1 / 2
数字・問題編
しおりを挟む
「……何言ってんだ?この人」
現在時刻午前10時。僕――二条華深はいつも通りネットサーフィンをしていた。
薄暗い部屋に高画質モニターとゲーミングPC、ミルクティーにビーズクッション。
服装も動きやすい短パンに、古着の青いパーカー。
SNSだけやって、脳を働かせない、平和な休日になるはずだった……ついさっきまでは。
『ライドトレインの主人公は18歳。ライドトレイン2の主人公は29歳。つまり3は47歳。4は76歳』……この投稿を見た時、何か不気味な感覚を覚えた。
ライドトレインというのは格闘ゲームの名前だ。無料のわりに完成度が高くて、私も時々遊んでる。
ただ……この投稿の意味はわからない。
主人公の年齢が18歳だから、29歳だからどうしたというのだ。
「返信……とかもないかぁ」
私は新しいタブを開いて、この数字を打ち込もうとする。
「……うん?」
けど……なぜか、僕はタイピングする手を止めてしまった。
その理由は自分でもわからない。
「ん?」
だけど……心当たりはあった。
部屋の隅にポツンと置かれていた手紙を拾い、僕はそれを読む。
『4の1点々 1の2 3の3 2の2』……こう書かれた手紙は、僕が父親から誕生日にもらったものだ。
メッセージが暗号になっていて、これを解読すると『だいすき』になる……
母親と一緒に解読する作業は、今でも覚えてるほど楽しかった。
「……うん」
なんとなく、自分の両手が何を言いたいのかわかった気がした。
僕はメモソフトを開き、ひとつずつ数字を打ち込む。
『18 29 47 76』という数たちが、僕の前に並んだ。
この数字に隠された何らかの『ルール』を導き出す……結構楽しい作業かもしれない。
僕は伸びをした後、ゆっくりと頭を覚醒させた。
休日にしっかり頭を働かせるなんて、もう何年ぶりだろうか。
◇◇◇
時計を覗くと、投稿を見つけてから20分も経っていた。
「……頭がバグりそう」
カレンダーの日付がどうこうとか、時間がどうこうとかいう可能性も考えた。
しかし、76分なんて時間はないし、47日なんて日もないし……
そんなことを考えていた時だった。自分のお腹から、グーという音が鳴った。
「……ほんとに鳴るんだ」
そういや、今日は朝起きてから液体しか口にしてない。
蕎麦が食べたいな。僕の一番の好物だ。
「うーん」
18、29、47、76……ふと考えたが、なんでいきなり『18』から始まるんだろう。
全部特にキリのいい数ではなさそうだし、不思議な並びだ。
まぁいいや。蕎麦で頭にエネルギーを補給しよう。
◇◇◇
のれんをくぐると、茶色いカウンターと赤茶色の床が現れた。
大人の男が数人くらいしか入らないであろう立ち食いそば屋。
ここは店の雰囲気もいいし、狭いのも僕好みだしで最高の店なんだ。
「すいません!ざるそば下さい!」
「はーい!」
おばさんの威勢のいい声が聞こえる。
「うーん……」
蕎麦が来るまで、僕は再び思考の世界に飛び込んだ。
18、29、47、76……特にルールがあるようには思えない。
強いて言うなら、数字は小さい順に並んでいること、全部二桁なこと……あとなんだ?
頭の中がだんだんグルグルしてくる。
「ざるそばです!」
ふっと現世に戻ると、店員が蕎麦とつゆを差し出していた。
「あ、ありがとうございます!」
僕は蕎麦を受け取り、それをカウンターに置く。
お金をピッタリ払うと、僕はカウンターに備えてあるネギをトングで掴む。
つゆにネギを入れて、僕は勢いよく音を立てて啜った。
やっぱりうまいな。冷たくて丁度いい細さに、主張控えめの味。
僕は蕎麦が一番好きだ。
「うん?」
そういや、あの投稿をした人はどんな人なんだろう。
僕はあの数字だけ見て『ルール』を明かそうとしたけど、ひょっとしたらそれは間違いだったのかも。
ひょっとしたらあの人は適当な数字を言ってるだけかもしれないし、何か専門的な知識を持っているのかもしれない。
「……ごちそうさまでした!」
僕はおばさんにペコリと頭を下げる。
急いで家に帰って、投稿者のユーザーページを見てみよう。
◇◇◇
「数学、数学?」
また薄暗い部屋に戻って来たはいいが……例のユーザーページには、僕を仰天させる内容が載っていた。
あの投稿の投稿者は、なんと数学界では多少名の知れた存在らしい。
なんてこったい。僕は数学2だぞ!?
