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第二章 儚き兎の夢
兎視点⑤
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「あ、航……気持ちいい……気持ちいい……」
「ん、あ、あッ!」
莉久が俺の体に手を回し、律動を開始するのを、まるで夢の中のことのように感じていた。
何が起きてるのかがわからなかった。
何をしたらいいのかわからなかった。
ただ、自分の体がゆさゆさと上下に揺さぶられるリズムを呆然と感じていた。
それなのに、莉久がパチュンパチュンと腰を打ち付けてくる度に、ゾクゾクッと快感の波が押し寄せてくる。
こんな状態になってまでも、快感を貪ろうとする自分の体が、とても汚らわしい物に思えた。
結局は、莉久とのセックスに溺れ始めていた俺の首筋に、熱い舌が這わされた。
「んんッ」
その刺激に、思わず体を捩らせた時……。
ガブリッッ………。
「……え……?」
突然首筋を襲った、皮膚を切り裂くような激しい痛み。
温かい血が、首筋を這う感覚に全身を鳥肌が走った。
一瞬にして全身の血が凍りつき、何も考えられなくなる。
高い高い崖から、深い深い海に突き落とされたみたいに、目の前が真っ暗になった。
αに首を噛まれたΩは、αの奴隷となる運命……それには、何人たりとも抗えない悲しい現実。
この主従関係は、一生消えることはない。
それはまるで自然界の法則のようにも思える。
そう、まるで狼と兎の関係のように……。
「ぅわぁぁぁぁぁぁぁ‼‼」
信じられない程の己の断末魔……それと共に溢れ出る涙。
全てが終わった。
全身が脱力し、自身の体を床に沈めた。天井をボーッと見つめ、他人事みたいに莉久に揺さぶられ続けた。
「航……気持ちいぃ」
耳元で熱く囁かれる声は寛太じゃない。
かと言って莉久でもない……。
こんな感情とは裏腹に、莉久の熱い昂ぶりを喜んで咥え込む部位からは、クチャクチャと卑猥な音が鳴り響く。
所詮、俺は底辺のΩだ……。俺達に、明るい未来など始めから存在なんてしてなかった。
ただ、それだけのこと。
もういいから、早く終わらせてくれ。
「航‼ どうした!?」
勢いよくリビングのドアが開き、血相を変えた寛太が飛び込んできた。
――え? 今なの?
俺はあまりにもタイミングの悪すぎる恋人の登場に、絶望してしまう。
「……な、なんだよ、これ……」
寛太は寛太で、目の前の光景……親友が恋人をレイプする光景を見て愕然としている。
目を見開き、体が痙攣しているのがわかる。
「寛太……見ないで……見ないでくれ……」
俺は、泣きながら懇願する事しかできなかった。
こんなとこ、お前には見られなくない。
全てが終わった瞬間……。
なんてΩの幸せは儚いんだろう。
所詮、この世の下等階級に位置付けられる、ゴミみたいな存在。
そんなΩが、寛太のお陰で一瞬でも見ることができた夢物語。
幸せだったな……。
「莉久!! 航から離れろよ!!」
必死にその馬鹿力で莉久を俺から引き離そうとするけど、αはヒートすると自身に突起が出現し、射精するまで秘部から抜けない仕組みになっている。
そうやって、交尾した際の妊娠の確率を上げるのだ。
「莉久!! 莉久!! しっかりしてくれ!!」
寛太が泣き叫んでいる。
その時、俺は気付いていた。
莉久と同じαである寛太には、発情が起きていないことに……。
つまりそれは、莉久と番になったことで、俺からフェロモンが出なくなったっていうことだ。
もうどれくらい、交尾が続いてるのだろうか。
「あん! あ、あぅ……あッ!」
俺もどんどん感度が増して、体が火照り……周りが見えなくなっていた。
ゆさゆさと揺さぶられ続け、甘い喘ぎ声を、もう抑えることもできない。
「あ、あ……クッ!!」
莉久がブルブルッと大きく身震いした瞬間に、体内に熱いものが注ぎ込まれた感覚を感じる。
あぁ、ようやく終わった。
終わってくれた。
