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Season1 探偵・暗狩 四折
罠にかけて1
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◇暗狩 四折
「姉ちゃん。何が楽しくて部屋で焚火したの?」
「別にいいじゃない。火は消したんだから」
「普通に危ないでしょぉ?!」
翔太はかなり引いているようだった。
「で、本当に何でそんなことしたの?姉ちゃん」
「炎色反応の実験よ。結構面白かったけど」
もうついていけないとばかりに、翔太は自分の部屋を出た。
私は燃え尽きたタオルを拾い、ゴミ箱に捨てようとした。
その瞬間、私は何かを感じた。
「……依頼?」
スマホの通知音が鳴る。
面白そうな依頼だったらいいんだけどな。
◇暗狩 翔太
「で、なんで駅に来たの?」
僕は姉に問う。
まさか、今度は花火でも上げるつもりじゃないだろうな。
「えーと、翔太。神戸行く?」
「……神戸?」
嫌な予感がする。
「どういうこと?姉ちゃん」
「翔太。不気味な事件があったんだけど」
頭で理解するより先に、僕は後ずさりしていた。
しかし回り込まれた。
「姉ちゃん腕痛いって!」
僕の腕はがっしりと掴まれている。
事件より不気味な笑みを浮かべて、姉は言った。
「で、どうする?」
「……一応聞いておくけど、どういう依頼なの?」
「『熱々の手紙』の作り方を調べるのよ」
熱々の、手紙?
僕はその言葉に、なにか奇妙なものを感じた。
「手紙が熱々って、どういうことなの?」
「それを今から暴きに行くのよ。翔太」
姉の顔は、今度は自慢げな笑顔になった。
「どうする?翔太」
「……行くしかないんでしょ?姉ちゃん」
そう言うと、姉はようやく腕を離した。
「電車賃は姉ちゃんのおごりね」
「当然よ」
姉は券売機の方へ歩いて行く。
僕は自由になった腕を見つめながら、自分のことを不思議に思った。
ただ『熱々の手紙』という情報を聞いただけで、少しでも興味を持ってしまった自分に、だ。
◇暗狩 四折
「では、その時の状況をお願いします」
「……わかりました」
駅前の自販機近くで、私達と依頼人は落ち合った。
依頼人は70歳ほどの洒落た男だった。いわゆる、ダンディーとかいうやつだ。
「話は、1年程前にさかのぼります」
依頼人は暗い顔になった。
「平和だった私たちの近所に、不良グループがやってきました」
「毎日夜はバカ騒ぎして、朝になると大量のゴミを置いて行きました」
「私は、最初の頃は気にせず過ごしていましたが、段々腹が立ってきて……」
「夜明け前に、怒鳴りに行ったんです。そしたら、その翌日でした」
依頼人は自分の手を見つめる。
その目には、憎しみが宿っているように見えた。
「清楚そうな子が、私に手紙を渡してきたんです」
「『あなたの奥さんに、これを渡してください』と」
「私はその手紙を受け取りました。そしたら……驚くほど熱かったんです」
私は目を見開いた。
ただの紙が驚くほど熱い?
「……その子は『またしてやった!』と言い、笑いながら逃げていきました」
「その時は怒りでいっぱいでしたが、後になって怖くなったんです」
「なんであの紙は、あんなに熱かったんだ」
「その絡繰りを暴いてもらいたく、あなたに連絡しました」
依頼人は話し終えると、硬貨を取り出して水を買った。
「……四折さんもいりますか?」
「いえ、大丈夫です」
私は翔太の方を見る。
彼は何かを考えているように、顎に手を置いていた。
「……それで、その手紙はどこに?」
「驚いて落としてしまって……お恥ずかしながら、その場に放置してしまいました」
まぁ無理もない。
熱々の手紙なんていうオカルトグッズだ。触るのも嫌だろう。
「あの、四折さん。依頼料とかはどうでしょうか?」
「依頼料ですか」
今回の事件はかなり面白そうだ。
正直言って、300円くらいでもいい。
「あー、5000円くらいですかね?」
「わかりました。すぐに引き落として来ます」
と言っても、ここに来るまでにそこそこ金がかかっている。
依頼人には申し訳ないが、とりあえずここらが相場か。
「……必ず、解決してみせます」
「お願いします」
依頼人はペコリと頭を下げると、その場から立ち去った。
「姉ちゃん。大丈夫?」
「大丈夫って……どういうこと?」
翔太はまたしても心配そうな目をした。
「だってさ、本当にオカルトだよ?熱い手紙なんて!」
「大丈夫よ。私、知りたがりなんで」
「……なんかそれ決め台詞になってない?」
確かに、前の事件でも言ってた気がする。
「ま、決め台詞があってもいいじゃない!」
「……ま、姉ちゃんの好きにすれば?」
私はそのまま三宮の街を歩き始めた。
とりあえず、どこかにカフェでもあればいいんだけどな。
「……ねぇ翔太」
「何、姉ちゃん」
私は依頼人と話していた時に覚えた、ある違和感について話した。
「あの時、何考えてたの?」
翔太はギクっとした顔を一瞬した。
しかし、その後すぐに普通の顔に戻った。
「……姉ちゃんの真似事してたんだよ。何もわからなかったけどね」
「ふーん」
そうは言っても、この段階で推理するのは難しい。
私は横断歩道を渡りながら、もう一度事件の流れを整理していた。
「姉ちゃん。何が楽しくて部屋で焚火したの?」
「別にいいじゃない。火は消したんだから」
「普通に危ないでしょぉ?!」
翔太はかなり引いているようだった。
「で、本当に何でそんなことしたの?姉ちゃん」
「炎色反応の実験よ。結構面白かったけど」
もうついていけないとばかりに、翔太は自分の部屋を出た。
私は燃え尽きたタオルを拾い、ゴミ箱に捨てようとした。
その瞬間、私は何かを感じた。
「……依頼?」
スマホの通知音が鳴る。
面白そうな依頼だったらいいんだけどな。
◇暗狩 翔太
「で、なんで駅に来たの?」
僕は姉に問う。
まさか、今度は花火でも上げるつもりじゃないだろうな。
「えーと、翔太。神戸行く?」
「……神戸?」
嫌な予感がする。
「どういうこと?姉ちゃん」
「翔太。不気味な事件があったんだけど」
頭で理解するより先に、僕は後ずさりしていた。
しかし回り込まれた。
「姉ちゃん腕痛いって!」
僕の腕はがっしりと掴まれている。
事件より不気味な笑みを浮かべて、姉は言った。
「で、どうする?」
「……一応聞いておくけど、どういう依頼なの?」
「『熱々の手紙』の作り方を調べるのよ」
熱々の、手紙?
