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Season1 探偵・暗狩 四折
燃え尽きて2
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「亜麻仁油。健康マニアの間では有名なものね」
私はその瓶を手に取った。
ごく普通の油で、特に異常な部分はない。
ただ……何か、私は何かを忘れている気がする。
「翔太、メモ持ってる?」
「え?うん」
「『亜麻仁油』ってメモしといて」
「オッケー」
その瓶を置き、私は翔太の方を向いた。
「で、どう?まだつまらない?」
「うん」
翔太は即答した。
「……まぁ、そりゃそうか」
謎解きが楽しくなってくるのは、まだ少し先だ。
その時だった。私の頭上から、チャイムが聞こえた。
窓の外では、運動部たちが各々の家に帰っていた。
「そろそろ学校出ましょ」
「はーい」
私は家庭科室に背を向けて歩き始めた。
今のところ、トリックはわかっていない。
依頼人は「できれば一週間以内に解決してほしい」と言っているからな。
私はスマートフォンで周辺の飲食店を探し始めた。
◇暗狩 翔太
「オレンジジュース一つ」
「あ、私はミルクティーで」
僕達は小さなカフェに入り、撮った写真を見始めた。
「ストーブに、机に、ほうきとちりとり」
「特に共通点はなさそうだね、姉ちゃん」
それらは全てホコリをかぶっていた。
おそらく、あの倉庫は長らく開けられていなかったのだろう。
「でも、なんで倉庫にしたんだろう?」
「……どういうこと?翔太」
僕は少し気になっていたことを姉にぶつける。
「燃やしたってことは、依頼人さんに大きなショックを与えたかったってことでしょ?」
「まぁ、確かにね」
「だとしたら、なんで倉庫なんて場所を選んだんだろう」
姉は「ん?」といった声を上げた。
「なんでそう思うの?翔太」
「だってさ姉ちゃん。燃え尽きたハンカチを見せても、それが自分のハンカチかどうかわからないじゃん」
「うん。確かに」
「だとしたら倉庫じゃなくて、トイレとかよく使う場所で燃やした方がいいじゃん」
直後、姉は手のひらをたたいた。
「なるほど。使わない倉庫なんて、なかなか探されない」
「だとしたら、依頼人がハンカチを見つけるより先にハンカチが燃え尽きる可能性がある」
僕は首を縦に振った。
「いいね翔太。段々スイッチ入ってきた?」
「入ってはないよ」
冷水を口に入れつつ、僕は写真をもう一度見た。
にしても、なんで倉庫で燃やしたんだろう。
そこが理解できれば、なにかわかるかもしれないんだが……
「ねぇ翔太。もしかしたら『倉庫で燃やすしかなかった』んじゃないの?」
「……燃やすしかない?」
姉はにやにやしながら言葉を続ける。
「倉庫にしかない何か、もしくは倉庫の場所を利用したんじゃないのかな」
「あ、そうか!」
すると、自分達の席に店員が近づいた。
「オレンジジュースと、ミルクティーでございます」
「あ、ありがとうございます」
姉はミルクティーを、僕はオレンジジュースを受け取る。
それを机に置くと、姉は怪しげな笑みを浮かべた。
「ねぇねぇ翔太。今度こそ楽しくなってきたんじゃないの?」
「え、いや……」
正直言って、探偵のように推理を進めている現状は少し面白い。
まぁ、別に嘘をつく必要もないか。
「少しだけ……ちょっとだけ楽しいかな」
「おぉ、いいじゃん!」
姉はくすくすと笑い始めた。
◇◇◇
「……まじか」
帰って来た時には、すでに8時を超えていた。
帰り際に買ってきたグミを食べながら、僕はゴロゴロしていた。
「しっかし、どうするかなぁ……」
どう考えても、ここで捜査を続けさせるのが姉の目的だろう。
ここでやめなきゃ、僕は姉と同じ沼に沈む。
ただ……実際、この事件の真相はめちゃくちゃ気になる。
さっきも姉から送られた写真を、もう一度見直してしまった。
「……お腹空いたな」
僕は階段を下り、リビングについた。
今日は、というか今日も母さんの帰りは遅い。
リビングの机には、デリバリーしたピザが並んでいた。
「じゃじゃーん!ピザです」
「見ればわかります」
姉のハイテンションを避けつつ、僕は机に座った。
「で、翔太。何か発見はあった?」
「いや、何も?」
すると、姉はスマートフォンを突き出した。
「……何?」
「私はあったよ」
その液晶には、倉庫にあったテーブルが映っていた。
「よく見て。このテーブル、何か変じゃない?」
「……確かに」
木製で、橙色のテーブルの中心。
そこだけが、なぜか焦げ茶色をしていた。
「これ、どういうことなんだろう」
「……さぁ」
僕は自分の首を横に振る。
姉は小さく「うーん」と言い、ピザを食べる準備をした。
「……食べ終わったら、もう一回写真を見てみるか」
「はーい」
そう言うと、僕は一度深く考え込んだ。
あの場所で『火』が関係してそうなのはストーブだけ。
ただ、ストーブを使ったことが証明できなきゃダメだ。
言い逃れできてしまう。
ストーブを使ったと証明する方法……灯油の量?
