大人になりきれない探偵さん

草薙ユイリ

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大人になりきれない探偵、そしてホラー映画の子供が描く奴・III

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「……すぅ、ひゅー」
 書斎を出て30分。僕はソファから立って、2人を眺める。なぜか寝落ちた2人を。

 ナツメは風の胸の中でぐっすり眠っており、風さんはイヤホンを付けながら目を閉じていた。

「……1日何時間寝てるんだろ、この2人」
 前にナツメが、私の眠気は遺伝だと言っていた。それは本当らしい。

 というか……これどうしよう。
 ナツメはひそひそ声で「好きに調べていいからね」と言っていたけど……大丈夫なのか?

「……行くか」
 僕は2人に小さく頭を下げて、豪華なリビングを出て行く。

 とりあえず、ナツメの部屋を調べ……いや待て待て!?女子の部屋だぞ!?

「……どーしよ……あっ」
 その時、僕はある策を思いついた。まぁ策と言うより、自分への言い訳と言う感じだが。


◇◇◇

 2階の廊下は薄暗かった。照明の付け方も工夫されているからだろう。

 そのまま僕は木製のドアのドアノブを捻る。あまり見ない、人型に似た鍵穴がついていた。

 その中には何も見えなかったが……僕は手探りでライトのスイッチを探し、電気をつけた。

「……おぉ」
 風さんの部屋は、結構奇麗に整理されていた。中心にはガラスのテーブル、部屋の隅にはベッド。

 部屋の右側には木製の棚があった。僕の記憶が正しければ、あれは手作りのはずだ。

 そして、部屋の奥には黒い大きなスピーカーが堂々と設置されていた。ライブ会場にもありそうなレベルだ。

「……ちょっとすいませんね」
 さすがに女子の部屋を調べるのは忍びなかったので、僕は風さんの部屋を先に調べる。

 まぁ人の部屋を見ること自体ちょっと抵抗があるけど、許可貰ってるし……あれ?

 よく考えたら、好きに調べていいって言ったのはナツメだけ……うん。後で謝っとこう。

「……とりあえず、この部屋には……あれあるかな」

 探すのはナツメが言う『ラノベ』だ。もちろんアニメや漫画の可能性もあるが。

 ただ、問題は……
「本棚ないなぁ」
 あれだけ大きな書斎があれば、個々の部屋に本棚は不要か。

 僕はそう思いつつ、もうちょっと調べてみることにした。

 ナツメは、あれだけ司に期待してるんだ。正直司の推理力は疑問だけど、まぁすごそうではあるしな……

 さてじゃあ、この部屋には他に何が……うん?
「なに、あれ」
 よく見ると棚の上に、何か乗っている。
 それは長細い何かだった。色は黒で、USBメモリに見た目が似ている。

 僕はそれを拾い、ちょっと眺めてみた。
「……プレイヤーか」
 それの後ろの部分に、イヤホンのマークと小さな穴があった。使い方は知ってる。でも、イヤホンがない。

 それに人が好きな音楽を聴くのもな……いや、でも……

「……あっ!」
 プレイヤーを持って、僕は部屋にある大きなスピーカーまで歩く。

 それの側面を見てみると……予想通り、USBの入れるところがあった。

「……ごめんなさいっ!」
 僕はプレイヤーをスピーカーに差し、色々ボタンをいじってみる。

 すると、プレイヤーの電源が点き……音楽が僕の耳に大音量で入り込んだ!

「ちょ、ちょっと!?」
 轟音とも言うべきメロディーが、部屋中に響く!
 僕は大急ぎでプレイヤーのボタンをいじる。すると、一応音は小さくなってくれた。

「……謝ることが増えちゃったな」
 この音で2人は起きたかな。僕はそう考えて、部屋を出ようとする。

 プレイヤーを元々あった棚の上に戻して、僕は部屋を出ようとする。

 だけどその時、僕はある違和感を覚えた。
「……奇麗すぎないかな、この部屋」
 この部屋は異常なほどきれいだった。ホコリも、ほぼ見えない。

 そもそも、風さんはなんで部屋を調べさせることに抵抗がなかったんだろう。

 鍵穴はあるけど、鍵もかかってないし……
「うーん?」
 僕は疑問を捨てることはできなかった。でも、とりあえず部屋を出ることにした。


◇◇◇

「……起きない」
 現在時刻午後5時56分。リビングの2人は、なぜか起きません。

 一応脈はあった。呼吸もしてる。つまりただただ寝ているだけである。

「うーん」
 あの後いくつか部屋を見てみたが、特にめぼしいものはなかった。

 このままだと終わりだが、さてどうするか。
「うみゃ……コウ?」
「あ、おはよう。ナツメ」
 風さんに近寄ったら、ナツメだけ起きた。
「うん?あぁ、兄ちゃん起こそうとしてるなら無駄だよ。兄ちゃん私より眠りが深いから」

 ナツメの眠りの深さでもマシな方なのかよ。なんだこの一家。

「んでコウ、そろそろ司さんと話せるの?私ずっと楽しみだったんだけど」

「……そろそろかな。パソコンとかあるんだよね?」

 ナツメはテーブルの上のパソコンを開いて、起動した。

 朝に司の事情を話しておいてよかった。
「……じゃあ行くよ」
 僕はパソコンの画面を見て、インターネットのソフト、検索サイト、チャットアプリ……と進んでいった。

 最終的にたどり着いた画面には……ただ一文字『司』とだけ表示されていた。

「……よし」
 その文字をクリックすると、また大音量で単純なメロディがかかった。

 2秒、3秒、4秒……そして、聞きなれた声がした。
「コウ?」
「正解。朝ぶりだね、司」
 隣のナツメがなんかテンション上がっていた。
「で、どういう状況だ?コウ」
「えーっと、できるだけ詳細に説明した方がいい?」

「まぁ、そうだな。できれば見たこと、聞いたこと、思ったこと、全部教えてもらいたい」

「オッケー。わかった」
 そのまま、僕は色々と説明を始めた。
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