僕はその言葉に、なにか奇妙なものを感じた。
「手紙が熱々って、どういうことなの?」
「それを今から暴きに行くのよ。翔太」
姉の顔は、今度は自慢げな笑顔になった。
「どうする?翔太」
「……行くしかないんでしょ?姉ちゃん」
そう言うと、姉はようやく腕を離した。
「電車賃は姉ちゃんのおごりね」
「当然よ」
姉は券売機の方へ歩いて行く。
僕は自由になった腕を見つめながら、自分のことを不思議に思った。
ただ『熱々の手紙』という情報を聞いただけで、少しでも興味を持ってしまった自分に、だ。
◇暗狩 四折
「では、その時の状況をお願いします」
「……わかりました」
駅前の自販機近くで、私達と依頼人は落ち合った。
依頼人は70歳ほどの洒落た男だった。いわゆる、ダンディーとかいうやつだ。
「話は、1年程前にさかのぼります」
依頼人は暗い顔になった。
「平和だった私たちの近所に、不良グループがやってきました」
「毎日夜はバカ騒ぎして、朝になると大量のゴミを置いて行きました」
「私は、最初の頃は気にせず過ごしていましたが、段々腹が立ってきて……」
「夜明け前に、怒鳴りに行ったんです。そしたら、その翌日でした」
依頼人は自分の手を見つめる。
その目には、憎しみが宿っているように見えた。
「清楚そうな子が、私に手紙を渡してきたんです」
「『あなたの奥さんに、これを渡してください』と」
「私はその手紙を受け取りました。そしたら……驚くほど熱かったんです」
私は目を見開いた。
ただの紙が驚くほど熱い?
「……その子は『またしてやった!』と言い、笑いながら逃げていきました」
「その時は怒りでいっぱいでしたが、後になって怖くなったんです」
「なんであの紙は、あんなに熱かったんだ」
「その絡繰りを暴いてもらいたく、あなたに連絡しました」
依頼人は話し終えると、硬貨を取り出して水を買った。
「……四折さんもいりますか?」
「いえ、大丈夫です」
私は翔太の方を見る。
彼は何かを考えているように、顎に手を置いていた。
「……それで、その手紙はどこに?」
「驚いて落としてしまって……お恥ずかしながら、その場に放置してしまいました」
まぁ無理もない。
熱々の手紙なんていうオカルトグッズだ。触るのも嫌だろう。
「あの、四折さん。依頼料とかはどうでしょうか?」
「依頼料ですか」
今回の事件はかなり面白そうだ。
正直言って、300円くらいでもいい。
「あー、5000円くらいですかね?」
「わかりました。すぐに引き落として来ます」
と言っても、ここに来るまでにそこそこ金がかかっている。
依頼人には申し訳ないが、とりあえずここらが相場か。
「……必ず、解決してみせます」
「お願いします」
依頼人はペコリと頭を下げると、その場から立ち去った。
「姉ちゃん。大丈夫?」
「大丈夫って……どういうこと?」
翔太はまたしても心配そうな目をした。
「だってさ、本当にオカルトだよ?熱い手紙なんて!」
「大丈夫よ。私、知りたがりなんで」
「……なんかそれ決め台詞になってない?」
確かに、前の事件でも言ってた気がする。
「ま、決め台詞があってもいいじゃない!」
「……ま、姉ちゃんの好きにすれば?」
私はそのまま三宮の街を歩き始めた。
とりあえず、どこかにカフェでもあればいいんだけどな。
「……ねぇ翔太」
「何、姉ちゃん」
私は依頼人と話していた時に覚えた、ある違和感について話した。
「あの時、何考えてたの?」
翔太はギクっとした顔を一瞬した。
しかし、その後すぐに普通の顔に戻った。
「……姉ちゃんの真似事してたんだよ。何もわからなかったけどね」
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私は横断歩道を渡りながら、もう一度事件の流れを整理していた。
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