、50022位中の50020位。

相変わらず、ウンコ以下らしい俺の下には2人の仲間がいる。

「俺のことは良いよ。もう諦めてるし。
てか、アニムスもご飯はきちんと食べるんだな。
安心したよ。さっき、全然食べてなかったから。」

「さっきは、食べる気が無かっただけであります。
マスターとお話がしたかったので。
食事は、人類の営みや健康を促す素晴らしいファクターなのであります。」

口いっぱいに食べ物を入れながら、美味しそうにそう言っていた。

「お話って何よ?なんか話したの?
てかアンタ、それどうなってるわけ?
食べ物や消化したものはどこへ行くの?」

「お話内容は秘密なのであります。
食べ物は、普通に体内で燃焼するのです。
チリ単位にまで。
溜まったゴミや邪魔なモノは、後からアニムスの穴という穴から放出できます。」

「じゃあ、お前も俺達と同じように食べないと生きていけないのか?」

「いえ、美味しいから食べているだけであります。
食べなくても、ずっと生きていけます。」

本当に、この子を作った奴は何を考えてこういう生態にしたのだろう。

「あとさ、ギルド内でのアニムスって職業ジャンル的にはどうなるんだろ?
俺は、レベルの低い単なる何でも屋だし。
ユキノは魔法使いだろ?」

「腐れ人形で良いですよ。
こんなやつ。」

そんなジャンルは、存在しない。

「トータや私みたいに、オールジャンル的な扱いになるんじゃないの?
色々と視てみたけど、そいつ魔力は操れるけど現代的な魔法はまともに扱えないわよ。」

「…へ?
そ、そうなの?
なんでそんなことわかるんだ?」

「え?
いやいや、だから私の”眼”」

「あっ…。
そ、そっか。」

エレナ様には、相手の情報や状況、力の流れ等々を全て見通す”神眼”がある。
そういや、カターユの館にいた時点でアニムスのことを色々と調べてたっけ。
ケンカばっかりしてたけど、そのあたりを調べる作業もきちんとしていたとは…。

さすが戦闘狂である。

「でも、深層の部分は私の眼でもハッキリとは見えないわね。
これを作った奴、本当になかなかたいしたもんだわ。」

「そんなに凄いのか?」

「深いところを見ると、その部分の全体像がそれこそ障壁みたいにボヤけてる感じね。
バラしたら余裕だと思うけれど、やっちゃダメなんでしょ?」

当たり前である。

「アニムスって、魔法とか使えないのか?」

「魔法というか、スキルは使えるのであります。
それで十分なのであります。」

「そういや俺のスキルも勝手に使ってたもんな、お前。」

確か、《コネクト》だっけ。
“アーティファクト・ソフィア”に付随している、いわゆる特殊スキルみたいなものである。

「せいぜい、足手まといにだけはならないでほしいですね。
ランキング上位だからと言って、まともに戦えるかどうかはわかりませんよ。
実際に、ギルド内ランキングは信用や信頼を重きに置いている部分もありますから。」

「そうでありますね。
アニムスにズタボロにやられた誰かさんよりかは、活躍できるのではないですか?」

「…ぐぎぎぎ……。」

持っているスプーンをそのままへし折る勢いのユキノだが、そろそろ少しは仲良くしてほしいものである。
まぁお互いがお互い、歩み寄ることを拒否しているわけだが。

「で、エレナやユキノは必要なものは買えたのか?
多分、明日にはもう新しい家に行くことになるぞ。」

「もちろんよ!
私が快適に生活ができるあらゆるものを揃えたわ!!
おかげで、貰ったすべてのお金を失ったわけだけれども!!!」

聞き捨てならない言葉があったような気がする。
コイツ、ここの食事代はどうするつもりだ?

まぁ、また俺のおごりか。

「私も、十分に揃えましたよ。
無駄遣いはしていませんが、これからのことを考えて新しい住宅で生活をきちんと出来る一式は購入しておきました。」

「いやーそれが一番ありがたいよ。
やっぱり、ユキノに任せておいて良かった。
正直、未だに家庭用の魔道具の使い方や選び方が全くわからないから。」

実際に俺は未だにまともに魔法を1つも使えないので、道具から火が出てこないと食事すら作れない。

「あの、アニムスは良いのでありますか?」

「あぁイランイラン。
お前の分も俺が買っておくから。
家や報酬まで貰ったのに、生活用品や家具までアニムスに買わせてたらカターユさんに何を言われるかわかんねーよ。」

「でも、何かお役に立ちたいのであります。」

「…あのさ、割とずっと思ってたんだけどお前ってメイドさんか何かだったの?
なんでそんなに奉仕したいんだよ。
マスターってそういう意味か?
ご主人様的な?」

「全然違うのであります。
マスターはマスターです。いぇーい素敵。
…と、アニムスが言っています。」

……まーーた適当なことを言ってんだろうなぁ。
ロシア帝国のラス・プーチン並にフワッとしたことしか言ってこない。

そのうち、神の声を聴いた…とか言い出しそうである。

「そうよ。
だいたい、なんで私の従者のトータには奉仕して私には冷たいのよ。
おかしいわ。もっと崇めなさいよ。称えなさいよ。
私はトータのご主人様なんだから。」

「うるせぇバカ女。」

「なんですってぇえええええええええ!!!!?」

この黒アニムスさんが、きっと本性なんだろうなぁ。
もう隠しきれてないんだから、隠す必要もないだろうに。

本当に、なんで俺にだけはこんなにも態度が柔らかいのだろう。
コンニャクとコンクリートくらいの違いがある。

本気で俺は彼女に何も言ってないし、してもいないのだが…。

「まぁとにかく。
明日、旧カターユ邸に行ってみよう。
聞いた話だと、しばらく誰も行ってないし手入れもしていないみたいだから。
掃除や荷物運びやら何やらで時間と気力を使うだろうし、みんなちゃんと食べて休んでおけよ。」

雰囲気最悪のどよめきと怒号の中、俺達は明日の準備をするのであった。
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