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大人になりきれない探偵、それと復讐は何も生まない・II
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「お願いします。先輩の行動の意味がないならない、あるならあるで、はっきりさせてもらえませんか?」
僕は司の表情を見る。その顔には、その目には……今度は炎がこもっていた。
「もちろんです。だって、俺達は探偵ですから」
そう言う司の表情は、間違いなくこれまでで一番かっこよかった。
司はメモ用紙を取り出し、ペンを右手に持つ。
さっき運ばれてきた水を一口飲むと、ハレさんをまっすぐ見た。
「では、その先輩とあなたの関係を、細かく教えて来ただけますか?」
「はい。先輩と俺が出会ったのは、高校に入ってすぐでした」
ハレさんは胸に手を当て、言葉を紡ぐ。
「俺が自転車置き場に入れる時ミスって、自転車ごと荷物を倒したんです。その時にさっそうと現れたのが」
「先輩さん、ですか」
「はい。そしてその直後に勧誘されたんです。落語部へ来ないかって」
ハレさんはスマホを出して、机の上に置く。
そこに映るのはのどかな田園風景。周りには一軒家がぽつぽつあるばかりだ。
「……先輩、空気を読みすぎちゃうところがあるんです。混雑が嫌いなのに、無理して仲良くもない奴とゲーセン行ったり」
「……ハレさんは、空気を読みすぎることに関してどう考えてますか?」
「適度に読むのはもちろん結構です。だけど、先輩に関してはちょっと心配だなぁって。大きなお世話ですけどね」
なるほど、ということはつまり。僕はある確信をもって、発言をしてみた。
「ハレさんは先輩に、もうちょっと自分を大切にしてほしいんですか?」
「そういうことです。だから、今回の事を調べてみたらなにかわかるかと思って」
やっぱり優しい人なんだな、ハレさん。
僕はそんなことを考えて水を飲む。よく冷えてて美味しい。
「先輩は、俺になんでも教えてくれました。毎週金曜日には、遊ぶついでに、俺の家で特訓したりも」
「他に先輩について、何か気になるところは?」
「いやぁ特に……強いて言うなら、成績が高いところくらいですかね?まぁ、あの人努力家ですし」
司は真剣な表情でハレさんを見つめる。
「……大切な人なんですね。ハレさん」
そして、司はフッとにやけた。
「真相を解明して見せますよ。この探偵・覚道司にお任せください」
そう言う司の目には、確かに炎がこもっていた。
「……ガンバレ、司」
そんな司の勢いに、僕も小声でそう言ってしまう。
ちょっと恥ずかしくなってすぐにうつむくと、スマホの画面にまた別の画像が映っていた。
たくさんの人が走るグラウンドに、その隣にある自転車置き場はカラフルな自転車でパンパン。
校舎も大きく、相当なマンモス校であることがわかった。
◇◇◇
その後『先輩の空気読まない発言事件』の話は一度やめることにした。
2人はそれぞれ夕飯も近いので飲み物だけ頼み、年齢差にも関わらず意外と楽しい時を過ごしたんだけど……
「……気まじぃ」
僕は店のトイレにこもり、どうすることかと考え込んでいた。
なんせ司が察し悪いせいで僕はただただ相槌を打つマシーンと化していたのである。
だってさ、友達の友達って普通あれじゃん?気まずいじゃん?
「……うーん」
落語。悲しいことに僕は、落語というものをほとんど知らない。
寿限無がどうとかまんじゅうがどうとか、それくらいしか知らない。
いっそのことこの場から抜け出しちゃおうかな。
司が探偵だからって、僕まで呼び寄せる理由があんまりわからないし。
というか、今何時だろう?トイレには時計がないからな。
「……落語か」
先輩は一言、そう一言『復讐なんて損するだけだからやめておけ』とだけ言った。
空気が読めるはずなのにその発言をした理由は多分、実際に復讐しようとして痛手を負ったからだろう。
だけど誰に復讐をするんだ?
「うーん」
ここまでの話で、先輩は空気を読める性格だという事、先輩とハレさんは仲いいことがわかっている。
じゃあ例えば……先輩は昔いじめられてたとすれば?
