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第二章 儚き兎の夢
狼視点①
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気を失った航を担ぎ、病院に向かう。
タクシーの中、莉久はずっと泣いていた。
「ごめん、ごめんなさい」
って、壊れた玩具みたいに。
「莉久が悪いわけじゃないよ…」
ようやく絞り出した声は疲れきっていた。
病院で、体内に射精された精子を殺す処置を受け、一先ず安堵する。
これで航が妊娠することはない。
ただ、ただ……。
涙は止まってくれなかった。
家に帰り、航を布団に寝かしつけて、ふと見つめる先には……。
「航、莉久に首噛まれちゃったんだな」
呆然とその傷を眺めた。
「こんなんなら、嫌がる航を抑えつけてでも、俺が噛みついておけば良かった……」
両手で顔を覆って、声も我慢しないで泣いた。
自分はなんてバカなんだろう……そう思うと悔しくて悔しくて仕方なかった。
ただ、これだけは言える。
今回の事は、莉久が悪いわけじゃないし、航だって悪いわけじゃない。
これがΩとαの悲しい運命……。
この悲しい運命には、誰も逆らえないのかもしれない。
🐺🐺🐺
「寛太……」
月明かりに照らされた航が、ふと目を開いた。
「どうした?」
そっと頬を撫でてやれば、悲しそうに笑った。
「もう、さよならだね」
「はぁ!? お前何言ってんだよ」
強がって鼻で笑ってみせる。
突然何を言い出すんだよ。
『さよなら』なんて、絶対にあり得るわけないだろう。
「寛太はわかってないんだよ、これから起こることが……。きっと、きっと寛太は耐えられない」
航の頬を撫でていた手をギュッと掴まれた。
「そしたら……そしたら俺を捨ててくれ。寛太だけでも幸せになってね」
引きつった顔で懸命に笑う航が、可哀想で仕方ない。
Ωに生まれてしまったがために、なんでこんな思いをしなきゃなんないんだよ。
航に口付けようとした瞬間、それは起きた。
「ぐっっ……あぁ……ぐぁぁぁぁ!」
突然低い声で唸り出し、胸を掻きむしりながら身悶える。
目を固く閉じ、必死に酸素を求め、苦痛にただただ耐える姿には見覚えがあった。
……発情だ。
でも、いつも感じることができていた、航のフェロモンを俺は全く感じることができなかった。
それは、航に番ができた証。
発情を起こしたΩは、交尾のことしか考えられないくらい発情し、番をひたすらに求める。
番ではない俺が、寛太にしてあげられることなんて、ないのだろうか……。
「莉久……莉久……‼ お願い、抱いて……莉久……‼」
苦しそうに、でも切なそうに名前を呼ぶのは、俺ではなく莉久……。
「航、航……お前には俺がいんだろうが?」
必死に名前を呼びながら抱き締めるけど、俺の声なんか絶対届かない。
「莉久! 莉久!」
涙を流しながら、夢中で莉久の名前を呼び続ける航を見て、呆然としてしまう。
それと同時に、番同士の絆の固さを思い知らされた。
どうしたらいいんだよ……。
ただ、苦しむ航を呆然と見つめることしかできない。
こんなに苦しんでる航を目の前にして、何もしてあげられないなんて。
ついさっきまで、
「大好きだよ」
って笑ってた航は、もうどこにもいないんだろうか。
俺は、航に会いたかった。
いつもみたいに、天真爛漫に笑う航に会いたかった。
「大丈夫、大丈夫だよ。お前には俺がいるから……」
ただ、自分と航に言い聞かせるように囁きながら、その体を抱き締めることしか……今の俺にはできなかった。
タクシーの中、莉久はずっと泣いていた。
「ごめん、ごめんなさい」
って、壊れた玩具みたいに。
「莉久が悪いわけじゃないよ…」
ようやく絞り出した声は疲れきっていた。
病院で、体内に射精された精子を殺す処置を受け、一先ず安堵する。
これで航が妊娠することはない。
ただ、ただ……。
涙は止まってくれなかった。
家に帰り、航を布団に寝かしつけて、ふと見つめる先には……。
「航、莉久に首噛まれちゃったんだな」
呆然とその傷を眺めた。
「こんなんなら、嫌がる航を抑えつけてでも、俺が噛みついておけば良かった……」
両手で顔を覆って、声も我慢しないで泣いた。
自分はなんてバカなんだろう……そう思うと悔しくて悔しくて仕方なかった。
ただ、これだけは言える。
今回の事は、莉久が悪いわけじゃないし、航だって悪いわけじゃない。
これがΩとαの悲しい運命……。
この悲しい運命には、誰も逆らえないのかもしれない。
🐺🐺🐺
「寛太……」
月明かりに照らされた航が、ふと目を開いた。
「どうした?」
そっと頬を撫でてやれば、悲しそうに笑った。
「もう、さよならだね」
「はぁ!? お前何言ってんだよ」
強がって鼻で笑ってみせる。
突然何を言い出すんだよ。
『さよなら』なんて、絶対にあり得るわけないだろう。
「寛太はわかってないんだよ、これから起こることが……。きっと、きっと寛太は耐えられない」
航の頬を撫でていた手をギュッと掴まれた。
「そしたら……そしたら俺を捨ててくれ。寛太だけでも幸せになってね」
引きつった顔で懸命に笑う航が、可哀想で仕方ない。
Ωに生まれてしまったがために、なんでこんな思いをしなきゃなんないんだよ。
航に口付けようとした瞬間、それは起きた。
「ぐっっ……あぁ……ぐぁぁぁぁ!」
突然低い声で唸り出し、胸を掻きむしりながら身悶える。
目を固く閉じ、必死に酸素を求め、苦痛にただただ耐える姿には見覚えがあった。
……発情だ。
でも、いつも感じることができていた、航のフェロモンを俺は全く感じることができなかった。
それは、航に番ができた証。
発情を起こしたΩは、交尾のことしか考えられないくらい発情し、番をひたすらに求める。
番ではない俺が、寛太にしてあげられることなんて、ないのだろうか……。
「莉久……莉久……‼ お願い、抱いて……莉久……‼」
苦しそうに、でも切なそうに名前を呼ぶのは、俺ではなく莉久……。
「航、航……お前には俺がいんだろうが?」
必死に名前を呼びながら抱き締めるけど、俺の声なんか絶対届かない。
「莉久! 莉久!」
涙を流しながら、夢中で莉久の名前を呼び続ける航を見て、呆然としてしまう。
それと同時に、番同士の絆の固さを思い知らされた。
どうしたらいいんだよ……。
ただ、苦しむ航を呆然と見つめることしかできない。
こんなに苦しんでる航を目の前にして、何もしてあげられないなんて。
ついさっきまで、
「大好きだよ」
って笑ってた航は、もうどこにもいないんだろうか。
俺は、航に会いたかった。
いつもみたいに、天真爛漫に笑う航に会いたかった。
「大丈夫、大丈夫だよ。お前には俺がいるから……」
ただ、自分と航に言い聞かせるように囁きながら、その体を抱き締めることしか……今の俺にはできなかった。
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