4 / 9
ジンの想い
しおりを挟む
時刻は2時、渋滞にはまってから15分ほど経つが、進む気配はまったくない。激ヤバ訳アリ性格濃い目三銃士もなんだかやることがなく、暇そうだった。ジンさんはイヤホンを耳から外し、カイトさんはなんか詠唱していた。ヨーロッパ系の宗教なのだろうか。
「……皆さん、暇なら寝ててもいいですよ」
俺は冗談半分でそう言った。すると、ミアさんがすぐに目を閉じた。寝息を立てだすミアさん。
「……マジか」
「ミアは昔から、寝つきだけは良かったからな。寝落ち通話とかまったくできなかった」
後部座席に座るジンさんが補足する。寝落ち通話とかしてたのかよこの2人。心の中でそんな風に毒づくと、カイトさんがまた口を挟んできた。
「主神も経典で言ってます『もっと思い出話を聞かせろ』と」
「……汎用性の高い経典だな。宗教小僧」
「宗教小僧とはまた凝った呼び名ですね。思い出話はお嫌いですか?」
「……いや、別に。で、何の思い出話をすればいいんだ?」
「ミアさんと付き合っていた頃の話を!」
舌打ちをするジンさん。だけど表情だけ見るとまんざらでもなさそう。やっぱりこの人元カノのことめっちゃ引きずってるな。未成年だぞ相手は。脳内でツッコミを入れていたら、ジンさんは話し出した。
「ミアと最初にオフ会した時、本当に女子中学生が来たのには驚いたな。てっきり男が女子のフリをしてるだけだと思ってたから」
「へぇ、面白い馴れ初めですね。そこから、どうやって恋に発展したのでしょう?」
「……正直言って、いつから恋人って関係になったのか自分でも分からないんだ」
ジンさんは窓の外を見ながら、ため息をついた後話し出す。
「ミアは……いつか死んじまいそうな子だった。俺の前で急に泣き出すこともあったし、SNSの投稿も褒められたものじゃなかった」
「ほお」
「でも、時々見せる笑顔が……世界で1番可愛いんだよ。その笑顔を守りたいって思ってさ。気づいたら、戻れないところまで来てた」
「……なるほど」
ジンさんはまたため息をついた。
「さて、次は宗教小僧の番だぞ。お前もなんか話せ」
「えっ? 僕もですか? 仕方がないですね……」
カイトさんはしばらく考える。色々と闇が深い事情だけど、割と渋滞中の暇つぶしには丁度いいかもしれない。ヒッチハイクに協力してよかった。
「あの、異教徒の人の家へカチコミに行った時の話なんですけど」
前言撤回、乗せなきゃよかった。俺はそう思いながら、話に飛び込む。
「あの、カチコミってそれもう反社じゃ」
「いえ、大丈夫です! ちゃんと平和的解決できましたので」
「……平和的なラインですか」
「ちなみに鉄パイプを持って殴り込むのは『平和』の範疇です。主神の定義によると」
なんで犯罪者が2人もいるんだよこの車の中に。未成年に手を出したのと、普通に暴行罪と。捕まえろよ警察も。いやまぁ未成年に関しては色々難しいのかもしれないけども。宗教は割と逮捕するの楽なんじゃねぇの。
「その話やめようか。宗教小僧」
ジンさんがそう言ったことで、思い出話の会は終わった。はずだった……助手席から、ミアさんの声が聞こえてくるまでは。
「えへへ、ジンさん……しゅきー」
どうやら寝言を言っているらしい。後部座席から「ミアはよく、昔の出来事を夢で思い出すんだ」という補足説明が入った……ってことは、この寝言を聞いておけばミアさんの過去をさらに知れるのか? そう思った俺は、ミアさんの寝言にしっかりと耳を澄ます。
「ジンさん、ジンさん……えへへ……」
めっちゃ幸せそうな夢見てるなぁ。何か、よっぽどいい思い出があったのかもしれない。そんなことを思っていたら、ミアさん(夢の中)は言った。
「……ずーっとこいびとですからね。どこにもいかないでくださ……いよ……」
瞬時にお通夜ムードと化す車内。いや、そりゃ禁断の恋だしさ、2人は別れるのが正解かもしれないけどさぁ、なんか……救いとかないんですかね、この状況。そんなことを思っていたら、いつの間にか渋滞を抜けていた。
「……皆さん、暇なら寝ててもいいですよ」
俺は冗談半分でそう言った。すると、ミアさんがすぐに目を閉じた。寝息を立てだすミアさん。
「……マジか」
「ミアは昔から、寝つきだけは良かったからな。寝落ち通話とかまったくできなかった」
後部座席に座るジンさんが補足する。寝落ち通話とかしてたのかよこの2人。心の中でそんな風に毒づくと、カイトさんがまた口を挟んできた。
「主神も経典で言ってます『もっと思い出話を聞かせろ』と」
「……汎用性の高い経典だな。宗教小僧」
「宗教小僧とはまた凝った呼び名ですね。思い出話はお嫌いですか?」
「……いや、別に。で、何の思い出話をすればいいんだ?」
「ミアさんと付き合っていた頃の話を!」
