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幕間 フェニックス、命大切に。
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とある国のとある森のなか、その森は病魔に蝕まれていた。
「族長!これ以上ここにいては全滅してしまいます!」
「森を出て外の街に助けを……」
「ならぬ!」
一喝で言葉を遮ると森の族長は続ける。
「この病を外に出してはならぬ、我らは森の防人、森を護ると共に、外の世界も守らねばならない」
「くっ……」
苦虫を噛み潰したような顔をしながら外に出る若者達を見送りながら、族長は咳き込む。
「ゴホゴホゴホ、たとえこの地が滅ぼうとも、祖霊の遺志だけは………」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
族長の部屋から出てくる若者を待つ集団。
「おい、族長は何て?」
「……ダメだ、族長はこの森と死ぬつもりらしい、そっちは?」
「こっちもだ、老人は軒並みバカな考えはやめろってさ」
現在この村では世代によって対立をしていた、病魔を広めないため村から出る事を禁じる重鎮世代、自分達の命を優先するべきと考える若者世代。
「このままじゃダメだ、もう時間がない奴らが多い」
「………なら、やっぱり」
「ああ、結構は明日の朝早く、族長達の起きる前だ」
頷き合いそれぞれの準備を始める。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
翌朝、若者達が村を出るため入り口に集まったが。
「族長、な、なんでここに!?」
「お主達の考える事など予想が着く、ここを通すわけにはいかぬ」
「くっ、おい、どうする?」
「………仕方ない、そのために準備をしたんだ」
こうなることも予想はされていた、だから武器の準備もしてある。
「族長通らせてもらうぞ」
武器を構える若者。
「少しおいたが過ぎたな」
迎えるは経験を重ねた老人達。
一触即発の緊迫した空気の中、その羽ばたきは聞こえた。
バサァバサァ。
「な、なんだ、あれ………」
その場に居る誰もが天を仰いだ。
『貴方達はなに?』
「………え?」
突然の問に誰もが戸惑う。
『……もう一度……問う……貴方達はなに?』
朱く神々しい鳥は不機嫌そうに再度投げ掛ける。
「わ、我々はこの森の防人にございます!」
無意識に膝間付きながら族長が答える。
『……防人?』
「はいっ、この森を見守るため、この地にて、ゴホゴホっ」
途中で咳き込み、言葉が途切れる。
『……具合、悪い?』
「はい、この森は今、病魔に蝕まれています、貴女様もどうか御立ち去り下さい」
鳥はくるりと周りを見ると。
『……この森には、死が蔓延してる』
鳥は翼を広げる。
『………良くない』
鳥の翼から焔が立ち込め忽ち広がる。
「な、何を!?」
鳥が焔を出した事に慌て出す族長、よもや森ごと自分達を丸焼にするつもりか?
『……ん、命、大事』
鳥が呟くと身体が軽くなるのを感じた、自分の身体の異変に首を傾げていると。
「ぞ、族長!」
村に残っていた者が走って来る。
「どうした?」
「ね、寝込んでいた者が治りました、いえ、これはもう回復です、何故かは解りませんが病魔が消え去りました」
「な、なんと……」
明らかに目の前に居る鳥のお陰である。
「あ、貴女様はいったい?」
『……フェニックス、命の、守護者』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
フェニックスは神より、この世界の調和を命じられていた。特に多くの命が失われる事に対しての対策としてフェニックスは創られていた。
「では、この森に来られたのは?」
『……そう、この森には、死が漂っていた』
人だけではなく、動物、草木、森すべてに死が近づいていた。
「左様でしたか……」
人だけならばまだしも草木もとなると、病魔だけでは無かったかもしれない、何故かは今になっては解らないが、草木すらも死滅させる何かがあったのだろう。
『……ん、一つ、聞きたい』
意を決したようにフェニックスが聞く。
「何なりと」
『……そこまでして、森を護りたい?』
「………」
フェニックスの『そこまで』とは、同じ人同士、或いは親族同士でだ。
フェニックスが来なければ、悲惨な事になっていただろう。
「この森は我らが護らなければ成らないもの、心の拠り所です、それを次の世代に教えられなかった事が悔やまれます」
『………ん、よくわからない』
首を傾げるフェニックス。
「ホッホッホ、いつかフェニックス様にもその様なものができるといいですな」
『……ん』
まだ解らないが、頷いたフェニックス。
『………ん?時間?』
「おや?もう行かれるのですか?」
『……ん、そうみたい』
「左様ですか」
フェニックスは尻尾を降り始める。
