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39. side 王子殿下もご乱心
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ルシアナ達が治癒魔法の魔道具を完成させる時から遡ること半日。
聖女の失踪が広く知れ渡ったグレール王国では、国王が王子マドネスを呼び出していた。
ちなみに、マドネスの怪我はリーシャ以外の聖女候補によって治されている。
「父上、今日はどう言ったご用件で?」
「騎士団がアスクライ公国とやらに寝返った。お前には奴らを連れ戻して欲しい」
「戦力無しにどうしろと!?」
珍しく至極真っ当な疑問がマドネスの口から放たれる。
しかし国王の口から放たれた言葉は、こんなものだった。
「俺の息子なら一人でも騎士団くらいどうにでもなるだろう。行ってこい」
「暴論が過ぎますよ! 俺には無理です。父上が行ってください!」
「弱音を吐いてどうする。それでも男か?」
いくら国王が強くても、相手は聖女と精鋭の騎士団だ。
さらには聖女を凌ぐほど強力な魔法が使えると噂のアストライア家、そして国王を凌ぐほどの強さを持つと噂のクライアス家がいる。
軟弱王子には酷な話なのだが、国王は力のある自分の息子なら力があって当然と考えていた。
「俺には無理ですよ!」
「逃げ出すのか? それではリーシャ嬢に嫌われてしまうぞ?」
「もう手遅れです」
このところリーシャに無視を決め込まれているマドネスはそう呟く。
原因は身体の強さと言うよりも、頭の弱さにあるのだが……頭の弱いマドネスがその事実に気付くことは無さそうだ。
「ならば格好良いところを見せてやれ!」
「だからあんな所に突っ込んだら死にますって!」
「もうよい。時間がない、俺が行く」
戻ってくるまでの間、食事は抜きだ。その腐った性根を直しておけ」
そう言い残して、国王がこの場を去っていく。
残されたマドネスもまた、自室に戻っていき……。
「クソっ、なんで俺ばかりがこんな目に遭わないといけないんだ!?」
「殿下、そんなことをされてはまたお怪我をされてしまいます」
「うるさい! 黙れ!」
そう言われた使用人は律儀に口を閉じた。
けれども、マドネスの苛立ちが消えることはなくて、ポカポカと壁を殴りつけていた。
そんな中……。
(我が国の希望は、第二王子殿下だけですね。ですが、この殿下は……)
病弱ながらも頭脳明晰と噂されている第二王子が周囲の期待を集めていた。
けれども、そんな第二王子が居ても、王国を離れる者は後を絶たなくて。
王宮の中は日に日に寂しくなっていた。
その一方で、食堂では国王の愉快そうな声が響いていた。
「腹が減っては戦はできぬ。食うぞ!
出来たらどんどん持ってこい!」
商人達から食材が調達出来なくなっている中でのこの発言に、料理人達は疑いの目を向けている。
幸いなのは、使用人達は王宮外に食事に行けることだろう。
けれども、病弱な第二王子のことを気にかけて、少しばかり食材を残すことにした。
しかし……。
「僕もアスクライ公国に行く。この戦いを終わらせるために。
だから、明後日以降の食材の心配はしなくて良い」
「殿下、今あの国に行けば敵と見做されます。どうかお考え直しを」
「問題無いよ。僕が敵と見做されることは絶対に無いからね」
厨房でつまみ食いをしている第二王子は、自信に満ちた表情で口にしていた。
使用人達には彼の意図を読み取ることは出来なかったが、信頼しているから引き止めることはしなかった。
「どうかご無事で」
「ああ、もちろんだよ」
そう口にして、厨房を去る第二王子の背中には、期待の目が集められていた。
「父上、貴方は大馬鹿者ですよ……」
けれども、彼の呟きは誰の耳にも届かなかった。
「腹減った! 飯を作ってくれ!」
──マドネス王子の声のせいで。
聖女の失踪が広く知れ渡ったグレール王国では、国王が王子マドネスを呼び出していた。
ちなみに、マドネスの怪我はリーシャ以外の聖女候補によって治されている。
「父上、今日はどう言ったご用件で?」
「騎士団がアスクライ公国とやらに寝返った。お前には奴らを連れ戻して欲しい」
「戦力無しにどうしろと!?」
珍しく至極真っ当な疑問がマドネスの口から放たれる。
しかし国王の口から放たれた言葉は、こんなものだった。
「俺の息子なら一人でも騎士団くらいどうにでもなるだろう。行ってこい」
「暴論が過ぎますよ! 俺には無理です。父上が行ってください!」
「弱音を吐いてどうする。それでも男か?」
いくら国王が強くても、相手は聖女と精鋭の騎士団だ。
さらには聖女を凌ぐほど強力な魔法が使えると噂のアストライア家、そして国王を凌ぐほどの強さを持つと噂のクライアス家がいる。
軟弱王子には酷な話なのだが、国王は力のある自分の息子なら力があって当然と考えていた。
「俺には無理ですよ!」
「逃げ出すのか? それではリーシャ嬢に嫌われてしまうぞ?」
「もう手遅れです」
このところリーシャに無視を決め込まれているマドネスはそう呟く。
原因は身体の強さと言うよりも、頭の弱さにあるのだが……頭の弱いマドネスがその事実に気付くことは無さそうだ。
「ならば格好良いところを見せてやれ!」
「だからあんな所に突っ込んだら死にますって!」
「もうよい。時間がない、俺が行く」
戻ってくるまでの間、食事は抜きだ。その腐った性根を直しておけ」
そう言い残して、国王がこの場を去っていく。
残されたマドネスもまた、自室に戻っていき……。
「クソっ、なんで俺ばかりがこんな目に遭わないといけないんだ!?」
「殿下、そんなことをされてはまたお怪我をされてしまいます」
「うるさい! 黙れ!」
そう言われた使用人は律儀に口を閉じた。
けれども、マドネスの苛立ちが消えることはなくて、ポカポカと壁を殴りつけていた。
そんな中……。
(我が国の希望は、第二王子殿下だけですね。ですが、この殿下は……)
病弱ながらも頭脳明晰と噂されている第二王子が周囲の期待を集めていた。
けれども、そんな第二王子が居ても、王国を離れる者は後を絶たなくて。
王宮の中は日に日に寂しくなっていた。
その一方で、食堂では国王の愉快そうな声が響いていた。
「腹が減っては戦はできぬ。食うぞ!
出来たらどんどん持ってこい!」
商人達から食材が調達出来なくなっている中でのこの発言に、料理人達は疑いの目を向けている。
幸いなのは、使用人達は王宮外に食事に行けることだろう。
けれども、病弱な第二王子のことを気にかけて、少しばかり食材を残すことにした。
しかし……。
「僕もアスクライ公国に行く。この戦いを終わらせるために。
だから、明後日以降の食材の心配はしなくて良い」
「殿下、今あの国に行けば敵と見做されます。どうかお考え直しを」
「問題無いよ。僕が敵と見做されることは絶対に無いからね」
厨房でつまみ食いをしている第二王子は、自信に満ちた表情で口にしていた。
使用人達には彼の意図を読み取ることは出来なかったが、信頼しているから引き止めることはしなかった。
「どうかご無事で」
「ああ、もちろんだよ」
そう口にして、厨房を去る第二王子の背中には、期待の目が集められていた。
「父上、貴方は大馬鹿者ですよ……」
けれども、彼の呟きは誰の耳にも届かなかった。
「腹減った! 飯を作ってくれ!」
──マドネス王子の声のせいで。
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