舌打ちをするジンさん。だけど表情だけ見るとまんざらでもなさそう。やっぱりこの人元カノのことめっちゃ引きずってるな。未成年だぞ相手は。脳内でツッコミを入れていたら、ジンさんは話し出した。
「ミアと最初にオフ会した時、本当に女子中学生が来たのには驚いたな。てっきり男が女子のフリをしてるだけだと思ってたから」
「へぇ、面白い馴れ初めですね。そこから、どうやって恋に発展したのでしょう?」
「……正直言って、いつから恋人って関係になったのか自分でも分からないんだ」
ジンさんは窓の外を見ながら、ため息をついた後話し出す。
「ミアは……いつか死んじまいそうな子だった。俺の前で急に泣き出すこともあったし、SNSの投稿も褒められたものじゃなかった」
「ほお」
「でも、時々見せる笑顔が……世界で1番可愛いんだよ。その笑顔を守りたいって思ってさ。気づいたら、戻れないところまで来てた」
「……なるほど」
ジンさんはまたため息をついた。
「さて、次は宗教小僧の番だぞ。お前もなんか話せ」
「えっ? 僕もですか? 仕方がないですね……」
カイトさんはしばらく考える。色々と闇が深い事情だけど、割と渋滞中の暇つぶしには丁度いいかもしれない。ヒッチハイクに協力してよかった。
「あの、異教徒の人の家へカチコミに行った時の話なんですけど」
前言撤回、乗せなきゃよかった。俺はそう思いながら、話に飛び込む。
「あの、カチコミってそれもう反社じゃ」
「いえ、大丈夫です! ちゃんと平和的解決できましたので」
「……平和的なラインですか」
「ちなみに鉄パイプを持って殴り込むのは『平和』の範疇です。主神の定義によると」
なんで犯罪者が2人もいるんだよこの車の中に。未成年に手を出したのと、普通に暴行罪と。捕まえろよ警察も。いやまぁ未成年に関しては色々難しいのかもしれないけども。宗教は割と逮捕するの楽なんじゃねぇの。
「その話やめようか。宗教小僧」
ジンさんがそう言ったことで、思い出話の会は終わった。はずだった……助手席から、ミアさんの声が聞こえてくるまでは。
「えへへ、ジンさん……しゅきー」
どうやら寝言を言っているらしい。後部座席から「ミアはよく、昔の出来事を夢で思い出すんだ」という補足説明が入った……ってことは、この寝言を聞いておけばミアさんの過去をさらに知れるのか? そう思った俺は、ミアさんの寝言にしっかりと耳を澄ます。
「ジンさん、ジンさん……えへへ……」
めっちゃ幸せそうな夢見てるなぁ。何か、よっぽどいい思い出があったのかもしれない。そんなことを思っていたら、ミアさん(夢の中)は言った。
「……ずーっとこいびとですからね。どこにもいかないでくださ……いよ……」
瞬時にお通夜ムードと化す車内。いや、そりゃ禁断の恋だしさ、2人は別れるのが正解かもしれないけどさぁ、なんか……救いとかないんですかね、この状況。そんなことを思っていたら、いつの間にか渋滞を抜けていた。
0
あなたにおすすめの小説
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!
小林汐希
ライト文芸
2年5組の生徒:松本花菜(17歳 高校2年生)
2年5組の担任:長谷川啓太(23歳 教師歴1年目)
幼い頃から、様々な悩みを抱えながら過ごしてきた花菜。
それは幼い頃に父との離別を経験した家庭環境だったり、小学校の最後に作ってしまった体の古傷であったり。
学校外の時間を一人で過ごすことになった彼女の唯一、かつ絶対的な味方でいてくれたのが、近所に住む啓太お兄ちゃんだった。
しかし年の離れた二人の関係では仕方ないとはいえ、啓太の大学進学や環境変化とともに、その時間は終わりを迎えてしまう。
ふさぎ込む花菜を前に、啓太は最後に「必ず迎えに来る」という言葉を残して街を離れた。
言葉を受け取った花菜は、自分を泣かせないための慰めだったという諦めも入りつつ、一方で微かな希望として心の中で温め続けていた。
数年の時を経て二人が再び顔を合わせたものの、もはや運命の意地悪とでもいうべき「担任教師と生徒」という関係。
最初は様子伺いだったけれど、往時の気持ちが変わっていないことを再確認してからは、「一人じゃない」と嬉しいこと・辛いことも乗り越えていく二人には少しずつ背中を押してくれる味方も増えていく。
再会した当初は「おとなしい終末的運命キャラ」になっていた花菜も次第に自信を取り戻し、新米教師の啓太も花菜のサポートを裏で受けつつ堂々と教壇に立ち続けた。
そんな互いを支えあった二人の前に開けた世界は……。
たった一つだけの約束を胸に、嬉しいときは一緒に喜び、悲しいときは支えあって走り抜けた二人の物語です。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる