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Season1 探偵・暗狩 四折
狙い撃って3
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◇暗狩 四折
「じゃあ、とりあえずチョコが溶けた理由を探しますね」
私は少々困惑しながら、部屋の中に戻った。
窓ガラスからは光が差し、少しばかりまぶしい。
「……どうしよ」
夕方の今、私はこれといった仮説を見つけられずにいた。
さっきの暖房器具仮説は打ち破られた。
じゃあどうすればいいんだ。
「うーん……」
この部屋の中に、他にものを溶かせそうなものはない。
現場は密室だ。暖房器具を持ち運ぶ隙はない。
私は部屋の真ん中に座り込んでしまった。
後はどうするか。それが問題だ。
「んー、まぶしっ!?」
私の思考に日光が差し込む。
まさか大自然に思考を邪魔されるとは、考えてもなかった。
「……あれ?」
その瞬間、私の脳裏にある可能性が浮かんだ。
まさかこんなひょんなことからヒントを得るなんて。
「二時間ドラマかよ……すいません!」
私は部屋から飛び出した。
「な、なんですか?」
「どしたの?姉ちゃん」
私は依頼人に訊く。
「あの、チョコが溶けた時、チョコの蓋は開いてましたか?」
「え……開いてた、と思いますけど」
私の胸は少しずつ高鳴っていく。
真実に近づいている。そんな気がした。
「では、その時カーテンは開いていましたか?」
「えーと、多分……開いてました」
なるほど。
私は心のなかで怪しめに笑った。
「……姉ちゃん?どうしたの?」
「すいません。桜さんと美咲さんを呼んでいただけますか?」
「……え?」
依頼人は唖然としている。
私は依頼人を急かした。
「ほら、お願いします!」
「は、はい」
依頼人が携帯を操作している間に、私は翔太と話した。
「姉ちゃん、トリックがわかったの?」
「翔太、ヒントは二つ」
私は人差し指と中指を上げた。
「……え?」
「まず一つは『光』、もう一つは『ガラス』よ」
「え、は?」
翔太の背中を軽く押し、私は部屋に押し込む。
「すいません!桜さんと美咲さん後どれくらいでここに来るんですか?」
「えっと……15分くらいです」
私はドアノブを手に取り、翔太に行った。
「じゃあ制限時間15分ね。がんばれ、翔太!」
そして、私はドアを閉めた。
◇暗狩 翔太
「……あいつ人間じゃねぇ!」
僕は半ギレになりながら、この部屋から抜け出そうとした。
が……開かない。
「あーもう!」
おそらくあのクソ姉が裏から抑えてるんだろう。
「……謎を解くしかない、ってことかよ」
とりあえず、あいつの残したヒントからどうにかしないと。
まずは『光』、そして『ガラス』だ。
ガラスは光を通すが……それがどうしたんだ?
「……ガラス、光」
もしかしから、姉の質問もヒントになるかもしれない。
一つは『チョコの蓋は開いていたか』。
もう一つは『カーテンは開いていたか』だ。
この二つの質問……つまり、窓からの『何か』でチョコは溶けたことになる。
チョコは熱によって溶ける。
じゃあ、なんだ?それと光が、どう関係あるんだ?
