大人になりきれない探偵さん

草薙ユイリ

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大人になりきれない探偵、それと復讐は何も生まない・III

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 その場を落ち着かせて、そんなこんなで僕は司たちのところへ戻った。

 だが……司は少々、考え込んでいるようだ。
「なぁコウ、これどうすればいいと思う?」
「頑張りなよ……探偵でしょ?司」
 そう言うと、司はガクッとうなだれてしまった。

 仕方ない。僕がちょっとだけ手伝うか。
「……ところでハレさん。その先輩、もしかして昔いじめられてませんでしたか?」

「え?いやぁ……どうだろう?先輩、あんまり昔のことを話さないからな」

「じゃあ、これまでに先輩さんが似たような発言をしたことは?」

「うーん。特にないかな」
「逆にハレさんが先輩さんの家に行ったことは?」

「ないですね。マンションに住んでるとだけ言ってました」

 ありゃ、どうしよう。
 このままだと本当に行き止まりだけど……
 その時だった。僕の隣を、男の店員さんが通った。

「失礼します。カルピスと、コーラ2つになります」

 長ぼそいガラスのコップに入ったドリンク。おそらく、トイレに行っている間に頼んだんだろう。

「あ、あぁ。ありがとうございます」
 僕はそう言って、カルピスを受け取る。
 司とハレさんはコーラをそれぞれ受け取った。
「……それじゃ、いただきます」
 司はコップに口を付け、勢いよくコーラを飲む。

 大丈夫?強い炭酸を一気に飲むと……
 そう思っていたら、司は目を見開いて、手を口に持って行った。

「うん……グッ……あぁっ!」
 口の中のコーラを無理して飲み干し、ゴホゴホとせき込む。

 苦しそうな表情をした司に、僕は早速『7119』のダイヤルをしようと考えてしまった。

「あーあ、炭酸一気飲みするとそうなるんだよ?司」

「うっ……すいません、ハレさん、コウ」
「い、いえいえー」
 咳をする間隔が段々減っていく。数秒後、司はなんとか健康に戻った。

「うぅ、これだから炭酸は嫌なんだ」
 そう言いながら、司はコーラをまた飲みだす。
「ねぇ司、行動と発言くらい一致させたらどうなの?」

「仕方ないだろ。好きな物はやめられないもんだ」

 まぁ、それは……わかるけど。
 僕は司を見ながら、カルピスを一口飲む。
 おなじみの優しい甘さが口の中に広がった。
「……そういえば司さん、コウさん。時間は大丈夫ですか?」

「俺は大丈夫だけど、コウは?門限とかいいのか?」

 僕は司の腕時計を覗き見る。
 現在時刻6時40分。帰る時間を考えると、そろそろ危ない。

「後10分くらいですかね……すいません。ハレさん」

「いえいえ!こちらの無理な呼び出しに、応えてくれた時点でありがたいです。コウさん」

 僕とハレさんはお互い頭を軽く下げた。
「……じゃあ本気で考えないとな。探偵らしく」
 まだ調子乗ってるのかな。
 まぁでも、僕も司には頑張ってほしいし……そうだ、アレを言おう。

「ねぇ司、ちょっと」
「うん?どうした?コウ」
 僕は司の耳に近づき、トイレでさっき考えたことを囁いた。

 先輩さんはもしかしたら、いじめられたことがあるかもしれないこと。

 そしてその相手に復讐しようとして失敗した経験から、その言葉を言ってしまったかもしれないこと。

 その言葉をひとつひとつ言っていくたびに、司の表情は深刻になっていった。

 そして、十秒ほど後……
「コウ……お前腹壊してる時にそんな考えられるのか!すごいじゃねーか!」

 あ、ごめん。普通にごめん、騙して。
 僕はこっそりとハレさんの方を見る。ハレさん完全に笑ってるじゃん。


◇◇◇

「……ふぅーん」
 パソコンのファンみたいな声を上げながら、司はさらに考え込む。

 現在時刻6時44分。ちょっと時間が厳しくなってきたかもしれない。

「あのハレさん、一応最後に、先輩の写真とか見せてもらえませんか?」

「いいですよ。司さん」
 そう言うと、ハレさんはスマホをまたしても見せた。

「この人です。この右側の人」
 ハレさんが見せたのは、ハレさんと大柄の男が映っていた。

「ありがとうございます……コウ、この人見て何か気づくことないか?」

「気づくこと?何?」
 僕はスマホの画面をじっくり見てみるけど……何もわからない。

「何がどうなの?司」
「この人の目がちょっと赤いし、目の下にクマができてる。多分この人は夜更かしした」

 僕は写真をもう一度見てみる。そう言われると確かにそうだな。

「先輩は夜更かし好きなんです。毎朝困ってるクセして。よくわかりましたね」

「もちろん、俺は探偵ですから!」
 調子乗ってるな、みたいな目で僕は司を見ようとする。

 だけど……次の瞬間、司の目つきが、変わったような気がした。

 その視線はテーブルの上のメモ帳に注がれている。どうしたんだろう……そう思っている時だ。

 司はまたペンを取って、メモに何か付け足し始めた!

「つ、司?大丈夫なの?」
「あぁいや……ちょっと考え込んでな」
 次の瞬間、司は口角を上げる。
 まるで自分の計画がうまくいった時のように、司は態度を変えた。

「ハレさん。ご覧ください、これが……探偵・覚道司の力です」

 その目つき、その態度、その言葉。
 司は、いよいよ真実にたどり着いたらしい。
「まず断っておくと、ここから話すことは全て俺の妄想です。ご了承ください」

 司はそう言うと、またコーラを一口飲んだ。
「はい。よろしくお願いします」
 ハレさんはそう言って、頭をぺこりと下げた。
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