いや、『使う前』の量がわからないといけないからダメだ。
だとしたら、何だ?
ストーブを点けるには、スイッチを押すかタイマーを……タイマー?
「姉ちゃ……え?」
僕の皿には、肉がたっぷり乗ったピザが一切れ置かれていた。
「今事件のこと考えてたでしょ?」
「えっ、あ、いや?」
目に見えて動揺する僕を、姉はじっくりと見つめた。
「……やっぱり家族だもん。性格は似るよ」
「そう、かな……」
僕は弱弱しく反論した。
「で、何か気づいた?」
「……うん。気づいた」
「お!言ってみ言ってみ」
姉は僕を囃し立てた。
その姉に、僕はこれから自分の考えたストーリーをぶつける。
「あの。僕の推理を、聞いてくれる……?」
姉は一瞬目を見開いたが、すぐに怪しげな笑いを浮かべた。
私はその瓶を手に取った。
ごく普通の油で、特に異常な部分はない。
ただ……何か、私は何かを忘れている気がする。
「翔太、メモ持ってる?」
「え?うん」
「『亜麻仁油』ってメモしといて」
「オッケー」
その瓶を置き、私は翔太の方を向いた。
「で、どう?まだつまらない?」
「うん」
翔太は即答した。
「……まぁ、そりゃそうか」
謎解きが楽しくなってくるのは、まだ少し先だ。
その時だった。私の頭上から、チャイムが聞こえた。
窓の外では、運動部たちが各々の家に帰っていた。
「そろそろ学校出ましょ」
「はーい」
私は家庭科室に背を向けて歩き始めた。
今のところ、トリックはわかっていない。
依頼人は「できれば一週間以内に解決してほしい」と言っているからな。
私はスマートフォンで周辺の飲食店を探し始めた。
◇暗狩 翔太
「オレンジジュース一つ」
「あ、私はミルクティーで」
僕達は小さなカフェに入り、撮った写真を見始めた。
「ストーブに、机に、ほうきとちりとり」
「特に共通点はなさそうだね、姉ちゃん」
それらは全てホコリをかぶっていた。
おそらく、あの倉庫は長らく開けられていなかったのだろう。
「でも、なんで倉庫にしたんだろう?」
「……どういうこと?翔太」
僕は少し気になっていたことを姉にぶつける。
「燃やしたってことは、依頼人さんに大きなショックを与えたかったってことでしょ?」
「まぁ、確かにね」
「だとしたら、なんで倉庫なんて場所を選んだんだろう」
姉は「ん?」といった声を上げた。
「なんでそう思うの?翔太」
「だってさ姉ちゃん。燃え尽きたハンカチを見せても、それが自分のハンカチかどうかわからないじゃん」
「うん。確かに」
「だとしたら倉庫じゃなくて、トイレとかよく使う場所で燃やした方がいいじゃん」
直後、姉は手のひらをたたいた。
「なるほど。使わない倉庫なんて、なかなか探されない」
「だとしたら、依頼人がハンカチを見つけるより先にハンカチが燃え尽きる可能性がある」
僕は首を縦に振った。
「いいね翔太。段々スイッチ入ってきた?」
「入ってはないよ」
冷水を口に入れつつ、僕は写真をもう一度見た。
にしても、なんで倉庫で燃やしたんだろう。
そこが理解できれば、なにかわかるかもしれないんだが……
「ねぇ翔太。もしかしたら『倉庫で燃やすしかなかった』んじゃないの?」
「……燃やすしかない?」
姉はにやにやしながら言葉を続ける。