「んー、ん?」
僕は部屋に座り込み、顎に手を置いた。
光、熱、チョコレート。
「……ん?」
何もわからない。
僕は頭を抱えそうになった。
そして、そのまましばらく経った。
「翔太!後3分よ!」
「え、ちょ……えぇ!?」
僕は完全に参ってしまった。
ただ……このまま姉に降参するのは、僕のプライドが許さない。
「……うぅー」
その時だった。
部屋の外から、不気味な音が聞こえた。
「ん、えぇ?」
その音はぽちゃん、ぽちゃんという、どこかで聞いたような音だった。
水、もしくはなにかの液体の音だろう。
「……水?」
水、それが何を意味するのかはわからない。
しかし、何か。何かのヒントな気が……まさか。
「収れん発火……」
どこかで見たことがある。
水によって光が一点に集まり、その光でものが燃える映像を。
「……じゃあ、光と熱には何か関係が?」
僕は一つの可能性にたどり着いた。
窓ガラスを見ると、隣の家越しに道路が見える。
おそらく、この仮説は正しい。
心臓の速度が上がって行く。
「……姉ちゃん、覚えておけよ?」
「もちろんよ。翔太」
ドア越しに姉の声が聞こえた。
その瞬間、インターホンが鳴った。
おそらく、桜さんと美咲さんだろう。
◇暗狩 四折
「私はやってません!第一、どうやってチョコを溶かすんですか!」
美咲さんは声を荒げた。
「……翔太、出番よ」
「はいはい」
翔太は私の前に立つと、落ち着いて行った。
「美咲さん、落ち着いて下さい」
美咲さんは驚いている。
翔太はそんなことなど知ったことかとばかりに、話を続けた。
「あなたはチョコを遠隔で溶かすなんてできない。だから否定してるんですね?」
「え……うん。第一やってないし」
「わかりました。では、僕の見解を聞いて下さい」
そう言うと、翔太は推理を始めた。
「まずあなたは、チョコを勝手にあげた桜さんに嫉妬した」
「そしてあなたは考えた。チョコを溶かしたいと」
美咲さんはギクッとした顔をした。
翔太は推理を続ける。
「だけど、冷房の効いた部屋でチョコが独りでに溶けるわけない」
「だからあなたは考えた。『熱ではなく、光を使おう』とね」
「あなたは強力な光をガラス越しに浴びせ、チョコを溶かした。違いますか?」
そこまで言うと、美咲さんは冷や汗をかきだした。
「ち、違うわ!第一、光がなんで熱の代わりに」
「あなたもやりませんでしたか?光を集めて発火させる実験」
そう言うと、美咲さんは硬直し、うつむいた。
「光と熱は近いものなんです。美咲さん」
数秒の沈黙。それを破ったのは、美咲さんだった。
「……第一、どうやってそんな強力な光を手に入れるのよ!?」
「え?」
おっと、どうやら探偵ごっこでは、私の方が上らしい。
私は翔太の前に立つと、スマホの画面を見せた。
「えっ……それって!」
「海外通販サイト。そこのレーザーポインタです」
私は勝ち誇った顔でそこに立った。
美咲さんは、力なく突っ立っていた。
「……美咲、嘘でしょ!?」
依頼人は声を荒げる。
しかし、美咲さんは黙ったままだった。
「……翔太、帰る」
『帰るよ』、そう言いかけた時だった。
パァンという、少し大きな音が鳴った。
「……え?」
「桜、ちゃん?」
この家に入ってから一言も話していない、桜さんだった。
桜さんが、美咲を平手打ちしていた。
「最低!」
「……え?」
美咲は顔をあげた。
「嫉妬したならさ!正々堂々戦いなよ!」
「こんなズルい方法、使わないで!」
桜さんは大きな声で、必死に言った。
その時だった。
「……ごめん。二条ちゃん!」
二条……そういえば、依頼人はそういう名前だったような。
「……もうっ!」
依頼人は駆け出した。
そして、桜さんと美咲さんに抱き着いた。
