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ミアの想い
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ミアさんも顔が強張っている。いや、そりゃ『元カレの事まだ好きなんですか?』と聞くのは、ふつうにどうなんだよ。車内に緊張が走る中、ミアさんは喋る。
「……まだ好きだと思いますか? 私を捨てたんですよ。あの男は」
「ですが、うどんの話をしている時のあなたはすごく楽しそうでした」
「……」
「あぁ、後、最初のサービスエリアでジンさんとの思い出を話してくれましたよね? あの時も楽しそうでしたよ?」
どうやら色々面倒な事態になりそうだ。ど、どうしよう。とりあえず、どうすれば……俺が必死に頭を回しつつ、運転もしつつで大変な中なのに、宗教信者のカイトさんは口を開く。
「ジンさんの意見も聞かせてくださいよ」
「あ、あぁいや、俺は、あの……」
言葉に詰まるジンさんを、ミアさんは睨む。
「……別にいいですよ。お前が上手い言い訳すらできないカスだということは、分かりきっていることなので」
ミアさんの二人称が『お前』に変わった。どう考えてもこれはヤバイ。というか、なんか反社みたいな顔しだしたし。愉快犯じみた態度のカイトさんも、ちょっと目をそらしていた。いや、お前が言い出しっぺだろ!?
「……すいません。次のパーキングエリアで一旦降ろしてもらえますか」
「え、あぁ。いいですよ」
最悪なムードのまま、車は山間部を走っていく。しばらく走っていると、周囲を森に囲まれたパーキングエリアが見えた。自販機とトイレがあるだけのその場所には、まったく人がいなかった。
「……皆さんはここにいてください。トイレに行くだけですので」
そう言い残して、ミアさんはパーキングエリアに繰り出していく。うーわ、うわ、どうしようこれ。
「……よし」
もう3人にはここで降りてもらおう。そう思った。とりあえず次の出口で高速道路を降りて、そこでお別れだ。だってしょうがないだろ。元カレのジンさんはずーっと何も言わず、事態を悪化させた元凶のカイトさんは『やりすぎたな』という表情をしている。よし。そうしよう。この2人は後回し、先にミアさんへこのことを伝えよう。そう思い、俺は車から降りた。
「……大丈夫。なんか言われても、とりあえず……大丈夫。何があっても、大丈夫」
仮になにかトラブルに発展しそうなら、最悪警察を呼んだりもできる。大丈夫。この後どんなことが待ち構えていても、俺は冷静であれる人間だから……
「まだ好きに決まってんだろぉぉぉぉぉぉ!」
「うわあっ!?」
急に120dbくらいの声が聞こえた! え、何、怖い! というか、これ、ミアさんの声……俺は声がした方へ急行する。その間も、叫び声は聞こえ続けていた。
「禁断の恋ってのも知ってんだよこっちは! 銀河系の生命体の中でお前が一番超絶ハイパー大好きなのに勝手に逃げられたからこうなってんだよぉ! メンヘラこじらせてこうなってんだよこっちはぁ! ふざけんじゃねぇ! 張っ倒すぞゴラァ! あの宗教のガキも何様のつもりじゃ!」
パーキングエリアのトイレの裏側に、彼女はいた。
「……叫んだらなんかスッキリしたわ……えっ?」
ミアさんはしばらく硬直した後、目を逸らす。
「どこから聞いてました?」
「多分、かなり最初の方から」
「……車の中にも届いちゃいましたかね」
「多分、ギリギリ大丈夫だと思います。今は音楽をガンガンに掛けているので」
そう言うと、彼女はため息をつく。
「ごめんなさい。あなたを巻き込んで。別に、ここで降ろしてくれても問題ないですよ。最低限のお金は持って来てるので」
「いやまぁ、別に大丈夫ですよ。乗せていきます」
魂の叫び、とでも形容できそうな声量だった。なんというか、感情が全部籠ったとでも言うべきというか。あの叫びを聞いた後で降ろすのも、なんか嫌である。乗り掛かった舟、とでも言うべきか。
「もうひとつお願いがあって……青森までの間に、あの男と決着を付けてもよろしいでしょうか?」
「が、がんばってください! めっちゃ応援します!」
「ありがとうございます」
現在位置は北陸の中でも北の方、青森は確かに近づてきている。
「……まだ好きだと思いますか? 私を捨てたんですよ。あの男は」
「ですが、うどんの話をしている時のあなたはすごく楽しそうでした」
「……」
「あぁ、後、最初のサービスエリアでジンさんとの思い出を話してくれましたよね? あの時も楽しそうでしたよ?」
どうやら色々面倒な事態になりそうだ。ど、どうしよう。とりあえず、どうすれば……俺が必死に頭を回しつつ、運転もしつつで大変な中なのに、宗教信者のカイトさんは口を開く。
「ジンさんの意見も聞かせてくださいよ」
「あ、あぁいや、俺は、あの……」
言葉に詰まるジンさんを、ミアさんは睨む。
「……別にいいですよ。お前が上手い言い訳すらできないカスだということは、分かりきっていることなので」
ミアさんの二人称が『お前』に変わった。どう考えてもこれはヤバイ。というか、なんか反社みたいな顔しだしたし。愉快犯じみた態度のカイトさんも、ちょっと目をそらしていた。いや、お前が言い出しっぺだろ!?