「倉庫にしかない何か、もしくは倉庫の場所を利用したんじゃないのかな」
「あ、そうか!」
すると、自分達の席に店員が近づいた。
「オレンジジュースと、ミルクティーでございます」
「あ、ありがとうございます」
姉はミルクティーを、僕はオレンジジュースを受け取る。
それを机に置くと、姉は怪しげな笑みを浮かべた。
「ねぇねぇ翔太。今度こそ楽しくなってきたんじゃないの?」
「え、いや……」
正直言って、探偵のように推理を進めている現状は少し面白い。
まぁ、別に嘘をつく必要もないか。
「少しだけ……ちょっとだけ楽しいかな」
「おぉ、いいじゃん!」
姉はくすくすと笑い始めた。
◇◇◇
「……まじか」
帰って来た時には、すでに8時を超えていた。
帰り際に買ってきたグミを食べながら、僕はゴロゴロしていた。
「しっかし、どうするかなぁ……」
どう考えても、ここで捜査を続けさせるのが姉の目的だろう。
ここでやめなきゃ、僕は姉と同じ沼に沈む。
ただ……実際、この事件の真相はめちゃくちゃ気になる。
さっきも姉から送られた写真を、もう一度見直してしまった。
「……お腹空いたな」
僕は階段を下り、リビングについた。
今日は、というか今日も母さんの帰りは遅い。
リビングの机には、デリバリーしたピザが並んでいた。
「じゃじゃーん!ピザです」
「見ればわかります」
姉のハイテンションを避けつつ、僕は机に座った。
「で、翔太。何か発見はあった?」
「いや、何も?」
すると、姉はスマートフォンを突き出した。
「……何?」
「私はあったよ」
その液晶には、倉庫にあったテーブルが映っていた。
「よく見て。このテーブル、何か変じゃない?」
「……確かに」
木製で、橙色のテーブルの中心。
そこだけが、なぜか焦げ茶色をしていた。
「これ、どういうことなんだろう」
「……さぁ」
僕は自分の首を横に振る。
姉は小さく「うーん」と言い、ピザを食べる準備をした。
「……食べ終わったら、もう一回写真を見てみるか」
「はーい」
そう言うと、僕は一度深く考え込んだ。
あの場所で『火』が関係してそうなのはストーブだけ。
ただ、ストーブを使ったことが証明できなきゃダメだ。
言い逃れできてしまう。
ストーブを使ったと証明する方法……灯油の量?
いや、『使う前』の量がわからないといけないからダメだ。
だとしたら、何だ?
ストーブを点けるには、スイッチを押すかタイマーを……タイマー?
「姉ちゃ……え?」
僕の皿には、肉がたっぷり乗ったピザが一切れ置かれていた。
「今事件のこと考えてたでしょ?」
「えっ、あ、いや?」
目に見えて動揺する僕を、姉はじっくりと見つめた。
「……やっぱり家族だもん。性格は似るよ」
「そう、かな……」
僕は弱弱しく反論した。
「で、何か気づいた?」
「……うん。気づいた」
「お!言ってみ言ってみ」
姉は僕を囃し立てた。
その姉に、僕はこれから自分の考えたストーリーをぶつける。
「あの。僕の推理を、聞いてくれる……?」
姉は一瞬目を見開いたが、すぐに怪しげな笑いを浮かべた。
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