いじめではなくても、何か嫌なことがあった相手に復讐しようとしても失敗し、そのトラウマから空気を読むようになった。
こうすれば説明はつくけど……だけど、この説明は僕のただの証拠のない『妄想』だ。
まぁ『ふとした発言』の理由を裏付ける証拠なんてないけど、それでも『推測』と言えるレベルのものは作りたい。
でも、そのためにはどうすれば……
「おーいコウ!大丈夫か!?」
そこそこ焦った司の声。やばいなこれ、不安にさせたかも。
「だっ、大丈夫だよー?結構……お腹が痛いだけで」
「そ、そうか……まだ痛むのか?」
「うん。結構ね」
その回答がまずかった。司の声がさらに焦っている気がした。
「だっ、大丈夫なのか?救急車とか……あぁでも迷惑か?いやでも緊急かもしれないし」
あぁどうしよう、僕の嘘のせいで大変なことになってる……
「え、えーっと、こういう場合は」
「#7119です。司さん」
瞬間、後ろからハレさんの落ち着き払った声が聞こえた。
「#7119?それはなんですか?」
「救急車を呼ぶべきか判断してくれるサービスです。まぁ……コウさんは、大丈夫な気がしますけどね」
どうやら、ハレさんは察しがいいらしい。
僕は司の表情を見る。その顔には、その目には……今度は炎がこもっていた。
「もちろんです。だって、俺達は探偵ですから」
そう言う司の表情は、間違いなくこれまでで一番かっこよかった。
司はメモ用紙を取り出し、ペンを右手に持つ。
さっき運ばれてきた水を一口飲むと、ハレさんをまっすぐ見た。
「では、その先輩とあなたの関係を、細かく教えて来ただけますか?」
「はい。先輩と俺が出会ったのは、高校に入ってすぐでした」
ハレさんは胸に手を当て、言葉を紡ぐ。
「俺が自転車置き場に入れる時ミスって、自転車ごと荷物を倒したんです。その時にさっそうと現れたのが」
「先輩さん、ですか」
「はい。そしてその直後に勧誘されたんです。落語部へ来ないかって」
ハレさんはスマホを出して、机の上に置く。
そこに映るのはのどかな田園風景。周りには一軒家がぽつぽつあるばかりだ。
「……先輩、空気を読みすぎちゃうところがあるんです。混雑が嫌いなのに、無理して仲良くもない奴とゲーセン行ったり」
「……ハレさんは、空気を読みすぎることに関してどう考えてますか?」
「適度に読むのはもちろん結構です。だけど、先輩に関してはちょっと心配だなぁって。大きなお世話ですけどね」
なるほど、ということはつまり。僕はある確信をもって、発言をしてみた。
「ハレさんは先輩に、もうちょっと自分を大切にしてほしいんですか?」
「そういうことです。だから、今回の事を調べてみたらなにかわかるかと思って」
やっぱり優しい人なんだな、ハレさん。
僕はそんなことを考えて水を飲む。よく冷えてて美味しい。
「先輩は、俺になんでも教えてくれました。毎週金曜日には、遊ぶついでに、俺の家で特訓したりも」
「他に先輩について、何か気になるところは?」
「いやぁ特に……強いて言うなら、成績が高いところくらいですかね?まぁ、あの人努力家ですし」
司は真剣な表情でハレさんを見つめる。
「……大切な人なんですね。ハレさん」
そして、司はフッとにやけた。
「真相を解明して見せますよ。この探偵・覚道司にお任せください」
そう言う司の目には、確かに炎がこもっていた。
「……ガンバレ、司」
そんな司の勢いに、僕も小声でそう言ってしまう。
ちょっと恥ずかしくなってすぐにうつむくと、スマホの画面にまた別の画像が映っていた。
たくさんの人が走るグラウンドに、その隣にある自転車置き場はカラフルな自転車でパンパン。
校舎も大きく、相当なマンモス校であることがわかった。
◇◇◇
その後『先輩の空気読まない発言事件』の話は一度やめることにした。
2人はそれぞれ夕飯も近いので飲み物だけ頼み、年齢差にも関わらず意外と楽しい時を過ごしたんだけど……
「……気まじぃ」
僕は店のトイレにこもり、どうすることかと考え込んでいた。
なんせ司が察し悪いせいで僕はただただ相槌を打つマシーンと化していたのである。
だってさ、友達の友達って普通あれじゃん?気まずいじゃん?
「……うーん」
落語。悲しいことに僕は、落語というものをほとんど知らない。
寿限無がどうとかまんじゅうがどうとか、それくらいしか知らない。
いっそのことこの場から抜け出しちゃおうかな。
司が探偵だからって、僕まで呼び寄せる理由があんまりわからないし。
というか、今何時だろう?トイレには時計がないからな。
「……落語か」
先輩は一言、そう一言『復讐なんて損するだけだからやめておけ』とだけ言った。
空気が読めるはずなのにその発言をした理由は多分、実際に復讐しようとして痛手を負ったからだろう。
だけど誰に復讐をするんだ?
「うーん」
ここまでの話で、先輩は空気を読める性格だという事、先輩とハレさんは仲いいことがわかっている。
じゃあ例えば……先輩は昔いじめられてたとすれば?
いじめではなくても、何か嫌なことがあった相手に復讐しようとしても失敗し、そのトラウマから空気を読むようになった。
こうすれば説明はつくけど……だけど、この説明は僕のただの証拠のない『妄想』だ。
まぁ『ふとした発言』の理由を裏付ける証拠なんてないけど、それでも『推測』と言えるレベルのものは作りたい。
でも、そのためにはどうすれば……
「おーいコウ!大丈夫か!?」
そこそこ焦った司の声。やばいなこれ、不安にさせたかも。
「だっ、大丈夫だよー?結構……お腹が痛いだけで」
「そ、そうか……まだ痛むのか?」
「うん。結構ね」
その回答がまずかった。司の声がさらに焦っている気がした。
「だっ、大丈夫なのか?救急車とか……あぁでも迷惑か?いやでも緊急かもしれないし」
あぁどうしよう、僕の嘘のせいで大変なことになってる……
「え、えーっと、こういう場合は」
「#7119です。司さん」
瞬間、後ろからハレさんの落ち着き払った声が聞こえた。
「#7119?それはなんですか?」
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どうやら、ハレさんは察しがいいらしい。
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