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Season1 探偵・暗狩 四折
罠にかけて3
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「翔太!起きて!」
ベッドから起き上がると、朝日をバックに姉が僕の横に座っていた。
「……姉ちゃん、何か見つかったの?」
「トリックに関する仮説が、一つだけできたの」
姉は目を輝かせていた。
そうこうしている内に、僕も目が覚めてきてしまった。
「で、姉ちゃんが見つけた仮説ってのは何なの?」
「えーと、それは」
瞬間、目覚まし時計が鳴った。
「……そういや、今日平日だったね。姉ちゃん」
「私には関係ないから。ごめんね」
僕は床に降り立つと、自室のドアを開けた。
今日は学期末だから学校は短い。
帰ってきたら、ゆっくりと話を聞こう。
◇暗狩 四折
朝起きてから数時間、私はウキウキしっぱなしだった。
謎が解けそうなのもあるが、もう一つ私の心を高鳴らせるものがあった。
「翔太、いい顔してたな」
私の脳裏には、昨日の翔太の顔が映っていた。
予想が正しければ、もうすぐ翔太は帰ってくるはずだ。
学期末だから宿題も少ないだろう。
だったら、すぐに神戸まで行ける。
「……よし」
さっき見た映像を、私は頭の中でリプレイする。
その『清楚そうな子』が、不良の一人に手紙を渡す。
その時、『清楚そうな子』は紙の端っこを持っていた。
さらに、『清楚そうな子』は渡す直前に、紙になにかを塗っていた。
ここまで来れば、後は楽勝だ。
「おっ」
私の耳に、軽快なピンポンの音が聞こえた。
「ただいまー」
「おかえり!翔太!」
ドアを開け、翔太を家に入れる。
この先に起こることを予見した顔だ。
「で、翔太。今日は宿題ある?」
「あんまないよ。だから……」
翔太は私を見上げた。
「じゃ、行きましょうか!」
「はいはい」
半袖に着替え、小さなバッグを身に着ける。
翔太も似たような恰好になり、出る準備をした。
「さ、行くよ。翔太」
「……わかった」
私は家のドアを押す。
太陽がカンカンと照りつける外の世界を、私達は歩き始めた。
◇暗狩 翔太
「で、神戸まで来てやることがゴミ漁りですか」
僕はぶつぶつ言いながら、姉と共に不良グループのゴミを確認していた。
もちろん、目的はただ一つ。
あの紙だ。トラップのようなあの紙を、僕達は回収しようとしている。
「にしても結局トリックは何なの?姉ちゃん」
「それは見つかってからの秘密よ」
教えてくれてもいいのに。
僕はそんな不満を隠しながら、空き缶や爆竹と格闘していた。
「姉ちゃん、もしかしてこれ?」
「見つけた?」
小さな白い紙が、自分の目の前にあった。
僕はその紙を、少しおびえながら持った。
「……熱くない」
姉は一瞬笑みを浮かべた。
そして、僕が持つ紙に触れた。
「やっぱり。瞬間接着剤ね」
「……どゆこと姉ちゃん」
どうやら、姉はもう真実を暴いてしまったらしい。
本当どういう脳の構造なんだか。
「それじゃ、依頼人に連絡しましょうか」
「え、うん」
姉は慣れた手つきでスマホを触る。
数秒後、姉は携帯を耳に当てた。
「翔太。スピーカーにする?」
「じゃあお願い」
スマホが姉の耳から離れる。
姉が操作すると、携帯の発信音は僕にも聞こえるようになった。
「……四折さん。絡繰りが解けたんですか?」
「えぇ。無事に解けました」
電話先から、昨日会った男の声が聞こえる。
一体この姉は、どういう推理を見せてくれるんだ?
