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大人になりきれない探偵、それと復讐は何も生まない・I
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相変わらずの地下鉄ホーム。司は目をこすりながらスマホを見ていた。
「『復讐なんて損するだけだからやめておけ』か」
「……どうしたの司。急に2時間ドラマの主人公みたいなこと言いだして」
司は眠そうにあくびして、僕の方を見た。
「いや?俺の年上の友達の息子の先輩が、そんなことを言ってるらしくてな」
「司にとっては他人だねもうそれ」
「自分以外は全員他人だよ」
確かにね。
「……で、その先輩はどうしてそんなことを言ったの?司」
「なんか息子さんが復讐とかが絡んでる漫画読んでたらしくてな。それを見てた先輩が急に言ったそうだ」
なるほど、どうやらその先輩にも考え方がありそうだ。
まぁそういうのは自分の考え方だろう。僕は復讐賛成派だけど、司はどうか知らないし。
「だけどその先輩さんは『空気が読めるタイプ』らしくてな。そして息子さんは、その漫画が大好きらしい」
「……漫画の内容と反対のことを唐突に言うのは不自然。そう言いたいわけ?司」
司はこくりと頷き……もう一度頭を下げた。
これ多分相当眠たい奴だな。
「司大丈夫?会社でちゃんと起きてられる?」
「あぁいや大丈夫だと思う。昨日ちょっと遊びすぎてな」
大の大人がなにやってんだよ……
「一応聞いとくけど、何で遊んだの?」
「横断歩道の白線だけ踏むゲーム」
大の大人がなにやってんだよ……
というかあのゲーム深夜までやるのは狂ってるよ……
「あぁあとコウ。その息子さんが、今日私用でこの辺に来るらしいんだが……コウも一緒に来るか?」
「……え?なんで?」
「息子さんはどういうわけか、コウと話がしたいって言うんだ。俺も断ったけど、断り切れなくてな」
じゃあ司と話せばいいのに。
「で、だ。来るか?コウ」
いやそんなこと言われてもな、僕だって知らない人と急に会うのは怖いし……
いや、でもな……
僕は頭をフル回転させながら電光掲示板を見る。電車が来るまで、後1分だ。
◇◇◇
現在時刻午後5時半、僕はビクビクしながら喫茶店の前で……2人と合流した。
「……大丈夫ですか?コウさん」
そうやって話しかけてくれるのは、司の友達の息子で、イケメン高校生の明智ハレさん。落語部所属。
その後ろから歩いてくるのは、我らが覚道司くん(27)だ。
「どうもハレさん。ちょうど2年ぶりですかね」
「えぇ。お久しぶりです。そして……はじめまして。コウさん」
礼儀正しく挨拶してくれるハレさん。イケメンだし、多分彼女とかいるんだろうな。誰かさんとは違って。
「ところでハレさん。なんで、コウを呼んだんですか?」
「あぁ……それですか」
ハレさんは唐突に無表情になる。そのまま、彼は店のドアを開けてしまった。
「後で話します。今は、とりあえず店に入りましょう。暑いし」
そういえば今7月中旬だった。実際暑い。
ということで入ったのは、奥にボックス席があるいつもの喫茶店だった。
永譜と手紙の謎を解明したのも、この店だったはず。
「……どこに座る?司」
「俺はどこでも」
すると、ハレさんは僕らをボックス席まで引き連れた。
司が最初に座り、僕が廊下側に座る。ハレさんは向かい合わせに座った。
直後、店員さんが水を運んできてくれた。
「俺は何食べようかな……」
司は机の端にあるメニューを取ろうとする。
「その前に、司さん。コウさん」
それを遮ったのは、ハレさん自身だった。
「……どうしました?ハレさん」
「あなたたちは、これまでそこそこの事件を解決してきた『探偵』でいらっしゃるんですよね?」
探偵。その言葉に、僕と司はフリーズする。
「たっ、探偵ですか。まぁ確かに、謎を解くという意味ではそうかもしれませんが」
司はたどたどしく返事する。しかし、ハレさんの表情は変わらない。
「実は俺も、先輩の行動が気になってるんです。先輩は、あんまり人の考え方とかに口を挟まないから」
「なるほど……つまり、その行動の真意を考えてほしいと」
ハレさんは無言で頷いた。
「わっ、わかりました……それでは、ちょっとやってみます」
司はだんだんと落ち着きを取り戻し、それと同時に目を輝かせる。
どうしたんだろうと考えていたら、急に小声で話しかけられた。
「コウ、俺達探偵だってよ!やったな!」
「ま、まぁそうだね……」
そうやって喜ぶ司の姿を、ハレさんは黙って見守った。
数秒後、ハレさんはまっすぐとこちらを見る。
「俺と先輩は、落語部の先輩後輩かつ……かけがえのない仲間です。時々、一緒にテレビゲームなんかもしてました」
僕は真剣な目で相手を見る。司の目はまだ輝いている気がする。
「だけど先週金曜日、俺が漫画を読んでいると、唐突に言い出したんです。『復讐なんて損するだけだからやめておけ』と」
「ですがその漫画はいわゆる『復讐もの』だった。そして、あなたはその漫画が好きだった」
ちなみに僕もその漫画を読もうとしたけど、18禁だった。えっちじゃない18禁って地味に初めて見た。
落ち着いた表情だった。ハレさんは、また語りだす。
