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プロローグ
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「インキュバスが来ないように、窓際にミルクを置いておきましょう」
「そうよ。そうしないと、インキュバスに襲われてしまうわ」
年頃の娘達が眠りにつく前、コップに注がれたミルクを窓際に置く。
『インキュバス』とは、古くからキリスト教で言い伝えられている、人の夢に潜り込み、夢の主と性行為を行う低級の悪魔のことである。年頃の娘を襲い、妊娠させるのだ。
インキュバスが襲うのはなにも若い娘だけではない。彼らは若い青年の寝込みを襲い、精液を絞りとることで己の生きていく糧とする。インキュバスは精液が手に入らなければ死んでしまう。だからこそ、手当り次第に青年と性交をしなければならない。そこには慈しみの思いや、愛情なんてものは存在しない。
悪魔が一人、生きるか死ぬか、ただそれだけ……。
今日もまた、この広い世界のどこかで、インキュバスが誰かの夢に音もなく忍び寄っているのだ。
羽音は運命なんて信じていなかった。
そもそも、こんなにも孤独な自分が、誰かに全てを受け入れられて愛されるなどと思ってもいなかったのだから。それでも、羽音は出会ってしまったのだ。その人は甘い花の香りを漂わせて、ずっと一人で生きてきた寂しい羽音に「愛している」という言葉をくれた。
それでも羽音は不思議に思う。もし出会ってはいけない二人が出会ってしまい、恋に堕ちてしまったとしたら……一体どうしたらいいのだろうか。身を焦がすほどお互いを求めているのに決して結ばれてはいけない悲しい恋は、一体どこへ行くのだろうか。
それは、夜空を滑り落ちる星のように、一瞬で消えてしまうのかもしれない。
それでもいいと思う。 ギシギシッと瑞稀が自分に腰を打ち付ける度にベッドが軋み、その音で羽音は更に欲情を掻き立てられる。全身が性感帯になってしまったかのように、瑞稀が触れる場所全てが気持ちよくて仕方ない。
「羽音、愛しています」
「あぅッ……あ、あ、はぁ……」
花の香りが部屋中に充満し気分がどんどん高揚していく。全身をピリピリッと甘い電流が駆け抜けていく快感に耐えるかのように羽音は、その大きくて逞しい背中にしがみついて無意識にキュッと爪を立てた。
「お願い、瑞稀……中には出さないで」
今にも弾けそうな瑞稀の昂ぶりを感じながら、羽音は精一杯声をふりしぼる。その声も、甘ったるい吐息に混ざり、今にも掻き消されてしまいそうだ。
「中には出さないで……」
瑞稀をキツく抱き締めながら、涙を流して懇願する。
「愛してます」
フワリと天使の羽のように自分の唇に押し当てられる優しい温もりが、とても幸せなはずなのに……羽音の心は、まるで棘が刺さったかのようにチクチクと痛んだ。
「ねぇ、結ばれてはならない二人が恋に堕ちたら……どうしたらいいの……?」
羽音にはその答えがどうしてもわからなかった。
きっといつか神から罰が与えられる……汚らわしい羽音が、神父を志す青年に愛されるなんて。
羽音はむせ返りそうな幸福の中、禁じられた場所まで来てしまった自分の弱さを呪った。
「そうよ。そうしないと、インキュバスに襲われてしまうわ」
年頃の娘達が眠りにつく前、コップに注がれたミルクを窓際に置く。
『インキュバス』とは、古くからキリスト教で言い伝えられている、人の夢に潜り込み、夢の主と性行為を行う低級の悪魔のことである。年頃の娘を襲い、妊娠させるのだ。
インキュバスが襲うのはなにも若い娘だけではない。彼らは若い青年の寝込みを襲い、精液を絞りとることで己の生きていく糧とする。インキュバスは精液が手に入らなければ死んでしまう。だからこそ、手当り次第に青年と性交をしなければならない。そこには慈しみの思いや、愛情なんてものは存在しない。
悪魔が一人、生きるか死ぬか、ただそれだけ……。
今日もまた、この広い世界のどこかで、インキュバスが誰かの夢に音もなく忍び寄っているのだ。
羽音は運命なんて信じていなかった。
そもそも、こんなにも孤独な自分が、誰かに全てを受け入れられて愛されるなどと思ってもいなかったのだから。それでも、羽音は出会ってしまったのだ。その人は甘い花の香りを漂わせて、ずっと一人で生きてきた寂しい羽音に「愛している」という言葉をくれた。
それでも羽音は不思議に思う。もし出会ってはいけない二人が出会ってしまい、恋に堕ちてしまったとしたら……一体どうしたらいいのだろうか。身を焦がすほどお互いを求めているのに決して結ばれてはいけない悲しい恋は、一体どこへ行くのだろうか。
それは、夜空を滑り落ちる星のように、一瞬で消えてしまうのかもしれない。
それでもいいと思う。 ギシギシッと瑞稀が自分に腰を打ち付ける度にベッドが軋み、その音で羽音は更に欲情を掻き立てられる。全身が性感帯になってしまったかのように、瑞稀が触れる場所全てが気持ちよくて仕方ない。
「羽音、愛しています」
「あぅッ……あ、あ、はぁ……」
花の香りが部屋中に充満し気分がどんどん高揚していく。全身をピリピリッと甘い電流が駆け抜けていく快感に耐えるかのように羽音は、その大きくて逞しい背中にしがみついて無意識にキュッと爪を立てた。
「お願い、瑞稀……中には出さないで」
今にも弾けそうな瑞稀の昂ぶりを感じながら、羽音は精一杯声をふりしぼる。その声も、甘ったるい吐息に混ざり、今にも掻き消されてしまいそうだ。
「中には出さないで……」
瑞稀をキツく抱き締めながら、涙を流して懇願する。
「愛してます」
フワリと天使の羽のように自分の唇に押し当てられる優しい温もりが、とても幸せなはずなのに……羽音の心は、まるで棘が刺さったかのようにチクチクと痛んだ。
「ねぇ、結ばれてはならない二人が恋に堕ちたら……どうしたらいいの……?」
羽音にはその答えがどうしてもわからなかった。
きっといつか神から罰が与えられる……汚らわしい羽音が、神父を志す青年に愛されるなんて。
羽音はむせ返りそうな幸福の中、禁じられた場所まで来てしまった自分の弱さを呪った。
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