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大人になりきれない探偵、それとホラー映画の子供が描く奴・II
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家に入ってすぐ、僕とナツメは一階の書斎に移動した。書斎は天井が低く、壁一面が丸ごと本棚になってる。
ナツメ曰く、私はしょっちゅうここで絵を描くらしいけど……
「よく考えたら僕、勢いで女子の家来ちゃってる……」
「まぁ別にいいじゃん。兄ちゃんまだ帰ってこないし」
いやこっちにも心の問題が……と思いつつ、僕は壁の本棚を見てみた。
「これ全部、ナツメ好みの小説だよね?」
「小説じゃなくて『ラノベ』ね」
別にどっちでもいいでしょ……と思いはしたが、それを口に出すと面倒なんだ。
「……好きなんだもん。私はラノベが」
僕は壁一面にある緑を見る。その緑は本のいわゆる『背表紙』というやつだった。
もちろん緑以外にも、白だったり、青だったりする背表紙と色々ある。
「……ま、まぁとりあえず調べるか。ナツメ、普段はどんな感じで絵を描いてるの?」
僕は部屋の隅に視線を動かす。そこには、色鉛筆やボールペンが置かれていた。
「まぁコウの予想通り、いつもはそこで描いたり、飽きたらラノベ読んだりしてる」
「この絵を描いた日も同じように?」
「まぁ多分ね。その日はめちゃくちゃ眠かったから、ラノベを読む暇もなかったけど」
もう一度、僕は自分の横にある本棚を確認してみる。
壮大な本棚の中には、いくつもの本が埋まっていた。
「ナツメ。この小説たちのキャラクターを、寝ぼけて描いちゃった可能性は?」
「それはないね。私は大体、この棚のラノベのキャラは把握してる。それと小説じゃなくて『ラノベ』」
すごいな。
「……だとすると、どういうことなんだろ?画像検索とかしたっけ、ナツメ」
「さっきしたけど反応なし。となると可能性は絞られてくるね。コウ」
まぁ、確かにな。でも、となるとどういう可能性が……
「ナツメ自身が作ったキャラクター、とかか?」
「……悪いけど私、一時創作に興味ないの」
一時創作……確か、自分でゼロから小説や漫画を描く、という意味だったはず。
「ふーん。でも、その可能性くらいしかなくないか?ナツメ」
「まぁ確かにね。画像検索で出ない以上、その可能性だけなんだけど……うーん」
そのまま、僕は考え込む。
この絵を描いた時寝ぼけていた、というのはやっぱり厄介だ。
やっぱり、この小説のキャラを描いたという線が……
「なぁナツメ、寝る前に最後に読んだしょうせ……ラノベが何か覚えてないか?」
「寝る前最後……うーん」
そう言うと、ナツメは僕の近くへ寄ってくる。
そのまま少し上の段にある本を、背伸びして取った。
「これかな。お兄ちゃんにプレゼントされたやつだから、記憶に残ってるんだ」
渡されたのは緑の背表紙に、可愛らしい女性のイラストが乗った本。
どうやらこれが、ナツメとお兄さんの思い出の品らしい。
「プレゼントされたって、誕生日プレゼントとかで?」
「違う。兄ちゃんも趣味がおんなじだから、たまに買ってもらうの」
そういえば、あの絵では『兄ちゃん』の隣に『彼女』がいた。
そして、絵の中の2人は結構親しそう。ってことは、お兄さんの好きなキャラが『彼女』である可能性も……?
