妻は六英雄だが俺はしがない道具屋です

どらごんまじっく

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一人で東へ

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もう辛くて仕方なかった……あのルーリエがおかしくなり、ジアーノンさんに何か得体の知れない怖さを感じ……俺はここまま二人と旅をする自信がなくなっていた……
「だったら一人で行けばいいじゃないですの」
そう言ってくれるのは妖精だった……
「そうだな……このまま一緒にいてもお互い良くないかもな……」

それで俺は一人、朝早宿を飛び出していた……宿には手紙を託しているんで、俺が一人で東に向かったことは伝わっていると思う……同行してくれるのはあの妖精だけだった……

旅の途中であの二人に会うのも嫌なので、俺は山道の迂回路を選択していた……
「おい……待ちな! 命が欲しかったら金を置いていくんだよ」
山賊だ……なんと山賊と縁があることか……しかも見ると女山賊であった……あれ……ちょっと待ってくれ……この女山賊って……
「か……カレン! カレンだよな! 生きてたのか! 俺だよ、ヒュレルだよ!」

「……ちょっと待て……お前……カレンを知ってるのか?」
「何言ってるんだ、君はカレンだろ」
「……私はエルだ……カレンは私の姉貴だよ……」
「お姉さん……そっか……そうだよな……確かにカレンはあの時……」
「おい、ちょっと待て! 姉貴がどうかしたのかよ!」
「……お姉さんは死んだよ……部下に裏切られて腹を刺されていっぱい血が出てた……」
「なんだって……姉貴……くそっ! そいつ見つけて必ずケジメをとってやる!」

山賊に襲われて一時はどうなることかと思ったけど、カレンの妹で助かった……カレンにはまた助けてもらったな……
「それでお前は何者なんだ……」
エルがそう聞いてくる。
「別に何者でもないよ……元はカレンに捕まった人質だったけど……最後、彼女に助けてもらったんだ……」
「人質を助ける? 姉貴がか? 一体どういうことだよ」
「まあ……妹に言うのもなんだけど……俺はカレンの最後の男なんだ……」
「なんだって! あの姉貴が旦那以外の物を咥えたってことかよ……信じられねえ……お前……どれだけすげーモノ持ってんだよ……」
何か知らないけど、エルはかなり俺に感心している……

「それで……どこに向かってるんだ、お前……」
「東の神殿に行こうと思って……」
「東の神殿……そうか……俺もそこ行きたいと思ってたんだ……だけど旅の資金が無くなってしまってな、だから山賊をして稼ごうかと思ってたんだけどな……」
「ふむ……なら俺と一緒に来るか? カレンの妹なら彼女の恩を返さないと行けないからな」
「お……それは助かる……礼は夜にしてやるから楽しみにしてな」
「そ……そうか、それは楽しみだな……」
あまり拒否するのも悪いので、今はそう答えた……
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