「もう二度とこんなことしないで。約束して!」
「うん。約束する!二条ちゃん!」
そのまま、三人は一塊になっていた。
その内、三人は泣き始めた。
◇暗狩 翔太
「……なんかいい話っぽくなってるけど?どうする?」
「こっち無視して仲良くなってんの腹立つから依頼料もらう」
「わーお、クズ」
姉は僕のそんな言葉を無視した。
僕はその姉を見て、また困惑した。
よく考えたらこの人も僕も犯罪まがいのことしてるし、好奇心ってのは危険な物なのかも……
「翔太。初めて自分だけで推理したけど、どうだった?」
「どうって言われても」
僕は自分の真相を導いた時、心臓が少し加速したことを思い出した。
「……特に何も?」
「ふーん」
姉は怪しげな笑みを浮かべ、こちらを見つめた。
その向こうでは、三人組がなんかいい雰囲気になっていた。
「じゃあ、とりあえずチョコが溶けた理由を探しますね」
私は少々困惑しながら、部屋の中に戻った。
窓ガラスからは光が差し、少しばかりまぶしい。
「……どうしよ」
夕方の今、私はこれといった仮説を見つけられずにいた。
さっきの暖房器具仮説は打ち破られた。
じゃあどうすればいいんだ。
「うーん……」
この部屋の中に、他にものを溶かせそうなものはない。
現場は密室だ。暖房器具を持ち運ぶ隙はない。
私は部屋の真ん中に座り込んでしまった。
後はどうするか。それが問題だ。
「んー、まぶしっ!?」
私の思考に日光が差し込む。
まさか大自然に思考を邪魔されるとは、考えてもなかった。
「……あれ?」
その瞬間、私の脳裏にある可能性が浮かんだ。
まさかこんなひょんなことからヒントを得るなんて。
「二時間ドラマかよ……すいません!」
私は部屋から飛び出した。
「な、なんですか?」
「どしたの?姉ちゃん」
私は依頼人に訊く。
「あの、チョコが溶けた時、チョコの蓋は開いてましたか?」
「え……開いてた、と思いますけど」
私の胸は少しずつ高鳴っていく。
真実に近づいている。そんな気がした。
「では、その時カーテンは開いていましたか?」
「えーと、多分……開いてました」
なるほど。
私は心のなかで怪しめに笑った。
「……姉ちゃん?どうしたの?」
「すいません。桜さんと美咲さんを呼んでいただけますか?」
「……え?」
依頼人は唖然としている。
私は依頼人を急かした。
「ほら、お願いします!」
「は、はい」
依頼人が携帯を操作している間に、私は翔太と話した。
「姉ちゃん、トリックがわかったの?」
「翔太、ヒントは二つ」
私は人差し指と中指を上げた。
「……え?」
「まず一つは『光』、もう一つは『ガラス』よ」
「え、は?」
翔太の背中を軽く押し、私は部屋に押し込む。
「すいません!桜さんと美咲さん後どれくらいでここに来るんですか?」
「えっと……15分くらいです」
私はドアノブを手に取り、翔太に行った。
「じゃあ制限時間15分ね。がんばれ、翔太!」
そして、私はドアを閉めた。
◇暗狩 翔太
「……あいつ人間じゃねぇ!」
僕は半ギレになりながら、この部屋から抜け出そうとした。
が……開かない。
「あーもう!」
おそらくあのクソ姉が裏から抑えてるんだろう。
「……謎を解くしかない、ってことかよ」
とりあえず、あいつの残したヒントからどうにかしないと。
まずは『光』、そして『ガラス』だ。
ガラスは光を通すが……それがどうしたんだ?
「……ガラス、光」
もしかしから、姉の質問もヒントになるかもしれない。
一つは『チョコの蓋は開いていたか』。
もう一つは『カーテンは開いていたか』だ。
この二つの質問……つまり、窓からの『何か』でチョコは溶けたことになる。
チョコは熱によって溶ける。
じゃあ、なんだ?それと光が、どう関係あるんだ?