「……ねぇナツメ。この本棚に、お兄さんからプレゼントされたのはいくつあるの?」
「59冊。それは間違えない」
僕は本棚をざっと眺める。軽く数えて、300冊くらい。
つまりその内約五分の一か、ちょっと多いな。
「……ねぇナツメ、もしかしたらナツメの家族の知り合いとか」
そう言おうとした時だった。瞬間、書斎の外からドアの開く音がした。
「ナツメ、泥棒が入って来たかもよ」
ナツメは苦笑いして言った。
「残念だけど、うちはお高い警備会社がバックにいるからね」
「じゃあ、ナツメの家族か」
別にやましいことをしてるわけじゃないんだけど、お兄さんに見つかってしまったら気まずそう。
まぁでも、この書斎に来たってすぐわかりはしないだろうし。
「おっ、ナツメにもとうとう彼氏ができたか」
僕とナツメはそういうのじゃ……え?
小刻みに震えつつ、僕はゆっくりと部屋のドアの方を向いた。
「……あ、どうも。風さん」
黒いパーカーの高身長な男、ナツメの兄・神月風がいた。
「兄ちゃん早く帰る時は電話してよー!また忘れてんじゃん!」
そう言って、ナツメは風さんの近くに行く。
「あぁごめんな、ナツメ」
「もう、兄ちゃんはすぐに物事を忘れるんだから」
そのままナツメと風さんは引っ付いた。風さんは高校生らしいけど、随分仲いいんだな。
「で……確かコウ君、だったかな。この家に何の用だい?」
耳に残る声でそう言われたので、僕は一応正直に答えることにした。
◇◇◇
ナツメの家のリビングはカラフルで、それでいて目がちかちかしない、高級感のある部屋だった。
「ふーん、なるほどねぇ」
青いソファの上。風さんはナツメにびったりひっつかれていた。風さんの胸の上に、ナツメの頭がある。
正直に絵について話して、僕は風さんの返事を待ってみたけど……
「まぁ、うちには祠も地縛霊もないからなぁ」
「ですよねー」
そんな感じで僕は言葉を返しておいた。
が、その結果に納得いかないのがナツメクオリティである。
「なんかその結果やだなぁ……というか、まだ司さん来てないじゃん」
一瞬驚いたが、朝に司のことを教えていたのを思い出した。
「……別に、司も大した結果は出せないと思うよ?ちょっと難しすぎる」
その言葉に、ナツメは風さんを強めに抱きしめながら反発する。
「いや司さんはきっとすごい人だよ。間違いない」
何を根拠に。後兄弟べったりだね。
ナツメ曰く、私はしょっちゅうここで絵を描くらしいけど……
「よく考えたら僕、勢いで女子の家来ちゃってる……」
「まぁ別にいいじゃん。兄ちゃんまだ帰ってこないし」
いやこっちにも心の問題が……と思いつつ、僕は壁の本棚を見てみた。
「これ全部、ナツメ好みの小説だよね?」
「小説じゃなくて『ラノベ』ね」
別にどっちでもいいでしょ……と思いはしたが、それを口に出すと面倒なんだ。
「……好きなんだもん。私はラノベが」
僕は壁一面にある緑を見る。その緑は本のいわゆる『背表紙』というやつだった。
もちろん緑以外にも、白だったり、青だったりする背表紙と色々ある。
「……ま、まぁとりあえず調べるか。ナツメ、普段はどんな感じで絵を描いてるの?」
僕は部屋の隅に視線を動かす。そこには、色鉛筆やボールペンが置かれていた。
「まぁコウの予想通り、いつもはそこで描いたり、飽きたらラノベ読んだりしてる」
「この絵を描いた日も同じように?」
「まぁ多分ね。その日はめちゃくちゃ眠かったから、ラノベを読む暇もなかったけど」
もう一度、僕は自分の横にある本棚を確認してみる。
壮大な本棚の中には、いくつもの本が埋まっていた。
「ナツメ。この小説たちのキャラクターを、寝ぼけて描いちゃった可能性は?」
「それはないね。私は大体、この棚のラノベのキャラは把握してる。それと小説じゃなくて『ラノベ』」
すごいな。