『……ん、いい話聞いた御礼』
降り始めた尻尾が綺麗に切れ、灯火に変わる。
「これは?」
『……ん、これがあれば、命大切にできる』
「ホッホッホ、ありがとうございます、大切にさせていただきます」
『……ん』
フェニックスは満足そうに頷き、羽ばたく。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
フェニックスは森を出て数分、丘に降り立つと直ぐに気配を感じた。
『………神様?』
『やあ、フェニックス久しぶりだね』
フェニックスは自分の産みの親の気配を察知して森を飛び立ち、ここまで来た。
『君のお陰で種の繁栄は起動に乗ったよありがとう』
フェニックスによる救済で闘争などの進化を促す争い以外、虐殺や疫病等による種の崩壊は回避され、想定した個体数まで達した。つまり、フェニックスの役目は終わりを迎えたのである。
『でも、最後に自分の尻尾残してきたのはなぁ』
『………ダメ?』
『うーん、ダメではないけど』
神にとって娘の様な存在のフェニックスに言われると、ダメとは言いづらい。
『まぁ、これも進化の一つ、甘んじて見守ろう』
『……ん』
『さて、フェニックス君のお陰で命の調和は成された、役目は終わったよ』
『……ん……』
少し寂しそうにするフェニックス。
『………君にはしばらく眠りに着いて貰う、目が覚めたらご褒美を用意するよ、何がいい?』
『………ん、わたし、主が欲しい』
『主?フェニックスが仕える主人だと、相当強い者になるかな?』
『………ううん、強くなくていい、護りたい、心の拠り所……』
フェニックスにはまだそれがわからないらしい、が、本能的にか自分に必要なものと思っているらしい。
『………わかった、目が覚める時、君の側に君に相応しい主を導くことを約束するよ』
『……ありがとう神様』
そう言ってフェニックスは身体を丸める。
『おやすみフェニックス』
フェニックスは光に包まれると飛んで行く、幾星霜の後、主と出会うために。
『それにしても、主かぁ、血は繋がらないけど似るものなのかなぁ?』
それは一緒に造り出した魔神の一柱を思っての言葉、この時神はまさか魔神全てが同じ夢を抱いているとは夢にも思わず、後に自分が頭を抱えるとは夢にも思っていない。
「族長!これ以上ここにいては全滅してしまいます!」
「森を出て外の街に助けを……」
「ならぬ!」
一喝で言葉を遮ると森の族長は続ける。
「この病を外に出してはならぬ、我らは森の防人、森を護ると共に、外の世界も守らねばならない」
「くっ……」
苦虫を噛み潰したような顔をしながら外に出る若者達を見送りながら、族長は咳き込む。
「ゴホゴホゴホ、たとえこの地が滅ぼうとも、祖霊の遺志だけは………」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
族長の部屋から出てくる若者を待つ集団。
「おい、族長は何て?」
「……ダメだ、族長はこの森と死ぬつもりらしい、そっちは?」
「こっちもだ、老人は軒並みバカな考えはやめろってさ」
現在この村では世代によって対立をしていた、病魔を広めないため村から出る事を禁じる重鎮世代、自分達の命を優先するべきと考える若者世代。
「このままじゃダメだ、もう時間がない奴らが多い」
「………なら、やっぱり」
「ああ、結構は明日の朝早く、族長達の起きる前だ」
頷き合いそれぞれの準備を始める。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
翌朝、若者達が村を出るため入り口に集まったが。
「族長、な、なんでここに!?」
「お主達の考える事など予想が着く、ここを通すわけにはいかぬ」
「くっ、おい、どうする?」
「………仕方ない、そのために準備をしたんだ」
こうなることも予想はされていた、だから武器の準備もしてある。
「族長通らせてもらうぞ」
武器を構える若者。
「少しおいたが過ぎたな」
迎えるは経験を重ねた老人達。
一触即発の緊迫した空気の中、その羽ばたきは聞こえた。
バサァバサァ。
「な、なんだ、あれ………」
その場に居る誰もが天を仰いだ。
『貴方達はなに?』
「………え?」
突然の問に誰もが戸惑う。
『……もう一度……問う……貴方達はなに?』
朱く神々しい鳥は不機嫌そうに再度投げ掛ける。
「わ、我々はこの森の防人にございます!」
無意識に膝間付きながら族長が答える。
『……防人?』
「はいっ、この森を見守るため、この地にて、ゴホゴホっ」
途中で咳き込み、言葉が途切れる。
『……具合、悪い?』
「はい、この森は今、病魔に蝕まれています、貴女様もどうか御立ち去り下さい」
鳥はくるりと周りを見ると。
『……この森には、死が蔓延してる』
鳥は翼を広げる。
『………良くない』
鳥の翼から焔が立ち込め忽ち広がる。
「な、何を!?」
鳥が焔を出した事に慌て出す族長、よもや森ごと自分達を丸焼にするつもりか?
