狼と兎の幸福論【第一部】

舞々

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第二章 儚き兎の夢

兎視点④

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 ガタン‼


「痛ッ!」


 久莉に、そのまま床に勢いよく押し倒された衝撃で、背中を強く打ち付ける。俺はその苦痛に顔を歪めた。
 狼に襲われた兎は、大人しく喰われるしかない。
 それが兎の……Ωの運命だから……。


 けど、そんな運命なら俺はいらない。


『お前ら本当にラブラブだな。ウゼェよ』


 俺達を茶化しながら、でも祝福してくれてるように優しく笑う莉久が好きだった。
 本当に大切な親友だと思ってる。
 そんな莉久に、いくら発情しているからと言って抱かれるわけにはいかない。


 自分の為にも、寛太の為にも……そして、莉久の為にも。


 寛太の名前を大声で呼ぼうとした瞬間、唇を奪われる。
 いくら首を振って抵抗しても、莉久の体を突き離そうとしても、物凄い馬鹿力でビクともしない。


「莉久‼ 莉久‼ 駄目だ‼ しっかりしてくれ‼」


 けど、目の前にいる莉久は、もういつもの莉久じゃない。血に飢えた狼そのものだ。
 俺の言葉なんて、全く届いていない。
 自分でもわかる、今の自分は理性のあるαさえも狂わせる程、発情していることを。
 もう隠すことなんてできない程のフェロモンに……ラットしたαにより刺激され、認めたくないけど欲情してしまっていた。


 莉久に、抱かれたいと思うΩが疼いて仕方ない。
 こうやって、Ωのヒートに絡んだ犯罪が起こるんだって頭の片隅で納得してしまった。
 この本能に抗う術はない。
 そんな生易しいものじゃない。


 洋服を引き裂かれるんじゃないかってくらい乱暴に脱がされ、いきなり秘部に指を挿入される。
 ヒートしているΩは、すぐに挿入できるように秘部から多量の愛液が分泌されている。だから前戯なんて全部すっ飛ばしても何ら問題はない。


「航……航……‼」
「あん……むぅッ……はぁ……あッ」


 狂ったように名前を呼ばれ口付けられれば、あっという間に唇が莉久の唾液まみれになる。
 もう受け入れるしかない、諦めさえ頭を過った。


 体を抑えつけられ、その瞬間が近付いてくる。
 足を高く担ぎ上げられて、莉久の目の前に秘部を晒された。
 でももうそこは、莉久を欲しがりトロトロと愛液が溢れ出し、ヒクヒクと小刻みに痙攣をしている。


「莉久‼ 止めてくれ‼ 莉久‼ 莉久‼」


 目からは興奮のためか涙が溢れだし、力の限り莉久の体を自分から引き剥がそうとする。
 でも、非力な兎が狼に敵うはずがない。
 普段とは比べ物にならない程、今の莉久は力強い。


 寛太……寛太……。


 助けて欲しいけど、この醜態をあいつに晒したくない。
 俺の中で激しい葛藤が起きる。
 噛み締めた唇から血が滲む。それを莉久が厭らしく舐め上げた。


「航、可愛い……俺の物になって? 俺の子を……身籠って?」
「…………!?」


 次の瞬間…熱い何かが体内に侵入してくる感覚に、強い嫌悪感を抱き目を見開いた。
 ついにその瞬間が訪れる。
  

 哀れなオメガは、哀しい莉久アルファに犯されてしまった……。




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