「……だとすると、どういうことなんだろ?画像検索とかしたっけ、ナツメ」
「さっきしたけど反応なし。となると可能性は絞られてくるね。コウ」
まぁ、確かにな。でも、となるとどういう可能性が……
「ナツメ自身が作ったキャラクター、とかか?」
「……悪いけど私、一時創作に興味ないの」
一時創作……確か、自分でゼロから小説や漫画を描く、という意味だったはず。
「ふーん。でも、その可能性くらいしかなくないか?ナツメ」
「まぁ確かにね。画像検索で出ない以上、その可能性だけなんだけど……うーん」
そのまま、僕は考え込む。
この絵を描いた時寝ぼけていた、というのはやっぱり厄介だ。
やっぱり、この小説のキャラを描いたという線が……
「なぁナツメ、寝る前に最後に読んだしょうせ……ラノベが何か覚えてないか?」
「寝る前最後……うーん」
そう言うと、ナツメは僕の近くへ寄ってくる。
そのまま少し上の段にある本を、背伸びして取った。
「これかな。お兄ちゃんにプレゼントされたやつだから、記憶に残ってるんだ」
渡されたのは緑の背表紙に、可愛らしい女性のイラストが乗った本。
どうやらこれが、ナツメとお兄さんの思い出の品らしい。
「プレゼントされたって、誕生日プレゼントとかで?」
「違う。兄ちゃんも趣味がおんなじだから、たまに買ってもらうの」
そういえば、あの絵では『兄ちゃん』の隣に『彼女』がいた。
そして、絵の中の2人は結構親しそう。ってことは、お兄さんの好きなキャラが『彼女』である可能性も……?
「……ねぇナツメ。この本棚に、お兄さんからプレゼントされたのはいくつあるの?」
「59冊。それは間違えない」
僕は本棚をざっと眺める。軽く数えて、300冊くらい。
つまりその内約五分の一か、ちょっと多いな。
「……ねぇナツメ、もしかしたらナツメの家族の知り合いとか」
そう言おうとした時だった。瞬間、書斎の外からドアの開く音がした。
「ナツメ、泥棒が入って来たかもよ」
ナツメは苦笑いして言った。
「残念だけど、うちはお高い警備会社がバックにいるからね」
「じゃあ、ナツメの家族か」
別にやましいことをしてるわけじゃないんだけど、お兄さんに見つかってしまったら気まずそう。
まぁでも、この書斎に来たってすぐわかりはしないだろうし。
「おっ、ナツメにもとうとう彼氏ができたか」
僕とナツメはそういうのじゃ……え?
小刻みに震えつつ、僕はゆっくりと部屋のドアの方を向いた。
「……あ、どうも。風さん」
黒いパーカーの高身長な男、ナツメの兄・神月風がいた。
「兄ちゃん早く帰る時は電話してよー!また忘れてんじゃん!」
そう言って、ナツメは風さんの近くに行く。
「あぁごめんな、ナツメ」
「もう、兄ちゃんはすぐに物事を忘れるんだから」
そのままナツメと風さんは引っ付いた。風さんは高校生らしいけど、随分仲いいんだな。
「で……確かコウ君、だったかな。この家に何の用だい?」
耳に残る声でそう言われたので、僕は一応正直に答えることにした。
◇◇◇
ナツメの家のリビングはカラフルで、それでいて目がちかちかしない、高級感のある部屋だった。
「ふーん、なるほどねぇ」
青いソファの上。風さんはナツメにびったりひっつかれていた。風さんの胸の上に、ナツメの頭がある。
正直に絵について話して、僕は風さんの返事を待ってみたけど……
「まぁ、うちには祠も地縛霊もないからなぁ」
「ですよねー」
そんな感じで僕は言葉を返しておいた。
が、その結果に納得いかないのがナツメクオリティである。
「なんかその結果やだなぁ……というか、まだ司さん来てないじゃん」
一瞬驚いたが、朝に司のことを教えていたのを思い出した。
「……別に、司も大した結果は出せないと思うよ?ちょっと難しすぎる」
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