『……ん、命、大事』
鳥が呟くと身体が軽くなるのを感じた、自分の身体の異変に首を傾げていると。
「ぞ、族長!」
村に残っていた者が走って来る。
「どうした?」
「ね、寝込んでいた者が治りました、いえ、これはもう回復です、何故かは解りませんが病魔が消え去りました」
「な、なんと……」
明らかに目の前に居る鳥のお陰である。
「あ、貴女様はいったい?」
『……フェニックス、命の、守護者』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
フェニックスは神より、この世界の調和を命じられていた。特に多くの命が失われる事に対しての対策としてフェニックスは創られていた。
「では、この森に来られたのは?」
『……そう、この森には、死が漂っていた』
人だけではなく、動物、草木、森すべてに死が近づいていた。
「左様でしたか……」
人だけならばまだしも草木もとなると、病魔だけでは無かったかもしれない、何故かは今になっては解らないが、草木すらも死滅させる何かがあったのだろう。
『……ん、一つ、聞きたい』
意を決したようにフェニックスが聞く。
「何なりと」
『……そこまでして、森を護りたい?』
「………」
フェニックスの『そこまで』とは、同じ人同士、或いは親族同士でだ。
フェニックスが来なければ、悲惨な事になっていただろう。
「この森は我らが護らなければ成らないもの、心の拠り所です、それを次の世代に教えられなかった事が悔やまれます」
『………ん、よくわからない』
首を傾げるフェニックス。
「ホッホッホ、いつかフェニックス様にもその様なものができるといいですな」
『……ん』
まだ解らないが、頷いたフェニックス。
『………ん?時間?』
「おや?もう行かれるのですか?」
『……ん、そうみたい』
「左様ですか」
フェニックスは尻尾を降り始める。
『……ん、いい話聞いた御礼』
降り始めた尻尾が綺麗に切れ、灯火に変わる。
「これは?」
『……ん、これがあれば、命大切にできる』
「ホッホッホ、ありがとうございます、大切にさせていただきます」
『……ん』
フェニックスは満足そうに頷き、羽ばたく。
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フェニックスは森を出て数分、丘に降り立つと直ぐに気配を感じた。
『………神様?』
『やあ、フェニックス久しぶりだね』
フェニックスは自分の産みの親の気配を察知して森を飛び立ち、ここまで来た。
『君のお陰で種の繁栄は起動に乗ったよありがとう』
フェニックスによる救済で闘争などの進化を促す争い以外、虐殺や疫病等による種の崩壊は回避され、想定した個体数まで達した。つまり、フェニックスの役目は終わりを迎えたのである。
『でも、最後に自分の尻尾残してきたのはなぁ』
『………ダメ?』
『うーん、ダメではないけど』
神にとって娘の様な存在のフェニックスに言われると、ダメとは言いづらい。
『まぁ、これも進化の一つ、甘んじて見守ろう』
『……ん』
『さて、フェニックス君のお陰で命の調和は成された、役目は終わったよ』
『……ん……』
少し寂しそうにするフェニックス。
『………君にはしばらく眠りに着いて貰う、目が覚めたらご褒美を用意するよ、何がいい?』
『………ん、わたし、主が欲しい』
『主?フェニックスが仕える主人だと、相当強い者になるかな?』
『………ううん、強くなくていい、護りたい、心の拠り所……』
フェニックスにはまだそれがわからないらしい、が、本能的にか自分に必要なものと思っているらしい。
『………わかった、目が覚める時、君の側に君に相応しい主を導くことを約束するよ』
『……ありがとう神様』
そう言ってフェニックスは身体を丸める。
『おやすみフェニックス』
フェニックスは光に包まれると飛んで行く、幾星霜の後、主と出会うために。
『それにしても、主かぁ、血は繋がらないけど似るものなのかなぁ?』
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