「んー、ん?」
僕は部屋に座り込み、顎に手を置いた。
光、熱、チョコレート。
「……ん?」
何もわからない。
僕は頭を抱えそうになった。
そして、そのまましばらく経った。
「翔太!後3分よ!」
「え、ちょ……えぇ!?」
僕は完全に参ってしまった。
ただ……このまま姉に降参するのは、僕のプライドが許さない。
「……うぅー」
その時だった。
部屋の外から、不気味な音が聞こえた。
「ん、えぇ?」
その音はぽちゃん、ぽちゃんという、どこかで聞いたような音だった。
水、もしくはなにかの液体の音だろう。
「……水?」
水、それが何を意味するのかはわからない。
しかし、何か。何かのヒントな気が……まさか。
「収れん発火……」
どこかで見たことがある。
水によって光が一点に集まり、その光でものが燃える映像を。
「……じゃあ、光と熱には何か関係が?」
僕は一つの可能性にたどり着いた。
窓ガラスを見ると、隣の家越しに道路が見える。
おそらく、この仮説は正しい。
心臓の速度が上がって行く。
「……姉ちゃん、覚えておけよ?」
「もちろんよ。翔太」
ドア越しに姉の声が聞こえた。
その瞬間、インターホンが鳴った。
おそらく、桜さんと美咲さんだろう。
◇暗狩 四折
「私はやってません!第一、どうやってチョコを溶かすんですか!」
美咲さんは声を荒げた。
「……翔太、出番よ」
「はいはい」
翔太は私の前に立つと、落ち着いて行った。
「美咲さん、落ち着いて下さい」
美咲さんは驚いている。
翔太はそんなことなど知ったことかとばかりに、話を続けた。
「あなたはチョコを遠隔で溶かすなんてできない。だから否定してるんですね?」
「え……うん。第一やってないし」
「わかりました。では、僕の見解を聞いて下さい」
そう言うと、翔太は推理を始めた。
「まずあなたは、チョコを勝手にあげた桜さんに嫉妬した」
「そしてあなたは考えた。チョコを溶かしたいと」
美咲さんはギクッとした顔をした。
翔太は推理を続ける。
「だけど、冷房の効いた部屋でチョコが独りでに溶けるわけない」
「だからあなたは考えた。『熱ではなく、光を使おう』とね」
「あなたは強力な光をガラス越しに浴びせ、チョコを溶かした。違いますか?」
そこまで言うと、美咲さんは冷や汗をかきだした。
「ち、違うわ!第一、光がなんで熱の代わりに」
「あなたもやりませんでしたか?光を集めて発火させる実験」
そう言うと、美咲さんは硬直し、うつむいた。
「光と熱は近いものなんです。美咲さん」
数秒の沈黙。それを破ったのは、美咲さんだった。
「……第一、どうやってそんな強力な光を手に入れるのよ!?」
「え?」
おっと、どうやら探偵ごっこでは、私の方が上らしい。
私は翔太の前に立つと、スマホの画面を見せた。
「えっ……それって!」
「海外通販サイト。そこのレーザーポインタです」
私は勝ち誇った顔でそこに立った。
美咲さんは、力なく突っ立っていた。
「……美咲、嘘でしょ!?」
依頼人は声を荒げる。
しかし、美咲さんは黙ったままだった。
「……翔太、帰る」
『帰るよ』、そう言いかけた時だった。
パァンという、少し大きな音が鳴った。
「……え?」
「桜、ちゃん?」
この家に入ってから一言も話していない、桜さんだった。
桜さんが、美咲を平手打ちしていた。
「最低!」
「……え?」
美咲は顔をあげた。
「嫉妬したならさ!正々堂々戦いなよ!」
「こんなズルい方法、使わないで!」
桜さんは大きな声で、必死に言った。
その時だった。
「……ごめん。二条ちゃん!」
二条……そういえば、依頼人はそういう名前だったような。
「……もうっ!」
依頼人は駆け出した。
そして、桜さんと美咲さんに抱き着いた。
「もう二度とこんなことしないで。約束して!」
「うん。約束する!二条ちゃん!」
そのまま、三人は一塊になっていた。
その内、三人は泣き始めた。
◇暗狩 翔太
「……なんかいい話っぽくなってるけど?どうする?」
「こっち無視して仲良くなってんの腹立つから依頼料もらう」
「わーお、クズ」
姉は僕のそんな言葉を無視した。
僕はその姉を見て、また困惑した。
よく考えたらこの人も僕も犯罪まがいのことしてるし、好奇心ってのは危険な物なのかも……
「翔太。初めて自分だけで推理したけど、どうだった?」
「どうって言われても」
僕は自分の真相を導いた時、心臓が少し加速したことを思い出した。
「……特に何も?」
「ふーん」
姉は怪しげな笑みを浮かべ、こちらを見つめた。
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