妻は六英雄だが俺はしがない道具屋です

どらごんまじっく

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東へ向かう二人1日目 アリナ視点

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ゼロスとの二人っきりの馬車では、今までの関係が嘘のように打ち解けて話ができていた……
「そうか、お前の旦那、そんな奴なんだな」
「そう……本当にお人好しで、全然儲けとか考えてないから、お店はいつも火の車よ……」
「そりゃ大変だな、まあそれでも六英雄の嫁さん貰ってるくらいだから、根はしっかりしてんだろ」
「どうかしら……あまりそんな風には考えたことないから……ヒュレルはヒュレル……彼以上でも彼以下でもない……ヒュレルって存在が私は好きなの……」
「惚気てくれるね~妬いちまうじゃねえか」
「どうしてあなたが妬く必要があるのよ……」
「ヘヘヘッ……まあ、いいじゃねえか」

話は終始盛り上がり、あっという間に今日、宿泊予定の町へと到着した。
「相部屋じゃねえのか」
「そんなわけないでしょ! 別々よ! しかも隣の部屋でもありません!」
「なんだよ寂しいな……せめて隣の部屋にしろよな」
「バカ言わないで、どこの宿も壁なんて隙間だらけなんだから、隣も嫌よ」
「ほほう……宿の壁って隙間だらけなんだ……それは知らなかったな……お前、どうしてそんな事知ってるんだ」
「え! いや……女はね、プライベートに敏感なのよ、そんなの気づくに決まってるでしょ!」
「なるほどな……まあ、壁が隙間だらけってのはいい事聞いた、今度、アリナの隣の部屋になったらお前の寝顔を覗いてやるよ」
「そんなのやめてよね!」
「ヘヘヘッ……冗談だよ、覗きなんてセコイことするかよ」
その言葉にちょっと心が痛い……

部屋は別だが、食事の席は別にする理由がないので、ゼロスと食べる事になった……

「おい、ピーマンどうして残してんだよ」
なぜか皿の端に避けているピーマンを見て、ゼロスがそう言ってきた。
「昔から嫌いなのよ……」
「馬鹿野郎! ピーマンは体にいいんだぞ! 残すなんてもったいない!」
「そうかもしれないけど、私は食べれないの!」
「食べるまで部屋に戻ったらダメだぞ」
「どうしてそんな話になるのよ……」
「いいから食べなさい!」
「もったいないって理由ならあなたが食べればいいでしょ!」
「ほほう……俺に食べて欲しいと……なら、そのスプーンであ~んして食べさせてみろよ」
「ええ! 嫌よそんなの……」
「だったら自分で食べろよ」
「…………もう……ほら、あ~ん」
仕方ないので、スプーンにピーマンを乗せて、ゼロスにあ~んしてあげる……ゼロスはそれを食べると何が嬉しいのか笑顔になっていた。
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