「四折さん。絡繰りを教えて下さい」
「単刀直入に言います。不良が利用したのは、反応熱です」
「……反応熱?姉ちゃんどういうこと?」
姉はまたしても怪しげににやけた。
そして、自らの推理を展開し始めた。
「不良グループが使ったのは『瞬間接着剤』です」
「これは布や紙などに染み込むと、急速に反応して発熱します」
「その温度は、なんと100度に達することもあるそうです」
至極落ち着いた口調で姉は言った。
「あなたが受け取った手紙、折りたたまれていませんでしたか?」
「……よく覚えていませんが、おそらく畳まれていました」
その瞬間、姉の顔から落ち着きが消えた。
大きくガッツポーズをすると、姉はこちらに拳を向ける。
「ほら!翔太!」
「え、えぇ?」
僕は一応、姉と拳を合わせた。
姉の顔に笑顔がはじけた。
◇暗狩 翔太
「今回の事件も奇妙だったね」
「確かにね。ま、翔太にもあんな感じの謎は解けるようになってほしいけどね」
あんな感じって。
普通あんなトリック思いつかないよ。変態姉が。
「それじゃ、今から記事書いて来る」
「忙しいね、姉ちゃん」
姉は微笑むと、すぐに自室へ行ってしまった。
「……疲れた」
僕の胸には、少しばかりの引っ掛かりが残っていた。
昨日カラオケで言われた、あの言葉。
姉が言った『でも、翔太には私っていう先輩がいる』という言葉。
「何先輩風吹かせてるんだよ……」
確かに知りたがりとしては、そして探偵としては姉は優秀だ。
だけど、僕にだって姉に勝っているところはある。
僕は鍵を持ち出し、コンビニに向かった。
◇暗狩 四折
「……うにゃ?」
私の目の前には、午後6時を指すデジタル時計があった。
どうやら疲れのせいで、かなり長い時間眠ってしまったらしい。
「やっと起きた。待ってたんだよ?姉ちゃん」
「翔太?」
私の背後には、手を後ろに隠した弟がいた。
「何持ってるの?翔太」
「……ほい。サプライズ」
私の前にカップケーキが差し出された。
チョコレート色に染まった、私の好きなのだ。
「……いつの間に作ったの?」
「姉ちゃんが居眠りしてる間に」
そのカップケーキを、私は両手で受け取った。
「あ、ありがとう。どしたの?翔太」
弟は静かににやけた。
「僕に姉ちゃんという先輩がいるように、姉ちゃんにも僕と言う後輩がいるんだよ?」
そう言う翔太の顔は、自信に満ち溢れていた。
「……ありがとう。翔太」
本当、素敵な弟だ。
ベッドから起き上がると、朝日をバックに姉が僕の横に座っていた。
「……姉ちゃん、何か見つかったの?」
「トリックに関する仮説が、一つだけできたの」
姉は目を輝かせていた。
そうこうしている内に、僕も目が覚めてきてしまった。
「で、姉ちゃんが見つけた仮説ってのは何なの?」
「えーと、それは」
瞬間、目覚まし時計が鳴った。
「……そういや、今日平日だったね。姉ちゃん」
「私には関係ないから。ごめんね」
僕は床に降り立つと、自室のドアを開けた。
今日は学期末だから学校は短い。
帰ってきたら、ゆっくりと話を聞こう。
◇暗狩 四折
朝起きてから数時間、私はウキウキしっぱなしだった。
謎が解けそうなのもあるが、もう一つ私の心を高鳴らせるものがあった。
「翔太、いい顔してたな」
私の脳裏には、昨日の翔太の顔が映っていた。
予想が正しければ、もうすぐ翔太は帰ってくるはずだ。
学期末だから宿題も少ないだろう。
だったら、すぐに神戸まで行ける。
「……よし」
さっき見た映像を、私は頭の中でリプレイする。
その『清楚そうな子』が、不良の一人に手紙を渡す。
その時、『清楚そうな子』は紙の端っこを持っていた。
さらに、『清楚そうな子』は渡す直前に、紙になにかを塗っていた。
ここまで来れば、後は楽勝だ。
「おっ」
私の耳に、軽快なピンポンの音が聞こえた。
「ただいまー」
「おかえり!翔太!」
ドアを開け、翔太を家に入れる。
この先に起こることを予見した顔だ。
「で、翔太。今日は宿題ある?」
「あんまないよ。だから……」
翔太は私を見上げた。
「じゃ、行きましょうか!」
「はいはい」
半袖に着替え、小さなバッグを身に着ける。
