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EPISODE6 眩しい世界
眩しい世界①
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「蒼ちゃんと一緒に行きたいとこがあるんだ。今から一緒に行かない?」
「……え? 今から?」
日曜日の早朝、蒼汰は怜音に叩き起こさられる。
もうすぐ怜音と暮らし始めて、一カ月が経とうとしている。もうすぐ、怜音の誕生日だ。
その顔は子供のようにキラキラと輝いているから、もしかしたら何かを企んでいるのかもしれない。
「うん今から。でも、やっぱり外はまだ怖い?」
「……外か……」
「大丈夫だよ、怖くない。俺がずっと傍にいるから」
「……じゃあ、行く。俺、行ってみたい」
「うん、行こう」
怜音が蒼汰を見つめて微笑んだ。
「でも怜音君! 自転車で、なんて聞いてない!」
「あははは! だって仕方ないじゃん。俺ら二人とも車の免許持ってないんだもん!」
「もー! 引き籠もりの体力を舐めるなよぉ!」
怜音から移動手段は自転車だと聞いていたから、てっきり近所に行くものだと思っていた。しかし、もうアパートを出発して一時間くらいになる。
どうやら山に向かっているらしく、どんどん道は険しくなるし、酸素が薄くなってきている気もする。まるで、エベレストの頂上を目指している気分だ。
「蒼ちゃん、運動不足なんだよ」
「当たり前じゃん。二カ月以上引き篭ってたんだから」
「よかったね、運動のチャンスがあって」
「だからっていきなりハード過ぎるよ」
「でも気持ちいいね!」
肩で息をしている蒼汰になんてお構いなしに、怜音はぐんぐん自転車を漕いで行ってしまう。蒼汰は置いていかれないように必死だった。
「はぁ、はぁ……ねぇ……怜音君……はぁ……どこに向かってんの⁉」
「もう少しだから……はぁはぁ……頑張って!」
「しんどいよぉ‼」
「もう少し! 蒼ちゃんも知ってる場所だよ。頑張って!」
「もう、無理ー!!」
蒼汰の絶叫が、山に響き渡った。
蒼汰の体力が底を尽こうとした頃、うっそうと茂っていた林が途切れ、目の前に広場が広がった。薄暗い林から一気に明るい場所に出た蒼汰は、あまりにも日差しが眩しくて目を細める。ここが、今まで必死に登っていた山の頂上。
「蒼ちゃん、着いたよ」
嬉しそうに笑う怜音が見つめる先には……。
「あれ、何の建物? 誰かの家……じゃないよね?」
「違うよ。あれは教会」
そう言うと自転車を開けた場所に停めて「あー! 疲れた」なんて大きく伸びをしている。
――教会……あ、もしかして、あの時の……。
蒼汰の眠っていた記憶が、少しずつ呼び起こされる……そんな感覚に包まれた。
「早くおいで」
怜音が蒼汰に向かって手招きをしている。
秋の日差しに怜音の髪がキラキラ光っていて、とても綺麗だ。自分にはないαの魅力をもつ怜音を見ていると、どんどん鼓動が速くなってくる。
――こんなにも立派なαを、自分だけのものにしたい……。
いつからか、そんな独占欲を怜音に対して抱いていた。
今は素直に、怜音と番になりたいと思える。
「待って、怜音君」
「早く、おいで。蒼ちゃん」
自分に向かい微笑む怜音の元に、蒼汰は夢中で駆け寄った。
蒼汰は胸がドキドキして、怜音の腕に飛びつく。いつの間にか、疲れなんて吹き飛んでしまっていた。
二人で木漏れ日の差し込む広場を歩く。
「あぁ、眩しい!」
久し振りに浴びる日差しが眩しくて、思わず手で目を覆う。でもすごく気持ちがいい。
広場を吹き抜ける風も、可愛らしい声で鳴く鳥の声も、どこからか香る甘い花の香りも……その全てが蒼汰の心を震わせた。
「蒼ちゃん、眩しい?」
「ううん。大丈夫だよ」
過保護な怜音が心配そうに蒼汰の顔を覗き込む。いつも自分のことを心配してくれる怜音……いつの間にか、蒼汰にはなくてはならない存在へとなっていた。
「あ、蒼ちゃん髪に葉っぱがついてるよ?」
「え? 取ってよ」
「わかった。じゃあ近くに来て」
「うん」
蒼汰が怜音のほうに顔を近づけた瞬間。
――え?
