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Season1 探偵・暗狩 四折
狙い撃って2
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「……よし」
数分後、翔太は小さくガッツポーズをした。
「開いたよ。姉ちゃん」
「ありがとー」
私は棚に向かって歩いた。
その時、翔太が肩を掴んできた。
「……何?翔太」
「犯罪かもだけど、大丈夫?」
私は一呼吸置き、翔太に答えた。
「大丈夫よ。好きに調べていいって言ってたし」
「……そうだけど」
「安心して翔太。いざとなったら私がやったことにするから」
その瞬間、翔太は私を見上げた。
「ねぇ、姉ちゃん」
「何?翔太」
「なんでそんなに好奇心に正直なの?」
なんでと言われても困るな。
「うーん……ま、大した理由はないかな」
私は引き出しの取っ手を掴みながら言った。
「私、知りたがりなんで」
「……なんかそれ前も言ってなかった?」
不意に私の口角が上がった。
「じゃ、開けるよ翔太」
私は取っ手を引っ張る。
翔太もこっちに近寄り、棚の中を見た。
「写真?」
「姉ちゃん、これ何の写真なの?」
「……さぁ?」
棚の中の写真には、依頼人が写っていた。
依頼人の他に二人、彼女と同年齢くらいの女性がいる。
依頼人は右端で、背の高い女性と手を繋いでいた。
「見た感じ、仲良しグループっぽいけど」
「確かにねぇ……とりあえず、写真に残しとこ」
スマホを取り出し、その写真を写真に撮った。
その後、私は写真を元に戻した。
「プリクラ……ではないっぽいね。姉ちゃん」
「スマホのカメラ、ってとこっぽいね」
私は液晶を見つめる。
その写真は、最高に幸せそうに見えた。
「……話聞いてみる?翔太」
「ピッキングバレるけど、大丈夫?」
私は涼しい顔をした。
その顔を見て、翔太はまた呆れた。
「ま、姉ちゃんの好きにどうぞ」
「オッケー」
私は腕時計を確認した。
メールで聞いていたところでは、後2時間ほどで依頼人は帰ってくる。
もしかしたら、このどちらかが事件に関与しているかもしれない。
「……うーん、まぁないか」
私は棚の上を触った。
特に暖房器具などは見当たらなかった。
◇暗狩 翔太
「本当、人として最低なことをしてしまって……」
僕は依頼人相手に全力で謝った。
あの時は流されてしまったが、よく考えたら最低すぎる行為だ。
「いえいえ、好きに調べていいって言いましたし……」
依頼人は苦笑いして、姉を見つめる。
「あの、何か見つかったんですか?」
「いえ、まだ写真以外は……」
実際この人、二時間かけてなにも見つけられてないからな。
なんか一回ジュースとグミ買いに行ってたし。
「あの、この写真の人はなんなんですか?」
「私の……友達、です」
依頼人は少し苦い顔をした。
どうしたんだろうか。
「あの、この人たちとは最近何を?」
「チョコもらったり、一緒に遊んだり……」
僕は依頼人の会話に口を挟んだ。
「あの、そのもらったチョコがまさか」
「はい。溶けたチョコです」
せっかくもらったチョコがいつの間にか溶けていた。
その悲しさは、なんとなく察せる。
「あの……質問なんですけど」
「はい。何ですか?」
依頼人は姉の方を向いた。
「最後にあなた以外にこの部屋に入ったのは、誰ですか?」
「……美咲ちゃん、だと思います」
僕は写真をスマホに映した。
「どちらの方ですか?」
「えっと、私の隣の人です」
依頼人は指をさした。
その先には、背の高い女性がいた。
「なるほど。ところで、チョコをあげたのは?」
姉が僕の言葉を引き継いだ。
「その隣の、桜さんです」
「ありがとうございます。ほら、翔太も」
「あ、ありがとうございます」
僕と姉は二人で頭を下げた。
「すいません。チョコをもらった後に美咲さんが来たんですか?」
姉の質問に、依頼人は顔色を変えた。
「そうですけど……まさか、美咲ちゃんを疑ってるんですか?!」
「そういうことです」
姉はきっぱりと言い切った。
その瞬間の依頼人は、少し諦めたような顔をしていた。
「……実際、容疑者は美咲ちゃんしかいません」
「でも、美咲ちゃんはそんなこと……嫉妬でもしない限り……」
依頼人の声はだんだん弱くなっていった。
「嫉妬?」
姉は不思議そうな声で言った。
実際僕もよくわからない。
ただ……何か不思議な感覚がした。
「あの、美咲さんとは部屋でどういうことをしたんです?」
「え、あぁ……」
姉は僕の方を見つめた。
依頼人が口を開いたのは、数十秒後だった。
「美咲ちゃんと家に入った後、ジュースを用意して部屋に入りました」
「部屋の中に入ったら、美咲ちゃんと隣に座って……遊び始めました」
僕は少し考えた。
もしチョコを狙い撃てるとしたら、その人くらいだろう。
「……あの、本当は私も疑っちゃったんです。美咲ちゃんのこと」
依頼人は必死そうに言った。
その心中は察せる。
おそらく、本当に大切な友達なんだろう。
「……姉ちゃん。どうする?」
僕は姉の方を向いた。
姉の顔は、決意に満ちた顔になっていた。
「必ず突き止めます。チョコを溶かすトリックを!」