「……えぇ?」
ひとまず、ここは落ち着こう。
数学的なものが関わっていても、多少は素人が噛みつける部分はあるかもしれない。
諦めない。どうせ怠惰に休日を過ごすなら、多少は楽しそうな道を選ぶぞ僕は。
「……うん?」
僕はもう一度数字たちを見つめる。
さっきは気付かなかったけど、これ、段々数の増え方が大きくなっていないか?
最初は『18』から『29』で『11』の増。次は『29』から『47』で『18』の増。その次も同じだ。
だけど、これに気づいたところで一体何が……
「うーん、ん?」
言葉にならない声を上げても、なかなか答えにたどり着けない。
ふと時計を見ると、もう午後2時になっていた。
この投稿を見つけたのは朝9時。つまり、もう3時間も考え続けていることになる。
「……ちょっと休むか」
ビーズクッションから起き上がると、僕は一度部屋を出た。
確か冷蔵庫にバナナがあったはず。牛乳と混ぜて、久しぶりにバナナジュースを作ろう。
頭を働かせるには、糖分がいいとどこかで聞いたことがある。
◇◇◇
IHのコンロに、結構新しい食洗器。そして広いシンク。
ボーナスでリフォームした、白で統一されたシステムキッチンだ。今は親がいないから、僕が好きなように使っていい。
「えーっと。バナナは、っと」
僕は冷蔵庫を漁り、なんとかバナナを探り当てる。
「……あれ?」
僕はバナナの皮をむきながら、なにかの予感を感じた。
「ん-、ん?」
わけがわからないが、ひとつだけわかることがある。
おそらく、僕はかなり『ルール』に近づいている。
「だけど……えぇ?」
いまわかってることは、あの数字は小さい順に並べられてる事と、数字の増える幅はどんどん大きくなっていること。
それくらいだけど……あ!
「……なるほどね」
僕はもくもくとバナナをちぎってはミキサーに突っ込む。
これを飲みながら、ゆっくり答え合わせとしよう。
現在時刻午前10時。僕――二条華深はいつも通りネットサーフィンをしていた。
薄暗い部屋に高画質モニターとゲーミングPC、ミルクティーにビーズクッション。
服装も動きやすい短パンに、古着の青いパーカー。
SNSだけやって、脳を働かせない、平和な休日になるはずだった……ついさっきまでは。
『ライドトレインの主人公は18歳。ライドトレイン2の主人公は29歳。つまり3は47歳。4は76歳』……この投稿を見た時、何か不気味な感覚を覚えた。
ライドトレインというのは格闘ゲームの名前だ。無料のわりに完成度が高くて、私も時々遊んでる。
ただ……この投稿の意味はわからない。
主人公の年齢が18歳だから、29歳だからどうしたというのだ。
「返信……とかもないかぁ」
私は新しいタブを開いて、この数字を打ち込もうとする。
「……うん?」
けど……なぜか、僕はタイピングする手を止めてしまった。
その理由は自分でもわからない。
「ん?」
だけど……心当たりはあった。
部屋の隅にポツンと置かれていた手紙を拾い、僕はそれを読む。
『4の1点々 1の2 3の3 2の2』……こう書かれた手紙は、僕が父親から誕生日にもらったものだ。
メッセージが暗号になっていて、これを解読すると『だいすき』になる……
母親と一緒に解読する作業は、今でも覚えてるほど楽しかった。
「……うん」
なんとなく、自分の両手が何を言いたいのかわかった気がした。
僕はメモソフトを開き、ひとつずつ数字を打ち込む。
『18 29 47 76』という数たちが、僕の前に並んだ。
この数字に隠された何らかの『ルール』を導き出す……結構楽しい作業かもしれない。
僕は伸びをした後、ゆっくりと頭を覚醒させた。
休日にしっかり頭を働かせるなんて、もう何年ぶりだろうか。
◇◇◇
時計を覗くと、投稿を見つけてから20分も経っていた。
「……頭がバグりそう」
カレンダーの日付がどうこうとか、時間がどうこうとかいう可能性も考えた。
しかし、76分なんて時間はないし、47日なんて日もないし……
そんなことを考えていた時だった。自分のお腹から、グーという音が鳴った。
「……ほんとに鳴るんだ」
そういや、今日は朝起きてから液体しか口にしてない。
蕎麦が食べたいな。僕の一番の好物だ。
「うーん」
18、29、47、76……ふと考えたが、なんでいきなり『18』から始まるんだろう。
全部特にキリのいい数ではなさそうだし、不思議な並びだ。
まぁいいや。蕎麦で頭にエネルギーを補給しよう。
◇◇◇
のれんをくぐると、茶色いカウンターと赤茶色の床が現れた。
大人の男が数人くらいしか入らないであろう立ち食いそば屋。
ここは店の雰囲気もいいし、狭いのも僕好みだしで最高の店なんだ。
「すいません!ざるそば下さい!」
「はーい!」
おばさんの威勢のいい声が聞こえる。
「うーん……」
蕎麦が来るまで、僕は再び思考の世界に飛び込んだ。
18、29、47、76……特にルールがあるようには思えない。
強いて言うなら、数字は小さい順に並んでいること、全部二桁なこと……あとなんだ?
