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大人になりきれない探偵、それとホラー映画の子供が描く奴・解決
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「……なるほどな」
パソコン越しに、司はそう言った。
僕は司が共有したリンクをクリックして、メモアプリを開く。
・風さんとナツメさんはよく近くにいる
・風さんとナツメさんの両方ともよく眠る
・風さんは部屋を違和感を感じるほど奇麗にする
・オーディオセットの音量は大きい
「……そういやナツメさん。あなたがその絵を描いたのは、一体いつなんですか?」
司のその質問に、ナツメは少し考えて答えた。
「えーっと、大体3か月前です。だから正直、その時の記憶は曖昧で」
「でも眠たかったことは覚えている」
「はい。眠たくて眠たくて、気づいたら書斎で寝てました」
キーボードをタイプするカタカタという音が聞えて来た。
「ところで今、風さんはどこに?」
「ぐっすり寝てるよ。司」
僕はちらりと風さんの方を見る。
イヤホンを付けながら、未だぐっすりと眠っていた。本当余裕そうな顔だ。
「風さんは何か身に着けていますか?」
ナツメも風さんの方を見て、すぐに答えた。
「イヤホンを付けてます。そのまま、ぐっすり」
「イヤホン、ですか……なるほど」
その時まで、僕はまた質問が繰り返されるものだと思っていた。
でも……違った。
「最後の質問です。ナツメさん、あなたは小説を読むとき、頭の中に映像を浮かべるタイプですか?」
「え?はい。なんなら音声までついてきます。後小説じゃなくて『ラノベ』です」
まだ言ってるよこの人……僕はそのまま、司の物言いを聞いた。
「一応仮説は絞れました。ナツメさん、お兄さんが何を聞いているのか、わかりますか?」
「え?あぁ、はい」
ナツメは風さんのズボンのポケットから、スマホを取り出した。
「なんか普通の、洋楽?っぽいの聞いてます」
「他にプレイリストなどは?」
ナツメは少し考えて……驚いた声を出した。
「あっ!もしかして、ですけど」
少しにやけながら、ナツメは語った。
「例えば兄ちゃんがボイスドラマとか聞いてるのを、私がうっかり聞いちゃった、とか?」
「筋がいいですね。まさにそれです」
司とナツメの会話に、僕だけ追いつけない。
「え、どういう……あ!そういうこと?」
僕はそのまま、二人の会話を解釈した。
風さんが聞いている、ボイスドラマなどの音声。それを、音漏れしたイヤホンからナツメが聞く。
それを元にナツメは脳内で映像を作り上げ、それを絵に描いた。
これなら一時創作ではないし、画像検索で出ないことにも納得がいく、というわけだ。
「まぁ多分そういうことでしょうね。確証はありませんが」
「いえいえ!ロジック立てられた推理、お見事でした」
ナツメは手を叩いて司を褒める。いや待って、そういうことすると……
「え?いえいえー、これでも、『探偵』ですからぁ」
調子乗りだすんだよなぁ。
◇◇◇
「んじゃ、もう帰るの?コウ」
「まぁそりゃあね。ナツメ」
現在時刻午後6時20分。ここから僕の家までは1時間かかり、そして僕は8時までに帰ればいい。
つまり後40分……色々差し引いても30分くらいは余裕があるわけだ。まぁ、帰るけどね。
「……しっかし、このキャラ誰なんだろうね。全然記憶がないや」
ナツメの呟きに感化され、僕はある思いを抑えられなくなる。
なぜ風さんの部屋はあんなに奇麗なのか?鍵もかかってないし……
「どうしたの?コウ」
「うん?あぁ、大丈夫」
と言っても、ここから新しい情報を手に入れる方法なんてない。
だって使えるのは僕が覚えた『違和感』だけで……いや、待てよ。
「ねぇナツメ、もうちょっと調べてみていい?」
「うん?別にいいけど……どうしたの?」
◇◇◇
僕はまた、2階の風さんの部屋の前にいた。でも……右手に、例の音楽プレイヤーを握っていた。
「……兄ちゃんのプレイヤーで、どうするつもりなの?コウ」
「ちょっと思いついたことがあって」
2階の鍵穴は大きく、2階の廊下は薄暗い。そして、風さんはDIYが得意だ。
それにあんなに奇麗な部屋で、音楽プレイヤーだけ雑に置かれているのはおかしい。
風さんは忘れっぽい性格……つまり、このプレイヤーだけ置かれていたのは『思い出すため』だったんじゃないか?
自分が作った壮大な仕掛けを、思い出すための。
「……行くよ」
僕は鍵穴に……音楽プレイヤーを差し込む。すると、柔らかい音が鳴った。
やっぱりだ。この鍵穴は……USBの穴でもあるんだ。
「……じゃあ、戻るよ。ナツメ」
「わ、わかった」
そのプレイヤーを持って、僕らはまた1階のリビングに戻った。
カラフルで豪華なリビングの中、僕らはプレイヤーをパソコンに差し込む。
「……どうなるんだろうね、コウ」
「わかんない。でも、見てみる価値はあると思う」
心臓の鼓動が速くなる。そのままロードは終わり……プレイヤー内のファイルが表示された。
そして僕らは……ほぼ同時に困惑した。
「……え?」
パソコンに表示された音声ファイル名は『【ASMR】デカすぎる生意気幼馴染のあまあま耳かき』だった。
僕は隣を見る。すると、ナツメは後ろを向いていた。
「……おはよう、兄ちゃん。これはどこで買ったの?」
その声は確かに震えている。
「ち、違うんだナツメ!これは……いやちゃんと買ってるから!」
「うんそういうのはいいから。ちょっと待ってね。兄ちゃん」
ナツメの表情は笑っていた。目の奥には、黒い炎があったが。
まぁ、うん……僕は苦笑いも浮かべられず、ただ発言した。
「あの、帰っていいですか?」
パソコン越しに、司はそう言った。
僕は司が共有したリンクをクリックして、メモアプリを開く。
・風さんとナツメさんはよく近くにいる
・風さんとナツメさんの両方ともよく眠る
・風さんは部屋を違和感を感じるほど奇麗にする
・オーディオセットの音量は大きい
「……そういやナツメさん。あなたがその絵を描いたのは、一体いつなんですか?」
司のその質問に、ナツメは少し考えて答えた。
「えーっと、大体3か月前です。だから正直、その時の記憶は曖昧で」
「でも眠たかったことは覚えている」
「はい。眠たくて眠たくて、気づいたら書斎で寝てました」
キーボードをタイプするカタカタという音が聞えて来た。
「ところで今、風さんはどこに?」
「ぐっすり寝てるよ。司」
僕はちらりと風さんの方を見る。
イヤホンを付けながら、未だぐっすりと眠っていた。本当余裕そうな顔だ。
「風さんは何か身に着けていますか?」
ナツメも風さんの方を見て、すぐに答えた。
「イヤホンを付けてます。そのまま、ぐっすり」
「イヤホン、ですか……なるほど」
その時まで、僕はまた質問が繰り返されるものだと思っていた。
でも……違った。
「最後の質問です。ナツメさん、あなたは小説を読むとき、頭の中に映像を浮かべるタイプですか?」
「え?はい。なんなら音声までついてきます。後小説じゃなくて『ラノベ』です」
まだ言ってるよこの人……僕はそのまま、司の物言いを聞いた。
「一応仮説は絞れました。ナツメさん、お兄さんが何を聞いているのか、わかりますか?」
「え?あぁ、はい」
ナツメは風さんのズボンのポケットから、スマホを取り出した。
「なんか普通の、洋楽?っぽいの聞いてます」
「他にプレイリストなどは?」
ナツメは少し考えて……驚いた声を出した。
「あっ!もしかして、ですけど」
少しにやけながら、ナツメは語った。
「例えば兄ちゃんがボイスドラマとか聞いてるのを、私がうっかり聞いちゃった、とか?」
「筋がいいですね。まさにそれです」
司とナツメの会話に、僕だけ追いつけない。
「え、どういう……あ!そういうこと?」
僕はそのまま、二人の会話を解釈した。
風さんが聞いている、ボイスドラマなどの音声。それを、音漏れしたイヤホンからナツメが聞く。
それを元にナツメは脳内で映像を作り上げ、それを絵に描いた。
これなら一時創作ではないし、画像検索で出ないことにも納得がいく、というわけだ。
「まぁ多分そういうことでしょうね。確証はありませんが」
「いえいえ!ロジック立てられた推理、お見事でした」
ナツメは手を叩いて司を褒める。いや待って、そういうことすると……
「え?いえいえー、これでも、『探偵』ですからぁ」
調子乗りだすんだよなぁ。
◇◇◇
「んじゃ、もう帰るの?コウ」
「まぁそりゃあね。ナツメ」
現在時刻午後6時20分。ここから僕の家までは1時間かかり、そして僕は8時までに帰ればいい。
つまり後40分……色々差し引いても30分くらいは余裕があるわけだ。まぁ、帰るけどね。
「……しっかし、このキャラ誰なんだろうね。全然記憶がないや」
ナツメの呟きに感化され、僕はある思いを抑えられなくなる。
なぜ風さんの部屋はあんなに奇麗なのか?鍵もかかってないし……
「どうしたの?コウ」
「うん?あぁ、大丈夫」
と言っても、ここから新しい情報を手に入れる方法なんてない。
だって使えるのは僕が覚えた『違和感』だけで……いや、待てよ。
「ねぇナツメ、もうちょっと調べてみていい?」
「うん?別にいいけど……どうしたの?」
◇◇◇
僕はまた、2階の風さんの部屋の前にいた。でも……右手に、例の音楽プレイヤーを握っていた。
「……兄ちゃんのプレイヤーで、どうするつもりなの?コウ」
「ちょっと思いついたことがあって」
2階の鍵穴は大きく、2階の廊下は薄暗い。そして、風さんはDIYが得意だ。
それにあんなに奇麗な部屋で、音楽プレイヤーだけ雑に置かれているのはおかしい。
風さんは忘れっぽい性格……つまり、このプレイヤーだけ置かれていたのは『思い出すため』だったんじゃないか?
自分が作った壮大な仕掛けを、思い出すための。
「……行くよ」
僕は鍵穴に……音楽プレイヤーを差し込む。すると、柔らかい音が鳴った。
やっぱりだ。この鍵穴は……USBの穴でもあるんだ。
「……じゃあ、戻るよ。ナツメ」
「わ、わかった」
そのプレイヤーを持って、僕らはまた1階のリビングに戻った。
カラフルで豪華なリビングの中、僕らはプレイヤーをパソコンに差し込む。
「……どうなるんだろうね、コウ」
「わかんない。でも、見てみる価値はあると思う」
心臓の鼓動が速くなる。そのままロードは終わり……プレイヤー内のファイルが表示された。
そして僕らは……ほぼ同時に困惑した。
「……え?」
パソコンに表示された音声ファイル名は『【ASMR】デカすぎる生意気幼馴染のあまあま耳かき』だった。
僕は隣を見る。すると、ナツメは後ろを向いていた。
「……おはよう、兄ちゃん。これはどこで買ったの?」
その声は確かに震えている。
「ち、違うんだナツメ!これは……いやちゃんと買ってるから!」
「うんそういうのはいいから。ちょっと待ってね。兄ちゃん」
ナツメの表情は笑っていた。目の奥には、黒い炎があったが。
まぁ、うん……僕は苦笑いも浮かべられず、ただ発言した。
「あの、帰っていいですか?」
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