怜音の吐息が頬にかかって、一気に距離が縮んだ。怜音の綺麗な瞳がそっと閉じられて、なんだろう……と思う間もなく、蒼汰の唇に怜音の唇が重ねられた。
「あ……」
「ほら、蒼ちゃん。とれたよ」
その柔らかくて温かな怜音の唇は、すぐに離れていってしまう。怜音にキスをされたのだと気づくまでに、少しだけ時間がかかってしまった。
頬が一気に熱くなり、鼓動がどんどん速くなる。恥ずかしくて、涙が溢れてきそうだった。
「そんな顔しないでよ」
「……え?」
「それ以上のことがしたくなるから」
自分と同じように顔を真っ赤にした怜音に手を握られて、二人は再び歩き出した。
「……え? 今から?」
日曜日の早朝、蒼汰は怜音に叩き起こさられる。
もうすぐ怜音と暮らし始めて、一カ月が経とうとしている。もうすぐ、怜音の誕生日だ。
その顔は子供のようにキラキラと輝いているから、もしかしたら何かを企んでいるのかもしれない。
「うん今から。でも、やっぱり外はまだ怖い?」
「……外か……」
「大丈夫だよ、怖くない。俺がずっと傍にいるから」
「……じゃあ、行く。俺、行ってみたい」
「うん、行こう」
怜音が蒼汰を見つめて微笑んだ。
「でも怜音君! 自転車で、なんて聞いてない!」
「あははは! だって仕方ないじゃん。俺ら二人とも車の免許持ってないんだもん!」
「もー! 引き籠もりの体力を舐めるなよぉ!」
怜音から移動手段は自転車だと聞いていたから、てっきり近所に行くものだと思っていた。しかし、もうアパートを出発して一時間くらいになる。
どうやら山に向かっているらしく、どんどん道は険しくなるし、酸素が薄くなってきている気もする。まるで、エベレストの頂上を目指している気分だ。
「蒼ちゃん、運動不足なんだよ」
「当たり前じゃん。二カ月以上引き篭ってたんだから」
「よかったね、運動のチャンスがあって」
「だからっていきなりハード過ぎるよ」
「でも気持ちいいね!」
肩で息をしている蒼汰になんてお構いなしに、怜音はぐんぐん自転車を漕いで行ってしまう。蒼汰は置いていかれないように必死だった。
「はぁ、はぁ……ねぇ……怜音君……はぁ……どこに向かってんの⁉」
「もう少しだから……はぁはぁ……頑張って!」
「しんどいよぉ‼」
「もう少し! 蒼ちゃんも知ってる場所だよ。頑張って!」
「もう、無理ー!!」
蒼汰の絶叫が、山に響き渡った。
蒼汰の体力が底を尽こうとした頃、うっそうと茂っていた林が途切れ、目の前に広場が広がった。薄暗い林から一気に明るい場所に出た蒼汰は、あまりにも日差しが眩しくて目を細める。ここが、今まで必死に登っていた山の頂上。
「蒼ちゃん、着いたよ」
嬉しそうに笑う怜音が見つめる先には……。
「あれ、何の建物? 誰かの家……じゃないよね?」
「違うよ。あれは教会」
そう言うと自転車を開けた場所に停めて「あー! 疲れた」なんて大きく伸びをしている。
――教会……あ、もしかして、あの時の……。
蒼汰の眠っていた記憶が、少しずつ呼び起こされる……そんな感覚に包まれた。
「早くおいで」
怜音が蒼汰に向かって手招きをしている。
秋の日差しに怜音の髪がキラキラ光っていて、とても綺麗だ。自分にはないαの魅力をもつ怜音を見ていると、どんどん鼓動が速くなってくる。
――こんなにも立派なαを、自分だけのものにしたい……。
いつからか、そんな独占欲を怜音に対して抱いていた。
今は素直に、怜音と番になりたいと思える。
「待って、怜音君」
「早く、おいで。蒼ちゃん」
自分に向かい微笑む怜音の元に、蒼汰は夢中で駆け寄った。
蒼汰は胸がドキドキして、怜音の腕に飛びつく。いつの間にか、疲れなんて吹き飛んでしまっていた。
二人で木漏れ日の差し込む広場を歩く。
「あぁ、眩しい!」
久し振りに浴びる日差しが眩しくて、思わず手で目を覆う。でもすごく気持ちがいい。
広場を吹き抜ける風も、可愛らしい声で鳴く鳥の声も、どこからか香る甘い花の香りも……その全てが蒼汰の心を震わせた。
「蒼ちゃん、眩しい?」
「ううん。大丈夫だよ」
過保護な怜音が心配そうに蒼汰の顔を覗き込む。いつも自分のことを心配してくれる怜音……いつの間にか、蒼汰にはなくてはならない存在へとなっていた。
「あ、蒼ちゃん髪に葉っぱがついてるよ?」
「え? 取ってよ」
「わかった。じゃあ近くに来て」
「うん」
蒼汰が怜音のほうに顔を近づけた瞬間。
――え?
怜音の吐息が頬にかかって、一気に距離が縮んだ。怜音の綺麗な瞳がそっと閉じられて、なんだろう……と思う間もなく、蒼汰の唇に怜音の唇が重ねられた。
「あ……」
「ほら、蒼ちゃん。とれたよ」
その柔らかくて温かな怜音の唇は、すぐに離れていってしまう。怜音にキスをされたのだと気づくまでに、少しだけ時間がかかってしまった。
頬が一気に熱くなり、鼓動がどんどん速くなる。恥ずかしくて、涙が溢れてきそうだった。
「そんな顔しないでよ」
「……え?」
「それ以上のことがしたくなるから」
自分と同じように顔を真っ赤にした怜音に手を握られて、二人は再び歩き出した。
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