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EPISODE5 新しい第一歩
新しい第一歩④
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大学を後にしてから、怜音は振り返ることなく歩き続けている。もともと足の長さが違う二人だから、蒼汰は必死に怜音の後を追いかけた。
繋がれていた手は、いつの間にか指と指が絡められていて、きつく握り合っている。大きくて温かい怜音の手……蒼汰はドキドキしてしまう。
しかし、怜音は一体どこに向かっているのだろうか。駅とは違う方向に向かって歩いている。
「ねぇ、怜音君。どこに向かってるの? 駅はこっちじゃないよね?」
「うん。久しぶりに蒼ちゃん外に出られたから、少し散歩して帰ろうと思って。こっちに遊歩道があるんだ。行ってみよう」
「あ、うん」
「俺ね、本当に嬉しかったんだよ。まさか蒼ちゃんが大学まで迎えに来てくれると思ってなかったから」
照れくさそうにはにかむ怜音の顔が、夕焼けで赤く染まっている。
「ありがとう、蒼ちゃん」
その笑顔に胸が甘く締め付けられる。
「怜音君、元彼のこと、本当にごめんなさい。俺、俺さ……」
「もういいよ」
「え?」
「もういい、怒ってないから。そんなことより、蒼ちゃんがこうやって勇気を振り絞ってここまで会いに来てくれただけで、俺は十分だから」
「怜音……ありがとう」
「うん」
心の中が幸せで満たされて、小さく震える。
――あぁ、俺はこんなにも怜音君のことが……。
今まで見て見ぬふりをしてした感情が、芽を出した瞬間。こんなに膨れ上がってしまった怜音への思いに、もう気付かないフリなんてできない。
蒼汰はとても幸せなのに、泣きたくなるくらい苦しい。苦しいのに、心がポカポカと温かかった。
「俺、怜音君に会えてから変われたと思うんだ」
「蒼ちゃん」
「だから、怜音くん、ありがとう」
冷たい秋風が火照った蒼汰の頬を冷やしてくれて気持ちがいい。外の世界は、こんなにも明るくて心地がよかったことを思い出す。
「俺、ずっと変わりたいと思ってた。でもどうしても一歩が踏み出せなくて……たくさんの本を読んでみたりしたけど、駄目だった」
「そっか……。だから蒼ちゃんの部屋には、あんなに本がたくさんあるんだね」
「うん……なんとか立ち直らなきゃって、自分なりに頑張ったんだ」
もう自分が情けないやら、恥ずかしいやらで怜音の顔さえ見ることができない。
蒼汰の部屋の本棚には、「失恋から立ち直る方法」「人生をやり直すためには」といったタイトルの本がたくさん並べられている。ただ、こういった本が蒼汰を救ってくれることなんてなかったけれど……。
だから、カーテンを閉め切り、殻に閉じこもる以外に、自分を守る方法がなかったのだ。
「そっか。蒼ちゃん、今まで一人で頑張ってきたんだね」
「……え?」
「なんとかしなきゃって、一人でもがいて苦しんで……もっと早く、会いに行けばよかったって、自分が腹立たしいよ」
「怜音君……」
「あの日、俺は蒼ちゃんを守るんだって決めたのに……」
「……あの日……?」
蒼汰が恐る恐る顔を上げれば、唇を噛み締めながら拳を強く握り締める怜音の姿が……。
「もっと早く蒼ちゃんを助けてあげられたらよかったのに。本当にごめん」
「そうじゃない、怜音君。君のせいじゃない」
「ごめんね。でも、今日迎えにきてくれて本当に嬉しかったよ」
小刻みに肩を揺らす怜音を蒼汰は咄嗟に抱き締める。こんな自分の為に苦しんでくれる人がいるなんて……それだけで胸が熱くなった。
「これからは、俺が蒼ちゃんを守るから」
「……ありがとう」
「蒼ちゃん、大好き」
怜音が照れくさそうに、でも力いっぱい蒼汰を抱き締め返してくれる。怜音の逞しい腕に、蒼汰は体を委ねた。
次の瞬間、怜音が蒼汰の首元に唇を押し当てる。
ピクンと背中を反らせた蒼汰の首に何度か甘噛みを繰り返して、唇は離れていってしまう。今度は額を首筋に擦りつけてきたから、怜音の髪が顔にかかり、くすぐったくて思わず肩を上げた。
「ふふっ。怜音君、くすぐったいよ」
「我慢して。蒼ちゃんは俺のもんなんだから」
「……え……?」
それがα特有のマーキングだとわかった瞬間、蒼汰の体に一瞬で熱が籠る。照れくさくて、思わず腕を突っぱねようとしたけれど、まるで子供のように甘えてくる怜音がとても愛おく感じられた。