「……お願いします」
依頼人は、見るのもかわいそうな顔になっていた。
数分後、翔太は小さくガッツポーズをした。
「開いたよ。姉ちゃん」
「ありがとー」
私は棚に向かって歩いた。
その時、翔太が肩を掴んできた。
「……何?翔太」
「犯罪かもだけど、大丈夫?」
私は一呼吸置き、翔太に答えた。
「大丈夫よ。好きに調べていいって言ってたし」
「……そうだけど」
「安心して翔太。いざとなったら私がやったことにするから」
その瞬間、翔太は私を見上げた。
「ねぇ、姉ちゃん」
「何?翔太」
「なんでそんなに好奇心に正直なの?」
なんでと言われても困るな。
「うーん……ま、大した理由はないかな」
私は引き出しの取っ手を掴みながら言った。
「私、知りたがりなんで」
「……なんかそれ前も言ってなかった?」
不意に私の口角が上がった。
「じゃ、開けるよ翔太」
私は取っ手を引っ張る。
翔太もこっちに近寄り、棚の中を見た。
「写真?」
「姉ちゃん、これ何の写真なの?」
「……さぁ?」
棚の中の写真には、依頼人が写っていた。
依頼人の他に二人、彼女と同年齢くらいの女性がいる。
依頼人は右端で、背の高い女性と手を繋いでいた。
「見た感じ、仲良しグループっぽいけど」
「確かにねぇ……とりあえず、写真に残しとこ」
スマホを取り出し、その写真を写真に撮った。
その後、私は写真を元に戻した。
「プリクラ……ではないっぽいね。姉ちゃん」
「スマホのカメラ、ってとこっぽいね」
私は液晶を見つめる。
その写真は、最高に幸せそうに見えた。
「……話聞いてみる?翔太」
「ピッキングバレるけど、大丈夫?」
私は涼しい顔をした。
その顔を見て、翔太はまた呆れた。
「ま、姉ちゃんの好きにどうぞ」
「オッケー」
私は腕時計を確認した。
メールで聞いていたところでは、後2時間ほどで依頼人は帰ってくる。
もしかしたら、このどちらかが事件に関与しているかもしれない。
「……うーん、まぁないか」
私は棚の上を触った。
特に暖房器具などは見当たらなかった。
◇暗狩 翔太
「本当、人として最低なことをしてしまって……」
僕は依頼人相手に全力で謝った。
あの時は流されてしまったが、よく考えたら最低すぎる行為だ。
「いえいえ、好きに調べていいって言いましたし……」
依頼人は苦笑いして、姉を見つめる。
「あの、何か見つかったんですか?」
「いえ、まだ写真以外は……」
実際この人、二時間かけてなにも見つけられてないからな。
なんか一回ジュースとグミ買いに行ってたし。
「あの、この写真の人はなんなんですか?」
「私の……友達、です」
依頼人は少し苦い顔をした。
どうしたんだろうか。
「あの、この人たちとは最近何を?」
「チョコもらったり、一緒に遊んだり……」
僕は依頼人の会話に口を挟んだ。
「あの、そのもらったチョコがまさか」
「はい。溶けたチョコです」
せっかくもらったチョコがいつの間にか溶けていた。
その悲しさは、なんとなく察せる。
「あの……質問なんですけど」
「はい。何ですか?」
依頼人は姉の方を向いた。
「最後にあなた以外にこの部屋に入ったのは、誰ですか?」
「……美咲ちゃん、だと思います」
僕は写真をスマホに映した。
「どちらの方ですか?」
「えっと、私の隣の人です」
依頼人は指をさした。
その先には、背の高い女性がいた。
「なるほど。ところで、チョコをあげたのは?」
姉が僕の言葉を引き継いだ。
「その隣の、桜さんです」
「ありがとうございます。ほら、翔太も」
「あ、ありがとうございます」
僕と姉は二人で頭を下げた。
「すいません。チョコをもらった後に美咲さんが来たんですか?」
姉の質問に、依頼人は顔色を変えた。
「そうですけど……まさか、美咲ちゃんを疑ってるんですか?!」
「そういうことです」
姉はきっぱりと言い切った。
その瞬間の依頼人は、少し諦めたような顔をしていた。
「……実際、容疑者は美咲ちゃんしかいません」
「でも、美咲ちゃんはそんなこと……嫉妬でもしない限り……」
依頼人の声はだんだん弱くなっていった。
「嫉妬?」
姉は不思議そうな声で言った。
実際僕もよくわからない。
ただ……何か不思議な感覚がした。
「あの、美咲さんとは部屋でどういうことをしたんです?」
「え、あぁ……」
姉は僕の方を見つめた。
依頼人が口を開いたのは、数十秒後だった。
「美咲ちゃんと家に入った後、ジュースを用意して部屋に入りました」
「部屋の中に入ったら、美咲ちゃんと隣に座って……遊び始めました」
僕は少し考えた。
もしチョコを狙い撃てるとしたら、その人くらいだろう。
「……あの、本当は私も疑っちゃったんです。美咲ちゃんのこと」
依頼人は必死そうに言った。
その心中は察せる。
おそらく、本当に大切な友達なんだろう。
「……姉ちゃん。どうする?」
僕は姉の方を向いた。
姉の顔は、決意に満ちた顔になっていた。
「必ず突き止めます。チョコを溶かすトリックを!」
「……お願いします」
依頼人は、見るのもかわいそうな顔になっていた。
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