翔太も似たような恰好になり、出る準備をした。
「さ、行くよ。翔太」
「……わかった」
私は家のドアを押す。
太陽がカンカンと照りつける外の世界を、私達は歩き始めた。
◇暗狩 翔太
「で、神戸まで来てやることがゴミ漁りですか」
僕はぶつぶつ言いながら、姉と共に不良グループのゴミを確認していた。
もちろん、目的はただ一つ。
あの紙だ。トラップのようなあの紙を、僕達は回収しようとしている。
「にしても結局トリックは何なの?姉ちゃん」
「それは見つかってからの秘密よ」
教えてくれてもいいのに。
僕はそんな不満を隠しながら、空き缶や爆竹と格闘していた。
「姉ちゃん、もしかしてこれ?」
「見つけた?」
小さな白い紙が、自分の目の前にあった。
僕はその紙を、少しおびえながら持った。
「……熱くない」
姉は一瞬笑みを浮かべた。
そして、僕が持つ紙に触れた。
「やっぱり。瞬間接着剤ね」
「……どゆこと姉ちゃん」
どうやら、姉はもう真実を暴いてしまったらしい。
本当どういう脳の構造なんだか。
「それじゃ、依頼人に連絡しましょうか」
「え、うん」
姉は慣れた手つきでスマホを触る。
数秒後、姉は携帯を耳に当てた。
「翔太。スピーカーにする?」
「じゃあお願い」
スマホが姉の耳から離れる。
姉が操作すると、携帯の発信音は僕にも聞こえるようになった。
「……四折さん。絡繰りが解けたんですか?」
「えぇ。無事に解けました」
電話先から、昨日会った男の声が聞こえる。
一体この姉は、どういう推理を見せてくれるんだ?
「四折さん。絡繰りを教えて下さい」
「単刀直入に言います。不良が利用したのは、反応熱です」
「……反応熱?姉ちゃんどういうこと?」
姉はまたしても怪しげににやけた。
そして、自らの推理を展開し始めた。
「不良グループが使ったのは『瞬間接着剤』です」
「これは布や紙などに染み込むと、急速に反応して発熱します」
「その温度は、なんと100度に達することもあるそうです」
至極落ち着いた口調で姉は言った。
「あなたが受け取った手紙、折りたたまれていませんでしたか?」
「……よく覚えていませんが、おそらく畳まれていました」
その瞬間、姉の顔から落ち着きが消えた。
大きくガッツポーズをすると、姉はこちらに拳を向ける。
「ほら!翔太!」
「え、えぇ?」
僕は一応、姉と拳を合わせた。
姉の顔に笑顔がはじけた。
◇暗狩 翔太
「今回の事件も奇妙だったね」
「確かにね。ま、翔太にもあんな感じの謎は解けるようになってほしいけどね」
あんな感じって。
普通あんなトリック思いつかないよ。変態姉が。
「それじゃ、今から記事書いて来る」
「忙しいね、姉ちゃん」
姉は微笑むと、すぐに自室へ行ってしまった。
「……疲れた」
僕の胸には、少しばかりの引っ掛かりが残っていた。
昨日カラオケで言われた、あの言葉。
姉が言った『でも、翔太には私っていう先輩がいる』という言葉。
「何先輩風吹かせてるんだよ……」
確かに知りたがりとしては、そして探偵としては姉は優秀だ。
だけど、僕にだって姉に勝っているところはある。
僕は鍵を持ち出し、コンビニに向かった。
◇暗狩 四折
「……うにゃ?」
私の目の前には、午後6時を指すデジタル時計があった。
どうやら疲れのせいで、かなり長い時間眠ってしまったらしい。
「やっと起きた。待ってたんだよ?姉ちゃん」
「翔太?」
私の背後には、手を後ろに隠した弟がいた。
「何持ってるの?翔太」
「……ほい。サプライズ」
私の前にカップケーキが差し出された。
チョコレート色に染まった、私の好きなのだ。
「……いつの間に作ったの?」
「姉ちゃんが居眠りしてる間に」
そのカップケーキを、私は両手で受け取った。
「あ、ありがとう。どしたの?翔太」
弟は静かににやけた。
「僕に姉ちゃんという先輩がいるように、姉ちゃんにも僕と言う後輩がいるんだよ?」
そう言う翔太の顔は、自信に満ち溢れていた。
「……ありがとう。翔太」
本当、素敵な弟だ。
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