「……すいません。次のパーキングエリアで一旦降ろしてもらえますか」
「え、あぁ。いいですよ」
最悪なムードのまま、車は山間部を走っていく。しばらく走っていると、周囲を森に囲まれたパーキングエリアが見えた。自販機とトイレがあるだけのその場所には、まったく人がいなかった。
「……皆さんはここにいてください。トイレに行くだけですので」
そう言い残して、ミアさんはパーキングエリアに繰り出していく。うーわ、うわ、どうしようこれ。
「……よし」
もう3人にはここで降りてもらおう。そう思った。とりあえず次の出口で高速道路を降りて、そこでお別れだ。だってしょうがないだろ。元カレのジンさんはずーっと何も言わず、事態を悪化させた元凶のカイトさんは『やりすぎたな』という表情をしている。よし。そうしよう。この2人は後回し、先にミアさんへこのことを伝えよう。そう思い、俺は車から降りた。
「……大丈夫。なんか言われても、とりあえず……大丈夫。何があっても、大丈夫」
仮になにかトラブルに発展しそうなら、最悪警察を呼んだりもできる。大丈夫。この後どんなことが待ち構えていても、俺は冷静であれる人間だから……
「まだ好きに決まってんだろぉぉぉぉぉぉ!」
「うわあっ!?」
急に120dbくらいの声が聞こえた! え、何、怖い! というか、これ、ミアさんの声……俺は声がした方へ急行する。その間も、叫び声は聞こえ続けていた。
「禁断の恋ってのも知ってんだよこっちは! 銀河系の生命体の中でお前が一番超絶ハイパー大好きなのに勝手に逃げられたからこうなってんだよぉ! メンヘラこじらせてこうなってんだよこっちはぁ! ふざけんじゃねぇ! 張っ倒すぞゴラァ! あの宗教のガキも何様のつもりじゃ!」
パーキングエリアのトイレの裏側に、彼女はいた。
「……叫んだらなんかスッキリしたわ……えっ?」
ミアさんはしばらく硬直した後、目を逸らす。
「どこから聞いてました?」
「多分、かなり最初の方から」
「……車の中にも届いちゃいましたかね」
「多分、ギリギリ大丈夫だと思います。今は音楽をガンガンに掛けているので」
そう言うと、彼女はため息をつく。
「ごめんなさい。あなたを巻き込んで。別に、ここで降ろしてくれても問題ないですよ。最低限のお金は持って来てるので」
「いやまぁ、別に大丈夫ですよ。乗せていきます」
魂の叫び、とでも形容できそうな声量だった。なんというか、感情が全部籠ったとでも言うべきというか。あの叫びを聞いた後で降ろすのも、なんか嫌である。乗り掛かった舟、とでも言うべきか。
「もうひとつお願いがあって……青森までの間に、あの男と決着を付けてもよろしいでしょうか?」
「が、がんばってください! めっちゃ応援します!」
「ありがとうございます」
現在位置は北陸の中でも北の方、青森は確かに近づてきている。
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