「先輩はちょっと過剰なくらい空気を読む性格なんです。だけどその時は……」
「だからあなたは気になった。先輩の行動の意味が」
ハレさんは軽く頭を下げる。その表情は、真剣そのものだ。
「『復讐なんて損するだけだからやめておけ』か」
「……どうしたの司。急に2時間ドラマの主人公みたいなこと言いだして」
司は眠そうにあくびして、僕の方を見た。
「いや?俺の年上の友達の息子の先輩が、そんなことを言ってるらしくてな」
「司にとっては他人だねもうそれ」
「自分以外は全員他人だよ」
確かにね。
「……で、その先輩はどうしてそんなことを言ったの?司」
「なんか息子さんが復讐とかが絡んでる漫画読んでたらしくてな。それを見てた先輩が急に言ったそうだ」
なるほど、どうやらその先輩にも考え方がありそうだ。
まぁそういうのは自分の考え方だろう。僕は復讐賛成派だけど、司はどうか知らないし。
「だけどその先輩さんは『空気が読めるタイプ』らしくてな。そして息子さんは、その漫画が大好きらしい」
「……漫画の内容と反対のことを唐突に言うのは不自然。そう言いたいわけ?司」
司はこくりと頷き……もう一度頭を下げた。
これ多分相当眠たい奴だな。
「司大丈夫?会社でちゃんと起きてられる?」
「あぁいや大丈夫だと思う。昨日ちょっと遊びすぎてな」
大の大人がなにやってんだよ……
「一応聞いとくけど、何で遊んだの?」
「横断歩道の白線だけ踏むゲーム」
大の大人がなにやってんだよ……
というかあのゲーム深夜までやるのは狂ってるよ……
「あぁあとコウ。その息子さんが、今日私用でこの辺に来るらしいんだが……コウも一緒に来るか?」
「……え?なんで?」
「息子さんはどういうわけか、コウと話がしたいって言うんだ。俺も断ったけど、断り切れなくてな」
じゃあ司と話せばいいのに。
「で、だ。来るか?コウ」
いやそんなこと言われてもな、僕だって知らない人と急に会うのは怖いし……
いや、でもな……
僕は頭をフル回転させながら電光掲示板を見る。電車が来るまで、後1分だ。
◇◇◇
現在時刻午後5時半、僕はビクビクしながら喫茶店の前で……2人と合流した。
「……大丈夫ですか?コウさん」
そうやって話しかけてくれるのは、司の友達の息子で、イケメン高校生の明智ハレさん。落語部所属。
その後ろから歩いてくるのは、我らが覚道司くん(27)だ。
「どうもハレさん。ちょうど2年ぶりですかね」
「えぇ。お久しぶりです。そして……はじめまして。コウさん」
礼儀正しく挨拶してくれるハレさん。イケメンだし、多分彼女とかいるんだろうな。誰かさんとは違って。
「ところでハレさん。なんで、コウを呼んだんですか?」
「あぁ……それですか」
ハレさんは唐突に無表情になる。そのまま、彼は店のドアを開けてしまった。
「後で話します。今は、とりあえず店に入りましょう。暑いし」
そういえば今7月中旬だった。実際暑い。
ということで入ったのは、奥にボックス席があるいつもの喫茶店だった。
永譜と手紙の謎を解明したのも、この店だったはず。
「……どこに座る?司」
「俺はどこでも」
すると、ハレさんは僕らをボックス席まで引き連れた。
司が最初に座り、僕が廊下側に座る。ハレさんは向かい合わせに座った。
直後、店員さんが水を運んできてくれた。
「俺は何食べようかな……」
司は机の端にあるメニューを取ろうとする。
「その前に、司さん。コウさん」
それを遮ったのは、ハレさん自身だった。
「……どうしました?ハレさん」
「あなたたちは、これまでそこそこの事件を解決してきた『探偵』でいらっしゃるんですよね?」
探偵。その言葉に、僕と司はフリーズする。
「たっ、探偵ですか。まぁ確かに、謎を解くという意味ではそうかもしれませんが」
司はたどたどしく返事する。しかし、ハレさんの表情は変わらない。
「実は俺も、先輩の行動が気になってるんです。先輩は、あんまり人の考え方とかに口を挟まないから」
「なるほど……つまり、その行動の真意を考えてほしいと」
ハレさんは無言で頷いた。
「わっ、わかりました……それでは、ちょっとやってみます」
司はだんだんと落ち着きを取り戻し、それと同時に目を輝かせる。
どうしたんだろうと考えていたら、急に小声で話しかけられた。
「コウ、俺達探偵だってよ!やったな!」
「ま、まぁそうだね……」
そうやって喜ぶ司の姿を、ハレさんは黙って見守った。
数秒後、ハレさんはまっすぐとこちらを見る。
「俺と先輩は、落語部の先輩後輩かつ……かけがえのない仲間です。時々、一緒にテレビゲームなんかもしてました」
僕は真剣な目で相手を見る。司の目はまだ輝いている気がする。
「だけど先週金曜日、俺が漫画を読んでいると、唐突に言い出したんです。『復讐なんて損するだけだからやめておけ』と」
「ですがその漫画はいわゆる『復讐もの』だった。そして、あなたはその漫画が好きだった」
ちなみに僕もその漫画を読もうとしたけど、18禁だった。えっちじゃない18禁って地味に初めて見た。
落ち着いた表情だった。ハレさんは、また語りだす。
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