意識が遠退いていく中、俺は寛太の泣き顔を見つけた。
ごめんね……寛太。
これで、さよならだね。
「ん、あ、あッ!」
莉久が俺の体に手を回し、律動を開始するのを、まるで夢の中のことのように感じていた。
何が起きてるのかがわからなかった。
何をしたらいいのかわからなかった。
ただ、自分の体がゆさゆさと上下に揺さぶられるリズムを呆然と感じていた。
それなのに、莉久がパチュンパチュンと腰を打ち付けてくる度に、ゾクゾクッと快感の波が押し寄せてくる。
こんな状態になってまでも、快感を貪ろうとする自分の体が、とても汚らわしい物に思えた。
結局は、莉久とのセックスに溺れ始めていた俺の首筋に、熱い舌が這わされた。
「んんッ」
その刺激に、思わず体を捩らせた時……。
ガブリッッ………。
「……え……?」
突然首筋を襲った、皮膚を切り裂くような激しい痛み。
温かい血が、首筋を這う感覚に全身を鳥肌が走った。
一瞬にして全身の血が凍りつき、何も考えられなくなる。
高い高い崖から、深い深い海に突き落とされたみたいに、目の前が真っ暗になった。
αに首を噛まれたΩは、αの奴隷となる運命……それには、何人たりとも抗えない悲しい現実。
この主従関係は、一生消えることはない。
それはまるで自然界の法則のようにも思える。
そう、まるで狼と兎の関係のように……。
「ぅわぁぁぁぁぁぁぁ‼‼」
信じられない程の己の断末魔……それと共に溢れ出る涙。
全てが終わった。
全身が脱力し、自身の体を床に沈めた。天井をボーッと見つめ、他人事みたいに莉久に揺さぶられ続けた。
「航……気持ちいぃ」
耳元で熱く囁かれる声は寛太じゃない。
かと言って莉久でもない……。
こんな感情とは裏腹に、莉久の熱い昂ぶりを喜んで咥え込む部位からは、クチャクチャと卑猥な音が鳴り響く。
所詮、俺は底辺のΩだ……。俺達に、明るい未来など始めから存在なんてしてなかった。
ただ、それだけのこと。
もういいから、早く終わらせてくれ。
「航‼ どうした!?」
勢いよくリビングのドアが開き、血相を変えた寛太が飛び込んできた。
――え? 今なの?
俺はあまりにもタイミングの悪すぎる恋人の登場に、絶望してしまう。
「……な、なんだよ、これ……」
寛太は寛太で、目の前の光景……親友が恋人をレイプする光景を見て愕然としている。
目を見開き、体が痙攣しているのがわかる。
「寛太……見ないで……見ないでくれ……」
俺は、泣きながら懇願する事しかできなかった。
こんなとこ、お前には見られなくない。
全てが終わった瞬間……。
なんてΩの幸せは儚いんだろう。
所詮、この世の下等階級に位置付けられる、ゴミみたいな存在。
そんなΩが、寛太のお陰で一瞬でも見ることができた夢物語。
幸せだったな……。
「莉久!! 航から離れろよ!!」
必死にその馬鹿力で莉久を俺から引き離そうとするけど、αはヒートすると自身に突起が出現し、射精するまで秘部から抜けない仕組みになっている。
そうやって、交尾した際の妊娠の確率を上げるのだ。
「莉久!! 莉久!! しっかりしてくれ!!」
寛太が泣き叫んでいる。
その時、俺は気付いていた。
莉久と同じαである寛太には、発情が起きていないことに……。
つまりそれは、莉久と番になったことで、俺からフェロモンが出なくなったっていうことだ。
もうどれくらい、交尾が続いてるのだろうか。
「あん! あ、あぅ……あッ!」
俺もどんどん感度が増して、体が火照り……周りが見えなくなっていた。
ゆさゆさと揺さぶられ続け、甘い喘ぎ声を、もう抑えることもできない。
「あ、あ……クッ!!」
莉久がブルブルッと大きく身震いした瞬間に、体内に熱いものが注ぎ込まれた感覚を感じる。
あぁ、ようやく終わった。
終わってくれた。
意識が遠退いていく中、俺は寛太の泣き顔を見つけた。
ごめんね……寛太。
これで、さよならだね。
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