頭の中がだんだんグルグルしてくる。
「ざるそばです!」
ふっと現世に戻ると、店員が蕎麦とつゆを差し出していた。
「あ、ありがとうございます!」
僕は蕎麦を受け取り、それをカウンターに置く。
お金をピッタリ払うと、僕はカウンターに備えてあるネギをトングで掴む。
つゆにネギを入れて、僕は勢いよく音を立てて啜った。
やっぱりうまいな。冷たくて丁度いい細さに、主張控えめの味。
僕は蕎麦が一番好きだ。
「うん?」
そういや、あの投稿をした人はどんな人なんだろう。
僕はあの数字だけ見て『ルール』を明かそうとしたけど、ひょっとしたらそれは間違いだったのかも。
ひょっとしたらあの人は適当な数字を言ってるだけかもしれないし、何か専門的な知識を持っているのかもしれない。
「……ごちそうさまでした!」
僕はおばさんにペコリと頭を下げる。
急いで家に帰って、投稿者のユーザーページを見てみよう。
◇◇◇
「数学、数学?」
また薄暗い部屋に戻って来たはいいが……例のユーザーページには、僕を仰天させる内容が載っていた。
あの投稿の投稿者は、なんと数学界では多少名の知れた存在らしい。
なんてこったい。僕は数学2だぞ!?
「……えぇ?」
ひとまず、ここは落ち着こう。
数学的なものが関わっていても、多少は素人が噛みつける部分はあるかもしれない。
諦めない。どうせ怠惰に休日を過ごすなら、多少は楽しそうな道を選ぶぞ僕は。
「……うん?」
僕はもう一度数字たちを見つめる。
さっきは気付かなかったけど、これ、段々数の増え方が大きくなっていないか?
最初は『18』から『29』で『11』の増。次は『29』から『47』で『18』の増。その次も同じだ。
だけど、これに気づいたところで一体何が……
「うーん、ん?」
言葉にならない声を上げても、なかなか答えにたどり着けない。
ふと時計を見ると、もう午後2時になっていた。
この投稿を見つけたのは朝9時。つまり、もう3時間も考え続けていることになる。
「……ちょっと休むか」
ビーズクッションから起き上がると、僕は一度部屋を出た。
確か冷蔵庫にバナナがあったはず。牛乳と混ぜて、久しぶりにバナナジュースを作ろう。
頭を働かせるには、糖分がいいとどこかで聞いたことがある。
◇◇◇
IHのコンロに、結構新しい食洗器。そして広いシンク。
ボーナスでリフォームした、白で統一されたシステムキッチンだ。今は親がいないから、僕が好きなように使っていい。
「えーっと。バナナは、っと」
僕は冷蔵庫を漁り、なんとかバナナを探り当てる。
「……あれ?」
僕はバナナの皮をむきながら、なにかの予感を感じた。
「ん-、ん?」
わけがわからないが、ひとつだけわかることがある。
おそらく、僕はかなり『ルール』に近づいている。
「だけど……えぇ?」
いまわかってることは、あの数字は小さい順に並べられてる事と、数字の増える幅はどんどん大きくなっていること。
それくらいだけど……あ!
「……なるほどね」
僕はもくもくとバナナをちぎってはミキサーに突っ込む。
これを飲みながら、ゆっくり答え合わせとしよう。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる