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大人になりきれない探偵、それとスゴロク不正・解決
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司はタイマーアプリを止めて、そろりと語りだす。
「なかなかうまくやりましたね。エフさん」
司はひょうひょうとした態度で、エフさんの方を見る。
そのエフさんは全く動じず、だから何?という顔をしていた。
「イカサマですか……うーん、そんなことした覚えないんだけどな?」
とぼけんじゃねぇ。と思いつつ、僕はエフさんの顔を見た。
「……と言いたいところですが、まぁ証拠はもう押さえているようですね。司さん」
見慣れた悪い笑みを浮かべて、エフさんは言った。
僕はスマホの画面を見る。その画面は、黒を基調にしたシックなデザインだった。
「ひとつひとつ解説していきましょう。まずエフさん、あなたはサイコロの振り方を工夫した」
僕の脳裏に、さっきまでのスゴロクの映像が浮かぶ。
エフさんはサイコロを、転がすように振っていた。
それはこの小さいベンチの上で、落とさずにサイコロを振るため……そのはずだ。
でも、今指摘されてるってことは……?
「……うん。私はサイコロを転がすように振りました。でも、それがなーにーか?」
この期に及んで元気のいいエフさん。
しかし、司の頭脳はエフさんの牙城を崩しかかっている。
「おかしいと思ったんですよ。サイコロの内、2つの目が必ず出ないなんて」
エフさんの顔は、まだ笑顔だ。
「あなたはサイコロを転がすように振った。しかしその振り方をすれば、必ず2つ、目がでなくなる」
僕はその言葉を飲み込めず、確認しようとした。
「……司、それってどういう……あ!」
僕は頭の中に、車輪の映像を浮かべた。車輪は一方向に、ゴロゴロと回る。
サイコロも同じだ。転がせば、一方向にしか行かない。車輪なら問題はない。
でもサイコロは、転がる方向じゃないところにも……目がある。
「練習したんでしょうね。普通なら思いついたとしても、サイコロを奇麗に転がすところで挫折する」
「……えぇ。地面と指の間に、どうしても隙間ができますからね」
なるほど。確かにそれは立派な不正だ。でも……なんだか、嫌な予感がする。
司は僕の予感を感知したかのように、また語りだした。
「でも、普通のサイコロでその振り方をしてもさほど問題はありません」
「え?」
僕は気の抜けた声を出してしまった。
「いや司、問題ないってことはないでしょ。だって2つも目が出なくなるんだよ?」
「スゴロクは単純に、出た目が大きいほど得をするゲーム。だからさほど問題はないんだ」
そう言って司はスマホの画面を僕に見せる。
それはサイコロを、切り開いて平面にした画像だった。
「普通のサイコロは「出目」の数と「出目の裏」の数の和が7になるようできてる」
司は言った。それに続けて、エフさんもかぶせた。
「つまり「1」の裏には「6」、「2」の裏には「5」、「3」の裏には「4」がある。そういうことですね」
「正解です。じゃあコウ。これだと、どうしてこの振り方が問題になりにくいんだと思う?」
ちょっと考えて……僕はなんとなくの回答を出した。
「『1』が出なくなれば『6』も出なくなる。小さい目を防ごうとしたら、大きい目も無くしてしまう」
「正解だ。コウ」
転がす振り方で出なくできる目は、手のひらに乗せて自分から見た時、右と左に来る面だけ。
そして、その2面は当然背中合わせだ。
「……なるほどね……あぁ」
なーんだ。これくらいのことだったのか。
僕は気づけなかった自分を恥じた。昔だったらこれくらいのトリック、すぐに見抜けたのに。
「エフさん、だからサイコロをすぐ回収したんだ」
サイコロを回収すれば、この不正はバレない。だって、目立ちにくい不正だから。
僕はそう思って、エフさんを睨みつける。しかし、その行為は無意味だった。
本当、油断も隙もない……僕はそう思いつつ、サイコロを回収する。
「……ふーん。そういうことか」
エフさんのサイコロは、「6」の裏に「4」、「5」の裏に「3」、「1」の裏に「2」がある。
これであの振り方をしたら、「1」と「2」の目が出なくなる……本当、よく考えたものだ。
「エフさん、今回もよくやりましたね」
エフさんはちょっとかわいらしく舌を出した。
「ふふーん。私だって、サイコロ自作は苦労したんだもん」
なるほど、やっぱりエフさんは賢いものだ。
そして……
「……まぁ、なかなか凝ったイカサマですね。エフさん」
司はそう言って、話を締めようとする。
だけど、僕は満足いかない。
「司、まだ続けよう」
「……コウ?」
瞬間、エフさんの顔がこわばる。
多分僕の目に映る……この地獄の炎が、見えちゃったからだろう。
「ただしエフさん、条件があります。まずエフさんの分も、僕がサイコロを振ること」
エフさんの顔がどんどん恐怖の色を出していく。
面白くてたまらないなぁ。
「そして、ゲームは僕が負けるか、満足するまで続けること。僕が勝つたびに……ジュースでもおごってもらいましょうか」
久しぶりだなぁ、この力を使うのは。
◇◇◇
翌日、いつもの地下鉄ホームには……戦慄した顔の司がいた。
「な、なぁコウ……」
「うん?どうしたの?司」
司は言いにくそうに、囁いた。
「すごいな、サイコロで狙った目を確実に出せるって」
「簡単だよ。コツさえつかめばね」
「あー、うん」
僕の脳裏には、昨日のエフさんの顔が思い浮かんでいた。
わざわざスーパーにビニール袋を買っていき、ジュースを僕の家まで運ぶエフさんの顔が。
「ところで……26本もジュースを何に使うんだ?」
「飲む」
「あぁ……」
司は頭を抱えた。別に僕、変なことはしてないのに。
「なかなかうまくやりましたね。エフさん」
司はひょうひょうとした態度で、エフさんの方を見る。
そのエフさんは全く動じず、だから何?という顔をしていた。
「イカサマですか……うーん、そんなことした覚えないんだけどな?」
とぼけんじゃねぇ。と思いつつ、僕はエフさんの顔を見た。
「……と言いたいところですが、まぁ証拠はもう押さえているようですね。司さん」
見慣れた悪い笑みを浮かべて、エフさんは言った。
僕はスマホの画面を見る。その画面は、黒を基調にしたシックなデザインだった。
「ひとつひとつ解説していきましょう。まずエフさん、あなたはサイコロの振り方を工夫した」
僕の脳裏に、さっきまでのスゴロクの映像が浮かぶ。
エフさんはサイコロを、転がすように振っていた。
それはこの小さいベンチの上で、落とさずにサイコロを振るため……そのはずだ。
でも、今指摘されてるってことは……?
