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第二章 思い出の地へ
思い出の地へ④
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「鬼だ……」
「あぁ。この前襲ってきた鬼とはまた違った種類だけどな」
「本当だ。角が三本ある」
「祭りの騒動で目を覚ましたか。あいつは気性が荒いから気を付けろ」
「気を付けろって……どうやって……」
すると突然三本角の鬼が空高く飛び上がり、牙を剥き出しにする。
「お前、武尊か? あの時の恨みは忘れはしない!」
「バレたな。しっかり掴まってろよ」
「え? わぁぁぁぁ!!」
我鷲丸が鬼に向かって突っ込んでいくものだから、智晴はしがみつくことしかできない。そんな智晴を我鷲丸はまるで庇うかのように抱き寄せてくれた。
「なんだよ、これ……武尊武尊って、本当に意味がわかんねぇ」
飛び回る我鷲丸に振り回されながら、なんで最近こんな凶暴な妖怪ばっかり……と疑問が湧き上がる。
「グハッ!」
「フハハハハ! 式神なんて大したこともない!」
鬼の鋭い爪で深い傷を負った我鷲丸が、短い悲鳴を上げて一気に地上へと落下していき、うっすら浮かんだ疑問なんて一瞬で吹っ飛んでいく。
地面が抉られるほどの勢いで地面に叩きつけられたが、我鷲丸が庇ってくれたおかげで智晴は傷一つ負ってはいなかった。
「チッ、情けねぇ。あんな雑魚相手に……まだ妖力が完全に戻っていないようだ……」
「我鷲丸、大丈夫か?」
苦痛で歪める顔を覗き込めば、強がって笑みを浮かべていた。
「いいから、お前は逃げろ」
「でも、お前を置いては……」
「今のお前に何ができる? 足手まといでしかないんだよ」
「そんな……」
「早く、逃げろ。稲荷神社までは追ってこないはずだ」
痛みを堪えながら我鷲丸が立ち上がろうとした瞬間……凛とした声が響き渡った。
「三本角の鬼よ、私が相手だよ」
「……! 律さん…!?」
その声の主は律だった。確かに律には凄い能力があるのかもしれない。
でも、相手はそんなレベルではない。智晴は本能的にそう感じていた。
「駄目だ、律さん! 逃げて!」
「大丈夫よ、智君。だって、私はあなたのおばあちゃんだもの」
「律さん」
「さぁ、鬼よ。かかってきなさい」
「ふざけるな、ババァが!」
怒り狂った三本角の鬼が律目掛けて突進していく。その凄まじい形相に、智晴の心臓がバクンバクンと飛び跳ねた。
「止めろ! 律さんに手を出すな!」
そう叫んだ時、再びあの時のような……我鷲丸の封印を解いた日のような不思議な感覚に包まれた。
「大丈夫ですよ、私が付いてますから。やれますか?」
「うん。大丈夫だよ」
「では、参りましょう」
再び頭の中に響く声に身を委ねるように、そっと呼吸をする。あの時壁に貼ってあったもう一枚の護符をポケットから取り出し、両手を合わせて目を閉じた。
「我らに害をもたらす者よ、ここに命ずる。在るべき場所へと帰るのだ。急急如律令」
智晴が目を開いた瞬間、その足元に淡い青色の光を放つ五芒星の陣が現れる。その陣を見た瞬間、鬼が悲鳴を上げた。
「おいで、三本角の鬼よ。友になろう」
静かに鬼に手を差し出すと、淡い光に包まれた鬼が静かに頭を垂れた。その姿を見た智晴は、そっと鬼の頭を撫でてやる。
「よし、いい子だ。お前の在るべきところへお帰り」
「グルルルルッ」
鬼は甘えた声を出しながら光に導かれるように消えていく。
「よかった……」
律が無事なことをうっすら確認しながら、智晴は少しずつ意識を手放した。
「あぁ。この前襲ってきた鬼とはまた違った種類だけどな」
「本当だ。角が三本ある」
「祭りの騒動で目を覚ましたか。あいつは気性が荒いから気を付けろ」
「気を付けろって……どうやって……」
すると突然三本角の鬼が空高く飛び上がり、牙を剥き出しにする。
「お前、武尊か? あの時の恨みは忘れはしない!」
「バレたな。しっかり掴まってろよ」
「え? わぁぁぁぁ!!」
我鷲丸が鬼に向かって突っ込んでいくものだから、智晴はしがみつくことしかできない。そんな智晴を我鷲丸はまるで庇うかのように抱き寄せてくれた。
「なんだよ、これ……武尊武尊って、本当に意味がわかんねぇ」
飛び回る我鷲丸に振り回されながら、なんで最近こんな凶暴な妖怪ばっかり……と疑問が湧き上がる。
「グハッ!」
「フハハハハ! 式神なんて大したこともない!」
鬼の鋭い爪で深い傷を負った我鷲丸が、短い悲鳴を上げて一気に地上へと落下していき、うっすら浮かんだ疑問なんて一瞬で吹っ飛んでいく。
地面が抉られるほどの勢いで地面に叩きつけられたが、我鷲丸が庇ってくれたおかげで智晴は傷一つ負ってはいなかった。
「チッ、情けねぇ。あんな雑魚相手に……まだ妖力が完全に戻っていないようだ……」
「我鷲丸、大丈夫か?」
苦痛で歪める顔を覗き込めば、強がって笑みを浮かべていた。
「いいから、お前は逃げろ」
「でも、お前を置いては……」
「今のお前に何ができる? 足手まといでしかないんだよ」
「そんな……」
「早く、逃げろ。稲荷神社までは追ってこないはずだ」
痛みを堪えながら我鷲丸が立ち上がろうとした瞬間……凛とした声が響き渡った。
「三本角の鬼よ、私が相手だよ」
「……! 律さん…!?」
その声の主は律だった。確かに律には凄い能力があるのかもしれない。
でも、相手はそんなレベルではない。智晴は本能的にそう感じていた。
「駄目だ、律さん! 逃げて!」
「大丈夫よ、智君。だって、私はあなたのおばあちゃんだもの」
「律さん」
「さぁ、鬼よ。かかってきなさい」
「ふざけるな、ババァが!」
怒り狂った三本角の鬼が律目掛けて突進していく。その凄まじい形相に、智晴の心臓がバクンバクンと飛び跳ねた。
「止めろ! 律さんに手を出すな!」
そう叫んだ時、再びあの時のような……我鷲丸の封印を解いた日のような不思議な感覚に包まれた。
「大丈夫ですよ、私が付いてますから。やれますか?」
「うん。大丈夫だよ」
「では、参りましょう」
再び頭の中に響く声に身を委ねるように、そっと呼吸をする。あの時壁に貼ってあったもう一枚の護符をポケットから取り出し、両手を合わせて目を閉じた。
「我らに害をもたらす者よ、ここに命ずる。在るべき場所へと帰るのだ。急急如律令」
智晴が目を開いた瞬間、その足元に淡い青色の光を放つ五芒星の陣が現れる。その陣を見た瞬間、鬼が悲鳴を上げた。
「おいで、三本角の鬼よ。友になろう」
静かに鬼に手を差し出すと、淡い光に包まれた鬼が静かに頭を垂れた。その姿を見た智晴は、そっと鬼の頭を撫でてやる。
「よし、いい子だ。お前の在るべきところへお帰り」
「グルルルルッ」
鬼は甘えた声を出しながら光に導かれるように消えていく。
「よかった……」
律が無事なことをうっすら確認しながら、智晴は少しずつ意識を手放した。
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