沈んでいく太陽に、自分の髪を揺らしていて行く秋風。烏が群れをつくりながら巣へと帰っていく……そんな光景に、蒼汰の心が震える。
大きな一歩を踏み出せたことが、ただただ嬉しかった。
繋がれていた手は、いつの間にか指と指が絡められていて、きつく握り合っている。大きくて温かい怜音の手……蒼汰はドキドキしてしまう。
しかし、怜音は一体どこに向かっているのだろうか。駅とは違う方向に向かって歩いている。
「ねぇ、怜音君。どこに向かってるの? 駅はこっちじゃないよね?」
「うん。久しぶりに蒼ちゃん外に出られたから、少し散歩して帰ろうと思って。こっちに遊歩道があるんだ。行ってみよう」
「あ、うん」
「俺ね、本当に嬉しかったんだよ。まさか蒼ちゃんが大学まで迎えに来てくれると思ってなかったから」
照れくさそうにはにかむ怜音の顔が、夕焼けで赤く染まっている。
「ありがとう、蒼ちゃん」
その笑顔に胸が甘く締め付けられる。
「怜音君、元彼のこと、本当にごめんなさい。俺、俺さ……」
「もういいよ」
「え?」
「もういい、怒ってないから。そんなことより、蒼ちゃんがこうやって勇気を振り絞ってここまで会いに来てくれただけで、俺は十分だから」
「怜音……ありがとう」
「うん」
心の中が幸せで満たされて、小さく震える。
――あぁ、俺はこんなにも怜音君のことが……。
今まで見て見ぬふりをしてした感情が、芽を出した瞬間。こんなに膨れ上がってしまった怜音への思いに、もう気付かないフリなんてできない。
蒼汰はとても幸せなのに、泣きたくなるくらい苦しい。苦しいのに、心がポカポカと温かかった。
「俺、怜音君に会えてから変われたと思うんだ」
「蒼ちゃん」
「だから、怜音くん、ありがとう」
冷たい秋風が火照った蒼汰の頬を冷やしてくれて気持ちがいい。外の世界は、こんなにも明るくて心地がよかったことを思い出す。
「俺、ずっと変わりたいと思ってた。でもどうしても一歩が踏み出せなくて……たくさんの本を読んでみたりしたけど、駄目だった」
「そっか……。だから蒼ちゃんの部屋には、あんなに本がたくさんあるんだね」
「うん……なんとか立ち直らなきゃって、自分なりに頑張ったんだ」
もう自分が情けないやら、恥ずかしいやらで怜音の顔さえ見ることができない。
蒼汰の部屋の本棚には、「失恋から立ち直る方法」「人生をやり直すためには」といったタイトルの本がたくさん並べられている。ただ、こういった本が蒼汰を救ってくれることなんてなかったけれど……。
だから、カーテンを閉め切り、殻に閉じこもる以外に、自分を守る方法がなかったのだ。
「そっか。蒼ちゃん、今まで一人で頑張ってきたんだね」
「……え?」
「なんとかしなきゃって、一人でもがいて苦しんで……もっと早く、会いに行けばよかったって、自分が腹立たしいよ」
「怜音君……」
「あの日、俺は蒼ちゃんを守るんだって決めたのに……」
「……あの日……?」
蒼汰が恐る恐る顔を上げれば、唇を噛み締めながら拳を強く握り締める怜音の姿が……。
「もっと早く蒼ちゃんを助けてあげられたらよかったのに。本当にごめん」
「そうじゃない、怜音君。君のせいじゃない」
「ごめんね。でも、今日迎えにきてくれて本当に嬉しかったよ」
小刻みに肩を揺らす怜音を蒼汰は咄嗟に抱き締める。こんな自分の為に苦しんでくれる人がいるなんて……それだけで胸が熱くなった。
「これからは、俺が蒼ちゃんを守るから」
「……ありがとう」
「蒼ちゃん、大好き」
怜音が照れくさそうに、でも力いっぱい蒼汰を抱き締め返してくれる。怜音の逞しい腕に、蒼汰は体を委ねた。
次の瞬間、怜音が蒼汰の首元に唇を押し当てる。
ピクンと背中を反らせた蒼汰の首に何度か甘噛みを繰り返して、唇は離れていってしまう。今度は額を首筋に擦りつけてきたから、怜音の髪が顔にかかり、くすぐったくて思わず肩を上げた。
「ふふっ。怜音君、くすぐったいよ」
「我慢して。蒼ちゃんは俺のもんなんだから」
「……え……?」
それがα特有のマーキングだとわかった瞬間、蒼汰の体に一瞬で熱が籠る。照れくさくて、思わず腕を突っぱねようとしたけれど、まるで子供のように甘えてくる怜音がとても愛おく感じられた。
沈んでいく太陽に、自分の髪を揺らしていて行く秋風。烏が群れをつくりながら巣へと帰っていく……そんな光景に、蒼汰の心が震える。
大きな一歩を踏み出せたことが、ただただ嬉しかった。
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