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16. 狙われているようです
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グレール王国の外から王族の愚行を止める。
相手がいくら馬鹿でも、国外からの干渉は難しいことは少し考えれば分かること。
けれども、民を守る使命を持っているはずの貴族が反旗を翻していないから、身分を捨てる覚悟を決めている私達しか動けない。
私の家の領地は冒険者を雇って防衛させているから、王家に乱暴されることは無いと思うけれど、他の人々が苦しんでいると思うと放置はしたくなかった。
あの王子に復讐したいという思惑もあるけれど、そのことは誰にも言わないつもり。
でも……私一人だけではグレールの王家を止めることなんてできないから、こんな問いかけをしてみた。
「レオン様、あの王家を止める方法はあるのでしょうか?」
「アルカンシェル商会との取引が無くなったら、あの王家も止まるだろう。贅沢のためにお金を使えなくなるからな。
食材も手に入らなくなるが、王都の商店から買えば問題ないだろう」
そんな言葉が返ってきて、目を瞬かせる私。
社交会でこんな分かりやすい表情をしていたら怒られてしまうけれど、ここにはお母様とレオン様しかいないから、感情を表に出すことも出来る。
「そんなに影響がありますのね……」
「ああ。俺の家との取引を継続してくれてありがとう。本当に助かるよ」
王国から撤退することに決めていたけれど、私に良くしてくれていた人の家とは取引を続けている。
だから恨まれるようなことは無いのだけど、感謝されるとは思わなかったわ。
「私に良くしてくださっている方に迷惑はかけられませんもの。当然のことですわ」
「世の中にはそう思わない人間もいるのだがな……。
今言えるのは、アルカンシェル商会との取引が消えた王家は長く持たないということだ。ルシアナや俺が何か行動を起こさなくても、勝手に痛い目に遭うはずだ」
そんな風に言い切るレオン様の言葉を聞いて、少しだけ王家の未来を想像してみる私。
導き出された答えはレオン様の言葉と同じだった。
「そういうことでしたら、王家のことは気にしないことにしますわ」
「それが良いよ。王家のことで気に病む必要なんてない」
そう結論付けたから、今は魔道具を作ったり商売することを楽しもうと決めた。
「民のことは気になりますけど、今はここでの暮らしを楽しむことにしますわ」
笑顔を浮かべると、レオン様もお母様も笑顔を返してくれた。
それから少しして、ここ別荘の外が騒がしくなってきた。
気になって外の様子を見てみると、次々と私の商会の馬車が敷地に入ってきていた。
「お父様達も無事に来れたのね! 玄関まで迎えに行ってきますわ」
そう断りを入れて、部屋を飛び出す私。
お母様も同じことを考えていたみたいで、並んで廊下を進んでいく。
「俺もついて行ってもいいか?」
「ええ」
頷くと、レオン様に腰の辺りを抱き寄せられた。
王国のエスコートは腕を絡めるのだけど、こんな風に腰を抱いたり手を繋いだりするのは帝国のエスコート。
いつもはされない形だから、少しくすぐったく感じてしまう。
でも、幸せ。
肩が触れ合うほど近くを歩いているというのに、歩きにくくなることはなくて。
玄関にたどり着いた時には、馬車から降りたばかりのアストライア家の使用人さん達から温かい笑みを向けられた。
そんな時。
私が身に付けている通信の魔道具が震えた。
『ルシアナ様、例の王子が貴女の身を狙っているようです。念のため、護衛を付けることをお勧めします』
「分かったわ。連絡ありがとう」
『報告は以上です。ご無事をお祈りします』
そんな言葉と共に、声が途切れた。
「何の話だったか聞いても良いか?」
「王家が私の身を狙っているそうですわ」
「そうか。俺の方からも護衛を付けよう」
私の言葉に、そんな風に返してくれるレオン様。
家の護衛も優秀だけれど、彼の家の護衛は本当に隙がないから、安心できるわね。
一番頼れるのはレオン様だけれど、結婚前にずっと近くに居てもらうことなんて出来ないのよね……。
でも、家族や商会のみんなに守られている今なら安心して魔道具を作れそうね。
相手がいくら馬鹿でも、国外からの干渉は難しいことは少し考えれば分かること。
けれども、民を守る使命を持っているはずの貴族が反旗を翻していないから、身分を捨てる覚悟を決めている私達しか動けない。
私の家の領地は冒険者を雇って防衛させているから、王家に乱暴されることは無いと思うけれど、他の人々が苦しんでいると思うと放置はしたくなかった。
あの王子に復讐したいという思惑もあるけれど、そのことは誰にも言わないつもり。
でも……私一人だけではグレールの王家を止めることなんてできないから、こんな問いかけをしてみた。
「レオン様、あの王家を止める方法はあるのでしょうか?」
「アルカンシェル商会との取引が無くなったら、あの王家も止まるだろう。贅沢のためにお金を使えなくなるからな。
食材も手に入らなくなるが、王都の商店から買えば問題ないだろう」
そんな言葉が返ってきて、目を瞬かせる私。
社交会でこんな分かりやすい表情をしていたら怒られてしまうけれど、ここにはお母様とレオン様しかいないから、感情を表に出すことも出来る。
「そんなに影響がありますのね……」
「ああ。俺の家との取引を継続してくれてありがとう。本当に助かるよ」
王国から撤退することに決めていたけれど、私に良くしてくれていた人の家とは取引を続けている。
だから恨まれるようなことは無いのだけど、感謝されるとは思わなかったわ。
「私に良くしてくださっている方に迷惑はかけられませんもの。当然のことですわ」
「世の中にはそう思わない人間もいるのだがな……。
今言えるのは、アルカンシェル商会との取引が消えた王家は長く持たないということだ。ルシアナや俺が何か行動を起こさなくても、勝手に痛い目に遭うはずだ」
そんな風に言い切るレオン様の言葉を聞いて、少しだけ王家の未来を想像してみる私。
導き出された答えはレオン様の言葉と同じだった。
「そういうことでしたら、王家のことは気にしないことにしますわ」
「それが良いよ。王家のことで気に病む必要なんてない」
そう結論付けたから、今は魔道具を作ったり商売することを楽しもうと決めた。
「民のことは気になりますけど、今はここでの暮らしを楽しむことにしますわ」
笑顔を浮かべると、レオン様もお母様も笑顔を返してくれた。
それから少しして、ここ別荘の外が騒がしくなってきた。
気になって外の様子を見てみると、次々と私の商会の馬車が敷地に入ってきていた。
「お父様達も無事に来れたのね! 玄関まで迎えに行ってきますわ」
そう断りを入れて、部屋を飛び出す私。
お母様も同じことを考えていたみたいで、並んで廊下を進んでいく。
「俺もついて行ってもいいか?」
「ええ」
頷くと、レオン様に腰の辺りを抱き寄せられた。
王国のエスコートは腕を絡めるのだけど、こんな風に腰を抱いたり手を繋いだりするのは帝国のエスコート。
いつもはされない形だから、少しくすぐったく感じてしまう。
でも、幸せ。
肩が触れ合うほど近くを歩いているというのに、歩きにくくなることはなくて。
玄関にたどり着いた時には、馬車から降りたばかりのアストライア家の使用人さん達から温かい笑みを向けられた。
そんな時。
私が身に付けている通信の魔道具が震えた。
『ルシアナ様、例の王子が貴女の身を狙っているようです。念のため、護衛を付けることをお勧めします』
「分かったわ。連絡ありがとう」
『報告は以上です。ご無事をお祈りします』
そんな言葉と共に、声が途切れた。
「何の話だったか聞いても良いか?」
「王家が私の身を狙っているそうですわ」
「そうか。俺の方からも護衛を付けよう」
私の言葉に、そんな風に返してくれるレオン様。
家の護衛も優秀だけれど、彼の家の護衛は本当に隙がないから、安心できるわね。
一番頼れるのはレオン様だけれど、結婚前にずっと近くに居てもらうことなんて出来ないのよね……。
でも、家族や商会のみんなに守られている今なら安心して魔道具を作れそうね。
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