「……うん。私はサイコロを転がすように振りました。でも、それがなーにーか?」
この期に及んで元気のいいエフさん。
しかし、司の頭脳はエフさんの牙城を崩しかかっている。
「おかしいと思ったんですよ。サイコロの内、2つの目が必ず出ないなんて」
エフさんの顔は、まだ笑顔だ。
「あなたはサイコロを転がすように振った。しかしその振り方をすれば、必ず2つ、目がでなくなる」
僕はその言葉を飲み込めず、確認しようとした。
「……司、それってどういう……あ!」
僕は頭の中に、車輪の映像を浮かべた。車輪は一方向に、ゴロゴロと回る。
サイコロも同じだ。転がせば、一方向にしか行かない。車輪なら問題はない。
でもサイコロは、転がる方向じゃないところにも……目がある。
「練習したんでしょうね。普通なら思いついたとしても、サイコロを奇麗に転がすところで挫折する」
「……えぇ。地面と指の間に、どうしても隙間ができますからね」
なるほど。確かにそれは立派な不正だ。でも……なんだか、嫌な予感がする。
司は僕の予感を感知したかのように、また語りだした。
「でも、普通のサイコロでその振り方をしてもさほど問題はありません」
「え?」
僕は気の抜けた声を出してしまった。
「いや司、問題ないってことはないでしょ。だって2つも目が出なくなるんだよ?」
「スゴロクは単純に、出た目が大きいほど得をするゲーム。だからさほど問題はないんだ」
そう言って司はスマホの画面を僕に見せる。
それはサイコロを、切り開いて平面にした画像だった。
「普通のサイコロは「出目」の数と「出目の裏」の数の和が7になるようできてる」
司は言った。それに続けて、エフさんもかぶせた。
「つまり「1」の裏には「6」、「2」の裏には「5」、「3」の裏には「4」がある。そういうことですね」
「正解です。じゃあコウ。これだと、どうしてこの振り方が問題になりにくいんだと思う?」
ちょっと考えて……僕はなんとなくの回答を出した。
「『1』が出なくなれば『6』も出なくなる。小さい目を防ごうとしたら、大きい目も無くしてしまう」
「正解だ。コウ」
転がす振り方で出なくできる目は、手のひらに乗せて自分から見た時、右と左に来る面だけ。
そして、その2面は当然背中合わせだ。
「……なるほどね……あぁ」
なーんだ。これくらいのことだったのか。
僕は気づけなかった自分を恥じた。昔だったらこれくらいのトリック、すぐに見抜けたのに。
「エフさん、だからサイコロをすぐ回収したんだ」
サイコロを回収すれば、この不正はバレない。だって、目立ちにくい不正だから。
僕はそう思って、エフさんを睨みつける。しかし、その行為は無意味だった。
本当、油断も隙もない……僕はそう思いつつ、サイコロを回収する。
「……ふーん。そういうことか」
エフさんのサイコロは、「6」の裏に「4」、「5」の裏に「3」、「1」の裏に「2」がある。
これであの振り方をしたら、「1」と「2」の目が出なくなる……本当、よく考えたものだ。
「エフさん、今回もよくやりましたね」
エフさんはちょっとかわいらしく舌を出した。
「ふふーん。私だって、サイコロ自作は苦労したんだもん」
なるほど、やっぱりエフさんは賢いものだ。
そして……
「……まぁ、なかなか凝ったイカサマですね。エフさん」
司はそう言って、話を締めようとする。
だけど、僕は満足いかない。
「司、まだ続けよう」
「……コウ?」
瞬間、エフさんの顔がこわばる。
多分僕の目に映る……この地獄の炎が、見えちゃったからだろう。
「ただしエフさん、条件があります。まずエフさんの分も、僕がサイコロを振ること」
エフさんの顔がどんどん恐怖の色を出していく。
面白くてたまらないなぁ。
「そして、ゲームは僕が負けるか、満足するまで続けること。僕が勝つたびに……ジュースでもおごってもらいましょうか」
久しぶりだなぁ、この力を使うのは。
◇◇◇
翌日、いつもの地下鉄ホームには……戦慄した顔の司がいた。
「な、なぁコウ……」
「うん?どうしたの?司」
司は言いにくそうに、囁いた。
「すごいな、サイコロで狙った目を確実に出せるって」
「簡単だよ。コツさえつかめばね」
「あー、うん」
僕の脳裏には、昨日のエフさんの顔が思い浮かんでいた。
わざわざスーパーにビニール袋を買っていき、ジュースを僕の家まで運ぶエフさんの顔が。
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